【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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騒がしい別棟

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翌朝。

……うるさい。

……何時だと思ってるの。

「はぁ」

ガウンを羽織り、メイドを探す。

「姫様、おはようございます」

「おはよう。
ねぇ。なんでこんなにうるさいの?」

「王太子殿下や王子殿下、他の方もお庭で剣の鍛錬をなさっております」

まだ5時半よ!?

「外を見てくるわ」


庭に出ると王子2人に弟1人、ルカ様。
そこにケイン様とお祖父様までいる。

私「何やっているのですか」

将「指南を懇願されてな」

私「そこじゃありません。皆、本邸に泊まったのに何故態々別棟に?」

レ「そりゃあサラがいるからだよ」

私「何時だと思っているんですか。私は7時まで寝たかったんです」

レ「私達は今日帰らねばならないんだよ?」

私「お気を付けて」ニコッ

イ「ここにいても暇だろう。城に来ないか」

私「玩具にされそうなので結構です」

レ「ならば連れ帰ろう」

私「嫌です」

レ「従兄妹の交流を深めよう」

私「どうしても出席しなくてはならない行事の案内だけ送ってくだされば結構です。行けたら行きます」

レ「そうかそうか。今言葉で案内を出しているし、暇だよな?」

私「……」

建物の中に戻りメイドに頼み事をして、着替えた後
、外のベンチに座り従兄達の鍛錬を見ていた。


30分後。


皆が鍛錬を止め、現れた者に挨拶をした。

父「おはよう。これはどういうことかな?」

全「……」

父「将軍、サットン卿、どうもありがとう。

それで? サラを城に連れて行くって?王太子殿下」

レ「いや、その…」

父「私の娘を?」

レ「従兄妹の交流を…」

私「。私のことを暇人って言うの」

レ「いや…」

閣下の袖を掴みながら閣下を見上げた。

私「パパと楽しく過ごせると思ったのに、暇人だから城にって」

父「レノー?」

レ「っ!」

私「怖いな。パパから引き離されちゃうの?」

父「ほう?」

レ「ずるいぞ、サラ」

私は閣下の背に隠れてしがみ付き、小さな声で、

私「パパ…」

父「よしよし、パパが居るから大丈夫だ。

従兄レノーくるからな」

私「パパ。一緒に朝食食べたいから早くね」


またベンチに座り、閣下が王太子殿下をのを見ていた。



実はサットン卿と将軍から、初対面が良くなくて私が一方的に拒絶したこと、閣下がどれだけ私を愛しているのか捜索中に知ったという話を聞いていた。

そしてメイド達の話を聞いてしまった。

“閣下はお姫様のことを目の中に入れても痛くないんじゃないかしら”

“行方不明の数ヶ月、怖かったもの”

“奥様もこれでどう立ち振る舞うか決心が付いたのね”

“まあそもそも、婚約前の子と言うことは、先なのはソフィア様ですものね”

“それに奥様は大公夫人であって王族ではないし、姫様は王族だもの。婚外子でも身分は姫様が上だもの。いびれば不敬罪が適用されるもの”

“それに顔立ちは似てないけど雰囲気が似てるときがおありなのよね”

“耳の形がそっくりよ”

“閣下はパパと呼ばれてみたいって漏らしていらしたわ”


