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殿下の護衛
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【 ユリスの護衛騎士ケイン・サットンの視点 】
ユリス殿下の専属護衛騎士になったのはおよそ3年前。
その後しばらくして殿下はとても落ち込んでいるようだった。
時折ぼーっとしてはため息を吐き、用がなければ部屋から出ないこともあった。
先に配属されていた護衛騎士に聞くと、失恋をしたらしい。
このユリス王子殿下を振った!?
殿下は賢く努力家で明朗快活な方で優しくもあった。
柔らかな薄茶色の髪にグリーンの瞳の美男子だ。
国王陛下もお相手の侯爵家に対し腹立たしく感じているようで、侯爵家との関係が一変してしまったという。
確かに王家からの縁談を断るのは異常かもしれないし、大事な王子が傷付いている姿に胸を痛めただろう。
だが学園が始まると本来の殿下に戻っていった。
どうやら振られた令嬢と学園で交流しているようで、嬉しそうに通っている。
そして別の令嬢と婚約した。
縁談を断られてから2年弱。訃報が入る。
ガードナー侯爵の死去。
これには国王陛下が気落ちした。
縁談を断ってきた理由が、侯爵の体の弱さで娘が王子妃になっても後ろ盾になってやれないというものだった。
それを国王は信じていなかった。
何か大きな行事で会うと、そうは見えなかったから。
ただそれは貴族として弱みを見せないよう、無理をしていただけだった。
陛下と侯爵とは学友でとても仲が良く、助けてもらうことも多かったとか。
だから縁談にも心を浮かせていた。
それ故に断られたときのショックが大きかった。
行事で参加する侯爵に冷たい態度を取っていた。
それを見た貴族達は侯爵家から遠ざかってしまった。
訃報と訃報の理由の書いた通知を受け取った。
心臓が悪く、病と闘いながら仕事をしていたが力尽きたと書いてあったようだ。
もしかしたら自分の仕打ちが友人である侯爵の死期を早めたのではないか。
自分を助けてくれた友人を信じて、医師を派遣していたら完治は無理でももう少し長く生きて、思い残すことのないように恩返しが出来たのではないか。
陛下は自責の念に苦しんだ。
侯爵位はまだ就学前の長男が継ぐことになった。
陛下は異例の行動をとった。
領地で行われる葬儀に参列し弔辞を名乗り出た。
謝辞を自ら遺族と参列者の前で述べた。
己の非を認め、心から謝罪をして、侯爵家への贖罪を誓った。
これには調子に乗って侯爵家をぞんざいに扱った貴族の一部は狼狽した。
侯爵家への行動は王家に対して行うことと同位となってしまったからだ。
あっという間にユリス王子も最終学年。
かつて片思いだった侯爵令嬢との楽しい時間も1年を切ってしまった。
そんな中で王妃殿下とユリス殿下が茶会を開いた。
私は当日のユリス殿下の護衛として側について回る任務に就いた。
そして例の侯爵令嬢と会うことになる。これほど近くで見ることも言葉を交わすことも初めてだった。
ユリス殿下は少し顔が赤い令嬢を心配して、どうにもたまらず医師を呼ぶと言い出した。
同席の公爵令嬢は呆れて笑っているし、当の令嬢は大袈裟だと断っていた。
殿下の瞳は真剣だ。心底心配をしているのだ。
誰が見ても分かる。愛する者を見る顔になってしまっているのだ。
つまり、片思いは続行中だということだ。
『薄緑のドレスのご令嬢はサラ・ガードナー。
彼女が合図を送ったり、ふらついたりしたら、医師を手配するか、直ぐに私に知らせてくれ。
彼女は私の大事な友人なんだ。頼んだよ』
ユリス殿下は側にいたくて仕方ないのに挨拶回りをしなくてはならないため、護衛騎士を令嬢につけるという特別扱いをした。
これには会場の参加者は驚きを隠せない。
そして私はユリス殿下の片思いの相手を見守った。
ユリス殿下の専属護衛騎士になったのはおよそ3年前。
その後しばらくして殿下はとても落ち込んでいるようだった。
時折ぼーっとしてはため息を吐き、用がなければ部屋から出ないこともあった。
先に配属されていた護衛騎士に聞くと、失恋をしたらしい。
このユリス王子殿下を振った!?
殿下は賢く努力家で明朗快活な方で優しくもあった。
柔らかな薄茶色の髪にグリーンの瞳の美男子だ。
国王陛下もお相手の侯爵家に対し腹立たしく感じているようで、侯爵家との関係が一変してしまったという。
確かに王家からの縁談を断るのは異常かもしれないし、大事な王子が傷付いている姿に胸を痛めただろう。
だが学園が始まると本来の殿下に戻っていった。
どうやら振られた令嬢と学園で交流しているようで、嬉しそうに通っている。
そして別の令嬢と婚約した。
縁談を断られてから2年弱。訃報が入る。
ガードナー侯爵の死去。
これには国王陛下が気落ちした。
縁談を断ってきた理由が、侯爵の体の弱さで娘が王子妃になっても後ろ盾になってやれないというものだった。
それを国王は信じていなかった。
何か大きな行事で会うと、そうは見えなかったから。
ただそれは貴族として弱みを見せないよう、無理をしていただけだった。
陛下と侯爵とは学友でとても仲が良く、助けてもらうことも多かったとか。
だから縁談にも心を浮かせていた。
それ故に断られたときのショックが大きかった。
行事で参加する侯爵に冷たい態度を取っていた。
それを見た貴族達は侯爵家から遠ざかってしまった。
訃報と訃報の理由の書いた通知を受け取った。
心臓が悪く、病と闘いながら仕事をしていたが力尽きたと書いてあったようだ。
もしかしたら自分の仕打ちが友人である侯爵の死期を早めたのではないか。
自分を助けてくれた友人を信じて、医師を派遣していたら完治は無理でももう少し長く生きて、思い残すことのないように恩返しが出来たのではないか。
陛下は自責の念に苦しんだ。
侯爵位はまだ就学前の長男が継ぐことになった。
陛下は異例の行動をとった。
領地で行われる葬儀に参列し弔辞を名乗り出た。
謝辞を自ら遺族と参列者の前で述べた。
己の非を認め、心から謝罪をして、侯爵家への贖罪を誓った。
これには調子に乗って侯爵家をぞんざいに扱った貴族の一部は狼狽した。
侯爵家への行動は王家に対して行うことと同位となってしまったからだ。
あっという間にユリス王子も最終学年。
かつて片思いだった侯爵令嬢との楽しい時間も1年を切ってしまった。
そんな中で王妃殿下とユリス殿下が茶会を開いた。
私は当日のユリス殿下の護衛として側について回る任務に就いた。
そして例の侯爵令嬢と会うことになる。これほど近くで見ることも言葉を交わすことも初めてだった。
ユリス殿下は少し顔が赤い令嬢を心配して、どうにもたまらず医師を呼ぶと言い出した。
同席の公爵令嬢は呆れて笑っているし、当の令嬢は大袈裟だと断っていた。
殿下の瞳は真剣だ。心底心配をしているのだ。
誰が見ても分かる。愛する者を見る顔になってしまっているのだ。
つまり、片思いは続行中だということだ。
『薄緑のドレスのご令嬢はサラ・ガードナー。
彼女が合図を送ったり、ふらついたりしたら、医師を手配するか、直ぐに私に知らせてくれ。
彼女は私の大事な友人なんだ。頼んだよ』
ユリス殿下は側にいたくて仕方ないのに挨拶回りをしなくてはならないため、護衛騎士を令嬢につけるという特別扱いをした。
これには会場の参加者は驚きを隠せない。
そして私はユリス殿下の片思いの相手を見守った。
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