【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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認めた騎士

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【 ケインの視点 】


昨夜、仕事から戻るとサラの姿が無かった。兄上やペーズリーも。

「お祖父様、3人の姿が見えませんが」

「友人の屋敷で開かれる夜会に出かけた」

「夜会?」

「シメオンは嫁を探さねばならないのと、エロイズがいなくなって社交に行けるようになったからな。
ペーズリーやサラに出会いがあるよう連れて行ったよ」

は?出会い!?

「サラは預かっている大事な令嬢ですよ?変な虫を付けてどうするのです」

「シメオンが変な虫を許すわけがない。友人達に紹介して回るそうだ。
それにサラは婚姻を考えねばならない」

「確かにそうですが別に急がなくても。ペーズリーとうちで過ごしていれば、」

「ケイン。もう遅いくらいだ。どんどん良い相手は他の令嬢と縁を結んでいく。
末孫娘の様な気持ちにはなるがサラは1人の女性だ。子が産みたいと思うかもしれない。
誰でも良いわけではないし、妊娠出産には年齢的に遅くてはリスクが高まる」

サラが子を産みたがるかもと?誰の子を?

「ケイン。そうでなくてもサラはデビューを終えた女性なのだから夜会を楽しむ権利がある。
知人や友人を作ったり恋をしたりする権利もある」

恋?

「勿論、嫁ぎたくないと言えばずっとサットン家ここにいればいい。儂もここにいて欲しいと思っている。だが、サラの幸せが何なのかは本人が見つけないとな」


そしてなかなかサラ達は戻らない。
何かあったのではないか、いっそ迎えに行こうかと思いながら待った。

日付けが変わる頃にやっと帰ってきたと思ったら、サラは2人に支えられソファに座らされた。

は?
あの酒の強いジェームズ殿がギブアップするほど飲んだ!?

部屋に運んでベッドに降ろすと完全に眠ってしまった。
メイドに着替えさせてから具合が悪くならないかと様子を見た。顔に触れても全く動かない。

「サラ」

何度呼んでも起きない。
唇に触れても起きない。
指を口の中に入れ、舌に触れても起きない。
これでは休憩室や人の来ない場所に連れ込まれて何をされても気付かないのでは?

これ以上、私のサラを他の男に許すわけにはいかない。

「私のサラ?」

口から指を抜き、唇を合わせた。そして舌を差し入れた。

ああ…もう後戻りしたくないほどサラに惹かれてしまったのか。

口付けを止めてベッドに座るとサラが手を握ってきた。

「誰と勘違いをしてるんだ?」

そのままサラが起きるまで付き添った。


翌朝、何も覚えていないサラを叱った後 部屋に戻り出勤の支度をして居間へ行くと兄上達がいた。

「兄上。二度とサラにあんなに飲ませないでくれ。
サラは一度にグラス一杯も飲んだことがない。なのにジェームズ殿に付き合わせるなと無謀だろう」

「飲めるものだとばかり…」

「彼の酒の量なら普通は死んでる。
サラが何とも無いのは奇跡だと思ってくれ」

「悪かった」

「……お祖父様、行って参ります」


込み上げる怒りをできるだけ押し殺したつもりだが、ペーズリーの表情からすると隠しきれなかったようだ。

「おはよう、ケイン」

「おはよう、ウィリアム」

「何だ、女とケンカでもしたか」

そう言いながらニヤニヤするウィリアムに呆れながらも、

「ケンカではない。叱っただけだ」

「……そうか。あまり叱ると泣くかもしれないから程々にな。早めに許してやれよ」

「なあ、王族専属っていつまでやれるんだ?」

「さあな。でもうちの王族は理不尽にクビにはしないだろう」

「王子と被った場合は」

「ケイン?」

「王子の好きな女を好きになったらどうなる」

「……まずいな」

「そうだよな」

「ガードナー侯爵令嬢か。
でも殿下は振られてるし、その後も殿下は彼女を諦めきれない様だけど彼女には全くその気が無い。
しかも今はセンティア王族との関係が公になったから無理強いも王命も使えない。
この間の剣闘会も優勝を逃したし、政略結婚さえさせてしまえばいいとは思うがな。
今の彼女を側妃にはできないだろうし」

「婚約者が脱落しなければな」

「寧ろ破談になって殿下は喜んでいたからな。

そういえば、剣闘会の決勝でお前は殿下の部屋の警備になって 私が殿下の護衛になったが、勝負前は非常にピリピリしていて 負けたら凄い顔でガードナー侯爵を見ていたよ。
侯爵が令嬢の前に跪いたときは剣を地面に突き刺したからな。

だけどお前の妹が受け取ったら唖然としていたよ。
その後は機嫌が良くなったんだよな。
しかも悔しかったはずなのに讃えて“幸せに”と声を掛けていた」

「ライバルだと思っていた男が別の女に求婚したと思って安心したのだろう。
だけどアレはペーズリーが勝手に剣を受け取って承諾した、求婚の既成事実だな」

「つまり侯爵は血の繋がらない姉に求婚したのにケインの妹が返事を奪ったのか。
で殿下と侯爵の思い人をお前が奪おうとしてるわけだな?」

「……まあ、そういうことになる」

「しかしまた、何で認める気になったんだ?」

「私は爵位を継がない騎士だからセンティア国王の姪を娶るなんてとんでもないと思ってきたが、もう自分の気持ちを誤魔化せない。他の男が触れるのが嫌なんだ」

「そうか。
ケイン。令嬢の気持ちを掴むのも当然だが、センティアの父親とも会って許しを得ないと。
騎士だけど身内を味方に付ければ騎士でも令嬢を不自由なく養える」

「それが嫌だった。父や兄の世話になりながら妻を養ってもらうことが嫌だった」

「そんなのどこの次男坊もやってるだろう。当主の補佐も立派な仕事だ。令嬢が嫌がらないならそれでいいだろう。
そんなプライドを取って愛する女を諦めるか?
なら今から身分の低い女を探してやるぞ。
行き遅れ、もしくは兄弟姉妹の多い下位貴族の令嬢でも探すか?

誰がサラ・ガードナー侯爵令嬢を射止めるのかな。
もしかしたら何処かの貴族の次男坊で騎士をやっている男かもな。お前と条件の全く同じ男だ。
その時、後悔しないといいな」

「先輩、交代の申し送りが始まりますよ」

「今行く」

後輩騎士が来てウィリアムが去った。

先ずはサラの心を掴まないと。


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