【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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騎士の誓い

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時は戻り、エロイズが席を立った後***



お祖父様が手を挙げると兵士が駆け寄った。

将「あの女の後をつけてくれ。手助けは無用。
他人に害を成す場合は斬り捨てて構わない」

兵「かしこまりました」

シ「お祖父様いくらなんでも、」

ピ「ペーズリーは伯爵家の血を引いていて、エロイズは子爵家の血を引く伯爵家の嫁だ。
伯爵夫人となっていればペーズリーと同等だったかもしれない。
だが、今現在ペーズリーより格下だ。

一番問題なのはサラに薬が盛られたということだ。
今やセンティア王国が認めた存在なのだぞ?
シメオン。王族に薬を盛ればどうなる?」

シ「極刑を検討されます」

ピ「毒なのか、薬なのか分からないが、どんなものを混入させたのか、またその量によっても変わってくる。

その上に他国の王族となれば戦争を仕掛けていると見做されてもおかしくない。
サットン家一族根絶やしにして戦争を回避させることになる。それでおさまればいいがな。

国内もしくは世界の歴史書に刻まれる可能性だってある。サットン伯爵家のエロイズがセンティア国王の姪の命を狙ったとな。そうなれば子孫も先祖もひっくるめてサットン家はお終いだ」

シメオンは顔色が悪くなった。


暫くすると、兵士が戻ってきた。

兵「ご報告申し上げます。
食後のようですがよろしいでしょうか」

将「聞きたくないものは耳を塞いでくれ。
報告を頼む」

兵「男性用トイレに入り、先に入っていた男性が開けたドアにぶつかり、大量に漏らしました。その後も個室で唸り、失神。医師が駆けつけて、何とか聞き取ったのは薬品名と量です。
五滴入りのパイを二つ。
その薬品は コップ一杯の水に一滴滴らして一口飲むだけで効果があるそうで、合わせて10滴となると命の危険もあったようです」

将「つまり、五滴だと のたうち回るということだな。ありがとう」

兵士が戻って行くと、お祖父様が謝罪をなさった。

将「サラ嬢、ガードナー侯爵。サットン家の者が申し訳ございません。
ガードナー侯爵がいてくださらなければ惨事となっておりました。感謝申し上げます」

リオが処罰を求めないと返答し、私も同意した。

今はそれよりもリオの決勝に集中させたかった。




決勝はリオとユリス殿下だった。

ユリス殿下はいつになく真剣な顔だった。
リオは無表情。

「男子決勝!

赤! 3年、ユリス王子殿下!
青! 2年、リオ・ガードナー!

両者かまえ!

始め!!」

仕掛けたのはユリス殿下だった。早い打ち込みだけどリオは避けたり弾いたり、余裕そうなのが素人でも見てわかる。

決勝は特別に設けられた席でペーズリー様と観戦している。距離が近くて表情も良く見えた。


ユリス殿下の剣を受け止め、押し返しちょっと距離を取ると眼球だけ右に動かし、右へ剣を向けかけると殿下はリオの左側へ大きく剣を振り上げた。

「一本!! そこまで!!」

リオの剣先は殿下の顎の下に触れそうなほどだった。

「勝者、リオ・ガードナー!!」

リオはスッと剣を戻して礼をした。
ユリス殿下は信じられないといった顔をしていた。

「サラ、こっちに来るわね」

リオは私達の元に来ると跪き、剣を捧げた。
会場が静まり返ると、

「リオ・ガードナーは貴女に生涯の騎士の誓いをたてます」

そう言って頭も下げた。
これは騎士の求婚だった。

「はい!喜んで!」

剣を受け取り両手で高く掲げると大歓声にのまれたが、顔を上げたリオは唖然としている。
何故なら、剣を受け取り承諾したのはペーズリー様だったから。

確かに、どっちか分からない位置に跪いたわね。
目線は私だったけど。

ペーズリー様はリオに剣を返して頬にキスをした。
そしてリオを置き去りにして私の腕を組み退場した。

「ペーズリー様?」

「ふふっ」



夜はお祖父様とペーズリーとガードナー邸で夕食。そして泊まって歓談。あのことは触れずに。
ペーズリー様は終始ニコニコしているし、リオは戸惑っていた。

段々おかしく感じて、笑いを堪えるのが大変だった。
 

ペーズリー様は2人きりになった時にこう言った。

“私への誓いじゃなかったことは分かってるわ。
これも既成事実よ”

そしてリオは真剣に困っていた。
ペーズリー様に勘違いをさせてその気にさせてしまったと。しかもあんな公の場で求婚し了承をもらってしまった。

あれからずっと嬉しそうにしているペーズリー様に、実は違いますと言い辛い。
何故、名前を言わなかったのかと自分を責めているのだろう。

多分、ペーズリー様じゃなければ“お前じゃない”と言い放っただろうが、彼女は私の姉のような親友で、とても良くしてくれる恩人でもある。

そんな彼女をチラチラと見ながら百面相をしているのだ。


「リオ様、王宮から使者がいらっしゃいました」

使者はお祖父様の姿を見ると驚いた。

「サットン将軍閣下。サットン邸にも同じように使者が向かっております」

「同じ内容なら一緒に聞こう」

「サットン将軍閣下、ガードナー侯爵。
明日の10時に登城願います。
エロイズ・サットンの処罰について陛下がお呼びです。
ガードナー侯爵家から咎め無しとお伺いしておりますが、薬の量が多過ぎるので罰しないという選択肢は無いという結論に至りました」

「分かりました。登城します」

「ガードナー侯爵と一緒に登城しましょう」

どうやら私達は必要無いらしい。



翌日、リオとお祖父様が出掛けた隙にペーズリー様に侯爵邸を案内して幼い頃のリオの肖像画などを見せた。
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