【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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ユリス殿下の逆鱗

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【 ユリス殿下の視点 】


サラとエレノアが去ってしまった。


「ユリスはね、純粋で優しいのよ」

「王妃殿下にお声がけしていただけて光栄です。ユリス殿下は王妃殿下の美しさを受け継がれていらっしゃるのですね」

「本当に素敵ですわ」

離れながらサラはエレノアと何を話していた?


「バルチノ公爵家のご令嬢は今回は候補ではないのですか?」

「ええ。辞退したのよ。一度目に選ばれなかったから仕方ないわね」

明日、サラが夜会に?
しかもパートナーが決まっている口振りだった。


「ユリス、ちゃんとお相手をなさい。失礼よ」

ユリスは王妃を真っ直ぐ見つめた。

「母上の方が失礼です。
彼女達は私の急な招待に応じて態々来てくれたのに追い返すなど、王妃のすることではありません」

「何処が失礼なの」

第一王子が主催している茶会に勝手に乗り込んで、断りもなく座り主催の客を追い出すのは実家の家風ですか」

「ユリス!
私は王妃なのよ!? 王宮ここは私の管理下にあるのよ!」

「それは今したことの正当な理由にはなりません。
茶会は父上の許可をいただいているのです。
王城の主人は国王陛下である父上です。
一部を委託されているのが王妃である母上というだけです。主のように振る舞うのはお止めください」

「貴方がいつまでも あの娘を、」

バン!!

ユリスがテーブルを叩き、ソーサーとカップがぶつかり合った。

「この子達の前で言いたくはありませんが今後のために丁度良いでしょう。
王位継承権第一位は私です。母上は何位ですか」

「…無いわ」

「父上が国王の間は父上次第。私が国王になれば私次第で待遇が変わるのが母上の立場です。
私は母上から今の生活を取り上げることも可能なのですよ」

「ユリス!?……陛下が許すわけがないわ」

「代えのきく王妃と代えのきかない唯一の実子の王子。父上はどちらを優先させると思いますか?」

「ユリス!」

「あまり私を怒らせない方がいい。
王子の務めは分かっていますが母上は度が過ぎた。
少し反省してもらいましょうか」

「私は貴方を産んだ母親なのよ!?」

「そうですね。ですが私の一番ではない。
なのに私の一番に無礼な真似をしたのですからお仕置きしなくちゃなりませんね。
お嬢さん達も王子妃や王妃の立場が分かったかな?

妃の役目は世継ぎを産むことと、国王や次期国王にこと。王妃になっても行き過ぎたことをすれば罰を受ける立場だ。
実家の後ろ盾は下手なことに使わない方がいい。
一族がこの世から消えることは歴史上 何度もあった。これから学園で学ぶといい。

では、母上、お嬢さん方。失礼しますよ」


私は侍従に明日行われる夜会について調べるよう指示を出した。

「範囲はここから馬車で片道5時間迄。
サラを招待した屋敷が分かれば他は要らない」


そして父上の待合室で待つことおよそ一時間。

「ユリス。茶会だったろう。早過ぎないか?」

「折角父上が許してくださり、急な招待に応じてサラが会いに来てくれたのに、令嬢2人を連れた母上が勝手に席に着いてサラを追い出してしまいました。間接的に、過去の候補は去れと。
結果、エレノアと一緒に帰りました」

「どちらに対しても失礼だろう。全くあいつは」

「危うい関係なのにサラにあんな態度をとるなど許せません」

「どうしたいのだ?」

「我らと妃という立場の違いを示そうと思います。
3ヶ月程、外部との接触を禁じ軟禁としてください。
その間、父上も楽しまれたらいかがですか。
去年配属された侍女は父上の好みでしょう?」

「いいのか?」

「優しくしてやってくださいね。私の侍女だった時は真面目に働く良い子でしたから」

「軟禁は今日からでいいか?」

「北の塔に移してください」

「夕食時に告げて移そう」

「ありがとうございます」



自身の執務室に戻り、サラに手紙を書いた。

母上の無礼を詫び、また近々会いたいと書いて花と一緒に贈った。


夕食前に返事が届いた。

“王妃殿下のご指摘はご尤もでございます。
私がいつまでも親しくさせていただくことは良くありませんでした。

お友達にしてくださってありがとうございました。
楽しく学園生活をおくれたのも殿下のおかげでもあります。

今後は学園でも距離を保ち、心よりユリス殿下の幸せを遠くから祈っております”

駄目だ…実の母とはいえ 王都から出して幽閉したくなってきた。


「殿下、明日の夜会はバルチノ公爵邸で開かれます。王都内ではそこだけです。王都外の条件下ではこの三家が予定しております」

「ありがとう」

他は子爵家と男爵家と商会長が開催するものだ。
バルチノ公爵邸で間違いないだろう。


夕食は、最初は静かだったが、母上は父上の機嫌をとるように話し始めた。

「今日はユリスの婚約候補とお茶を飲んでいたのですけど、2人ともとても可愛らしいくて。
陛下も今度一緒に、」

「食事が終わったら、其方の部屋を北の塔の上階に移す。まずは3ヶ月間、そこで何をしたか己を顧みるように」

「陛下!?」

「専属の侍女やメイドは連れて行けないぞ」

「なっ! 北の塔の上階と言ったら、王族が幽閉される時の場所ではありませんか!」

「今の内に体験させようと思ってな。
外部との接触も禁止する」

「私にも予定が、」

「全てキャンセルさせた。安心して塔からの眺めを楽しむといい。
騒げば意思の疎通がとれなくなるよう一時的な処置をする。面倒をかければ世話するメイドは寄り付かなくなるぞ。
風呂は塔の中にある共同のものだが誰もいないから安心しろ」

「ユリス!母親の私に何て酷い仕打ちをするの!
許されないわよ!」

「母上、サラから友人の解消を仄めかす手紙が届いたのですよ。私がここまでくるのにどれほど努力したか。彼女に嫌われないようにしてきた。なのに母上は一瞬で壊してしまった。
本当は王都から出して、辺境の地で幽閉させて余生を送らせたいくらい腸が煮え繰り返っているのです。一時的な罰くらい真摯に受けてください」

「許されないのはお前だ」

この後も言い合いが続いたが 夕食は終わり、母上は北の塔に連れて行かれた。


自室でサラの手紙を読み返した。

どうやったら君を手に入れられるのか…
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