【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ

文字の大きさ
上 下
18 / 19

予定外の妊娠

しおりを挟む
遠いプロプル王国からお父様とお母様が会いに来てくださった。

自分も行きたいと騒ぐお兄様に全て任せて、こっそり明け方に出発したらしい。

「帰ったら大変だな」

「自分も行くと言ってきかなくて、旅支度もしていたのよ。慰めのお手紙を書いてあげて。プレゼント付きだと機嫌がなおるかもしれないわ」

「ふふっ、何がいいでしょうか……っ!!」

「ユピルピア?」

「ペルペナ…」

「はい、」

「う、産まれるかも…すごく痛いっ」

「ピピ!!」

「「ユピルピア!」」

「宮廷医を呼びます!」



そのままお産に突入。
ペルペナとお母様とモアナ様が立ちあい、何故か皇帝陛下も立ちあった。

「ん~!! 痛い~!!」

「ピピ!痛い思いをさせてごめん!」

「痛い~!!」

「よし、俺が代わってやる!」

「何言ってるんですか。代われませんよ。“嘘つき!代わってくれるって言ったのに!”なんて言われますよ 陛下。邪魔なので皇妃様の頭の方に行ってください」

この皇帝に邪魔と言ったのは、この宮廷医くらいだろう。



「おぎゃあ!おぎゃあ!」

1日半かけて産んだのは皇子だった。

「陛下、皇子ですよ。何でこんな時にへたばっているのですか。疲れているのは皇妃様の方ですよ。役に立たない夫は嫌われますよ」

「お前…」

「ほら、抱っこしてあげてください」

「持ってきてくれ」

「連れてきてくれが正しいです。まったく…」

脱力しながら、この宮廷医は強いなと感心した。

皇帝陛下は1日半付きっきりで一緒にいきんでいたのでフラフラになり床に倒れ込んでいた。

床に寝転んだ胸の上に皇子を乗せると、

「うわ、軽い…小さいな。何で俺にそっくりなんだ?」

「そりゃ、陛下の子ですから そっくりでも不思議ではありませんよ。寧ろ喜ぶところでは?」

「俺はピピ似になるよう、胎の中にいるこの子に言い聞かせていたんだ」

「言うことを聞かないところまで陛下似ですね。
さて、プロプルの国王夫妻にも見せに行かなくては」

宮廷医は赤ちゃんを抱っこして内扉の向こうの居間に向かった。
お母様は仮眠をとるために居間にいる。お父様も一緒だ。モアナ様は食事中。

「あいつ、不敬だろう」

「私は彼を支持しますわ」

「私もユピルピア様と同意見です、陛下」

「……ユピルピア、ありがとう」

「はい。無事に産まれて良かったです」

「ユピルピア、国王達に立ち会ってもらいたいから2週間後に立后する。要職だけ呼んでサッと済ます。祝い事は半年後だ。
彼らは何ヶ月も滞在できないだろう?」

「私は皇妃のままでいいのです」

「俺はユピルピアを愛しているんだ。愛してる女性を皇后にしたいと思うのは当然だろう」

そこにモアナが食事から戻って来た。

「おめでとうございます!ユピルピア様」

「ありがとうございます」

「あれ?何故陛下が床で寝ているんですか?
皇后にしたいとか聞こえましたけど、まさかそのお姿のまま口説いているのですか?」

「……」

「エテルネル帝国の皇帝がカッコ悪いことをしないでください。しっかりと正装して跪いてください。
まさかの手ぶらですか?指輪くらい用意したらいかがですか?はぁ」

「モアナまで…」

「陛下、ユピルピア様は疲れていて食事と睡眠が必要です。陛下はご自分の部屋に戻って湯浴みでもして、綺麗になったら戻って来てください」

「俺は汚物か」

「女性は清潔な男が好きです。当然ユピルピア様もです」

「…行ってくる。

誰か、俺を背負ってくれ!」



2週間後、大臣達を集めてお父様とお母様が見守る中、皇后の冠を頂いた。

そして皇帝は、

「皆に宣言する。
ユピルピアを皇后とした今、これ以上は娶らず手も付けないことを誓う。
3人の妻と共に帝国の繁栄に務めることを約束する。
死に別れたとしても俺の生涯を3人の妻に捧げる。
今代限りではあるが、もし この誓いを破る日が来たら強制的に皇帝の座を明け渡す法律を制定した。

永遠の愛をユピルピアに、友愛をモアナとシャンティに捧げる」

良かったわねとお母様達に言われたけど、どうしても警戒してしまう。



半年後。

帝国中の爵位持ちに招待状を出して立后のパーティが開かれ、つつがなく終えた。

当面静かに過ごせるかなと思ったが、ペルペナの父ルノウ卿が皇帝陛下を通して面会を求めてきた。
ペルペナに内緒にして欲しいということで、“イチャイチャしたいから席を外せ”と皇帝が追い払った。
ペルペナを食事に向かわせている間にルノウ卿と会った。

「え?ペルペナの誕生日、1週間後なのですか!?」

「はい。ルノウ邸でお祝いをしようと思います。
当日、驚かせたいので皇后陛下に気を逸らしていただきたいのです」

「否応無しに連れて行って、私がケーキを食べたいと言えば会場にとどまりますわ」

「あと、ドレスを作ったので着替えさせたいのです」

「ペルペナのドレス姿が見たいと駄々をこねてみせます」

「感謝いたします!」

ペルペナの誕生日は私と出会った日にしていて、毎年祝っていた。今年も既に祝い終えていた。
本当の誕生日があることを失念していた。

部屋に戻る途中にギリグスに相談した。

「1週間後かぁ。う~ん何がいいかしら」

「でも今年 既に誕生日プレゼントを渡してますよね」

「ペルペナにね。1週間後はエリザベスによ」

「そういえば うちの親も招待されているんです。僕の名前もありますから、正装して護衛します」

「そうなのね。だったらその日は護衛任務から外すわ」

「外れません」

「でも、」

「嫌です」

そういうところはペルペナに似てきたわね。

「何か?」

「何でもないわ」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

【完】隣国に売られるように渡った王女

まるねこ
恋愛
幼いころから王妃の命令で勉強ばかりしていたリヴィア。乳母に支えられながら成長し、ある日、父である国王陛下から呼び出しがあった。 「リヴィア、お前は長年王女として過ごしているが未だ婚約者がいなかったな。良い嫁ぎ先を選んでおいた」と。 リヴィアの不遇はいつまで続くのか。 Copyright©︎2024-まるねこ

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

処理中です...