【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

文字の大きさ
上 下
43 / 73

徐々に詰め寄られる

しおりを挟む
今夜はバルチノ公爵家の夜会に来ている。

ケイン様がエスコートしてくださるということだったけどお祖父様も一緒だった。

お祖父様が自分も出席したいと交渉したらしい。

公爵夫妻は苦笑いなさっていた。

公「将軍にはガードナー侯爵とうちの息子がお世話になりましたから」

夫人「余程サラ嬢が心配でしたのね」

バ「リオは何で居ないんだ?」

私「領地にいるの」

バ「今日はサットン卿がパートナー?」

私「そういうバジル様は?」

バ「婚約者がいるけど向こうでお喋りしてるんじゃないかな」

夫人「サラ嬢は良い殿方は現れましたの?」

ケ「サラは大丈夫です」

私「え?」

公「これは大変かもしれない。将軍、ちょっと此方へ」

私「何がですか? ケイン様」

ケ「ん? 気にしなくていい。
夫人。回ってきてもよろしいですか」

夫人「ええ。楽しんでください」

ケイン様にグイグイ誘導されて会場へ。それにはバジル様もついてきた。

バ「サラはモテるんだな。…当然か。でも複雑なことになってるな」

殿下のことかしら。

私「気のせいじゃない?」

バ「まあ、全部上手くいかなかったら相談しに来いよ」

ケ「サラは大丈夫だ」

バ「難儀だなぁ」


それぞれの知り合いに声を掛けてはみたものの、やっぱり私とケイン様の組み合わせに興味津々の様子。
リオがいないから親友の兄に頼んだと言っておいた。


ダンスが始まる合図で ケイン様はハンドキスをしながら私を見つめ、ダンスを申し込んだ。

「も、もう! 普通に申し込んでください!」

赤くなって可愛いな」

「硬派なケイン様が崩れていく…」

「おかしなことを言い出したね」

ケイン様は曲が始まると 私をグイッと引き寄せてリードした。

「サラは上手いんだね」

「ケイン様、近いです」

「今更この位で?」

「兄様像が崩れていく」

「良い崩し方をしないとね」

「ケイン様? あっ」

「ちゃんと私を見て踊ってくれ」

「だって近いから」

「今日は私がいるから飲んでもいいよ」

「飲みません」



そう答えたはずなのに……

「おはようございます、サラ様」

「おはよう?」

彼女がいるということはサットン邸なのね。

メイドが呼び鈴を鳴らし、身支度をしている間にケイン様がやってきた。

「おはよう、サラ」

「おはようございます。

…もしかしてまた、飲み過ぎましたか?」

「多分前回ほどではないな。
ガードナー邸に連絡して こっちに連れてきたから大丈夫。 チュッ」

「ケ、ケイン様!?」

「頬に行ってきますの挨拶をしただけじゃないか」

「え?」

そうなのね。まあ、家族ならやるかな?

「チュッ いってらっしゃいませ」

背伸びをしても届かず首に唇を付けてしまった。

「……もう一度」

そういって屈んでくれた。

「チュッ いってらっしゃいませ」

「行ってくる。良い子にしていてくれ。
ガードナー邸に行くのだろう?」

「はい。そのまま滞在します」

「夜はそっちで食事をとるよ」

「? はい」

私の頭を撫でて下に降りて行った。


私も下に降りるとお祖父様もエントランスにいらっしゃった。

私「お祖父様もご出勤ですか」

将「ケインと行ってくるよ」

私「お祖父様、少し屈んでください」

将「どうした」

私「チュッ いってらっしゃいませ」

ケ「………」

将「嬉しい見送りだ。1日頑張れそうだ」

そう言いながら頭を撫でてくれた。

私「お祖父様、私には?」

将「ん?」

私「頬にキスをするのはサットン家の挨拶なんですよね?」

お祖父様がケイン様を見ると、ケイン様は全く違う方を見た。

将「そうだな。愛おしい者にするな チュッ」

嬉しそうに馬車に乗った。
その車内では。



「ケイン」

「…はい」

「アレでいいのか?
シメオンにもやると思うがな」

「!!」

「デレデレのシメオンが目に浮かぶ。
ピエリック達が領地に戻っていて良かったな」

「…はい」

「それと王妃殿下が実質的に幽閉された。
一昨日のユリス殿下の茶会で王妃殿下がサラを追い払うようなことをしたらしく、殿下の逆鱗に触れるかたちになった。

我が国は周囲の国よりも王妃の位置付けは高くない。王位継承の順位が重視される。
王妃は大抵代えがきくが、国王になる素質がある実子の王子は貴重だ。特に今回はユリス殿下しか王子が産まれていない。

サラへの執着が強いのは分かっていたが実母に対し他人のように制裁できるとは思わなかった。
サラの頬を打ったわけでも、サラを毒殺しようとしたわけでもないのにだ。

だから外へサラを連れ出す時は当面2人きりにはなるな」

「だから昨日の夜会にいらしたのですね」

「そうだ。お前は今、新人を受け持っていて護衛の任務についていないから知らなかったろう。
北の塔に閉じ込めたこともあって、誰もが口を噤んでいる。

しかもユリス殿下は陛下に新たな妾を許したそうだ。その女は貴族籍に入っていて陛下の好みだそうだ。もしかしたら第二王子の誕生となるかもしれん」

「では、今の王妃を病死にして、側妃を繰り上げ王妃にして、その妾を側妃に据える可能性もあるのですね」

「そうだ。そこまでやれば、もう誰もユリス殿下に逆らわないだろう。そしてその殿下が欲して止まないのがサラだ」

「気を付けます」

「もし、ケインがサラを手に入れようとするなら、騎士の職には就けない。サットン家の領地内の騎士くらいだろう。

サラが純潔でなければ諦めざるを得ないだろうが」

「お祖父様。サラは純潔ではありません。
サラはユリス殿下にそう伝えて断ったと言っていました」

「恋人がいたのか」

「いえ。どうやらサラの望んだことではないようです」

「…相手は誰だ」

「サラは口を割りません」

「サラを無理矢理穢すなど!儂が殺してやる!」

「お祖父様」

「じゃあ何か?
ユリス殿下は妃になる資格がないのを知っていて娶る気なのか」

「そういうことになります」

「すでに宮廷医を買収しているだろう。
法を変えることも可能だろうが、サラの名誉を汚すはずがない。

センティアへは儂も行こう。サットンうちだけでは手に負えないかもしれない」

「長旅ですよ」

「サラがいれば楽しかろう」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で夫と愛人の罠から抜け出したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

処理中です...