【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ

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毒殺未遂

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確かに母国のために後宮入りしたけれど。

「ペルペナ様、こちらは何処へ置きましょう」

「衣装部屋に置いてください」

以前は伯爵家の子息と婚約していたし

「あ、それには手を触れないでください、ユピルピア様の特注品で中身はガラス製品です」

愛がなくても結婚して、初夜を迎えて夫に抱かれ子を産む。当たり前のことだし覚悟はしていた。

「こちらは特注の棚が届くことになっておりますので、物を置かずに空けておいてください」

「こんなに広くですか?」

私が言葉選びを間違えた後、何故か互いに意味を履き違えているのに会話が成り立ち、あんなことになってしまった。

「はい。皇帝陛下より、ユピルピア様を驚かせたいから内緒にするようにと指示がございました。具体的なことは申し上げられませんが」

「承知しました」

白い献上品だと油断していた。

「ユピルピア様、仮引越しは終わりました」

家具が揃うまで後宮にいることにした。それは言い訳で、どう接していいのか分からなくて時間が欲しかった。

「今のうちに後宮ここを満喫しましょう。向こうに行ったら多分戻ることはないもの」

興味が失せたら後宮じゃなくて辺鄙な場所に軟禁されるかもしれない。
皇妃は皇帝にとってまだそんな位置付けのはず。


「ユピルピア様、明日の昼に 他の女性方からお祝いとお別れ会をしたいと申し出がございました」

「……分かったわ」

私とモアナ様とシャンティ様が皇妃に昇格したので、早速他の18名に帰国命令が出された。
全員お手付きがあったので慰労金を持たせるらしい。

今後のために仲良くしておこうということかしら。


翌日の昼、食堂へ行くと18カ国の女性が待っていた。

「お招きありがとうございます。
モアナ様とシャンティ様は?」

「お二人は帝国人です。
今日は献上品同士だった私達で過ごしませんか。もうすぐ散り散りになって、おそらく再会は望めないでしょう」

後宮にいて身体を捧げて用済みとして帰される彼女達を外交の場に出すわけがない。
彼女達は純潔ではなく、皇帝の性欲を散らすために身体を差し出した。
どんな男も慰みものになった女など欲しくもない。
美しさはもはや武器にはならず、持参金もしくは支援金か彼女達の実家との繋ぎのために望まれるか。

外交ができるような身分や地位の男性ひとの元へ嫁げる可能性があるのは王女くらい。

「そうですわね」

食事を進めていくとスープが配膳された。
通常出されるスープとは違い、かなり濃厚なものだった。まるで肉料理の煮込みの肉無しのような濃くドロっとしたスープ。

他の方達は皆 スープを口に入れていた。

もしかしたら帝国の伝統スープか何かかもしれない。

スプーンを持ち、口に運ぶ。
ひと口、ふた口…

「そういえばユピルピア様は、皇帝陛下とご自身は白い関係だと仰っておりましたが嘘でしたのね」

ヴィヴィアン様は微笑んではいるが瞳が怒りを滲ませていた。

「そのはずでした」

「狡猾でしたわ。私達を騙して出し抜いて。
さすが田舎小国の王女ですこと」

「……」

「図々しく本宮へ行って、陛下を誑かして、もったいぶった挙句に股を開いて。私達にはとても真似できませんわ」

「最後ですよ。最低限の礼儀をお願いします」

「貴女が他の皇妃を選んだのでしょう?
陛下は私を召してくださっていたのですから、私を昇格させるべきでした。陛下がベッドでどれだけ私を愛してくださっていたか」

アイリス様はそう言ってワインを一気に飲み干し、もう一杯と合図を送る。

無駄な時間になったわね。

「お祝いとかお別れ会といったものとはかけ離れましたわね。趣旨が違うようですので私は失礼いたします」

ナプキンをテーブルに置き 立ち上がった瞬間、強烈な吐き気が襲った。

「グッ!ウッ!」

慌てて廊下に出たが、トイレまで間に合わずに嘔吐した。

「ユピルピア様!!」

廊下で待っていたペルペナが駆け付けた。

「ペルペナ…」

「そこのあなた!急いで皇帝陛下に知らせて!皇妃様が毒を盛られたとお伝えして!!
そちらのあなた!ユピルピア様を部屋にお運びして!!早く!!」

毒?

下を見ると吐瀉物が血で染まっていた。
色も悪い。

「ペルペナ」

「皇妃様、失礼いたします」

兵士が私を抱き上げた。

「ペルペナ、モアナ様とシャンティ様を守って」

「かしこまりました」


お父様、お母様、お兄様…先ゆく不幸をお許しください。



お別れの言葉を神様に言伝したのに…

「オエッ」

「ユピルピア様、全部出してください」

「オエーッ」

ペルペナが容赦のない応急処置をする…

「こちらを全部飲んで胃の中で混ぜてから、また全部吐き出してください」

「混ぜ…ゴボゴボゴボゴボ」

ペルペナは無理矢理洗浄液を飲ませた。

どうやって混ぜるの!
これじゃあ、拷問じゃない!
何で毒なんか盛ったのよ!
首を切り落とすなり、心臓を貫いてくれたら良かったのに!!

「兵士様、ユピルピア様を揺すって!早く!」

「は、はい!」

胴に手を添え持ち上げられ撹拌された。

「た、助けて…」

「降ろしてください。

さあ、ユピルピア様、オエーっとしましょうね」

そんな幼子に言うみたいに言っても、やることは拷問だからね?

「オエーッ」


4度目はもう固形物も無く、血も薄かった。

「次は吐き出さないでください。止血剤と粘膜保護剤です。解毒は少しお待ちください。特定して参ります」

そう言うとペルペナは剣を抜き、部屋を出ようとしてドアを開けた。

「ピピ!!」

皇帝陛下が息を切らして駆け付けてくれた。

「ピピ!ピピ!!」

「皇帝陛下にご挨拶を申し上げます。
ユピルピア様の応急処置は済ませました。
今から毒の特定をしに行きます。
後宮の女達の指を落として参ります。
反応した女の部屋の捜索をします。
使用人が持っている場合もありますので、使用人にも同じことをします。それでも駄目なら死なないように更に切り刻みます。
急ぎますのでご容赦願います」

「俺も行こう。その方が早く済む。
其方達は皇妃の世話を、2人はこの部屋を守れ。残りはついて来い」

ペルペナは皇帝陛下と陛下の護衛を連れて行ってしまった。
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