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仲直りの後は
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視察に来た二人を見送り、今はブラージェル邸に来ている。
今日はこっちに泊まることになった。
お肉をたっぷり食べさせられ、ジスランに本を読もうと思っていたのにソファで眠ってしまった。
パチっ
夫婦の寝室で目が覚めた。起きて歯を磨く。
クリス様が運んでくれたのね。
シャコシャコシャコシャコ
「オエッ」
「エリーズ!?」
クリス様は私のえずく声を聞いて けたたましく呼び鈴の紐を引いて鳴らす。
「旦那様!」
「医者を呼べ!」
「ち、違っ」
「エリーズは大人しくしているんだ!」
「歯ブラシで、」
「いいから!」
歯ブラシがうっかり喉を刺激してえずいただけなのに 夜中にお医者を呼び付けるなんて出来ない!
「呼ばないで~ ゲホッ」
口に歯磨き粉を付けたまま クリス様にしがみついて懇願したけど咳が出たので呼ばれてしまった。
到着したお医者に事情を話すと苦笑いされた。
夜中に呼んで申し訳ないと謝ってクリス様にお医者様から診断を告げてもらった。
「健康です」
「吐き気は?」
「単に歯ブラシが当たった刺激のせいです」
「咳は?」
「歯磨き粉です」
「妊娠したわけじゃない?」
「さあ」
「さあって」
「昨日仕込んで受精しているかもしれないので確実なことは申し上げられません」
クリス様がとんでもない形相で私を見た。
「ちょっと!先生!言葉が足りない!!
“もしブラージェル子爵が”という言葉を頭に付けてください!」
「そう言ったつもりですが?」
「とにかく、全て順調ですから妊娠も有り得ません」
「絶対?」
「3日前に(月のモノが)終わったばかりですし、それから閨事なんて無いじゃないですか」
「そうか。
先生、お手数をお掛けしました」
お医者様が帰るとすっかり目が冴えた私達はお茶の時間にした。
「まだ2時ですね」
「…エリーズはどう思う?」
「何をですか?」
「私達の子供について」
「セイラとジスランがいるので十分では?」
「嫌か」
「セイラとジスランには愛情が必要です。異母弟妹についてはかなりデリケートな問題になります。どうしたって赤ちゃんに時間も手間もかかります。その分、2人の時間は後回しになります。
新たな子を望むより セイラやジスランと共に過ごす時間を作ってはどうですか」
「……」
まさか私との子を本気で考えてるの!?
2週間後、セイラから手紙が届いた。
“敬愛するエリーズ様
……
……
私は妹が欲しいです
セイラより”
「チッ」
そして遊びに来たジスランは
「僕、お母様にそっくりな妹が欲しいです。
お父様似ではありませんよ?
そうしたら嫁になんか出さないで、僕が一生懸命働いて養います」
「あらそう、うふふ」
“チッ”
ブラージェル邸に出向きクリス様にクレームを付けた。
「子供達を使うだなんて!」
「エリーズの指摘に従って子供達と向き合ったんだよ」
「言わせたの!?」
「違う。セイラは前から子を作れと言っていた」
「セイラが?」
「君との絆を深めたいのだろう」
「……」
「だが それは君の自由だ。もし望むなら数年以内がいいかな。君は若いが、私は若くはない」
と、クリス様は言うけど、子供達からのプッシュが…。
セイラは“上位で卒業できたら神様がご褒美に授けてくださる気がします”などと綴っているし、ジスランは泳ぎの練習を始めた。“カッコいいお兄ちゃんにならないと”と言って浅瀬でバタ足から始めている。
全く…こんなときに結束力を高めなくたって。
だけど私にはまた出産は選択肢に無かった。
私がこの身体に入る前のエリーズは王子妃になったら子を産むことを義務として覚悟していたようだけど、王子と別れることが叶った私は 跡継ぎもいる男の後妻だと安心していた。
子供を産むことは大きな責任もあり命懸けだ。特にこの世界は医療がかなり遅れている。何かあれば死に直結する厳しい世界。
怖いに決まってる。
だから…
「クリス様。私が死ぬことになっても子を望みますか?」
「望むわけないだろう」
「でも同じことですよ?出産で命を落とす女性は滅多に無いと思いますか?」
「そうだな。子は作らない。子供達にもそう伝えよう」
「ありがとうございます」
「悩ませて悪かった」
その後セイラからは謝罪の手紙が届いた。ジスランは口にしなくなったけど完全には諦めていなさそうだった。
私達夫婦は別居を維持したまま互いの屋敷を行き来しては会話をしたり体を重ねてきた。年に2回はアルミュア家のタウンハウスへ行き セイラに会った。
セイラはアルミュア家の親戚と婚約した。
ジスランが学園に入学後した後にセイラは結婚した。月のモノが来ないから もしかしたら…と手紙に綴られていた。
最近思うことがある。
たまに漁港の町に行ったときや 小さな子がいる屋敷を訪れたりしたとき、小さな子が目に付くようになった。
そのうち自分が母親になったときのことを想像するようになっていた。
この世界しか知らなければ それが普通と思う医療水準も、私にとっては恐怖でしかない。だけど身近な存在のセイラも挑戦しようとしている。
「よし!」
今日はこっちに泊まることになった。
お肉をたっぷり食べさせられ、ジスランに本を読もうと思っていたのにソファで眠ってしまった。
パチっ
夫婦の寝室で目が覚めた。起きて歯を磨く。
クリス様が運んでくれたのね。
シャコシャコシャコシャコ
「オエッ」
「エリーズ!?」
クリス様は私のえずく声を聞いて けたたましく呼び鈴の紐を引いて鳴らす。
「旦那様!」
「医者を呼べ!」
「ち、違っ」
「エリーズは大人しくしているんだ!」
「歯ブラシで、」
「いいから!」
歯ブラシがうっかり喉を刺激してえずいただけなのに 夜中にお医者を呼び付けるなんて出来ない!
