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明かされる血筋
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【 ユリスの視点 】
センティアの王族を迎えるために早退した日の翌日、サラが欠席していた。
「エレノア。サラは?」
「昨日早退して、今日も休みみたいね」
「具合が悪かったとか」
「元気はなかったわね」
仕方なく昼休みに一年下のリオの教室に行った。
「リオ。サラはどうしたんだ……帰るのか」
「大公閣下に会いに行くんですよ」
リオが怒っているのが分かった。
「城に?」
よく分からないが私も城に戻ることにした。
職員室に寄ると欠席欄にサラの名前があって、1カ月間と記載があった。
先に城に向かったリオの後を追うと、リオとオフェリーの姿があった。
「人のものを盗る卑しい猫に言葉で躾けただけよ」
「お前、サラを卑しいと言ったか?」
「ええ言ったわよ。
孤児だった女が未婚のまま雑種を産んだんだもの。
何の胤だったのかしらね。碌な胤じゃないわね。
売女の子は売女よ。
私、調べたのよ。
一つだけ母と感心していたの。身の程を弁えて王子妃の打診を辞退したことを。穢らわしく卑しい血の流れた道端の石だと心得ていたとね。
ユリス様はまだ未熟でお年頃でいらっしゃるから宝石に見えてしまったのよ。
我が国の王室に不浄の血が混じらなくて良かったわ」
話の内容に混乱したが、サラが休んでいる原因がオフェリーだと分かり問い詰めようと近寄ると、
パーン
「キャア!」
リオがオフェリーを平手打ちした。
「シヴィル公爵家の私に手をあげたわね!」
「それは当然だ。リオが制裁しなければ私がお前の首を刎ねていた」
そこに現れたのはブランパーン大公閣下とイザーク第二王子殿下だった。
「大公閣下」
「やあ、リオ。彼は甥のイザークだ」
「イザーク王子殿下、大公閣下にご挨拶を申し上げます」
「それで、どうなったらこんな愚かな小娘がのさばるのかな?」
「サラが消えました」
「は?」
「この女に卑しいと言われて学園からも屋敷からも去りました。
母の所へ向かったようです。閣下にお会いしてから馬で後を追おうと、」
「馬でか?」
「サラがこれ以上、護衛を出させないよう連れて行ってしまったので」
「で、この女は何なんだ」
「ソレは私の婚約者です。大公閣下」
閣下に近付いてオフェリーは婚約者だと答えた。
「ユリス殿下の?
で、サラに矛先を向けたわけだ」
「何故、センティア王国の王族が」
疑問を口にするオフェリーを騎士が立ち上がらせた。
「シヴィル公爵家は無能だったな」
「なっ!大公閣下!いくら何でも!」
「センティア王国の王族の血を穢らわしくて卑しいと私達もユリス殿下も他の者もいる前で申したではないか。その愚かな口で。親子でそう話していたとも聞いたぞ」
まさか…サラは、
「孤児の女と 未婚の母から産まれた子の話をしているのです!」
「おい。この女はどこまで頭が悪いのだ。腐ってるぞ」
「大公閣下!」
「ソフィア・ガードナーは密かに亡命したセンティア王国の公爵令嬢で、ソフィアの胎には私の子がいたのだ。つまりサラは私の娘だ。最愛の女性との大事な娘…それを卑しい?穢れてる?
私の血が流れているサラを穢れてると?
だとすると、甥のイザーク王子も兄のセンティア国王陛下も穢れた血ということになる。
なかなか勇ましいな」
「嘘……あの女がセンティアの王族の血縁!?」
「ここまで言ってもサラを“あの女”呼ばわりか。
公爵家と言っているがもっと身分が高いのだな」
「っ! 私は!」
「ユリス殿下」
大公閣下が私を見た。
「オフェリー・シヴィルを不敬罪で連行してくれ」
「そんな! 私はユリス様の婚約者ですのよ!」
「だからこそ許されないのが分からないのか!
