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帰っていく子爵家の3名の見送りに出たが、子爵令嬢は諦めが悪い。

「この悪女!

私とフェリシアン様の仲を引き裂こうとするだなんて!」

「サーシャ!」

「リン兄様、ナイフ貸して」

ナイフを受け取り投げると子爵令嬢のパニエで膨らんだ部分に刺さった。

「ひぃっ!!」

「何をなさるのですか!」

「お忘れかもしれないけど、私 国王陛下の姪なのよね。その私に向かって悪女と言ったからよ。

サーシャ 貴女は子爵令嬢。ミレニア 貴女は子爵夫人。私は王兄の娘で公爵令嬢。これ以上の不敬は命をもって償わせなくては示しがつかないの。

最後のチャンスにのよ?

次は無駄口が聞けないようにしてあげる」

「どうか、お許しを」

「3人とも跪きなさい」

子爵が跪き ミレニアが跪き サーシャを跪かせた。

「彼は辺境伯。普通の伯爵とは違うの。
あなた達は跪く立場でフェリシアンは跪かない。
弁えられないなら親戚という気持ちは忘れなさい。
3人とも今後は彼を“バロウ辺境伯”と呼びなさい。

子爵夫人は子爵の後ろに下がりなさい。
子爵令嬢は早急にどこかの嫁に行くか働きなさい。もう貴女の年齢は行き遅れと呼ばれる歳に差し掛かっているのです。

何故かご自身に自信を持っているけど、根拠が見当たらないからね?
だとしたら、男達は若い子を選ぶわよ」

「っ!」

「警告するわよ。

フェリシアン・バロウ辺境伯に敬意を払わなかったり 弁えずに口出ししたり つき纏えば、今度はナイフを身体に刺すわ。

さあ、立って。
子爵家の人間は 子爵令嬢が婚姻するまでバロウ城に立ち入らないで。さようなら」

ナイフを抜いてセヴリアンに返した。

3人は馬車に乗って出発した。

「ん~ あの令嬢はちょっと危ないわね。
諦めていなさそう」

「シェイナ…俺は感動した。愛を感じたよ」

「違うから!」

「結婚してくれ!」

「しない!」

「諦めたらどうだ」

「セヴリアン殿、いや、セヴリアン兄上!」

「止めろ気色悪い」

「“リン兄様”って呼んでも、イテッ!」

フェリシアンはセヴリアンに脛を蹴られた。





翌日 私達はヴェリテ領に向かった。

ストラは実習が叶わなくなり、クリスと一緒に王都に戻っていた。



「ミスラ!シヴァ!」

「「ワン!ワン!」」

「うわっ、増えた」

行きはシヴァを預けて直ぐに出ちゃったからセヴリアンはミスラに会っていなかった。

「お嬢様、おかえりなさいませ」

「みんな元気だった? 今は誰がいるの?」

「旦那様がいらっしゃいます。奥様は王都におります」

「一泊していっていいかな」

「勿論でございます。お客様、お部屋へご案内いたします」


セヴリアンが客間に案内されている間に父セインに挨拶に向かった。

「お父様、お邪魔します」

「大丈夫だったか?」

「まあ。

これ、ヒュドラの毒の解毒剤です。
高いしその辺で売っていないから金庫にしまってください」

「解毒剤!?」

「あと、デュケット子爵のご子息のセヴリアン様が一緒に滞在します。明日王都へ向かいますので」

「もっとゆっくりすればいいのに」

「今回の事件の報告をしなくてはならないので」

「シェイナは宰相執務室の補佐だ。畑違いのことに首を突っ込まないで欲しい」

「セヴリアン様が一緒ですから大丈夫ですよ。
ストラ兄様はお元気でした。
教育実習で現地で会いましたが今は学園に通っているはずです」

「何があったんだ」

「王都新聞に出るまで待ってください」

「……」

少し話をした後、

「バロウ辺境伯の求婚は断わるぞ」

「放っておいていいです。
現地で断ってきましたから」

「辺境伯と会ったのか」

「まあ、解決の協力者になってくれましたので」

「協力?」

「私が毒を飲まされたかもしれないと思って解毒剤を持って駆けつけてくれたのです。
犯人を示す証拠も辺境伯領にありましたから」

「そうか」

「デュケット子爵の子息は?」

「ノワールに依頼して来てもらいました」

「護衛が少な過ぎだろう」

「彼がいれば大丈夫です。部門トップですから」

「人数が多ければ防ぎきれない。次からはもっと付けてくれ」

「はい」

「娘を持ったはずなのにストラよりも危険に身を置くなんて。
親としては気が気じゃない」

「滅多にありませんよ」

「お前もゆっくり休め。食事の時間に呼ぶから」

「はい」



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