【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

文字の大きさ
上 下
26 / 73

お出かけ

しおりを挟む
白い土壁の街並みがとても綺麗だ。
青空に雲が浮かび空気は澄んでいる。
道も均してあり馬車の揺れも少ない。

「お兄様、誰と来たの?」

ニマニマとケイン様を見上げているのはペーズリー様。

結局、行きたいところは却下され(遠過ぎる)、ケイン様の代案でここへ来た。
 
「任務だ」

「ふ~ん。まあ、そういうことにしておこうかな」

「次の休みはサラだけ連れて行こう」

「ウソです!冗談です!」

「まあ でも、ケイン様は素敵だから女性とデートしていても不思議はないですわね」

「そうそう。お兄様ってばモテるのよ~」

「ペーズリー?」

「そんなに圧をかけないで。褒めてるの」

「せっかくの休日にお守りをさせて申し訳ありません」

「サラが喜んでくれたらいいよ』

「お兄様、私は?」

「ついでにお前もな」

「お兄様のデビュータントに両親と行った時に、」

ペーズリー様が言いかけるとケイン様が被せるように話しかけた。

「ペーズリー。好きな土産を買ってやるぞ」

「何にしようかなぁ」

きっとケイン様の 他人に知られたくない話なのね。

「その前に食事をしてもう少し馬車に乗るぞ」

『え、待って、聞きたいです」

『サラにも買ってあげるから」

「そうじゃなくて、」

「よしよし。おりこうさんだな。
さあ、出発しよう」


再度馬車に乗ること20分くらい。
だいぶ自然豊かな場所に来た。

降りて歩くと小さな泉がありそこから細い川が流れていた。
どこか冷んやりする場所だ。

「サラ、ペーズリー。これは湧水なんだ。よくみると底からボコボコしてるだろう」

「本当だわぁ、底がしっかり見えてる。透明度が高いのね」

「綺麗ですね」

ケイン様が近くの花から花弁を3枚取ってきた。 一枚ずつ渡して水面に浮かべた。

「願いをかけながら花弁を浮かべるんだ。
何の抵抗もなく川へ流れてしまえば叶わない。
泉にとどまったり変則的な動きをすると叶うと聞いたけど、当てにせず浮かべてごらん。
川への流れに乗せるか乗せないかの話だが、目を瞑ればいいだろう」

「お兄様、夢を壊す説明は止めて」

私もペーズリー様も川へ流れていってしまった。
先に浮かべたケイン様だけは泉の中で変則的な動きをした。

「お兄様だけ願いを叶えようとするなんて」

「残念でしたね、ペーズリー様」

「サラは何をお願いしたの?私はサラと姉妹になりたいとお願いしたのに…」

「私はパッとしない顔になりたいとお願いしましたわ」

「サラ様、叶うわけないわよ。
お兄様は何をお願いしたの?
もしかして、可愛い妹達が幸せになれますようにとか?」

「こういうのは言ったら叶わないんだよ」

「お兄様、もしかしてお嫁さんが欲しいとか?」

「ケイン様なら縁談も多いのではありませんか?」

「多かったけど、全部お眼鏡に適わなかったの」

「……きっと聖女のような方をお望みなのですね」

サットン家に申し込まれる縁談は条件が良かったはず。まあ、愛らしいペーズリー様と暮らしていたらそうなるかも。

じっとケイン様を見てしまっていたようで頬を掴まれた。

「ペーズリーの話を鵜呑みにしないように」

「はひ」


町に戻る途中、ペーズリー様が私の縁談について触れてきた。

「どんな方ならいいの?」

「高位貴族や保守派などは難しいでしょうね。間違いなく王子妃は無理です」

「どうして?」

「……純潔ではないからです」

「「 !! 」」

「気にしない人もいるかもしれませんけどね」

「恋人がいるの?」

「いません」

「何か被害に遭ったということではないよな」

「…はい」

「相手は知り合いか」

「はい」

「お兄様、失礼よ」

「……」



町に着いて昼食を食べにお店に入った。

「ペーズリー様はどれにしますか」

「お任せプレートにしようかと思って」

「私も同じものにします」


食事を待つ間に、私とペーズリー様はお花摘みに席を外し、戻ってくるとケイン様に2人の女性が話しかけていた。

私達が戻ってきたことに気が付いたケイン様は、私の肩を抱き寄せた。

「恋人がいると言っただろう。邪魔をしないでくれ」

「「失礼しました」」


女性達が遠ざかると、ごめんねと言ってイスを引いてくれた。

「確かあの方達、同時に入店した方達よね。
いい度胸ねぇ」

「やっぱりおモテになるのですね」

「望まない相手から声がかかっても困るだけだからね」

やっぱり雰囲気が大人だなぁ。

「そんなに見つめられたら穴が開きそうだ」

「やだ、ごめんなさい」

「さあ、食べよう」



食事をしてお店を巡りお土産を買ってもらった。
ご馳走にもなってしまい気が引ける。屋敷での滞在費も受け取ってもらえない。

ペーズリー様とお揃いの髪留めは白い石が付いていた。私の髪留めはピンクのリボン。ペーズリー様の髪留めは黄色のリボンだった。
 
ペーズリー様がケイン様の気を引いているうちに、ケイン様へのお土産を買った。

牧場で動物にエサをあげたり、花畑を見たりして日帰り旅行を満喫した。

少し遅くなったが、屋敷に戻り夕食を食べ、お茶を飲んでいた。

ケイン様に近寄り、ポケットから小さな包みを出した。

「ケイン様、私からのお土産です」

「いつの間に…。開けていい?」

「はい」

ケイン様も立ち上がり、受け取ると包みを開けた。

「ピアスだ」

「普段つけておられませんが穴があいていたので」

私の手を取りソファに座らせるとケイン様も隣に座りピアスを私の手に握らせた。

「着けてもらっていい?」

「え?」

「見えないから」

「あ、そうですね」

顔をケイン様の耳に近付けて穴を確認してピアスを装着した。

顔が近過ぎて恥ずかしい。

「効果は“幸福、富、人間関係、心の潤い”だそうです」

「そうか。ありがとう。嬉しいよ」

そう言いながらハンドキスをした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で夫と愛人の罠から抜け出したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかし、正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...