目障りだから早く連れて行け!」
これでオフェリーとの婚約は解消できるが、困ったことになった。
リオは亡きガードナー侯爵と亡き妻との間に出来た実子。サラは連子でソフィア様と大公閣下との子だから、リオとサラは血の繋がりのない他人だ。
そう。サラを除籍すれば娶れてしまう。
だから大公閣下が態々いらしたのではないだろうか。
今すぐサラに求婚したいのに…
“身内の込み入った話しをしなくてはならないから同伴は遠慮して欲しい” と領地への同行を断られてしまった。
国の格付けでいえばセンティア王国の方が上だ。
尊重しないわけにはいかなかった。
センティアの王族を迎えるために早退した日の翌日、サラが欠席していた。
「エレノア。サラは?」
「昨日早退して、今日も休みみたいね」
「具合が悪かったとか」
「元気はなかったわね」
仕方なく昼休みに一年下のリオの教室に行った。
「リオ。サラはどうしたんだ……帰るのか」
「大公閣下に会いに行くんですよ」
リオが怒っているのが分かった。
「城に?」
よく分からないが私も城に戻ることにした。
職員室に寄ると欠席欄にサラの名前があって、1カ月間と記載があった。
先に城に向かったリオの後を追うと、リオとオフェリーの姿があった。
「人のものを盗る卑しい猫に言葉で躾けただけよ」
「お前、サラを卑しいと言ったか?」
「ええ言ったわよ。
孤児だった女が未婚のまま雑種を産んだんだもの。
何の胤だったのかしらね。碌な胤じゃないわね。
売女の子は売女よ。
私、調べたのよ。
一つだけ母と感心していたの。身の程を弁えて王子妃の打診を辞退したことを。穢らわしく卑しい血の流れた道端の石だと心得ていたとね。
ユリス様はまだ未熟でお年頃でいらっしゃるから宝石に見えてしまったのよ。
我が国の王室に不浄の血が混じらなくて良かったわ」
話の内容に混乱したが、サラが休んでいる原因がオフェリーだと分かり問い詰めようと近寄ると、
パーン
「キャア!」
リオがオフェリーを平手打ちした。
「シヴィル公爵家の私に手をあげたわね!」
「それは当然だ。リオが制裁しなければ私がお前の首を刎ねていた」
そこに現れたのはブランパーン大公閣下とイザーク第二王子殿下だった。
「大公閣下」
「やあ、リオ。彼は甥のイザークだ」
「イザーク王子殿下、大公閣下にご挨拶を申し上げます」
「それで、どうなったらこんな愚かな小娘がのさばるのかな?」
「サラが消えました」
「は?」
「この女に卑しいと言われて学園からも屋敷からも去りました。
母の所へ向かったようです。閣下にお会いしてから馬で後を追おうと、」
「馬でか?」
「サラがこれ以上、護衛を出させないよう連れて行ってしまったので」
「で、この女は何なんだ」
「ソレは私の婚約者です。大公閣下」
閣下に近付いてオフェリーは婚約者だと答えた。
「ユリス殿下の?
で、サラに矛先を向けたわけだ」
「何故、センティア王国の王族が」
疑問を口にするオフェリーを騎士が立ち上がらせた。
「シヴィル公爵家は無能だったな」
「なっ!大公閣下!いくら何でも!」
「センティア王国の王族の血を穢らわしくて卑しいと私達もユリス殿下も他の者もいる前で申したではないか。その愚かな口で。親子でそう話していたとも聞いたぞ」
まさか…サラは、
「孤児の女と 未婚の母から産まれた子の話をしているのです!」
「おい。この女はどこまで頭が悪いのだ。腐ってるぞ」
「大公閣下!」
「ソフィア・ガードナーは密かに亡命したセンティア王国の公爵令嬢で、ソフィアの胎には私の子がいたのだ。つまりサラは私の娘だ。最愛の女性との大事な娘…それを卑しい?穢れてる?
私の血が流れているサラを穢れてると?
だとすると、甥のイザーク王子も兄のセンティア国王陛下も穢れた血ということになる。
なかなか勇ましいな」
「嘘……あの女がセンティアの王族の血縁!?」
「ここまで言ってもサラを“あの女”呼ばわりか。
公爵家と言っているがもっと身分が高いのだな」
「っ! 私は!」
「ユリス殿下」
大公閣下が私を見た。
「オフェリー・シヴィルを不敬罪で連行してくれ」
「そんな! 私はユリス様の婚約者ですのよ!」
「だからこそ許されないのが分からないのか!
目障りだから早く連れて行け!」
これでオフェリーとの婚約は解消できるが、困ったことになった。
リオは亡きガードナー侯爵と亡き妻との間に出来た実子。サラは連子でソフィア様と大公閣下との子だから、リオとサラは血の繋がりのない他人だ。
そう。サラを除籍すれば娶れてしまう。
だから大公閣下が態々いらしたのではないだろうか。
今すぐサラに求婚したいのに…
“身内の込み入った話しをしなくてはならないから同伴は遠慮して欲しい” と領地への同行を断られてしまった。
国の格付けでいえばセンティア王国の方が上だ。
尊重しないわけにはいかなかった。
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