【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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お出かけ

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白い土壁の街並みがとても綺麗だ。
青空に雲が浮かび空気は澄んでいる。
道も均してあり馬車の揺れも少ない。

「お兄様、誰と来たの?」

ニマニマとケイン様を見上げているのはペーズリー様。

結局、行きたいところは却下され(遠過ぎる)、ケイン様の代案でここへ来た。
 
「任務だ」

「ふ~ん。まあ、そういうことにしておこうかな」

「次の休みはサラだけ連れて行こう」

「ウソです!冗談です!」

「まあ でも、ケイン様は素敵だから女性とデートしていても不思議はないですわね」

「そうそう。お兄様ってばモテるのよ~」

「ペーズリー?」

「そんなに圧をかけないで。褒めてるの」

「せっかくの休日にお守りをさせて申し訳ありません」

「サラが喜んでくれたらいいよ』

「お兄様、私は?」

「ついでにお前もな」

「お兄様のデビュータントに両親と行った時に、」

ペーズリー様が言いかけるとケイン様が被せるように話しかけた。

「ペーズリー。好きな土産を買ってやるぞ」

「何にしようかなぁ」

きっとケイン様の 他人に知られたくない話なのね。

「その前に食事をしてもう少し馬車に乗るぞ」

『え、待って、聞きたいです」

『サラにも買ってあげるから」

「そうじゃなくて、」

「よしよし。おりこうさんだな。
さあ、出発しよう」


再度馬車に乗ること20分くらい。
だいぶ自然豊かな場所に来た。

降りて歩くと小さな泉がありそこから細い川が流れていた。
どこか冷んやりする場所だ。

「サラ、ペーズリー。これは湧水なんだ。よくみると底からボコボコしてるだろう」

「本当だわぁ、底がしっかり見えてる。透明度が高いのね」

「綺麗ですね」

ケイン様が近くの花から花弁を3枚取ってきた。 一枚ずつ渡して水面に浮かべた。

「願いをかけながら花弁を浮かべるんだ。
何の抵抗もなく川へ流れてしまえば叶わない。
泉にとどまったり変則的な動きをすると叶うと聞いたけど、当てにせず浮かべてごらん。
川への流れに乗せるか乗せないかの話だが、目を瞑ればいいだろう」

「お兄様、夢を壊す説明は止めて」

私もペーズリー様も川へ流れていってしまった。
先に浮かべたケイン様だけは泉の中で変則的な動きをした。

「お兄様だけ願いを叶えようとするなんて」

「残念でしたね、ペーズリー様」

「サラは何をお願いしたの?私はサラと姉妹になりたいとお願いしたのに…」

「私はパッとしない顔になりたいとお願いしましたわ」

「サラ様、叶うわけないわよ。
お兄様は何をお願いしたの?
もしかして、可愛い妹達が幸せになれますようにとか?」

「こういうのは言ったら叶わないんだよ」

「お兄様、もしかしてお嫁さんが欲しいとか?」

「ケイン様なら縁談も多いのではありませんか?」

「多かったけど、全部お眼鏡に適わなかったの」

「……きっと聖女のような方をお望みなのですね」

サットン家に申し込まれる縁談は条件が良かったはず。まあ、愛らしいペーズリー様と暮らしていたらそうなるかも。

じっとケイン様を見てしまっていたようで頬を掴まれた。

「ペーズリーの話を鵜呑みにしないように」

「はひ」


町に戻る途中、ペーズリー様が私の縁談について触れてきた。

「どんな方ならいいの?」

「高位貴族や保守派などは難しいでしょうね。間違いなく王子妃は無理です」

「どうして?」

「……純潔ではないからです」

「「 !! 」」

「気にしない人もいるかもしれませんけどね」

「恋人がいるの?」

「いません」

「何か被害に遭ったということではないよな」

「…はい」

「相手は知り合いか」

「はい」

「お兄様、失礼よ」

「……」



町に着いて昼食を食べにお店に入った。

「ペーズリー様はどれにしますか」

「お任せプレートにしようかと思って」

「私も同じものにします」


食事を待つ間に、私とペーズリー様はお花摘みに席を外し、戻ってくるとケイン様に2人の女性が話しかけていた。

私達が戻ってきたことに気が付いたケイン様は、私の肩を抱き寄せた。

「恋人がいると言っただろう。邪魔をしないでくれ」

「「失礼しました」」


女性達が遠ざかると、ごめんねと言ってイスを引いてくれた。

「確かあの方達、同時に入店した方達よね。
いい度胸ねぇ」

「やっぱりおモテになるのですね」

「望まない相手から声がかかっても困るだけだからね」

やっぱり雰囲気が大人だなぁ。

「そんなに見つめられたら穴が開きそうだ」

「やだ、ごめんなさい」

「さあ、食べよう」



食事をしてお店を巡りお土産を買ってもらった。
ご馳走にもなってしまい気が引ける。屋敷での滞在費も受け取ってもらえない。

ペーズリー様とお揃いの髪留めは白い石が付いていた。私の髪留めはピンクのリボン。ペーズリー様の髪留めは黄色のリボンだった。
 
ペーズリー様がケイン様の気を引いているうちに、ケイン様へのお土産を買った。

牧場で動物にエサをあげたり、花畑を見たりして日帰り旅行を満喫した。

少し遅くなったが、屋敷に戻り夕食を食べ、お茶を飲んでいた。

ケイン様に近寄り、ポケットから小さな包みを出した。

「ケイン様、私からのお土産です」

「いつの間に…。開けていい?」

「はい」

ケイン様も立ち上がり、受け取ると包みを開けた。

「ピアスだ」

「普段つけておられませんが穴があいていたので」

私の手を取りソファに座らせるとケイン様も隣に座りピアスを私の手に握らせた。

「着けてもらっていい?」

「え?」

「見えないから」

「あ、そうですね」

顔をケイン様の耳に近付けて穴を確認してピアスを装着した。

顔が近過ぎて恥ずかしい。

「効果は“幸福、富、人間関係、心の潤い”だそうです」

「そうか。ありがとう。嬉しいよ」

そう言いながらハンドキスをした。

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