56 / 84
躾
しおりを挟む
帰っていく子爵家の3名の見送りに出たが、子爵令嬢は諦めが悪い。
「この悪女!
私とフェリシアン様の仲を引き裂こうとするだなんて!」
「サーシャ!」
「リン兄様、ナイフ貸して」
ナイフを受け取り投げると子爵令嬢のパニエで膨らんだ部分に刺さった。
「ひぃっ!!」
「何をなさるのですか!」
「お忘れかもしれないけど、私 国王陛下の姪なのよね。その私に向かって悪女と言ったからよ。
サーシャ 貴女は子爵令嬢。ミレニア 貴女は子爵夫人。私は王兄の娘で公爵令嬢。これ以上の不敬は命をもって償わせなくては示しがつかないの。
最後のチャンスに外してあげたのよ?
次は無駄口が聞けないようにしてあげる」
「どうか、お許しを」
「3人とも跪きなさい」
子爵が跪き ミレニアが跪き サーシャを跪かせた。
「彼は辺境伯。普通の伯爵とは違うの。
あなた達は跪く立場でフェリシアンは跪かない。
弁えられないなら親戚という気持ちは忘れなさい。
3人とも今後は彼を“バロウ辺境伯”と呼びなさい。
子爵夫人は子爵の後ろに下がりなさい。
子爵令嬢は早急にどこかの嫁に行くか働きなさい。もう貴女の年齢は行き遅れと呼ばれる歳に差し掛かっているのです。
何故かご自身に自信を持っているけど、根拠が見当たらないからね?
だとしたら、男達は若い子を選ぶわよ」
「っ!」
「警告するわよ。
フェリシアン・バロウ辺境伯に敬意を払わなかったり 弁えずに口出ししたり つき纏えば、今度はナイフを身体に刺すわ。
さあ、立って。
子爵家の人間は 子爵令嬢が婚姻するまでバロウ城に立ち入らないで。さようなら」
ナイフを抜いてセヴリアンに返した。
3人は馬車に乗って出発した。
「ん~ あの令嬢はちょっと危ないわね。
諦めていなさそう」
「シェイナ…俺は感動した。愛を感じたよ」
「違うから!」
「結婚してくれ!」
「しない!」
「諦めたらどうだ」
「セヴリアン殿、いや、セヴリアン兄上!」
「止めろ気色悪い」
「“リン兄様”って呼んでも、イテッ!」
フェリシアンはセヴリアンに脛を蹴られた。
翌日 私達はヴェリテ領に向かった。
ストラは実習が叶わなくなり、クリスと一緒に王都に戻っていた。
「ミスラ!シヴァ!」
「「ワン!ワン!」」
「うわっ、増えた」
行きはシヴァを預けて直ぐに出ちゃったからセヴリアンはミスラに会っていなかった。
「お嬢様、おかえりなさいませ」
「みんな元気だった? 今は誰がいるの?」
「旦那様がいらっしゃいます。奥様は王都におります」
「一泊していっていいかな」
「勿論でございます。お客様、お部屋へご案内いたします」
セヴリアンが客間に案内されている間に父セインに挨拶に向かった。
「お父様、お邪魔します」
「大丈夫だったか?」
「まあ。
これ、ヒュドラの毒の解毒剤です。
高いしその辺で売っていないから金庫にしまってください」
「解毒剤!?」
「あと、デュケット子爵のご子息のセヴリアン様が一緒に滞在します。明日王都へ向かいますので」
「もっとゆっくりすればいいのに」
「今回の事件の報告をしなくてはならないので」
「シェイナは宰相執務室の補佐だ。畑違いのことに首を突っ込まないで欲しい」
「セヴリアン様が一緒ですから大丈夫ですよ。
ストラ兄様はお元気でした。
教育実習で現地で会いましたが今は学園に通っているはずです」
「何があったんだ」
「王都新聞に出るまで待ってください」
「……」
少し話をした後、
「バロウ辺境伯の求婚は断わるぞ」
「放っておいていいです。
現地で断ってきましたから」
「辺境伯と会ったのか」
「まあ、解決の協力者になってくれましたので」
「協力?」
「私が毒を飲まされたかもしれないと思って解毒剤を持って駆けつけてくれたのです。
犯人を示す証拠も辺境伯領にありましたから」
「そうか」
「デュケット子爵の子息は?」
「ノワールに依頼して来てもらいました」
「護衛が少な過ぎだろう」
「彼がいれば大丈夫です。部門トップですから」
「人数が多ければ防ぎきれない。次からはもっと付けてくれ」
「はい」
「娘を持ったはずなのにストラよりも危険に身を置くなんて。
親としては気が気じゃない」
「滅多にありませんよ」
「お前もゆっくり休め。食事の時間に呼ぶから」
「はい」
「この悪女!
