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美しい異母妹

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【 異母兄 リアムの視点 】


一夫一妻制の国の次期国王の第一子として産まれた。

両親は政略結婚だったようだ。
出産で命を落とした母の記憶は当然ない。
後妻の妃も恋愛結婚ではない。

父上はいつも忙しい人だった。
祖父国王と一緒に国を大きく牢乎たるものにしていった。

だけど父上は時々遠くを見ては寂しそうな顔をする。聞いても何でもないと答えるだけだった。


私は学園を卒業すると祖父と父の仕事を手伝った。

ある時、祖父と父が話している声が聞こえた。

《アイリーンは籍の件も会うことも拒否した》

アイリーン?
籍?

警備兵の手前 その場を離れるしかなかった。

それ以来父上は塞ぎ込んでいるように見えた。
あれだけ頑張っていた仕事も手に付かないようだった。

祖父に聞いてみたが本人に聞けという。
だから思い切って父に聞いてみた。

は? 異母妹?

母の死後、後妻を迎える前に父は恋をしていた。
だが不運にも相手には王族の婚約者がいて解消は不可能だった。だが二人は愛し合った。相手の王女が14歳だとは思わずに。

一度も会ったことのない娘に心を寄せていた。見せてもらった肖像画は王女にそっくりらしい。
だとしたら一目惚れから始まったのだろう。

異母妹アイリーンは出生の秘密を守るために、隔離されるように王女に育てられた。
だが5歳で引き離され、他国の王族に預けられた。
その後数ヶ月で今のベロノワ伯爵家に預けられ、事故で記憶を失くしたことをきっかけに養女になった。

会いたくないということは父を憎んでいるのかもしれない。


父に会うことを勧めた。

サルフェト王城を経由しコンドラー公爵領の屋敷に到着した。

そして帯剣の話がでた。
やはり怒っているのだろう。
父は帯剣をすぐに了承した。

その後、妹がどのように指揮をとってコンドラー港を改革しているか説明を聞いた。
こんなことをベロノワ港でもやった?
預けられたのは6歳…そんな幼いときから?

公「間違いありません。ベロノワ港は10年ほど前からの改革です。
コンドラー港でも手慣れた感じでした。

我々が視察して真似しても失敗したのに、アイリーンは…アイリーン様は見事に成し遂げようとしています」

父「そうか。母似だな。 
彼女はまるで後継者教育を施されたような人で、7つも歳上の私と政策について意見を交わせていた。
彼女が幼少のアイリーンに英才教育をしたのだろう」


そして夕刻に現れた妹は とても美しく愛らしかった。顔は強張っていたが弟ジュエルには微笑む。
父の瞳の色とはいえ、とても妹には思えない。
そして伯爵と次男のジュエルは妹に似ていた。
本来の家族はそっちだと言わんばかりの見た目だった。 

伯爵を心から慕っているのが分かるし、伯爵も王族相手に対等に話している。

このジュエルは厄介だ。
アイリーンが見ていると優しく微笑み、成犬前の子犬のような態度になるが、アイリーンが見ていないと牙を剥こうとしている狼のような雰囲気を放ちながら、まるで見定めるかのように鋭い視線を送る。

伯爵ではなくジュエルが帯剣しているのは、ベロノワでの荒事を彼が任されているのかも知れないからだと感じた。


アイリーンはイレーネ王女との過去を話した父を言葉でぶった斬った。

立場や視点が違うと、一つの出来事がこうも違った捉え方をするのだなと思った。
確かにアイリーンの主張は当然だ。


公子ユーリも戸惑いを見せる。
彼は間違いなくアイリーンに惚れている。
だがアイリーンは人妻だ。

……人妻? このが?

夜は悶々としていた。
ジュエルを大人にしたような男がアイリーンを抱いたと思うと寝付けなかった。
胸の辺りに違和感を感じる
その正体は翌日の公子の誕生日を祝うパーティで判明した。


翌日のパーティで、我等の紹介の後、公子がアイリーンをエスコートして彼女の紹介をした。

その後はアイリーンに人が殺到しかけたが、伯爵とジュエルが両脇に立ち 捌き始めた。

特に会話のない者は“お会いできて良かったです。主役へ挨拶をどうぞ”と促し、用がある者は話を聞き、自領の改革も手伝って欲しいなどという内容なら断り、食い下がるなら多額の依頼金が必要で、成功報酬は別だと告げる。

中にはそれでも引き下がらず、コンドラー港の改革は有料なのかとか、女のアイリーンに詰め寄ろうとする者もいた。
そこで伯爵と弟を制してアイリーンが口を開いた。

「コンドラー港はベロノワ港からの商船以外に客船が駐停泊することになった港だからです。
コンドラー港を栄えさせることはベロノワの利になりますし、ユーリと私が友人だから手伝いました。
貴方は友人でもありませんよね。貴方はベロノワの客船が駐停泊したくなるような魅力的な港をお持ちだということですか?
ならば是非話を伺いましょう。何という名前の港ですか?」

「で、ですが」

「何故一貴族夫人の私が他国の領地のために無償で尽力せねばならないのでしょう。
何も知らない私が突然行って改革をして栄えさせることが可能だとしたら、もう領主交代ですよね?
私は領民を味方に付けますよ?
国も努力を放棄する領主より、領民の支持を得て栄えさせて国により多くの税を納めてくれる者に領主を任せたいと思うでしょう。
そうですよね?王弟殿下」

「その通り。
実に見苦しい。君はいくつなんだ?
彼女はまだ十代だぞ。
君の家名はよく覚えておくよ」

このやり取りから“手伝え”などという者は消えた。
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