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もはや恋人?

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「で? 教えてくれないのか?」

「何を」

「シェイナが心に抱えている何か」

「時が解決します」

「男じゃないよな?」

「……」

「俺というものがいながら…」

「フェリシアンはフェリシアンでしょう」

「相手の男に女が?」

「うるさい」

「…なあ、まさかセヴリアン殿じゃあないよな?」

「……」

新聞を見たのね。

「セヴリアン殿と勝負したら勝つ自信無いな」

「リン兄様に言わないでよ」

「“時が解決する”ってことは諦めるってことだよな。俺が忘れさせよう」

「はぁ」


バロウ辺境伯の護衛騎士達に守られながら馬車を走らせていた。お母様が気晴らしにと小旅行を提案してくれた。

向かう先はユニルドール侯爵家の領地だ。ユニルドールの特産品の布をヴェリテお母様が買い付けている。その布地で部屋着などを作っているのだ。

今回は侯爵夫妻の婚姻30周年祝いのパーティをするということで、出席の返事を出していたお母様が私に譲った。

先方のお屋敷に2泊する予定だったらしい。

“私は風邪を引いたことにしてちょうだい”と言ってお詫びの手紙を私に持たせた。

フェリシアンをパートナーにして代理出席する。

“面倒くさい方が気が紛れるわよ”

確かに面倒くさいがお母様のいう通りかもしれない。


ユニルドール侯爵家は、当主ウィリアム 妻セイラ 長男カルファン 長女エリーゼ 次男ユリス 次女クララ。

当主補佐をしながら学んでいるカルファンには妻がいて、ユリスとクララは学園生。エリーゼは卒業していて婚儀待ちらしい。

婚姻30周年祝いだから全員揃っているかもと教えてくれた。クララは私と同い歳で婚約は未だのようだ。


馬車が門を通過して屋敷の正面に到着すると夫妻と使用人達が迎えに出てくれた。

侯「ようこそおいでくださいました。
予定ではヴェリテ夫人がお見えだと、」

私「お久しぶりです。侯爵、ユニルドール夫人。

母は風邪をひいて咳が酷く、ご一家や招待客に感染させるとよくないからと私に代理を命じました。
こちらの手紙は母から預かりました」

侯「拝読します……分かりました。
態々足を運んでいただき感謝いたします。

それにしてもバロウ辺境伯がパートナーとは」

フ「シェイナの護衛兼恋人です」

私「ちょっと、」

フ「シェイナは恥ずかしがり屋で」

夫人「まあ、初々しいわ。どうぞ中へご案内いたします。お疲れになりましたでしょう?お茶を淹れますわ」

フェリシアンは侯爵にヒソヒソと話をしていた。



応接間に通されてお茶とお菓子を出されている間に長男カルファンと妻のマイリスが挨拶に来た。

カ「ようこそユニルドール邸へお越しくださいました。長男でカルファンと申します。彼女は妻のマイリスです」

マ「バロウ伯爵 お久しぶりです。公女様 初めまして」

フ「カルファン、マイリス夫人、久しぶりだな」

カ「フェリシアン 久しぶり。公女は初めてですね」

フ「彼女は今年の成人で、あまり社交には出ていないから機会が無かったようだ。
今回はヴェリテ夫人の代理でお邪魔せてもらった。

シェイナ。カルファンは学友で、マイリス夫人は一つ歳下だったんだ」

私「お初にお目にかかります。
シェイナ・ヴェリテと申します」

カ「可愛いな。バロウ伯爵とはどのような関係ですか?」

私「彼とは、」

フ「シェイナとは王宮パーティで知り合って以来時々顔を合わせて、最近恋人になったんだ」

カ「フェリシアンが!?公女と!?」

私「ちょっと!フェリシアン!」

フ「シェイナは初心だからそっとしておいてくれないか。口説くのが大変だったんだ」

カ「まあ 大変だろうな。
……本当に可愛いな。シェイナ様と呼んでも構いませんか」

フ「かまう」

私「かまいませんわ」

カ「では私のことも名前で呼んでくれますか」

私「でも…」

マ「私達は名前で呼び合いませんか?
バロウ伯爵と公女と私とカルファン様で」

夫人「私達も呼んでいいかしら」

フェリシアンをチラッと見ると微笑まれた。

そうじゃない!返事をして欲しいのに!

私「分かりましたわ」

夫人「そろそろお部屋へご案内します」


そして案内された部屋は一室だった。

「荷解きをお手伝いいたします」

メイドが荷解きをしていく。

「駄目よ。お部屋を別にしてもらわないと」

「いいんだ。俺が頼んだから」

「は!?」

バルコニーに出て窓を閉めると声を抑えて説明された。

「(夜這い避けだ)」

「(は?)」

「(カルファンは女遊びをするタイプだからシェイナ一人は危険だ)」

「(貴方と同類ってこと?)」

「(もとな)」

「(私は大丈夫。入ってきたらナイフ投げるから」

「(駄目だろう! 就寝中に忍び込まれて縛られたらおしまいだし、距離が取れないと不利だろう)」

「(既視感があるわね)」

「(……それに不安要素はもう一つある。
マイリス…様が夜這いに来るかもしれない)」

「(何で)」

「(実は、)」

フェリシアンから聞いた話によると、学園時代 既に二人は婚約していた。
入学と同時にカルファンに紹介されたフェリシアンに一目惚れしたマイリスが、表向きは友人としながら ずっとアプローチしていたらしい。

婚約を解消するから妻にしてくれという誘いを何度も断り、純潔をもらってくれという誘いも断り続けたそうだ。

「(意外。誰にでも手を付けるのかと思っていたのに)」

「(友人や親類、部下の妻や婚約者には手を出さん)」

「(カルファン様の婚約者じゃなければ手を出していたわけだ)」

「(今はシェイナだけだ。
優しくしたいと思ったのも、尽くしたいと思ったのも、妻にしたいと思ったのも、他の男と寝て欲しくないと思ったのもシェイナだけだ)」

「(私をマイリス様避けにしたいのね?)」

「キスしていい?」

「ダメ…んっ!」

結局するなら何で聞くのよ!

「(暴れるな。下にマイリス夫人がいる)」

抵抗を止めると舌が割り入ってきた。優しく舌を絡めながら私を見つめている。

この色気のあるフェリシアンが、女性達が声を掛けて抱かれようと思う理由だろう。

「こら、目潰ししようとするな」

「人を惑わす淫魔のを成敗したくて」

「淫魔じゃない。シェイナにになってもらいたいだけだ。愛してるよシェイナ」







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