6 / 73
諦めきれぬ思い
しおりを挟む
【 ユリスの護衛騎士ケイン・サットンの視点 】
令嬢は申し訳なさそうにしていた。
令嬢のお守りは退屈ですよねと言った感じで話を振ってくる。しかも妹と交流があるようだ。
護衛騎士の私にも気遣いをみせる令嬢か。
今の王子の婚約者は気位の高い令嬢で、我等に気遣いなどしない。この令嬢が王子妃になってくれたらと思うと残念だった。
新たに伯爵令嬢が近寄ってきた。弟のガードナー侯爵目当ての様だが何故か一瞬 侯爵令嬢に敵意を帯びた視線を送る。
何かやらかすかもと二人の間がよく見える位置に立ち、備えた。
愛しの姫をユリス殿下に任されたのに怪我でもさせたら大事になる。
侯爵令嬢が振り向き私を見上げた。
“何か用か?” と目で聞きながら微笑むと頬を染めた。
パッと前を向き扇子を持って俯くが耳は真っ赤だし首もピンクに染まっている。
……可愛過ぎる。
ダークブロンドの髪は艶やかで、ブルーグレイの瞳は神秘の泉の様に澄んで煌いている。
そしてたったあれだけで動揺し白い肌を紅潮させる。
男には堪らない。
これはユリス殿下も落ちる訳だと納得した。
侯爵令嬢でもなく、ユリス殿下の想い他人でなければ自分のモノにしようと積極的に動いただろう。
馬に乗せて遠出をしてもいいし、手を繋いで王都でデートしてもいい。ベッドで全身が紅潮する様なコトをしてもいい。
そんなコトを一瞬で巡らしたが、
“気に入らない”
低い声で令嬢に囁くのは令嬢の弟の若き侯爵だ。
違和感が生じた。
この姉弟は似ていない。髪も瞳も色は違うし、顔のタイプも違う。
まあ、似ていない姉弟はたまにいる。
だが、後からやってきた伯爵令嬢も見た目はかなりいい方だ。なのに侯爵は敢えて冷たく遇らう一方で姉には甘く接する。
これは弟というより男だ。
伯爵令嬢が侯爵令嬢に足を掛けて転ばせようとした。弟の反応も早かった。
そしてユリス殿下は厳し過ぎる罰を伯爵令嬢に課した。
まるで伯爵令嬢のしたことが、王子妃への所業というかのように。
「サットン卿、どうだった」
今日の任務の終わりの挨拶でユリス殿下から聞かれた。
「何がでしょう」
「サラだ。卿から見て、サラをどう思う」
「魅力的です」
「王子妃としては?」
「歓迎します」
「そうか」
やはり諦めきれないのだな。
「何故サラは私では駄目なのだろう。
学園が始まって友人になったが元々嫌われているわけではなかった。
自分で言うのもなんだが、私は不細工でもないし頭も悪くない。性格だって悪くはないと思う。
男として好きじゃなかったとしても、政略結婚として話を受けてもらえると思っていた。
王子妃、ゆくゆくは王妃になることに不安があるのか。
だが、サラを寵妃として周知させ私が守ればいいだけだ。無理な公務はさせるつもりはないし、王子妃教育に不安があるならできることだけやればいい。長けた者を雇ってサポートさせれば済むことだ。
後ろ盾など必要ない。サラが妃になってくれるのなら サラ以外には娶らない」
「では、跡継ぎ問題はどうなさるのですか?」
「子が成せなかった、もしくは王子が産まれなかったときということか?従兄弟に継がせればいいだろう」
「しかしそれを陛下や執行部の方々が同意したわけでもありません。有力貴族達も無視して進めることは出来ません。
そしてガードナー侯爵令嬢はご存知ありません。
当時では難しかったかもしれませんが、直にお会いして何が問題かご自身で聞いて解決策を提案し、それならとガードナー侯爵令嬢が仰ったら、その方向で国王陛下に協力をお願いに上がれば未来は違ったかもしれませんが、殿下は婚約者を選んでしまわれました。
今の婚約を解消してしまったら敵を作りかねません。法改正も難しくなるでしょう。
その前に、令嬢が他の令息に想いを寄せていたという可能性はありませんか?
婚約してなくても恋人がいなくても、いないとは限りません」
「サラに想い人!?
