【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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街での再会

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王都に戻ると早速執事に内鍵を大至急設置するよう命じた。

リオは悲しそうな顔をしていたけど、もう他人の思惑に左右されるのは嫌だった。

そして翌日、学園に着きリオと別れると抜け出して歩き出した。

欠席届はまだ有効だから問題ない。


まだ朝だからあまり店も開いていない。準備で忙しそうだ。

ベンチに座りボーッとしていると馬が通りかかった。

「ガードナー侯爵令嬢!?」

見上げると馬に乗ったサットン卿だった。

立ち上がり挨拶をした。

「授業はどうなさったのです?」

「まだ1週間以上欠席届が有効なので気晴らしに出てきたのです」

「制服…」

「休もうとすると弟も休むと言い出しますので、学園に着いたら教室に向かうフリをしてここに来ましたの。サットン卿は?」

「私は勤務明けです」

「そうですか。お疲れ様でした。お気を付けて」

「……」

ブルッ

生暖かい空気が顔にかかったと思った次には

ベチャ~

「……」

「こら!キャンディ!」

「キャンディ!?」

「馬の名前です。申し訳ございません」

サットン卿は降りてハンカチを差し出した。
何故かというと顔面を真正面からキャンディに舐められたから。

拭いている側から髪の毛をかじり出した。

「痛っ」

「こら!キャンディ!」

髪もボサボサですね?

「我が家へ来ませんか」

「へ?」

「いや、妹もおりますし、そのお姿では通報されます」

そんなに酷いのかしら。
ペーズリー様がいるなら行こうかな。

「お願いします」

「馬に乗れますか」

「乗れません」

手綱を引きますのでしっかり掴まってください。

「…怖い」

「一緒に跨っても?」

「はい」

二人乗りをすると、卿はしっかりと私の体を支えてくれた。

「とても高いのですね」

「大丈夫、落としません」

人間不信になりかけてるけど、動物はいいわね。

「サットン卿、動物のお世話をする職業といったら何ですか」

「家畜業とか獣医とか。馬を扱うなら騎士でなくても御者だってそうですし、屋敷によっては馬丁や調教師もおりますからね。

稀ですが金持ちのペットの世話係もなくはないですよ」

「大金持ちの犬の散歩係とかないですか」

「…雇うのですか?」

「いえ。ちょっと人間と距離を置きたくて」

「まさか学園でいじめでも!?」

「ちょっと家族喧嘩をしまして」

「ブランパーン大公閣下の娘だと分かったからですか」

「もうご存知なのですね」

「はい。ご存知ありませんか?
ユリス殿下の元婚約者のシヴィル公爵令嬢がセンティアの王族を侮辱した罪で婚約は解消になり、男爵家の妾になりました」

「ええ!?」

「その過程で令嬢の出生の秘密が公になりました」

「私、父が大好きだったんです。
でも一切血が繋がっていないと分かって、リオは知っていて裏でコソコソ動いていて、大公閣下が領地にいらっしゃいましたが、責め立ててしまいました。今更…。

王都にいたくなくて領地に逃げたのに、知った後は領地にもいたくなくて学園も嫌で…。  

もっと平凡な容姿、もしくは男の子に生まれていたら逃げ出せたのではないかと思ったり。

母には逃げ出す手助けをしてくれた方がいたみたいで羨ましいなと思ったりしながらベンチに座っておりました。

キャンディに舐められて、かじられて、乗せてもらって。動物となら一緒にいても良いかなって。

浅はかなのは分かっています。
ですが今は腹が立って仕方ないのです。
だから側に居たくなくて」

「ガードナー侯爵は貴女がいないと知ったら驚くのではありませんか?」

「下校時間までに戻るつもりでした。
私には逃げ場はありませんし、無力ですから。
結局無駄な抵抗に疲れたら言うことを聞かねばならないのです。

その日まで無駄な抵抗をしようかと思いまして」



サットン邸に着くと私が来たという知らせを受けたのか慌ててペーズリー様がやってきた。

「サラ様~」

「ペーズリー様。突然押しかけて申し訳ございません」

「ペーズリー。実は、キャンディが顔を舐めて髪をかんで汚してしまったんだ」

「良かったわ~
この髪型が巷で流行り出したのかと思って…安心しました」

「そんなに酷いですか?」

「……相変わらず可愛いわ」

「酷いのですね」

「すぐ湯浴みの支度をさせますから」

「いえ。整えたら帰ります」

「駄目よ。ヒリカ~!ヒリカ~!」

多分メイドだろう。呼びに行ってしまった。

「申し訳ありません。ペーズリーはあの調子なので」

「そこが好きなのです」

1歳上のペーズリー様は行事の係りでご一緒してから親しくさせていただいた先輩だ。

「サットン卿も妹様の友人として接してください」

「そう?」

「そうですわ」

「分かった」

「サットン卿は夜番明けですよね。お休みになってください」

「騎士だよ?このくらい大丈夫だよ。それに夕食後に睡眠をとるから今寝ない方がいいんだ」

「そうなのですね」

「友人の兄ならケインと呼んでくれ」

「はい、ケイン様」



湯浴みをした後、居間に案内された。

「兄様~、見て見て~、サラったら不思議なの。
私のドレスを着せたのだけど、ウエストや袖は緩いのに胸元はキツキツなの~」

「ブハーッ」

ケインはお茶を吹き出してしまった。

「ゲホッ ゲホッ」

「お兄様、汚い」

ちょっと、ペーズリー様っ!

「お前なっ

……ヒリカ、羽織ものを渡して差し上げてくれ」

「かしこまりました」

「キャッ、ペーズリー様!?」

「すっごい柔らかいわぁ。気持ち良さそう」

ガタンッ

「痛っ!」

ペーズリー様がキツくてはみ出た私の胸を指でツンツンすると、ケイン様がローテブルに足をぶつけた。

「お兄様、ドジなんだから」

ペーズリー様、最強だわ。

「アハハッ」

「ほら、サラ様に笑われちゃったわ」

「お前がっ」

「ペーズリー様、会いたかったです」

「嬉しい!私もよ」

癒される~!

「随分と仲がいいんだな。
お前に友人がいて安心したよ」

「酷い~」



昼食もご馳走になって、あっという間に学園へ戻る時間になった。

「ねえ、サラ様。うちでしばらく暮らさない?」

「え?」

「屋敷にも領地にも帰りたくなくて学園も嫌なのでしょう?」

「……」

「学園は辞めちゃダメよ。
となると、“屋敷に帰りたくない”を叶えないとね」

「ご迷惑がかかりますから帰りますわ」

「本当に?
少しくらい離れてみたらお互い落ち着いて見れるようになるかもしれないわ」

「遠慮しなくていい。学園から帰ったらペーズリーの相手をしてくれたらいいから。動物の世話がしたかったのだろう?」

「動物?」

「何でもないよ」

「ですが、伯爵夫妻やご長男様が…」

「領地にいるから大丈夫。手紙出しておくよ」

「じゃあ、今からガードナー邸に荷物を取りに行きましょう!」





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