【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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拾い主の後悔

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【 ノアム・アルク子爵の視点 】


新しい店がオープンしたときいて町に行ってみた。
俺もアンジェリーヌもできるだけ平民ぽく見えるような服にした。

今日は自らアンジェリーヌが腕に手を添えていた。
嬉しかった。

だがそれは、あの女の登場で変わってしまった。

「ノアム様!」

パトリシアだった。

「アンジェリーヌ、あいつは元妻で不貞をして離縁した。何を言われても気にしないで欲しい」

「はい」

パトリシアが駆け寄って来た。

「ノアム様、また私を受け入れて!
私達、恋愛結婚だったじゃない」

「お前は王都で優雅に暮らしたかったのだろう?」

「今度こそ、貴方が望んだことをするわ!
貴方の子を産むから!お願いよ!」

「何が子だ。穢らわしい」

「再婚はしていないと聞いていたけど、その娘を迎えるつもりなの!?」

「お前には関係ない」

「妾でいいから。私がをするわ」

「不自由などしていない」

「じゃあ、どうして頻繁に娼館に通い詰めるのよ!その娘じゃ満足出来ないからでしょう!?」

「パトリシア!」

「1日置きにリタばっかり指名して、時には失神するまで抱くそうじゃない。
リタはすっかり愛人気分よ」


その時、私の腕からアンジェリーヌの手が離れ一歩さがった。


「違うよ、アンジェリーヌ。

パトリシア!いい加減にしろ!お前は娼婦だろう!
お前を迎え入れることはない!」

「嘘を吐くの?

お嬢さん。この町にクレオメという娼館があってリタという赤毛の娘がいるから聞くといいわ」

「パトリシア!いい加減にしろ!」

「リタの処女もノアム様が散らしたらしいわ。
終わるといつも特別なチップを払っているそうよ」

「お止めください。私に聞かせても意味はございません。私は子爵様を狙うなど身の丈に合わないことはいたしません。
私は先に帰らせていただきます。お二人でよく話し合われてください。こんなところで声を荒げてするお話ではございませんから。では失礼します」

目も合わせず 淡々と言い捨てると背を向けた。

「アンジェリーヌ!」

追いかけようとするとパトリシアが腕に絡み付いた。

「貴方は貴族なのだから平民の若い娘など止めておいた方が、 キャッ」

ドサッ

パトリシアの腕を強く振り解いた。
地面に倒れたパトリシアに殺意がわいた。

「お前今や平民だろうが。
二度と纏わりつくな。話しかけるな」

通りかかった町兵に、捕えて領地から追い出すよう指示を出し、アンジェリーヌの後を追った。

馬車停まで行くと乗ってきた馬車はそのままだった。

急いで屋敷に戻ると、そこにいたのはアンジェリーヌではなくて大公閣下と紫の騎士達だった。


「アルク子爵。話が聞きたい」

「大公閣下にご挨拶を申し上げます」

「座って話をさせてくれ」

「どうぞこちらへ」

応接間に案内をして茶を用意するとバートだけ残してメイドは部屋の外に出した。


「子爵。こちらで保護している女性に会いたい」

バートを見ると小さく首を振った。

「出掛けていて、まだ帰ってないようです」

「彼女は記憶が無くて、ろくな仕事に就けないから憲兵に引き渡すことを止めたと詰所で聞いた。
間違いないか」

「はい。知識はありますが何も覚えておりません。名前も歳も家族も生まれも分かりませんでした。
服が平民服だったので少し裕福な平民かと。
川で意識を失っていたところを助けた縁で、屋敷で面倒を見ました。危害を加えられるか身を売る仕事しか選択肢が無かったので、可哀想だと思ったのです」

「彼女は何処へ?」

「町に出かけたのですが、先に帰ると言って別れました。然程時間は経っておりません」

「では、待たせてもらおう」



一時間程経った。
おかしい。辻馬車を使わなかったのか!?
まさか攫われたのでは!
立ち上がり、探して来ようとしたとき、ローズがアンジェリーヌを連れて来た。

「アンジェリーヌ様がお戻りになられました」

大公閣下と座ることを許された年配の男性と俺より少し若い男が立ち上がり声を揃えて叫んだ。

「サラ!!」

駆け寄る3人に対しアンジェリーヌは怯えた顔をして後退りした。

ローズがアンジェリーヌの背中を摩って“大丈夫ですよ”と声を掛けて、空いているソファへ促した。

「大公閣下、彼女は判別ができないようです。距離をとってください。性急にせず、ゆっくりお願いします」

「分かった。将軍、サットン卿、座ろう」

3人も座ると、俺はローズに留まるよう命じた。

「ローズ。アンジェリーヌが怯えているから一緒に座って側にいて手を握ってやってくれ」

「かしこまりました。

アンジェリーヌ様、大丈夫ですよ。ローズが側におりますからね」

「ローズさん」

「さあ、お茶と甘い物でも口に入れて落ち着きましょう」

アンジェリーヌは大人しくローズの言葉に従った。
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