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お渡り
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ティータイムにお菓子を持ってモアナ様とシャンティ様が突然訪ねて来た。
もしかしたらお詫びのつもりかも知れないとベルベナに耳打ちをされた。
「帝国のお菓子なの…です。お口に合うといいのですが」
「ありがとうございます」
「不自由はしていませんか」
「することがありませんが、不自由はありません」
「あの、部屋の入り口に飾ってあるものは…」
「お渡り無しの証明書ですわ」
「初めて耳にしますが」
「献上品が多いから、全部相手にするのは面倒だったのでしょう。閨事の希望を聞かれたので“無しで”と返答しましたの。一応 献上品の身ですから問題にならないよう書面化してみました」
「そ、そうですか」
「本当にそれでよろしいので?」
「はい。ここで余生を穏やかに過ごしたいと思います。追い出されるまでは」
「追い出される!?」
「皇帝の交代があったり、要らないと言われるかもしれませんから」
「……」
「何だかこのお部屋、質素過ぎやしませんか?」
私は小声で2人に教えた。
「(仕方ないんです。財政難ですから)」
「「え!?」」
「(ドレスを買ったら家具を注文できないらしいのです)」
「どんな家具ですか?」
「特注ではありますが然程高くはありません。あのソファよりも安いらしいです。商人が言っていましたから」
「ド、ドレスがよっぽど豪華なのかしら」
「私、ドレスを注文していないんです。するつもりもありません。クローゼットをみますか?」
ワンピースドレスを見せると2人は顔を見合わせていた。
「これはこちらで?」
「祖国でまとめて作って持参しました。
こちらでの購入は椅子のようなものと調薬器具くらいです」
「お薬を調合できるのですか?」
「はい。薬草をブレンドします」
「器具がお高いとか」
「多分、モアナ様かシャンティ様のお召しのドレスより安いはずです」
「……」
「後宮の維持も大変ですよね。いっそのこと変な慣習は無くして簡素化なさったらよろしいかと思うのですが、従属国の私が口にすることではありませんね。食事の見直しも提案しました。せめて節約に協力しようと思います」
モアナ様とシャンティ様がこの部屋で夕食を食べたいと言うので用意してもらった。パン1つ スープ(クズ野菜)1品 野菜と肉の煮込み(肉少なめ)1品 デザートは果物を少し。
「クズ野菜と言っても野菜は野菜。歯応えが良くてお腹が満たされますし、お肉は贅沢に食べきれない程のステーキにしなくても、煮込みに3口分もあれば十分です。デザートは砂糖やバターを無駄に消費しますからフルーツをいただきます。葡萄なら5粒あれば満足ですし、苺なら2、」
「ううっ…」
「ひぐっ」
「モアナ様!シャンティ様!どうなさったのですか!?」
「他国の王女様がこんなに努力していらしたのに、私達は祖国にとんでもない負担をかけておりました」
「料理は食べきれない程いつも用意させて…馬鹿でした」
「着もしないドレスを無駄に作って…愚かでしたわ」
「小国の王女様の個人資産に手を付けなくてはならない程だなんて」
「私、お父様に帝国の将来を公爵としてしっかり考えて 立て直せるよう尽力して欲しいと手紙を書きますわ」
「私もお母様に散財は止めて城に寄付しろと手紙を書きますわ。食材の寄付もいいかもしれませんわね」
「それはお伺いを立てた方がよろしいかも知れません。もし、賄賂扱いになったら困りますから」
「そ、そうよね」
「しっかり味わって、食べ物の恵みに感謝しながら食べましょう」
「美味しいっ、美味しいわっ」
「トマトが愛らしく見えるわ」
【 エルダの視点 】
帝国の貴族であるモアナ様とシャンティ様がユピルピア様の部屋で食事を摂ると聞いて、慌てて様子を見に来た。
血の気が引いた。揉め事が起こるのではと心配して来たのに、サイモン後宮長が懸念したことが目の前で起きているのだ。明日には外部に話が伝わり、数日内に“帝国財政難”と言う見出しの新聞が発行されるだろう。
慌ててサイモン後宮長に知らせに向かう途中、皇帝陛下とサイモン後宮長にニ階のお渡り用の廊下でお会いできた。
「サイモン後宮長、どちらに」
「ユピルピア様の部屋だ」
「現在モアナ様とシャンティ様がいらしていて食事を召し上がっております。今の状態でお部屋へ向かうのは避けた方がよろしいかと」
「どういうことだ」
「ま、先ずは後宮長にご報告を、」
「いいから説明しろ」
「ユピルピア様とは閨事は無しという契約をなさいました。それをモアナ様もシャンティ様もご存知です。何か理由が無くては契約を破りに来たと勘違いをなさるかもしれません。
そしてもう一つ、大事なご報告がございますが、廊下ではちょっと」
近くの応接間に入り、状況を説明した。
「やっぱり…」
後宮長が項垂れた。
「では、既にユピルピアの部屋では帝国が財政難ということになっていて、モアナとシャンティに受け継がれているのだな?」
「はい。ご家族にも手紙を出すと仰っておりました」
「理由が出来た。行くぞ」
皇帝陛下は応接間を出て一階に降りて、奥のユピルピア様の部屋に到着した。ノックをするとユピルピア様の侍女ベルベナがドアを開けた。
ベルベナは跪き挨拶をした。
「其方…」
「陛下、先ずはユピルピア様に」
「其方の主人の元へ案内してくれ」
「かしこまりました」
もしかしたらお詫びのつもりかも知れないとベルベナに耳打ちをされた。
「帝国のお菓子なの…です。お口に合うといいのですが」
「ありがとうございます」
「不自由はしていませんか」
「することがありませんが、不自由はありません」
「あの、部屋の入り口に飾ってあるものは…」
「お渡り無しの証明書ですわ」
「初めて耳にしますが」
「献上品が多いから、全部相手にするのは面倒だったのでしょう。閨事の希望を聞かれたので“無しで”と返答しましたの。一応 献上品の身ですから問題にならないよう書面化してみました」
「そ、そうですか」
「本当にそれでよろしいので?」
「はい。ここで余生を穏やかに過ごしたいと思います。追い出されるまでは」
「追い出される!?」
「皇帝の交代があったり、要らないと言われるかもしれませんから」
「……」
「何だかこのお部屋、質素過ぎやしませんか?」
私は小声で2人に教えた。
「(仕方ないんです。財政難ですから)」
「「え!?」」
「(ドレスを買ったら家具を注文できないらしいのです)」
「どんな家具ですか?」
「特注ではありますが然程高くはありません。あのソファよりも安いらしいです。商人が言っていましたから」
「ド、ドレスがよっぽど豪華なのかしら」
「私、ドレスを注文していないんです。するつもりもありません。クローゼットをみますか?」
ワンピースドレスを見せると2人は顔を見合わせていた。
「これはこちらで?」
「祖国でまとめて作って持参しました。
こちらでの購入は椅子のようなものと調薬器具くらいです」
「お薬を調合できるのですか?」
「はい。薬草をブレンドします」
「器具がお高いとか」
「多分、モアナ様かシャンティ様のお召しのドレスより安いはずです」
「……」
「後宮の維持も大変ですよね。いっそのこと変な慣習は無くして簡素化なさったらよろしいかと思うのですが、従属国の私が口にすることではありませんね。食事の見直しも提案しました。せめて節約に協力しようと思います」
モアナ様とシャンティ様がこの部屋で夕食を食べたいと言うので用意してもらった。パン1つ スープ(クズ野菜)1品 野菜と肉の煮込み(肉少なめ)1品 デザートは果物を少し。
「クズ野菜と言っても野菜は野菜。歯応えが良くてお腹が満たされますし、お肉は贅沢に食べきれない程のステーキにしなくても、煮込みに3口分もあれば十分です。デザートは砂糖やバターを無駄に消費しますからフルーツをいただきます。葡萄なら5粒あれば満足ですし、苺なら2、」
「ううっ…」
「ひぐっ」
「モアナ様!シャンティ様!どうなさったのですか!?」
「他国の王女様がこんなに努力していらしたのに、私達は祖国にとんでもない負担をかけておりました」
「料理は食べきれない程いつも用意させて…馬鹿でした」
「着もしないドレスを無駄に作って…愚かでしたわ」
「小国の王女様の個人資産に手を付けなくてはならない程だなんて」
「私、お父様に帝国の将来を公爵としてしっかり考えて 立て直せるよう尽力して欲しいと手紙を書きますわ」
「私もお母様に散財は止めて城に寄付しろと手紙を書きますわ。食材の寄付もいいかもしれませんわね」
「それはお伺いを立てた方がよろしいかも知れません。もし、賄賂扱いになったら困りますから」
「そ、そうよね」
「しっかり味わって、食べ物の恵みに感謝しながら食べましょう」
「美味しいっ、美味しいわっ」
「トマトが愛らしく見えるわ」
【 エルダの視点 】
帝国の貴族であるモアナ様とシャンティ様がユピルピア様の部屋で食事を摂ると聞いて、慌てて様子を見に来た。
血の気が引いた。揉め事が起こるのではと心配して来たのに、サイモン後宮長が懸念したことが目の前で起きているのだ。明日には外部に話が伝わり、数日内に“帝国財政難”と言う見出しの新聞が発行されるだろう。
慌ててサイモン後宮長に知らせに向かう途中、皇帝陛下とサイモン後宮長にニ階のお渡り用の廊下でお会いできた。
「サイモン後宮長、どちらに」
「ユピルピア様の部屋だ」
「現在モアナ様とシャンティ様がいらしていて食事を召し上がっております。今の状態でお部屋へ向かうのは避けた方がよろしいかと」
「どういうことだ」
「ま、先ずは後宮長にご報告を、」
「いいから説明しろ」
「ユピルピア様とは閨事は無しという契約をなさいました。それをモアナ様もシャンティ様もご存知です。何か理由が無くては契約を破りに来たと勘違いをなさるかもしれません。
そしてもう一つ、大事なご報告がございますが、廊下ではちょっと」
近くの応接間に入り、状況を説明した。
「やっぱり…」
後宮長が項垂れた。
「では、既にユピルピアの部屋では帝国が財政難ということになっていて、モアナとシャンティに受け継がれているのだな?」
「はい。ご家族にも手紙を出すと仰っておりました」
「理由が出来た。行くぞ」
皇帝陛下は応接間を出て一階に降りて、奥のユピルピア様の部屋に到着した。ノックをするとユピルピア様の侍女ベルベナがドアを開けた。
ベルベナは跪き挨拶をした。
「其方…」
「陛下、先ずはユピルピア様に」
「其方の主人の元へ案内してくれ」
「かしこまりました」
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