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事故の時
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【 ケインの視点 】
あと1日もあれば到着するところまで来ると湖があり、崖の道を通っていた。
私は馬に乗り、前方の隊列に紛れていた。
突然後方の騎士が“落石だ!”と言った瞬間、振り向いたが、その時には馬車に大きな石が直撃し、馬車が転落している所だった。
「サラ!!」
湖に落ちた馬車はどんどん沈んでいく。
隊長が引き返し崖下に回るというので急いだ。
そこには岸辺でお祖父様が倒れていて、側で騎士が土下座をしていた。
「アダム!姫はどうした!」
「流されて、消えました」
話を聞いてみると、
「私は手綱が絡み、湖の底に馬車ごと沈みました。そして気が付いたら浮上していました。
苦しくて苦しくて…水を吐きました。
誰かが泳いで私を岸に運んでくれたのです。
そこに流木が…。頭に当たり流されている者の顔が見えました。…姫様でした。私は泳ぎが不得意で飛び込むことが出来ませんでした」
震えながら額を地につけた。
「何ということだ!」
「申し訳ございません!!」
「下流を捜索しろ!
将軍を荷馬車へ運べ!」
30分後にお祖父様が目を覚まして状況を伝えると、自分も探すと言い出した。
「サラは儂を助け、御者台にいた騎士を助けに潜った」
つまりサラはかなり泳ぎが上手だということだ。
探しに加わろうとするお祖父様を止めた。
「お気持ちは分かりますがその怪我では足手纏いです。何かあれば助けたサラが悲しみます。
先に大公邸に向かってください。
2日経っても見つからなければサットン家とガードナー家に事情を書いて早馬を出さなければなりません。大公邸に行き事情を話してください」
渋るお祖父様を乗せた荷馬車は先へ進み、別の騎馬隊員が事故を知らせ 応援を寄越してもらうために全速力で大公邸に走ってもらった。
やっと気持ちを認めたのに、目の前でサラが消えた。
結局、17日経った今もサラは見つからなかった。
【 ブランパーン大公の視点 】
やっと娘に会えると心を躍らせていたのに…。
「姫様を乗せた馬車は落石の直撃を受け、湖に落ち、流されて行方不明でございます。申し訳ございません!」
「流された?」
「はい」
「サラが?」
「はい。
この後荷馬車で、怪我人が2人到着します。
サットン家の将軍と御者をしたうちの騎士です。
2人も姫様と一緒に転落して溺れました」
「何故2人が助かってサラが行方不明になるんだ!」
「姫様はまず将軍と一緒に沈む馬車から脱出し、怪我を負った将軍を岸まで運ぶともう一度潜り、手綱が絡んで溺れた騎士を助けました。騎士を陸に押し上げている最中に流木が姫様に当たり流されてしまいました。
残る隊は下流を捜索中です。
人集めておけ。支度をしてくる」
アルヴィアを部屋に呼び説明しながら支度を始めた。
「姉上が!?」
「長丁場になるかもしれない。頼んだぞ」
「私も行きます!」
「駄目だ。騎士も新たに連れて行く。全体の半分近く居なくなり手薄だ。しっかり屋敷を守れ。
サラが見つかってここに来た時にゆっくり安心して寛げるようにしておいてくれ」
「必ず、連れ帰ってください」
結局、17日経ったが生きているのか死んでいるのかも分からなかった。
【 リオの視点 】
ブランパーン大公家から早馬が到着した。
伝令はかなり慌てていた。
直接渡すように任じられたようだ。
手紙を読むと母上のところへ行き、知らせを告げた。
「母上。ブランパーン大公国手前でサラが行方不明になりました」
「サラが!?」
「落石で馬車が押されて湖に落ち、同行していたサットン将軍と騎士を助けたところで流木に当たり流されたそうです。
数日前の手紙なので今は見つかっているかもしれませんが行きます。サラは泳ぎがとても得意ですから生きている可能性は高いです」
「なりません。貴方は侯爵です。向こうで大公家と王家が血眼で探すはず。ここで待ちましょう」
「母上!?」
【 サットン伯爵家の視点 】
「シメオン様!ブランパーン大公家から伝令が!」
シメオンが急いでエントランスへ向かいペーズリーも後を追った。
渡された手紙と伝令の言葉を聞いて血の気が引いた。
お祖父様を助けてサラが流された!?
シメオンもペーズリーも祈ることしかできなかった。
【 ユリスの視点 】
侍従が私に報告をした。
「一行に何かあったかもしれません」
「一行? サラのことか?」
「はい。国境でブランパーン大公家からの伝令が領地にいるガードナー侯爵と王都のサットン家に向かったそうです」
「サットン家に行く」
侍従と護衛を連れてサットン家に向かうと異様な雰囲気だった。
「ブランパーン大公閣下からの伝令は何だったのか教えてほしい」
「サラが行方不明になりました。
昨日到着した手紙は数日前に書かれたものですので今は見つかっているかもしれませんが」
「サラが行方不明!?」
手紙を見せてもらい、進展があれば知らせてほしいと告げて帰城した。
父上に報告して、私も行くと言ったが駄目だと言われた。
「唯一の王子を危険に晒すことを叶えてやれない。しかもセンティア国内で起きたことだ。祈るしかない」
母上がもう一人産んでいたら…
あの時、追い払うようなことを言わなければ…
センティア行きなど考えず、私と過ごす約束をしていてくれたかもしれない!
あと1日もあれば到着するところまで来ると湖があり、崖の道を通っていた。
私は馬に乗り、前方の隊列に紛れていた。
突然後方の騎士が“落石だ!”と言った瞬間、振り向いたが、その時には馬車に大きな石が直撃し、馬車が転落している所だった。
「サラ!!」
湖に落ちた馬車はどんどん沈んでいく。
隊長が引き返し崖下に回るというので急いだ。
そこには岸辺でお祖父様が倒れていて、側で騎士が土下座をしていた。
「アダム!姫はどうした!」
「流されて、消えました」
話を聞いてみると、
「私は手綱が絡み、湖の底に馬車ごと沈みました。そして気が付いたら浮上していました。
苦しくて苦しくて…水を吐きました。
誰かが泳いで私を岸に運んでくれたのです。
そこに流木が…。頭に当たり流されている者の顔が見えました。…姫様でした。私は泳ぎが不得意で飛び込むことが出来ませんでした」
震えながら額を地につけた。
「何ということだ!」
「申し訳ございません!!」
「下流を捜索しろ!
将軍を荷馬車へ運べ!」
30分後にお祖父様が目を覚まして状況を伝えると、自分も探すと言い出した。
「サラは儂を助け、御者台にいた騎士を助けに潜った」
つまりサラはかなり泳ぎが上手だということだ。
探しに加わろうとするお祖父様を止めた。
「お気持ちは分かりますがその怪我では足手纏いです。何かあれば助けたサラが悲しみます。
先に大公邸に向かってください。
2日経っても見つからなければサットン家とガードナー家に事情を書いて早馬を出さなければなりません。大公邸に行き事情を話してください」
渋るお祖父様を乗せた荷馬車は先へ進み、別の騎馬隊員が事故を知らせ 応援を寄越してもらうために全速力で大公邸に走ってもらった。
やっと気持ちを認めたのに、目の前でサラが消えた。
結局、17日経った今もサラは見つからなかった。
【 ブランパーン大公の視点 】
やっと娘に会えると心を躍らせていたのに…。
「姫様を乗せた馬車は落石の直撃を受け、湖に落ち、流されて行方不明でございます。申し訳ございません!」
「流された?」
「はい」
「サラが?」
「はい。
この後荷馬車で、怪我人が2人到着します。
サットン家の将軍と御者をしたうちの騎士です。
2人も姫様と一緒に転落して溺れました」
「何故2人が助かってサラが行方不明になるんだ!」
「姫様はまず将軍と一緒に沈む馬車から脱出し、怪我を負った将軍を岸まで運ぶともう一度潜り、手綱が絡んで溺れた騎士を助けました。騎士を陸に押し上げている最中に流木が姫様に当たり流されてしまいました。
残る隊は下流を捜索中です。
人集めておけ。支度をしてくる」
アルヴィアを部屋に呼び説明しながら支度を始めた。
「姉上が!?」
「長丁場になるかもしれない。頼んだぞ」
「私も行きます!」
「駄目だ。騎士も新たに連れて行く。全体の半分近く居なくなり手薄だ。しっかり屋敷を守れ。
サラが見つかってここに来た時にゆっくり安心して寛げるようにしておいてくれ」
「必ず、連れ帰ってください」
結局、17日経ったが生きているのか死んでいるのかも分からなかった。
【 リオの視点 】
ブランパーン大公家から早馬が到着した。
伝令はかなり慌てていた。
直接渡すように任じられたようだ。
手紙を読むと母上のところへ行き、知らせを告げた。
「母上。ブランパーン大公国手前でサラが行方不明になりました」
「サラが!?」
「落石で馬車が押されて湖に落ち、同行していたサットン将軍と騎士を助けたところで流木に当たり流されたそうです。
数日前の手紙なので今は見つかっているかもしれませんが行きます。サラは泳ぎがとても得意ですから生きている可能性は高いです」
「なりません。貴方は侯爵です。向こうで大公家と王家が血眼で探すはず。ここで待ちましょう」
「母上!?」
【 サットン伯爵家の視点 】
「シメオン様!ブランパーン大公家から伝令が!」
シメオンが急いでエントランスへ向かいペーズリーも後を追った。
渡された手紙と伝令の言葉を聞いて血の気が引いた。
お祖父様を助けてサラが流された!?
シメオンもペーズリーも祈ることしかできなかった。
【 ユリスの視点 】
侍従が私に報告をした。
「一行に何かあったかもしれません」
「一行? サラのことか?」
「はい。国境でブランパーン大公家からの伝令が領地にいるガードナー侯爵と王都のサットン家に向かったそうです」
「サットン家に行く」
侍従と護衛を連れてサットン家に向かうと異様な雰囲気だった。
「ブランパーン大公閣下からの伝令は何だったのか教えてほしい」
「サラが行方不明になりました。
昨日到着した手紙は数日前に書かれたものですので今は見つかっているかもしれませんが」
「サラが行方不明!?」
手紙を見せてもらい、進展があれば知らせてほしいと告げて帰城した。
父上に報告して、私も行くと言ったが駄目だと言われた。
「唯一の王子を危険に晒すことを叶えてやれない。しかもセンティア国内で起きたことだ。祈るしかない」
母上がもう一人産んでいたら…
あの時、追い払うようなことを言わなければ…
センティア行きなど考えず、私と過ごす約束をしていてくれたかもしれない!
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