そんな素振りは見せたことはない」
「もう一つ。ガードナー侯爵です」
「確かにシスコンだが、姉弟だろう」
「侯爵は彼女を離さないと思いますよ。
夫人が代行していますが婚姻には侯爵の署名が必要です。
あの感じでは嫁に行かなくていいと言って手元に置いてしまうでしょう」
「そこまでか」
「侯爵であの外見ならさぞモテるでしょう。しかし婚約者もおらず浮いた話もありません。
彼女以外は虫か何かだと言わんばかりの態度を示します。
障害となるのは間違い無いと思います」
「……」
「殿下には婚約者がおられます。
矛先がガードナー侯爵令嬢に向かうことのない様お気を付けてください」
宿舎に帰り食事や風呂に入って寝ようとしたが、やはり気になって眠れない。
団長室の貴族名鑑を手に取るとガードナー侯爵家のページを探した。
これは一般向けのものではなく、我らが調査などに使うためのもので詳細が記されている。
前侯爵は再婚のようだ。
夫人は初婚。
「なるほど」
ガードナー籍になった日付けより産まれた日付けの方が早い。
つまり…
令嬢は申し訳なさそうにしていた。
令嬢のお守りは退屈ですよねと言った感じで話を振ってくる。しかも妹と交流があるようだ。
護衛騎士の私にも気遣いをみせる令嬢か。
今の王子の婚約者は気位の高い令嬢で、我等に気遣いなどしない。この令嬢が王子妃になってくれたらと思うと残念だった。
新たに伯爵令嬢が近寄ってきた。弟のガードナー侯爵目当ての様だが何故か一瞬 侯爵令嬢に敵意を帯びた視線を送る。
何かやらかすかもと二人の間がよく見える位置に立ち、備えた。
愛しの姫をユリス殿下に任されたのに怪我でもさせたら大事になる。
侯爵令嬢が振り向き私を見上げた。
“何か用か?” と目で聞きながら微笑むと頬を染めた。
パッと前を向き扇子を持って俯くが耳は真っ赤だし首もピンクに染まっている。
……可愛過ぎる。
ダークブロンドの髪は艶やかで、ブルーグレイの瞳は神秘の泉の様に澄んで煌いている。
そしてたったあれだけで動揺し白い肌を紅潮させる。
男には堪らない。
これはユリス殿下も落ちる訳だと納得した。
侯爵令嬢でもなく、ユリス殿下の想い他人でなければ自分のモノにしようと積極的に動いただろう。
馬に乗せて遠出をしてもいいし、手を繋いで王都でデートしてもいい。ベッドで全身が紅潮する様なコトをしてもいい。
そんなコトを一瞬で巡らしたが、
“気に入らない”
低い声で令嬢に囁くのは令嬢の弟の若き侯爵だ。
違和感が生じた。
この姉弟は似ていない。髪も瞳も色は違うし、顔のタイプも違う。
まあ、似ていない姉弟はたまにいる。
だが、後からやってきた伯爵令嬢も見た目はかなりいい方だ。なのに侯爵は敢えて冷たく遇らう一方で姉には甘く接する。
これは弟というより男だ。
伯爵令嬢が侯爵令嬢に足を掛けて転ばせようとした。弟の反応も早かった。
そしてユリス殿下は厳し過ぎる罰を伯爵令嬢に課した。
まるで伯爵令嬢のしたことが、王子妃への所業というかのように。
「サットン卿、どうだった」
今日の任務の終わりの挨拶でユリス殿下から聞かれた。
「何がでしょう」
「サラだ。卿から見て、サラをどう思う」
「魅力的です」
「王子妃としては?」
「歓迎します」
「そうか」
やはり諦めきれないのだな。
「何故サラは私では駄目なのだろう。
学園が始まって友人になったが元々嫌われているわけではなかった。
自分で言うのもなんだが、私は不細工でもないし頭も悪くない。性格だって悪くはないと思う。
男として好きじゃなかったとしても、政略結婚として話を受けてもらえると思っていた。
王子妃、ゆくゆくは王妃になることに不安があるのか。
だが、サラを寵妃として周知させ私が守ればいいだけだ。無理な公務はさせるつもりはないし、王子妃教育に不安があるならできることだけやればいい。長けた者を雇ってサポートさせれば済むことだ。
後ろ盾など必要ない。サラが妃になってくれるのなら サラ以外には娶らない」
「では、跡継ぎ問題はどうなさるのですか?」
「子が成せなかった、もしくは王子が産まれなかったときということか?従兄弟に継がせればいいだろう」
「しかしそれを陛下や執行部の方々が同意したわけでもありません。有力貴族達も無視して進めることは出来ません。
そしてガードナー侯爵令嬢はご存知ありません。
当時では難しかったかもしれませんが、直にお会いして何が問題かご自身で聞いて解決策を提案し、それならとガードナー侯爵令嬢が仰ったら、その方向で国王陛下に協力をお願いに上がれば未来は違ったかもしれませんが、殿下は婚約者を選んでしまわれました。
今の婚約を解消してしまったら敵を作りかねません。法改正も難しくなるでしょう。
その前に、令嬢が他の令息に想いを寄せていたという可能性はありませんか?
婚約してなくても恋人がいなくても、いないとは限りません」
「サラに想い人!?
そんな素振りは見せたことはない」
「もう一つ。ガードナー侯爵です」
「確かにシスコンだが、姉弟だろう」
「侯爵は彼女を離さないと思いますよ。
夫人が代行していますが婚姻には侯爵の署名が必要です。
あの感じでは嫁に行かなくていいと言って手元に置いてしまうでしょう」
「そこまでか」
「侯爵であの外見ならさぞモテるでしょう。しかし婚約者もおらず浮いた話もありません。
彼女以外は虫か何かだと言わんばかりの態度を示します。
障害となるのは間違い無いと思います」
「……」
「殿下には婚約者がおられます。
矛先がガードナー侯爵令嬢に向かうことのない様お気を付けてください」
宿舎に帰り食事や風呂に入って寝ようとしたが、やはり気になって眠れない。
団長室の貴族名鑑を手に取るとガードナー侯爵家のページを探した。
これは一般向けのものではなく、我らが調査などに使うためのもので詳細が記されている。
前侯爵は再婚のようだ。
夫人は初婚。
「なるほど」
ガードナー籍になった日付けより産まれた日付けの方が早い。
つまり…
978
お気に入りに追加
1,633
あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で夫と愛人の罠から抜け出したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる