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違います
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「おめでとう」
「違います」
「おめでとう」
「違います」
「おめでとう」
「違います」
侯爵領から戻り、フェリシアンは辺境へ戻り、あれから1週間。何故か私とフェリシアンが婚約したと噂が立っていた。
“おめでとう”と声をかけられる度に否定しなくてはならない。
宰相執務室のメンバーには、フェリシアンの女避けに使われただけだと説明した。
「失礼します。クリス王太子殿下がお呼びです」
私「閣下、お呼びだそうです」
「ヴェリテ公女をご指名です」
私「私的な用事でしたら改めますとお伝えください」
宰「いいから今すぐ行ってきなさい」
私「閣下 酷い!」
兄「今 回避しても直ぐに乗り込んで来るぞ」
私「…行って来ます」
従兄のクリス兄様は怒ると 目が笑っていない微笑みで私を追い詰める。
覚悟を決めて連れて行かれたのは執務室でも応接間でも居間でもなく、クリス兄様の私室だった。
「二人きりにしてくれ」
「かしこまりました」
クリス兄様の侍従が退室してしまった。
「おいで」
「クリス兄様…」
「頼むから早くこっちに来て座ってくれ」
ソファに座るクリス兄様は自分の隣を叩いて、苛立ちを隠しきれない口調で 横に座れと促した。
初めてのことに 別の場所に座りたかったがクリス兄様の顔は微笑んではいなかった。
隣に座ると膝に肘を付き 手を組み 下を向いたクリス兄様は低い声で質問をした。
「どういうことだ」
「……何がですか」
「ユニルドール侯爵領に行ったことは知っている。
バロウ伯爵とどうなっているんだ」
「噂のことですか?」
「噂もそうだが、バロウ伯爵と同行するなんて」
「婚約していません。
ユニルドール家に嫁いできた夫人に言い寄られているからと女避けの盾にされただけです。
それに母の依頼で同行になりました」
「本当か?」
「本当です」
「はぁ……」
大きな溜息を吐くと私の肩に手を回して引き寄せた。
チュッ
頭にキスをされ
チュッ額にキスをされ
「!!」
顔を上に向けられてキスを落とされた先は
チュッ
ほぼ口の端だった。
ビックリした!!
クリス兄様の目が怖くて動けない…
クリス兄様はコツンと額を合わせて 消えそうな声を出した。
「シェイナ…膝の上に乗せたい」
「…はい」
私を膝の上に乗せるとギュッと抱きしめて首筋に顔を埋めた。
「あんまり早く大人にならないで」
「兄様?」
「可愛いシェイナをこうやって抱きしめて愛でていたいんだ。いろいろな疲れが吹っ飛んで楽になる。
お願いだから子供のままでいてくれ」
いや…もう成人したじゃないですか。
「もう働いていますよ?」
「シェイナ…お願いだ」
「努力します?……あっ」
さらにギュッと力を込められた。
スーッと息を吸い込む音がする。
シェイナは 家族を置き去りにしないように大人になれ といった意味の忠告をローエンからもらっていたのを思い出した。
「クリス兄様、お辛いことがあったのですか?」
「あった。心臓ごと胸を潰されるかと思った」
そんなに!?
「相談できる人はいないのですか?」
「しても意味が無い。それよりアレを頼む」
「……」
「シェイナ、元気の素をくれないか」
クリス兄様の首に腕を回して抱きついて、
「クリス 大好き」
と言うと、“私も大好きだ”と返して 私を抱きしめ続けた。
【 バロウ軍のある騎士の視点 】
うちの主人は人が変わった。
女を食っては捨てる。
味わうわけではない。空腹を満たしているだけといった感じだった。
それなのに……
『ちょっと、フェリシアン!あっち行って』
『嫌だよ。離れるわけないだろう』
まだ少女と言っても過言ではない公女に執着している。
何を言われても嬉しそうだし、何をされても楽しそうに笑う。
長く勤める者も こんな主人は初めてだと言う。
公女に丁寧にエスコートできるし、優しくもできて世話を焼けるほど気も利く。
公女に見せる姿を女達が知ったら さらにモテるだろう。
色気が抑えきれない主人に愛を囁かれて、俺達から見ても こんな男から言い寄られて落ちない女がいるのかと思うが、此処にいる。
公女は若過ぎて分からないのかもしれない。
ユニルドール侯爵邸で ある作戦を言い渡された。
主『アリオン、代わりに俺たちの客室で寝ろ。
夜這いを掛けられたら遠慮なくヤれ』
ア『は?』
羨ましい任務だと騎士達は思った。
ア『多分、直ぐ出ちゃいますよ?
しかも一度出すとしばらく復活しません』
情けない男だな。
まあ、用が済めば捨ててしまう主人とは違い、女に目もくれず真面目に仕えているもんな。
主『予備を決めよう。立候補する者は?』
護衛騎士全員が挙手をした。
マイリス夫人の最初のドレスの色を言い当てた俺が予備となった。
暗闇で、マイリス夫人の夜這いを待つ。
既にムスコは臨戦態勢で空振りだった時が辛い!
予想通り、女が入って来た。
暗くて分からないが多分マイリス夫人だろう、ベッドに入りアリオンとヤり始めた。
アリオンが使い物にならなくなったので、四つん這いにさせて突っ込んだ。
尻を掴み激しく腰を振った。
貴族の女の体を遠慮なく味わった。
アリオンの後という部分に目を瞑れば、前戯要らずで良かった。
ヤり終えると女は退室した。
便利な女だ。終わるとサッサと消えてくれるなんて。
闇に慣れた目でアリオンを探すとソファで寝ていた。
ある意味 大物だな。
『下半身くらいしまえ』
寝具を掛けてやった。
翌日、主人に報告した。
『アリオンは?』
『寝てます』
『仕方ないな』
主人はアリオンに甘い。
苦言でも伝えないと……。
『は?俺がアリオンに甘い?』
『はい』
『よし、では今からアリオンの仕事をお前に任せよう。
観光しながら宿に泊まる。シェイナが喜びそうな場所でスムーズに巡れるルートを直ぐ考えて紙に書いて渡してくれ。それを他の護衛に指示しろ。
先にこの領地で一番良い宿に部屋をとってこい。お前達の分もとれ。取らなきゃ野宿になるぞ。無理なら二番目でもいい。屋敷から遠い宿は除け。
アリオンに相談だけはしていいぞ。
あいつは出発前に滞在する領地と 立ち寄る領地、通過するだけの領地と分けて下調べをして頭に入れている。
通過するだけのはずだった領地に宿泊が決まっても対応できるぞ。
帰りも王都まで任せるから、そのつもりでいろ。
その間にもあれこれ用事を告げるからな』
確かに……確かに思い出せば、主人が急に言い出してアリオンが文句言いながら対応していた。
宿を取りに行ったが、
『今夜ですか!?満室ですよ』
『何とかならないのか』
『なりません』
『へ、』
辺境伯と言おうとしたらアリオンに止められた。
『(名を出せば評判にかかわります。
地位を使うことなく脅すこともなく予約できないと駄目ですよ)』
結局ギブアップして、アリオンに任せた。
主人と公女を安宿に泊まらせるわけにはいかなかったからだ。
一番の宿は駄目だったが、二番目の宿に泊まれた。
ユニルドール邸に戻って早々に跪き謝罪をした。
アリオン殿は寝ずに主人の対応をすることがよくあるから、旅先では寝れる時に寝ておくことにしていると教えてもらった。
辺境に戻ったら、アリオンに食事と酒を奢ろうと心に決めた。
「違います」
「おめでとう」
「違います」
「おめでとう」
「違います」
侯爵領から戻り、フェリシアンは辺境へ戻り、あれから1週間。何故か私とフェリシアンが婚約したと噂が立っていた。
“おめでとう”と声をかけられる度に否定しなくてはならない。
宰相執務室のメンバーには、フェリシアンの女避けに使われただけだと説明した。
「失礼します。クリス王太子殿下がお呼びです」
私「閣下、お呼びだそうです」
「ヴェリテ公女をご指名です」
私「私的な用事でしたら改めますとお伝えください」
宰「いいから今すぐ行ってきなさい」
私「閣下 酷い!」
兄「今 回避しても直ぐに乗り込んで来るぞ」
私「…行って来ます」
従兄のクリス兄様は怒ると 目が笑っていない微笑みで私を追い詰める。
覚悟を決めて連れて行かれたのは執務室でも応接間でも居間でもなく、クリス兄様の私室だった。
「二人きりにしてくれ」
「かしこまりました」
クリス兄様の侍従が退室してしまった。
「おいで」
「クリス兄様…」
「頼むから早くこっちに来て座ってくれ」
ソファに座るクリス兄様は自分の隣を叩いて、苛立ちを隠しきれない口調で 横に座れと促した。
初めてのことに 別の場所に座りたかったがクリス兄様の顔は微笑んではいなかった。
隣に座ると膝に肘を付き 手を組み 下を向いたクリス兄様は低い声で質問をした。
「どういうことだ」
「……何がですか」
「ユニルドール侯爵領に行ったことは知っている。
バロウ伯爵とどうなっているんだ」
「噂のことですか?」
「噂もそうだが、バロウ伯爵と同行するなんて」
「婚約していません。
ユニルドール家に嫁いできた夫人に言い寄られているからと女避けの盾にされただけです。
それに母の依頼で同行になりました」
「本当か?」
「本当です」
「はぁ……」
大きな溜息を吐くと私の肩に手を回して引き寄せた。
チュッ
頭にキスをされ
チュッ額にキスをされ
「!!」
顔を上に向けられてキスを落とされた先は
チュッ
ほぼ口の端だった。
ビックリした!!
クリス兄様の目が怖くて動けない…
クリス兄様はコツンと額を合わせて 消えそうな声を出した。
「シェイナ…膝の上に乗せたい」
「…はい」
私を膝の上に乗せるとギュッと抱きしめて首筋に顔を埋めた。
「あんまり早く大人にならないで」
「兄様?」
「可愛いシェイナをこうやって抱きしめて愛でていたいんだ。いろいろな疲れが吹っ飛んで楽になる。
お願いだから子供のままでいてくれ」
いや…もう成人したじゃないですか。
「もう働いていますよ?」
「シェイナ…お願いだ」
「努力します?……あっ」
さらにギュッと力を込められた。
スーッと息を吸い込む音がする。
シェイナは 家族を置き去りにしないように大人になれ といった意味の忠告をローエンからもらっていたのを思い出した。
「クリス兄様、お辛いことがあったのですか?」
「あった。心臓ごと胸を潰されるかと思った」
そんなに!?
「相談できる人はいないのですか?」
「しても意味が無い。それよりアレを頼む」
「……」
「シェイナ、元気の素をくれないか」
クリス兄様の首に腕を回して抱きついて、
「クリス 大好き」
と言うと、“私も大好きだ”と返して 私を抱きしめ続けた。
【 バロウ軍のある騎士の視点 】
うちの主人は人が変わった。
女を食っては捨てる。
味わうわけではない。空腹を満たしているだけといった感じだった。
それなのに……
『ちょっと、フェリシアン!あっち行って』
『嫌だよ。離れるわけないだろう』
まだ少女と言っても過言ではない公女に執着している。
何を言われても嬉しそうだし、何をされても楽しそうに笑う。
長く勤める者も こんな主人は初めてだと言う。
公女に丁寧にエスコートできるし、優しくもできて世話を焼けるほど気も利く。
公女に見せる姿を女達が知ったら さらにモテるだろう。
色気が抑えきれない主人に愛を囁かれて、俺達から見ても こんな男から言い寄られて落ちない女がいるのかと思うが、此処にいる。
公女は若過ぎて分からないのかもしれない。
ユニルドール侯爵邸で ある作戦を言い渡された。
主『アリオン、代わりに俺たちの客室で寝ろ。
夜這いを掛けられたら遠慮なくヤれ』
ア『は?』
羨ましい任務だと騎士達は思った。
ア『多分、直ぐ出ちゃいますよ?
しかも一度出すとしばらく復活しません』
情けない男だな。
まあ、用が済めば捨ててしまう主人とは違い、女に目もくれず真面目に仕えているもんな。
主『予備を決めよう。立候補する者は?』
護衛騎士全員が挙手をした。
マイリス夫人の最初のドレスの色を言い当てた俺が予備となった。
暗闇で、マイリス夫人の夜這いを待つ。
既にムスコは臨戦態勢で空振りだった時が辛い!
予想通り、女が入って来た。
暗くて分からないが多分マイリス夫人だろう、ベッドに入りアリオンとヤり始めた。
アリオンが使い物にならなくなったので、四つん這いにさせて突っ込んだ。
尻を掴み激しく腰を振った。
貴族の女の体を遠慮なく味わった。
アリオンの後という部分に目を瞑れば、前戯要らずで良かった。
ヤり終えると女は退室した。
便利な女だ。終わるとサッサと消えてくれるなんて。
闇に慣れた目でアリオンを探すとソファで寝ていた。
ある意味 大物だな。
『下半身くらいしまえ』
寝具を掛けてやった。
翌日、主人に報告した。
『アリオンは?』
『寝てます』
『仕方ないな』
主人はアリオンに甘い。
苦言でも伝えないと……。
『は?俺がアリオンに甘い?』
『はい』
『よし、では今からアリオンの仕事をお前に任せよう。
観光しながら宿に泊まる。シェイナが喜びそうな場所でスムーズに巡れるルートを直ぐ考えて紙に書いて渡してくれ。それを他の護衛に指示しろ。
先にこの領地で一番良い宿に部屋をとってこい。お前達の分もとれ。取らなきゃ野宿になるぞ。無理なら二番目でもいい。屋敷から遠い宿は除け。
アリオンに相談だけはしていいぞ。
あいつは出発前に滞在する領地と 立ち寄る領地、通過するだけの領地と分けて下調べをして頭に入れている。
通過するだけのはずだった領地に宿泊が決まっても対応できるぞ。
帰りも王都まで任せるから、そのつもりでいろ。
その間にもあれこれ用事を告げるからな』
確かに……確かに思い出せば、主人が急に言い出してアリオンが文句言いながら対応していた。
宿を取りに行ったが、
『今夜ですか!?満室ですよ』
『何とかならないのか』
『なりません』
『へ、』
辺境伯と言おうとしたらアリオンに止められた。
『(名を出せば評判にかかわります。
地位を使うことなく脅すこともなく予約できないと駄目ですよ)』
結局ギブアップして、アリオンに任せた。
主人と公女を安宿に泊まらせるわけにはいかなかったからだ。
一番の宿は駄目だったが、二番目の宿に泊まれた。
ユニルドール邸に戻って早々に跪き謝罪をした。
アリオン殿は寝ずに主人の対応をすることがよくあるから、旅先では寝れる時に寝ておくことにしていると教えてもらった。
辺境に戻ったら、アリオンに食事と酒を奢ろうと心に決めた。
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