「呼ばないで~ ゲホッ」
口に歯磨き粉を付けたまま クリス様にしがみついて懇願したけど咳が出たので呼ばれてしまった。
到着したお医者に事情を話すと苦笑いされた。
夜中に呼んで申し訳ないと謝ってクリス様にお医者様から診断を告げてもらった。
「健康です」
「吐き気は?」
「単に歯ブラシが当たった刺激のせいです」
「咳は?」
「歯磨き粉です」
「妊娠したわけじゃない?」
「さあ」
「さあって」
「昨日仕込んで受精しているかもしれないので確実なことは申し上げられません」
クリス様がとんでもない形相で私を見た。
「ちょっと!先生!言葉が足りない!!
“もしブラージェル子爵が”という言葉を頭に付けてください!」
「そう言ったつもりですが?」
「とにかく、全て順調ですから妊娠も有り得ません」
「絶対?」
「3日前に(月のモノが)終わったばかりですし、それから閨事なんて無いじゃないですか」
「そうか。
先生、お手数をお掛けしました」
お医者様が帰るとすっかり目が冴えた私達はお茶の時間にした。
「まだ2時ですね」
「…エリーズはどう思う?」
「何をですか?」
「私達の子供について」
「セイラとジスランがいるので十分では?」
「嫌か」
「セイラとジスランには愛情が必要です。異母弟妹についてはかなりデリケートな問題になります。どうしたって赤ちゃんに時間も手間もかかります。その分、2人の時間は後回しになります。
新たな子を望むより セイラやジスランと共に過ごす時間を作ってはどうですか」
「……」
まさか私との子を本気で考えてるの!?
2週間後、セイラから手紙が届いた。
“敬愛するエリーズ様
……
……
私は妹が欲しいです
セイラより”
「チッ」
そして遊びに来たジスランは
「僕、お母様にそっくりな妹が欲しいです。
お父様似ではありませんよ?
そうしたら嫁になんか出さないで、僕が一生懸命働いて養います」
「あらそう、うふふ」
“チッ”
ブラージェル邸に出向きクリス様にクレームを付けた。
「子供達を使うだなんて!」
「エリーズの指摘に従って子供達と向き合ったんだよ」
「言わせたの!?」
「違う。セイラは前から子を作れと言っていた」
「セイラが?」
「君との絆を深めたいのだろう」
「……」
「だが それは君の自由だ。もし望むなら数年以内がいいかな。君は若いが、私は若くはない」
と、クリス様は言うけど、子供達からのプッシュが…。
セイラは“上位で卒業できたら神様がご褒美に授けてくださる気がします”などと綴っているし、ジスランは泳ぎの練習を始めた。“カッコいいお兄ちゃんにならないと”と言って浅瀬でバタ足から始めている。
全く…こんなときに結束力を高めなくたって。
だけど私にはまた出産は選択肢に無かった。
私がこの身体に入る前のエリーズは王子妃になったら子を産むことを義務として覚悟していたようだけど、王子と別れることが叶った私は 跡継ぎもいる男の後妻だと安心していた。
子供を産むことは大きな責任もあり命懸けだ。特にこの世界は医療がかなり遅れている。何かあれば死に直結する厳しい世界。
怖いに決まってる。
だから…
「クリス様。私が死ぬことになっても子を望みますか?」
「望むわけないだろう」
「でも同じことですよ?出産で命を落とす女性は滅多に無いと思いますか?」
「そうだな。子は作らない。子供達にもそう伝えよう」
「ありがとうございます」
「悩ませて悪かった」
その後セイラからは謝罪の手紙が届いた。ジスランは口にしなくなったけど完全には諦めていなさそうだった。
私達夫婦は別居を維持したまま互いの屋敷を行き来しては会話をしたり体を重ねてきた。年に2回はアルミュア家のタウンハウスへ行き セイラに会った。
セイラはアルミュア家の親戚と婚約した。
ジスランが学園に入学後した後にセイラは結婚した。月のモノが来ないから もしかしたら…と手紙に綴られていた。
最近思うことがある。
たまに漁港の町に行ったときや 小さな子がいる屋敷を訪れたりしたとき、小さな子が目に付くようになった。
そのうち自分が母親になったときのことを想像するようになっていた。
この世界しか知らなければ それが普通と思う医療水準も、私にとっては恐怖でしかない。だけど身近な存在のセイラも挑戦しようとしている。
「よし!」
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