【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

文字の大きさ
上 下
25 / 73

ケインと騎士団の仲間達

しおりを挟む
【 ケイン・サットンの視点 】


団長室に向かう途中で誰かが肩に腕を回してきた。

「珍しいな。休暇願いか」

彼は同僚のウィリアム。彼も貴族で騎士だ。
副団長の承認印が捺された休暇届をじっくりと覗き見ている。

「明日からですか。本当珍しいっすね」

後輩のフィリップ。彼は平民だ。

「別に普通だろう」

「ケインは珍しいだろう。誰かの結婚式にでも参列するのか?」

「妹達を遊びに連れて行かないといけないんだ」

「妹っていったら学園を卒業してるだろう」

「そうだが?」

「てっきり女ができたんだと思ってました」

「私もだ。女ができたと思ったのに妹か」

「女? いないよ」

「そうかぁ?最近時間が来たらさっさと帰るし、朝なんかニヤニヤしてるし、夜番のときは機嫌悪いから、てっきりできたと思ったのに」

「で、本当はいるんですよね?紹介してくださいよ」

「いないと言ったろう」

「難攻不落のケインがなぁ。
令嬢や夫人方が色目を使っても相手にしてこなかったケインを射止めたのはどんな女なのか知りたいなぁ」

「だから違うって」

「ケイン先輩、休暇とってどこに行くんですか」

「さあ。ペーズリーが決めたところに連れて行くだけだからよく分からないな」

「私も一緒に行こうかな」

「来なくていい」

「やっぱり女じゃないか」

「妹達に虫を付けたくないだけだ」

「私はレディに優しい紳士じゃないか」

「俺だって紳士になりますよ」

「絶対嫌だ」

「じゃあ、うちの夜会の招待状を妹ちゃん宛に送ろうかなぁ。と来てくださいって」

「寄越すな。欠席させるからな」

「やっぱり女だ」

「しつこい」




その後、訓練も終わり業務を終える頃、ユリス殿下に呼び出された。

「サラがサットン邸で暮らしているのは本当か」

「本当です」

「何故そうなった」

「妹のペーズリーがサラ嬢の友人で、成り行きです。詳しくはサラ嬢にお尋ねください」

「話してくれないのか」

「サットン家にとってもサラ嬢にとっても個人的なことですのでお話しできません」

「……問題なく元気で過ごしているのだろうか」

「はい。ペーズリーと気が合うらしく毎日話に花を咲かせております」

「分かった。ありがとう」



茶会の時から分かってはいた。
殿下の片想いは続行中だった。

先日、シヴィル公爵令嬢との婚約が解消になったし、サラ嬢に婚約者はいない。そしてセンティア国王の姪。再度求婚する可能性は高いだろう。

そしてもう1人、サラ嬢に想いを寄せる者がいた。
弟であり、若きガードナー侯爵だ。茶会のとき、独占欲と嫉妬をみせていた。姉に執着した弟だと思っていたのに血の繋がりが無かった。

ガードナー侯爵はサラ嬢を家族の立ち位置を利用してずっと独占してきたのだろう。

サラ嬢は今、その2人から距離を置きたがっている。

街でのサラ嬢は思い悩んでいていた。
放っておけなかった。


愛馬に乗せたサラ嬢はとても華奢な女の子だった。

ペーズリーが心を許す相手。

ペーズリーは人の悪意に敏感だ。
だから親しい友人がいない。
婚約者候補達は会ってすぐ拒絶した。

私の婚約者候補達もペーズリーが弾いた。詳しく素行調査をしてみると、他の男にも擦り寄っていたり傲慢だったり。

女など皆そんなものだろうと思うが、両親からは、兄に跡を継がせるから自由にしていいと言われた。

ある日、学園で友人ができたとペーズリーが興奮していた。だが、

『ペーズリー。いい子なのは分かったが相手は侯爵令嬢だし、王子妃を辞退した令嬢で、そのために一悶着あった家門だ。ガードナー家が悪いわけではないが単純な家門ではなさそうだ。慎重にせねば』

そう忠告したのはお祖父様だ。
お祖父様はまだ王城で剣の指南や戦略の指南をする将軍だ。

だが、サラ嬢が滞在して2日目。私が帰宅すると先に学園から帰ってきたサラと遊んでいた。

お祖父様の腕にぶら下がったり、剣の重さを体感したり、鎧のヘルメットをかぶったりと楽しそうにしていた。

夜、サラが湯浴みをしに席を外すとお祖父様が仰った。

『幸せになれるといいのだがな。ペーズリーもサラも、もっと狡賢く生きられたらと思うが無理そうだな。守ってくれるようないい男と出会えるか……心残りで成仏できん。

よし!城で探してみるか』

慌てて止めたがやりそうだ。

お祖父様があっという間に陥落されていた。




“女ができたと思った”

そう言われたが、そんなつもりはなかった。
確かに早く帰ろうと効率よくすることを心がけたりはした。

最初の朝に、慌てて見送りに起きてきたサラ嬢は寝巻きにガウン、髪は寝癖が付いていた。

“いってらっしゃいませ”

可愛くて、つい頭を撫でてしまった。
レディに対して子供のような扱いは嫌がるかもとハッとしたが、嬉しそうに見えた。

それが頭から離れなくて、何故か早く帰らねばと思ってしまった。



3日もすればすっかり屋敷に馴染み、元々サットン邸で暮らしていたかのように皆が受け入れていた。

『お兄様ぁ。お出かけしたいなぁ』

『どこに』

『まだ決めてないけど、サラの気分転換になればいいなって』

『買い物にでも行くのか?』

『少し遠くまで行ってみようかな~』

『分かった分かった。休めるか申請をしてみるから』








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で夫と愛人の罠から抜け出したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかし、正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

処理中です...