【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ

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再開された閨事

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「ん……」

身体が重い。

「おはようございます、ユピルピア様」

「何時?」

「8時過ぎです。湯浴みの準備をしますか?」

「大丈夫、陛下が全身拭いてくれたから」

「ではお食事を運ばせます」

閨事を再開してからは毎日のように陛下が来る。
八割方私を抱いて、残りは一緒に寝るだけ。
来ない日はモアナ様のところへ行っているのだろう。妊娠が判明したシャンティ様は当面無い。

二度目の閨事は まだ痛かった。
初夜から日が空いていたことも要因かもしれない。
痛みを我慢していると知った陛下に叱られた。
中断すると初夜で使った液体を直接注がれた。本来は飲むが塗ってもいいらしく、痛みを無くす即効性がある。
よく馴染ませると続きをした。
今度は正気なので 何をされているのかしっかり頭にも刻まれた。

三度目からはよく解せば痛みは無く、徐々に快楽を拾いやすくなってきた。
もう私の体は陛下に与えられる快楽の味を覚えてしまい、陛下が来ると期待で勝手に潤うようになっていた。

男の体は単純だなと思っていたけど、結局 私の身体も単純だった。
傷付きたくないから愛したくないのに麻痺してしまう。

「陛下は?」

「3時間前に朝食をとりに戻られました。今頃はお仕事かと」

私を起こさないよう、そっと起きて陛下の部屋か食堂で食べているらしい。
起こしてと何度か言ったけど、“ピピが可愛くて起こせない”と拒否され、ペルペナに頼んでも“皇帝命令ですし、私もユピルピア様の愛らしい寝顔が好きなので”と言って起こしてくれない。
ギリグスに頼んだら、“僕の屍を城門に飾りたいのですね?”と言われて諦めた。

自力で早く起きればいいことなのだが、閨事が再開してから4ヶ月も経つのに 陛下が楽しむようにじっくりと時間をかけて抱くので疲れて起きられない。

そして気になることが一つ。
月のモノが来ていない。
避妊薬を飲んでいるから、ストレスだろうと思っていた。


だけど、翌夜。

「ピピ、愛してる」

「ああっ!」

「ピピ!…もう…」

「んっ!」


注ぎ終わり、陛下が私のナカから抜いた後、直ぐに痛みに襲われた。

「痛い!」

「ピピ!?」

「痛い!痛い!」

「ピピ!!」

陛下を振り払い、急いでトイレに駆け込んだ。

「オエッ オエッ」

「医者を呼べ!!直ぐに来させろ!!」

部屋のドアを開けて陛下が大声を出していた。
ペルペナがし入室して私の髪をひとまとめにして背中を摩る。一旦落ち着くとベッドに運ばれた。


少しして宮廷医が駆け込んできた。
診察を始めた。取りに行く薬などを告げると助手は走っていった。

「痛い…痛いの」

「ユピルピア様、こちらをお飲みください」

多分痛みを遮断する丸薬だ。
助手が戻ってくる頃には効き始めていた。

宮廷医は再度腹の音を聞くと、内診をすると言った。

「ピピ!!」

陛下が狼狽えている。

「陛下、落ち着いてください。陛下の動揺がユピルピア様に影響します。ペルペナ様のように落ち着いて、ユピルピア様の手を握るなりして支えになってください」

「す、すまない」

陛下の顔は蒼白で、いつもの温かい手は少し冷たかった。

洗浄されているのがわかる。
その後は広げる器具を入れられて覗かれた。
恥ずかしい。
横で助手が混ぜ合わせた薬を奥に塗られた。

そして薬湯も淹れてくれた。
飲んだことのない味だった。

一旦ソファに移され、シーツなどが交換されるとベッドに戻された。

「痛みはどうですか」

「今は感じません」

「吐き気は?」

少しムカムカするくらいです。


一呼吸おくと宮廷医は陛下と私を交互に見てから診断を告げた。

「ご懐妊です。おめでとうございます」

「ピピが?」

「避妊薬を飲んでいたのに」

「避妊薬は100%効果があるわけではありません。100%に近いというだけで非常に稀に妊娠に至る女性がいらっしゃいます。
最初の嘔吐は強い腹痛から誘発したものですが、悪阻も始まるかもしれません。
今回は流産の症状です。安静にしてください。
陛下、安静に!ですよ」

私にではなく皇帝陛下に注意を促す宮廷医に好感を覚えた。

「すまない、ピピ」

「妃の役目ですから」

「そうじゃない。ピピを愛しているから繋がりたいし、俺の子を産んで欲しいんだ。跡継ぎとか役目とか関係ない。
分かるな」

「……」

「ピピはまだ若いし、ゆっくり時間をかけて関係を築きたかった。ピピに愛してもらってから子を作りたかった。
でも欲望に負けて確率を上げてしまった。申し訳ない。

何も心配せず、ゆっくり体を休めなさい。
ペルペナ、ギリグス、頼んだぞ」

「「かしこまりました」」


次の診察のときに宮廷医が教えてくれた。
避妊薬の効果が100%ではないことは皇族や高位貴族では常識で、特に皇帝は気を付けねばならない。
妃を複数娶るし、後宮もあるし、お手付きもある。
後継者争いを引き起こしやすく国が荒れるのだとか。

昔の記録で、他国の妃に手を付けて孕ませたり、成人前の孫に欲情して孕ませたり、戦争中に敵国の捕虜の中で一番若くて綺麗な娘を皇子専属にした結果 孕ませたり、母や姉妹と関係を持って孕ませたという記録もあるそうだ。
ちなみに いくら皇帝や皇子の子だとしても、近親相姦の末に産まれる子は死産にする決まりなのだとか。

だから皇族は体内での吐精を避け、一晩に一回に止め避妊薬を確実に飲ませるよう、精通時と成人の時と二度教育される。

だから皇帝アレクサンドルも皇子のときからそうしてきた。
皇帝になってからも、後宮の女達を召すが絶対に外に吐精し、一回で終わらせた。
一回だからと吐精を我慢して長引かせるということも禁じられている。漏れの懸念かららしい。

それはモアナ様もシャンティ様も同じだ。
なのに彼は私のナカに注いだし、一回では終わらないことも多い。初夜もその後も。



数ヶ月後。

そろそろ出産という感じになってきた。
悪阻のせいで食欲がなく 苦労した。
シャンティ様の臨月のお腹より小振りだと思う。
シャンティ様は先に皇女を産んでいる。

「ユピルピア様、お客様です。お見舞いに来てくださったそうです」

「どなた?」

「……」

誰も何も教えてくれない。

皇帝陛下同席で、私室に見舞客を迎えた。

「ユピルピア!」

「お母様!?」

「ユピルピア、おめでとう」

「ううっ…お父様…」

2人の顔を見て、涙が溢れてきてしまった。

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