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センティアの王城
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実父のブランパーン大公閣下と私はセンティアの王城に到着した。イザーク王子が出迎えてくれて、居間に通された。
「これが予定表だ」
「「………」」
「サラが喜びそうな場所か分からないけど、若い令嬢が好みそうなところは何処か聞き回ってコレになったんだ」
「「………」」
「余裕を持たせたスケジュールになっているから大丈夫なはずだ。ボイズに作らせたからな」
「ボイズ?」
「宰相の右腕だ」
うわぁ
「貸切だから安心してくれ」
「貸切?どれですか?」
「全部」
「「………」」
チラッと閣下を見ると、あまり顔には出していないけど驚愕していた。
やっぱり普通じゃないのよね。
店側は準備してるだろうし、宰相の右腕が作ったスケジュールを今更ノーとは言えない…。従兄妹なのに何処かの王族を観光に連れて行くレベルよね。問題ないのかな。
「ボイズに練り直させようか?」
「わあ 嬉しいー」
「…やっぱりボイズに、」
「レ、レノ従兄様、お庭にお散歩に連れて行ってください」
「よし、」
そこに別の人が迎えに来た。助かった~。
「おお、久しいな」
「お久しぶりです王弟殿下。
お隣の美しいレディは大公女様でいらっしゃいますか?」
「私の娘 サラ・ガードナーだ」
「私、国王陛下の側仕えをしております、セイン・ベルガモンと申します。お会いできて光栄に存じます」
「ベルガモン様、よろしくお願いします」
「殿下、陛下がお呼びです。大公女もご一緒にお願いいたします」
ベルガモン様に案内された応接間は扉が開いていて、入った瞬間に分かった。私の祖父母だと。
国王陛下に挨拶を済ませると2人が寄ってきた。
「ああ、ソフィアにそっくりだわ」
「間違いない。ソフィアと王弟殿下の子だ。私達の孫娘だ」
「サラ。其方の母ソフィア・フィオルドの両親だ。
サイード・フィオルド公爵とアドリエンヌ・フィオルド公爵夫人だ」
「…ソフィア・ガードナーの娘、サラ・ガードナーと申します。お会いできて光栄です」
「抱きしめてもいいかしら?」
「……」
お祖母様の側に近寄ると優しく包まれた。
「ソフィアにも貴女にも苦労をかけたのね」
その上からしっかり抱きしめられた。
「もう何も心配しなくていい。
子連れのソフィアを娶り大事にしてくださり、血の繋がらないサラを我が子のように愛してくださったと聞いている。ガードナー侯爵に会ってお礼を申し上げたかったが叶わないとはな」
「血の繋がりがないなんて微塵も思わないほど可愛がってくださったと聞きました」
「本当に記憶がないのね。
ソフィアは…」
それには閣下が答えた。
「現在のガードナー侯爵はサラの1歳下の学生です。
ソフィアが代わってガードナー侯爵家の執務をしております。侯爵領から離れることは難しいようです」
「そうか…そうだな。無理だな」
「可能であればお祖父様とお祖母様が母に会いに行ってくださいませんか」
「い、いいのか!?」
「それしか再開の方法は当面なさそうですよね」
「では、サラが帰国するときについて行こう。いいかな?」
「はい」
その後は、お母様の子供の頃の話を聞かせてくれた。
「あの子はね、幼い頃から好奇心旺盛でね、躊躇いがないのよ。カエルでも蛇でも棒で突くし、野生動物を捕まえてくるし、子熊を連れて帰ってきたときは大騒ぎだったわよ。絶対に母熊が怒るもの。大きくなってもそうだったとは思いもよらなかったけど」
チラッと見ると閣下が手で顔を覆っていた。
「爬虫類や動物に抵抗のないメイドにかえることになったしな。引き出しからトカゲやカエルが出てきたり、帽子の入っていた箱の中に蛇を入れたりするものだからな」
え? 帰国が怖いんですけど。
「サラは婚約者も恋人もいないのよね?」
「記憶を失くす前もいなかったと聞いております」
「こんなに美しい子なのに」
「王子妃の打診を断ったみたいで揉めたようです。
それにサラの弟も婚約者はおりません。多分それどころではなかったのかと」
閣下が説明してくれた。
「苦労したのだな」
「ですが、サラは婚姻なんてしなくていいです。
近くに屋敷を建てればいいのです。不自由などさせません」
「それならフィオルド公爵邸で暮らせばいい。ガードナー侯爵が成長して任せられるようになったらソフィアも一緒に暮らせばいい」
「尚更 私の側で暮らした方が、」
「大公妃はどうなさるのですか?」
「黙らせる」
「パパ。大公妃は何一つ悪くありません。それなのに何ですか!」
「……すまん」
「きっと大公妃も複雑なはずです。敬意を払ってください!」
「分かったから怒らないでくれ」
「まあまあ。うちの孫娘はなんてしっかり者なのかしら」
「優しい子だ。大公妃にも気を遣えるなんて偉いぞ。ご褒美をあげないとな」
もう成人しているのに 小さな子を褒めているみたいな口ぶりね。
「私、もう成人していますよ?」
「そんなことを言わないでくれ。他の孫は皆フィオルド家の顔をしていないんだ」
「そうよ。私達に似たソフィアにそっくりなサラが可愛くて仕方ないのよ。サラはいい子ね。
他の孫たちはご褒美なんて言う前に催促するのよ。育て方を間違えたのね」