私とフェリシアン様の仲を引き裂こうとするだなんて!」
「サーシャ!」
「リン兄様、ナイフ貸して」
ナイフを受け取り投げると子爵令嬢のパニエで膨らんだ部分に刺さった。
「ひぃっ!!」
「何をなさるのですか!」
「お忘れかもしれないけど、私 国王陛下の姪なのよね。その私に向かって悪女と言ったからよ。
サーシャ 貴女は子爵令嬢。ミレニア 貴女は子爵夫人。私は王兄の娘で公爵令嬢。これ以上の不敬は命をもって償わせなくては示しがつかないの。
最後のチャンスに外してあげたのよ?
次は無駄口が聞けないようにしてあげる」
「どうか、お許しを」
「3人とも跪きなさい」
子爵が跪き ミレニアが跪き サーシャを跪かせた。
「彼は辺境伯。普通の伯爵とは違うの。
あなた達は跪く立場でフェリシアンは跪かない。
弁えられないなら親戚という気持ちは忘れなさい。
3人とも今後は彼を“バロウ辺境伯”と呼びなさい。
子爵夫人は子爵の後ろに下がりなさい。
子爵令嬢は早急にどこかの嫁に行くか働きなさい。もう貴女の年齢は行き遅れと呼ばれる歳に差し掛かっているのです。
何故かご自身に自信を持っているけど、根拠が見当たらないからね?
だとしたら、男達は若い子を選ぶわよ」
「っ!」
「警告するわよ。
フェリシアン・バロウ辺境伯に敬意を払わなかったり 弁えずに口出ししたり つき纏えば、今度はナイフを身体に刺すわ。
さあ、立って。
子爵家の人間は 子爵令嬢が婚姻するまでバロウ城に立ち入らないで。さようなら」
ナイフを抜いてセヴリアンに返した。
3人は馬車に乗って出発した。
「ん~ あの令嬢はちょっと危ないわね。
諦めていなさそう」
「シェイナ…俺は感動した。愛を感じたよ」
「違うから!」
「結婚してくれ!」
「しない!」
「諦めたらどうだ」
「セヴリアン殿、いや、セヴリアン兄上!」
「止めろ気色悪い」
「“リン兄様”って呼んでも、イテッ!」
フェリシアンはセヴリアンに脛を蹴られた。
翌日 私達はヴェリテ領に向かった。
ストラは実習が叶わなくなり、クリスと一緒に王都に戻っていた。
「ミスラ!シヴァ!」
「「ワン!ワン!」」
「うわっ、増えた」
行きはシヴァを預けて直ぐに出ちゃったからセヴリアンはミスラに会っていなかった。
「お嬢様、おかえりなさいませ」
「みんな元気だった? 今は誰がいるの?」
「旦那様がいらっしゃいます。奥様は王都におります」
「一泊していっていいかな」
「勿論でございます。お客様、お部屋へご案内いたします」
セヴリアンが客間に案内されている間に父セインに挨拶に向かった。
「お父様、お邪魔します」
「大丈夫だったか?」
「まあ。
これ、ヒュドラの毒の解毒剤です。
高いしその辺で売っていないから金庫にしまってください」
「解毒剤!?」
「あと、デュケット子爵のご子息のセヴリアン様が一緒に滞在します。明日王都へ向かいますので」
「もっとゆっくりすればいいのに」
「今回の事件の報告をしなくてはならないので」
「シェイナは宰相執務室の補佐だ。畑違いのことに首を突っ込まないで欲しい」
「セヴリアン様が一緒ですから大丈夫ですよ。
ストラ兄様はお元気でした。
教育実習で現地で会いましたが今は学園に通っているはずです」
「何があったんだ」
「王都新聞に出るまで待ってください」
「……」
少し話をした後、
「バロウ辺境伯の求婚は断わるぞ」
「放っておいていいです。
現地で断ってきましたから」
「辺境伯と会ったのか」
「まあ、解決の協力者になってくれましたので」
「協力?」
「私が毒を飲まされたかもしれないと思って解毒剤を持って駆けつけてくれたのです。
犯人を示す証拠も辺境伯領にありましたから」
「そうか」
「デュケット子爵の子息は?」
「ノワールに依頼して来てもらいました」
「護衛が少な過ぎだろう」
「彼がいれば大丈夫です。部門トップですから」
「人数が多ければ防ぎきれない。次からはもっと付けてくれ」
「はい」
「娘を持ったはずなのにストラよりも危険に身を置くなんて。
親としては気が気じゃない」
「滅多にありませんよ」
「お前もゆっくり休め。食事の時間に呼ぶから」
「はい」
183
お気に入りに追加
1,165
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる