【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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煙たがられる存在

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ガードナー邸に迎えに来たサルヴィア公爵家の馬車に乗ってエレノアとユリス殿下の応接間に来ている。

もう少し遅かったらエレノアは領地へ向かっていて不在だったらしい。助かった。


エ「殿下、どうしたんですか?急に」

ユ「悪いね。退屈していないかと思ってね」

エ「領地へのお土産を買ったり忙しくしていましたわ」

ユ「そうか。サラは?」

私「ガードナー邸の改善を試みております」

ユ「改善?」

私「ええ。使用人の産休問題とか、就業ルールの改訂や、備品や修繕についてなど様々ですわ」

ユ「このままガードナー邸に?」

私「いえ。またサットン邸に行くことになります」

ユ「私も今年は別荘に行かないんだ。サラ、一緒に過ごさないか」

私「実はセンティアへ行くことになりまして」

ユ「は?……駄目だ!今更センティアで暮らすだなんて!」

私「あの。暮らしませんが」

ユ「え?」

私「異母弟達と顔合わせをしに行くだけです。新学期に合わせて帰国します」

ユ「そ、そうなんだ」

私「気乗りはしませんが避けて通るのをやめてみます」

エ「あらぁ?」

私「何?」

エ「助言をくれた方がいるのね」

私「まぁ」

エ「そっか、そっか」

ユ「エレノア?」

エ「ユリス殿下は話は進んでいるの?」

ユ「話?」

エ「王族は必ず婚姻相手が必要じゃない。
若くて可愛い子がいるかもよ」

ユ「いないよ」

そっか。二度目だから年齢を少し引き下げて範囲を広くするのね。
殿下の一度目の婚約で選ばれなかった令嬢達は王子妃を諦めて他の方と縁を結んだ人がほとんどだものね。

サ「令嬢達もソワソワしてますわね」

ユ「サラ、私は、」

エ「そうだ!サラ、聞いたわよ。あの酒豪の伯爵家の次男に勝ったんですって?」

サ「ジェームズ様よね。
後で無謀だと怒られてしまったわ」

ユ「酒豪に勝つほど酒を飲んだってこと!?
何してるんだよ」

サ「シメオン様の新しいお嫁さん探しにペーズリー様と3人で夜会に行って、そこでシメオン様のご友人を紹介されましたの」

ユ「夜会なんて今まで行かなかったじゃないか」

サ「行かない方がおかしかったかもしれません。
今後は行ってみようと思います」

ユ「駄目だよ。夜会なんて危ないから」

エ「サラが来てくれるならサルヴィアでも開こうかしら」

サ「勿論行くわ」

ユ「っ!」


王妃「あら、ごきげんよう」

エ「エレノアが王妃殿下にご挨拶を申し上げます」

私「サラ・ガードナーが王妃殿下にご挨拶申し上げます」

突然現れた王妃様は令嬢を2人連れていた。

王妃「ごめんなさいね。私達も混ぜてもらえるかしら」

ユ「母上?」

王妃「さあ、貴女達も座りなさい。

ユリスの右側に座った娘はフィッシャー侯爵家の三女ニコレット。左に座った子はロー伯爵家の次女のレイチェルよ。

2人ともこれからデビューなのよ。可愛らしいわ」

ああ、ユリス殿下のお妃様候補なのね。

王妃「彼女はサルヴィア公爵家の長女エレノアでユリスの幼馴染。こちらの方はガードナー侯爵家の長女サラでユリスの学友よ。彼女達は選考に関係ないから安心してね」

ユ「母上!」

ユリス殿下は険しい表情で立ち上がり声を荒げた。

王妃「座りなさい。無駄なことで引っ掻き回さないで前を向き現実を見なさい。いつまでもみっともないわ。望みはないのよ。

ニコレット嬢は3カ国語を話せるわ。
レイチェルはピアノもヴァイオリンもフルートも嗜むのよ。素敵でしょう」

エ「素晴らしいですわ。
王妃様、私達はそろそろ時間ですので失礼しますわ」

ユ「エレノア」

王妃「また遊びにいらして。公爵閣下によろしくね」

エ「サラ、行きましょう」

サ「失礼いたします」

ユ「サラっ」


エレノアに手を引かれ席を立った。

エ「明日は何してるの?」

サ「夜会に行くの」

エ「何処の?エスコートは?」

サ「ふふっ」

エ「絶対聞き出すわよ。うちにいらっしゃい」

サ「え~」

帰りながら交わした2人の会話はユリスにしっかり聞こえていた。


馬車の中では、

「あれ、態とよね」

「王妃様?」

「私が友人でいることもお気に召さないようね。
あれではユリス殿下のためにならないわ」

「サラのせいじゃないわ」

「ユリス殿下は他にも学友はいらっしゃるし、私は求婚を二度も断った身なのに、いつまでも友情は続けられると夢を見てしまったのが間違いなのよ。
新たな候補の令嬢達にも良くない存在になってしまっているのが分かったわ。
センティアへ行って気持ちを切り替えて、ユリス殿下とは距離をおくわ」

「分かった。それで?何処の夜会に誰と行くの?」

「内緒」

「夜会の翌日にはバレるのに?」

「そうよ」

エレノアの探りに引っ掛かることなく屋敷に戻った。
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