「早くソフィアにも会いたいな」
この日は晩餐が終わるまでこんな感じでお祖父様とお祖母様を交えて過ごした。
明日からはレノ従兄様のお供ね。
「これが予定表だ」
「「………」」
「サラが喜びそうな場所か分からないけど、若い令嬢が好みそうなところは何処か聞き回ってコレになったんだ」
「「………」」
「余裕を持たせたスケジュールになっているから大丈夫なはずだ。ボイズに作らせたからな」
「ボイズ?」
「宰相の右腕だ」
うわぁ
「貸切だから安心してくれ」
「貸切?どれですか?」
「全部」
「「………」」
チラッと閣下を見ると、あまり顔には出していないけど驚愕していた。
やっぱり普通じゃないのよね。
店側は準備してるだろうし、宰相の右腕が作ったスケジュールを今更ノーとは言えない…。従兄妹なのに何処かの王族を観光に連れて行くレベルよね。問題ないのかな。
「ボイズに練り直させようか?」
「わあ 嬉しいー」
「…やっぱりボイズに、」
「レ、レノ従兄様、お庭にお散歩に連れて行ってください」
「よし、」
そこに別の人が迎えに来た。助かった~。
「おお、久しいな」
「お久しぶりです王弟殿下。
お隣の美しいレディは大公女様でいらっしゃいますか?」
「私の娘 サラ・ガードナーだ」
「私、国王陛下の側仕えをしております、セイン・ベルガモンと申します。お会いできて光栄に存じます」
「ベルガモン様、よろしくお願いします」
「殿下、陛下がお呼びです。大公女もご一緒にお願いいたします」
ベルガモン様に案内された応接間は扉が開いていて、入った瞬間に分かった。私の祖父母だと。
国王陛下に挨拶を済ませると2人が寄ってきた。
「ああ、ソフィアにそっくりだわ」
「間違いない。ソフィアと王弟殿下の子だ。私達の孫娘だ」
「サラ。其方の母ソフィア・フィオルドの両親だ。
サイード・フィオルド公爵とアドリエンヌ・フィオルド公爵夫人だ」
「…ソフィア・ガードナーの娘、サラ・ガードナーと申します。お会いできて光栄です」
「抱きしめてもいいかしら?」
「……」
お祖母様の側に近寄ると優しく包まれた。
「ソフィアにも貴女にも苦労をかけたのね」
その上からしっかり抱きしめられた。
「もう何も心配しなくていい。
子連れのソフィアを娶り大事にしてくださり、血の繋がらないサラを我が子のように愛してくださったと聞いている。ガードナー侯爵に会ってお礼を申し上げたかったが叶わないとはな」
「血の繋がりがないなんて微塵も思わないほど可愛がってくださったと聞きました」
「本当に記憶がないのね。
ソフィアは…」
それには閣下が答えた。
「現在のガードナー侯爵はサラの1歳下の学生です。
ソフィアが代わってガードナー侯爵家の執務をしております。侯爵領から離れることは難しいようです」
「そうか…そうだな。無理だな」
「可能であればお祖父様とお祖母様が母に会いに行ってくださいませんか」
「い、いいのか!?」
「それしか再開の方法は当面なさそうですよね」
「では、サラが帰国するときについて行こう。いいかな?」
「はい」
その後は、お母様の子供の頃の話を聞かせてくれた。
「あの子はね、幼い頃から好奇心旺盛でね、躊躇いがないのよ。カエルでも蛇でも棒で突くし、野生動物を捕まえてくるし、子熊を連れて帰ってきたときは大騒ぎだったわよ。絶対に母熊が怒るもの。大きくなってもそうだったとは思いもよらなかったけど」
チラッと見ると閣下が手で顔を覆っていた。
「爬虫類や動物に抵抗のないメイドにかえることになったしな。引き出しからトカゲやカエルが出てきたり、帽子の入っていた箱の中に蛇を入れたりするものだからな」
え? 帰国が怖いんですけど。
「サラは婚約者も恋人もいないのよね?」
「記憶を失くす前もいなかったと聞いております」
「こんなに美しい子なのに」
「王子妃の打診を断ったみたいで揉めたようです。
それにサラの弟も婚約者はおりません。多分それどころではなかったのかと」
閣下が説明してくれた。
「苦労したのだな」
「ですが、サラは婚姻なんてしなくていいです。
近くに屋敷を建てればいいのです。不自由などさせません」
「それならフィオルド公爵邸で暮らせばいい。ガードナー侯爵が成長して任せられるようになったらソフィアも一緒に暮らせばいい」
「尚更 私の側で暮らした方が、」
「大公妃はどうなさるのですか?」
「黙らせる」
「パパ。大公妃は何一つ悪くありません。それなのに何ですか!」
「……すまん」
「きっと大公妃も複雑なはずです。敬意を払ってください!」
「分かったから怒らないでくれ」
「まあまあ。うちの孫娘はなんてしっかり者なのかしら」
「優しい子だ。大公妃にも気を遣えるなんて偉いぞ。ご褒美をあげないとな」
もう成人しているのに 小さな子を褒めているみたいな口ぶりね。
「私、もう成人していますよ?」
「そんなことを言わないでくれ。他の孫は皆フィオルド家の顔をしていないんだ」
「そうよ。私達に似たソフィアにそっくりなサラが可愛くて仕方ないのよ。サラはいい子ね。
他の孫たちはご褒美なんて言う前に催促するのよ。育て方を間違えたのね」
「早くソフィアにも会いたいな」
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