ニヤリ。




そのままテラスに朝食の用意をしてくれた。

私「美味しそう」

サ「姉様、これ美味しいよ」

私「サシャはこれが好きなの?」

サ「はい」

私「お口開けて」

鴨のローストを一口大に切ってサシャの口に入れた。

サ「っ!」

私「美味しい?」

サシャは頬を染め激しく頷いた。

レ「いいな。私も食べさせてくれないか」

私「サシャは末っ子だからやっているのです」

父「サラ」

私は口を開けて 閣下に食べさせられた。

父「か、可愛い。口が小さいっ」

私「……」モグモグ

ア「お、今日は豆を食べた」

サ「兄上、もう食べれます」

私「嫌いだったね?克服したの?偉いわね」

よしよしと頭を撫でた。
サシャは嬉し恥ずかし顔で俯いた。

その私の頭を閣下が撫でる。

レ「私も食べさせて欲しいな」

私「パパ。レノ従兄様はまだ(しごきが)足りないらしいです」

父「レノー?」

レ「自分で食べます……っていうか、サラ」

私「なんでしょう」

レ「叔父上を盾にしてずるいぞ」

私「レノ従兄様だって“王太子”を盾にしてるではありませんか」

レ「してない」

私「イザーク従兄様。レノ従兄様が一般人なら嫌がる私に城に連れ帰るとか言えませんよね」

イ「ま、まあそうだな」

私「レノ従兄様はずっと“王太子殿下”ですよ?」

レ「じゃあ、何て言えば来てくれるんだ」

私「レノ従兄様。それではモテませんよ」

レ「私が?」

ニッコリ

私「お祖父様、カイン様はどちらに?」

祖「カインは…」


そこでカイン様が熱を出していることを知った。疲れからだろうということだった。
カイン様は騎士。王族の専属になれるほどの人だ。その人が疲労で熱だなんて。

「お祖父様、食後にカイン様のお部屋に案内してください」

「分かった」


 

本邸の客室に行くとカイン様が伏していた。

「お祖父様、どうしてここまで疲労が?」

「この数ヶ月、ほとんど眠らず休まずサラを探し続けた。食べ物など食べる気分ではないが、食べなければサラを探す体力が無くなるから流し込んだ。

サラをブランパーン邸に連れてくることができて気を抜いたのだろう」

「落ち着くまで側にいてもいいですか」

「そうしてくれるか。喜ぶぞ」


椅子に座り、本を読みながらカイン様の側にいたけどいつの間にか眠ってしまった。




【 イザークの視点 】

カイン卿の客室の前で部屋から出てきたメイドに声を掛けた。

「ここにサラがいると聞いたのだが」

「姫様は付き添われているうちにお眠りになりました」

中に入ると椅子に座り眠るサラがいた。

「全く…」

そう言いながらサラを抱き上げて愛おしそうに見つめるのは兄上のレノーだ。

そのままソファに座った。
膝の上で身を預けて眠るサラの頭に頬を擦り付ける。

「(可愛過ぎる)」

「(兄上、ほどほどに。また反撃されますよ)」

このサラは記憶を無くしても無くす前も気が強い面がある。

「(私は本当はモテないのか?)」

気にしているな。

「(さあ。見た目は良い方だと思います。ですが私も兄上も王子です。特に兄上は次期国王。純粋に兄上を好いている令嬢はどのくらいいるのか分かりません。金もありますからね)」

「(従兄妹だからなのか)」

「(何がですか)」

「(サラは媚びない)」

「(そうですね)」

「(だけど叔父上を見事に操る)」

「(叔父上も分かっておられますよ)」

チュッ

「(従妹だからなのか…嫌がられても冷たくされてもこんなに可愛いと思うのは)」

「(……)」

「(それに楽しい)」

兄上は立ち上がり、サラをソファに下すと瞼に口付けをした。

チュッ

「(イザーク、そっちを持ってくれ)」

兄上と一緒に1人掛けのソファをベッドの側に移動させた。

「(椅子だと疲れるだろう)」

そしてまたサラを抱き上げて、移動させたソファに座らせた。

兄上は跪きサラの手を取り撫でた。

「(小さくて柔らかい。女の手などそんなものだが、それが可愛いと思えるのが不思議だ……私に笑いかけてくれないだろうか)」

「(……)」

「(この柔らかな唇でキスをしてくれないだろうか)」

兄上はそっとサラの唇に触れた。

「(兄上、そろそろ時間です)」

「(離れたくない。胸がおかしい)」

「(兄上)」

「(分かった、行くよ)」

チュッ

兄上、それを恋と呼ぶのをご存知ないのですね。
しかも実らぬ恋です。頭や額や瞼に唇を落としたり膝の上に乗せて抱きしめたり、求愛行動と同じですよ。

政略結婚だったとはいえ、兄上は正妃を迎えたばかり。サラを欲しても叔父上からの反対を受けるでしょう。

「(城に来てくれないかな)」


この後 私達は王城へ戻った。





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