【完結】婚約破棄された令嬢は、嫌われ後妻を満喫する

ユユ

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お久しぶりです

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お茶会が終わり、少しだけジスランと庭園を散歩することにした。

「広いですね」

「ここは一般庭園よ。入城できた人なら誰でも散歩できるけど、やっぱりほとんど貴族だけね」

「お、お母様」

「ジスラン?」

「お母様と呼びたいです」

「そっか。じゃあ、息子として扱うわよ?」

「はいっ」

「叱るかもよ?」

「出来るだけ叱られないようにします」

「よろしくね、ジスラン」

「よろしくお願いします お母様」

ジスランにハグをして喜んでいたのに おバカが水を差してしまった。

「エリーズ!」

この声…走って逃げたいけどジスランもいるし ドレス着ているから無理よね。

「お久しぶりですレアンドル様」

仕方なく振り向いて挨拶をした。

レアンドルは下は茶色のトラウザーズ 上は生成りのシャツだった。所々汚れている。
肌は少し日に焼けていた。

「悪かった!
何であんな無価値な女に騙されたのか…許してくれ エリーズ。元々は相思相愛だっただろう?やり直そう」

「私は既にブラージェル子爵の妻です。あなたにも妻がいるではありませんか」

「お互い別れて再婚しよう」

「は? マリアさんとの子供はどうするのですか?」

「マリアが勝手に産んだのだから マリアが引き取って育てたらいいことだ。
君は純潔を失ってしまったから本来なら資格は無いのだが、エリーズが相手なら特例で父上も許してくださるはずだ。俺も目を瞑ってあげよう。
いつか側妃か妾か分からないが娶るだろうが、いずれにしても正妃の座は不動だから安心するといい」

上から目線が激しいなぁ。
 
グイッ

袖を引っ張るジスランは少し不安そうな顔をしていた。ジスランの手を握り、レアンドルに向き直った。

「レアンドル様、これまで一瞬たりともお慕いしたことはございません。王子妃に興味はありませんし、レアンドル様はタイプでもありません。性格も難がありましたし、心を寄せる要素が無かったのです」

「え!?そんなはずは…」

「レアンドル様が10歳の頃の睡眠時間は何時間ですか?」

「9時間だったか…そのくらいだ」

「私は4時間もありませんでした。週の6日がその状態です。学園が始まれば毎日でした」

「嘘だろう!?」

「こんなことも知らないなんて、それでよく相思相愛などと言えますわね。
いいですか、よく聞いてください。あなたと一緒になることは私にとっては地獄に飛び込むのと同じなのです。ですから、絶対に復縁などあり得ません。
今日は見逃しますが、二度とそのようなことを言わないでください。
それに、あなたには父親としての責任があります。
“勝手に産んだ”? 
卒業パーティで私に冤罪を被せて不貞を真実の愛であるかのように語り、妊娠を知っていたから時間のかかる婚約解消ではなく破棄にしたのですよね?
勝手じゃないですよね。簡単には男爵家のマリア様と結婚できないから、わざと子を作ったのでしょう?娶らざるを得ない状況にするために。
赤ちゃんはオモチャではありません。状況が変わったからと捨てるなんてクズのすることです。そんな無責任な人が王子になんて戻れるわけがないのです。
アルミュア家より国王陛下にお願いをしておきますね。あなたが子に責任を持たず子育てから逃げるようであれば城からも追い出すようにと」

「嘘だ…浮気された怒りが大きすぎて素直になれないだけなんだろう?もうマリアに嫉妬する必要は無いんだ」

「…忠告はしましたわよ。

さあ、ジスラン。お屋敷に帰りましょう」

「はい、お母様」

「エリーズ!」

私を追いかけようとするレアンドルを止めに入ったのは警備兵に扮した王家の影だ。彼らの首に証の焼印があった。だとすると、レアンドルの言動は陛下の耳に入るはずだ。

「あの、すみません」

私は警備兵の一人を呼んだ。

「陛下には、
“私は大丈夫ですから、陛下のお心を大事になさってください。大きなウサギのぬいぐるみと一緒に馬車でお迎えに来てくださった陛下との思い出がありますので充分です。無理をなさらないでください”とお伝えください」

そう言いながら親指を内側に入れて胸に手を当てた。

これは王家の影だと認識しているという合図だ。

「…かしこまりました」

「失礼します」

「エリーズ様」

「はい?」

「貴女様をお守りすることができなくて残念です。もう一人の王子とのご縁でしたら、未来の王妃となる貴女様に仕えるという栄誉に浴することが叶ったはずです。あの愚か者がお相手でいなければ…。
我らはの幸せを心より願っております」

「…ありがとうございます。
再就職をご希望の際には是非お声がけください」

「早い者勝ちになりそうですので、他の者には内緒にさせてください。では失礼します」

アレンドルは喚き暴れていたが、彼が何かすると気を失ったようで、ぐったりと脱力して背負われて去った。


その後からはジスランが私から離れようとしない。
王都を少し観光して屋敷に戻ると クリス様とセイラも帰っていた。食事をしながら互いの報告をして、就寝時間にジスランを寝かし付けた後、お父様の書斎でさっき触れられなかったことを報告した。

「つまり影の一人、場合によっては影全員と陛下もエリーズの中身がだと知っているのだな?」

「はい。可能性としてはありますが、私の個人的な勘では 今日の王家の影カレは報告を上げていない気がします」

「分かった。
しかしアレンドル様は…こういう時、エリはなんと言うんだ?」

「“ヤバい奴”」

「ヤバい奴だったのだな。挙式前に自爆してくれて助かったな」

「はい、お父様」

「パパと呼んでくれないか…時々聞きたい」

「パパ 大好き」

「私も大好きだよ エリ」

トトトトッと小走りにお父様の側に寄り膝の上に座った。

「大きく育っちゃったけど、いつまでもパパに抱っこしてもらいたいの」

「いくら育ってもパパにとってエリは小さな女の子だ。パパがずっと守ってやるからな」

抱き付く私を抱きしめながら 頭や背中を撫でてくれた。

アレンドルの気持ち悪さを払拭できて良かった。



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