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海の香り
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ブラージェル邸が見えてきた。潮の香りは強くない。屋敷は海から離れた場所にある。
地図を見ると私の屋敷は小さなプライベートビーチが付いていた。屋敷からビーチまで通路を作りたいので直ぐに職人を呼ぶつもりだ。
そして裏庭テラスを大きく作り、ピザ窯や炭火グリルテーブルも作りたい。
護衛騎士が門番と揉めている。
「どうしたの?」
「来客の予定が無いとかで確認を取ると…」
「どちらの不手際か分からないから待ちましょう。
暑いのにごめんなさいね」
「このくらい大丈夫です」
30分くらい待たされて、ようやく通してもらえた。これは挨拶だけして向こうの屋敷に向かった方が良さそうね。
馬車を降りてすぐ、使用人に荷物を下ろすなと告げた。
「アルミュア公女様、私は家令のオレリオと申します。ようこそブラージェル邸へ。
お越しになる日を把握しておらず申し訳ございません」
「いいわ。急なことだったものね。
私はエリーズよ。先ずは子爵様に会わせていただきたいわ。騎士達には日陰で飲み物をあげていただけるかしら」
「かしこまりました」
ふと上を見ると窓から子供が見下ろしていた。
姉のソニアと弟のジスランね。
後について行くと、ある部屋の前で止まりオレリオがノックをした。
「誰だ」
「オレリオでございます。旦那様、アルミュア公女様が到着なさいました」
「はぁ…今日だったのか。通してくれ」
溜息かぁ。この人にとっては押し付けられたのだから仕方ないか。
「申し訳ございません、公女様。
当主のクリストファーと申します」
「初めまして子爵様。エリーズ・アルミュアと申します」
「…どうぞお掛けになってください」
「子爵様、私は妻になる身ですので敬語は結構ですわ」
「…分かった。
エリーズ嬢と騎士達の部屋はこれから準備する。
婚姻に承諾したが揉め事は困る。
エリーズ嬢を受け入れる代わりにアルミュア公爵家から支援金を貰ったが、領地のために使うつもりだ。今までのような贅沢はさせられない。うちは裕福ではないからな。使用人も最低限しかいない。
是非 慎ましく暮らして欲しい」
「…ご心配なく」
「お父様!」
「ソニア、勝手に入ってくるな」
「私は反対よ!下位貴族を虐めて王子様の婚約者をクビになった人が母親になるなんて……」
目を吊り上げて入室して拒否の言葉を口にして私を見ると、口をポカンと開き唖然としていた。
「父上!」
「お前もか。ジスラン」
「母上というより僕達の姉と言った方がいい年齢じゃないですか!それに……」
下の子も私を見ると言葉は止まり唖然としていた。
「分かってはいましたが、歓迎されておりませんわね。
私は海に近い場所に屋敷を確保しております。そちらで暮らしますわ。
3日後に教会でサッと署名だけしましょう。これ以上のご迷惑はかけませんわ。
子爵様、ソニア様、ジスラン様、失礼しますわね。ご用があればお手紙でも送ってください。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
それだけ言ってカーテシーをして外に出た。
御者や騎士達に合図を送り、私の屋敷に向けて出発した。
2時間ほど走らせると白い屋敷が見えてきた。
ごちゃごちゃした作りではなさそうだ。
門番がサッと開き、使用人達がゾロゾロと出迎えてくれた。
「エリーズよ。お出迎えありがとう。今日からよろしくね。みんなで楽しく暮らしましょう。
辞めたくなったら遠慮なく言ってね」
「執事のサリオンと申します」
「メイド長のミランダと申します」
「エリーズ様、中へどうぞ。騎士様達もどうぞ中へ。お部屋の準備も整っております。
荷物は私どもでお運びいたします」
「ありがとう」
「我々は厩舎で馬に水をやってから参ります」
「そうね。ご苦労様」
屋敷の中に入るとシンプルな内装で、さすが公爵様だと思った。私の好みを把握しているわ。お母様のほとんどのことを決めているだけあるわね。
今頃、お父様と揉めてないといいけど。
居間に通されると使用人達が次々と自己紹介に来てくれた。終わってサリオンとミランダの3人だけになった。
「お嬢様、お久しぶりでございます。私はお嬢様が4歳の時まで乳母としておそばにおりました」
「そうなの!?
ごめんなさい、覚えていなくて」
「4歳まででしたら覚えていなくても不思議はありませんわ」
「一度辞めたのよね?」
「はい。母の介護が必要で、お暇をいただきました。5年間看病して無事に看取ることができました。公爵様がお薬代を負担してくださったおかげです。感謝しております」
「でも、大丈夫なの?こんな遠くまで来て。近場で再就職すれば良かったのに」
「父は既に他界しておりましたし、夫は5ヶ月前に女を作って家を出て行きました。
それで図々しくも何か職はないかと公爵様にお伺いを立てましたら、お嬢様がこちらで暮らすと教えていただきましたのでお願いしました」
「そうなのね。有難いわ」
「誠心誠意、お嬢様をお支えいたします」
「よろしくね。
サリオン、明日にでも建築業者を呼んで欲しいの。外の改装をしたいのよ」
「かしこまりました。
ところで、ブラージェル邸にはお寄りになりましたか?」
「ええ。歓迎されなかったわ。気にしなくていいの。教会で誓いを立てて署名だけすれば自由だから。
ここは私のお城よ。私もみんなも過ごしやすくしたいわ。お金はあるから安心してね」
「それは頼もしいことです」
「出来るなら、今夜はみんなで食事をしたいわ。
全員が食堂に入れるかしら」
「広間がありますので、そこで宜しければ」
「そうしてちょうだい。食事は作っても港町で料理を買ってきても構わないわ。みんなで気楽につまめて美味しいものがいいわね」
「調理場に伝えます」
じゃあ 私は荷解きでもしようかな。
地図を見ると私の屋敷は小さなプライベートビーチが付いていた。屋敷からビーチまで通路を作りたいので直ぐに職人を呼ぶつもりだ。
そして裏庭テラスを大きく作り、ピザ窯や炭火グリルテーブルも作りたい。
護衛騎士が門番と揉めている。
「どうしたの?」
「来客の予定が無いとかで確認を取ると…」
「どちらの不手際か分からないから待ちましょう。
暑いのにごめんなさいね」
「このくらい大丈夫です」
30分くらい待たされて、ようやく通してもらえた。これは挨拶だけして向こうの屋敷に向かった方が良さそうね。
馬車を降りてすぐ、使用人に荷物を下ろすなと告げた。
「アルミュア公女様、私は家令のオレリオと申します。ようこそブラージェル邸へ。
お越しになる日を把握しておらず申し訳ございません」
「いいわ。急なことだったものね。
私はエリーズよ。先ずは子爵様に会わせていただきたいわ。騎士達には日陰で飲み物をあげていただけるかしら」
「かしこまりました」
ふと上を見ると窓から子供が見下ろしていた。
姉のソニアと弟のジスランね。
後について行くと、ある部屋の前で止まりオレリオがノックをした。
「誰だ」
「オレリオでございます。旦那様、アルミュア公女様が到着なさいました」
「はぁ…今日だったのか。通してくれ」
溜息かぁ。この人にとっては押し付けられたのだから仕方ないか。
「申し訳ございません、公女様。
当主のクリストファーと申します」
「初めまして子爵様。エリーズ・アルミュアと申します」
「…どうぞお掛けになってください」
「子爵様、私は妻になる身ですので敬語は結構ですわ」
「…分かった。
エリーズ嬢と騎士達の部屋はこれから準備する。
婚姻に承諾したが揉め事は困る。
エリーズ嬢を受け入れる代わりにアルミュア公爵家から支援金を貰ったが、領地のために使うつもりだ。今までのような贅沢はさせられない。うちは裕福ではないからな。使用人も最低限しかいない。
是非 慎ましく暮らして欲しい」
「…ご心配なく」
「お父様!」
「ソニア、勝手に入ってくるな」
「私は反対よ!下位貴族を虐めて王子様の婚約者をクビになった人が母親になるなんて……」
目を吊り上げて入室して拒否の言葉を口にして私を見ると、口をポカンと開き唖然としていた。
「父上!」
「お前もか。ジスラン」
「母上というより僕達の姉と言った方がいい年齢じゃないですか!それに……」
下の子も私を見ると言葉は止まり唖然としていた。
「分かってはいましたが、歓迎されておりませんわね。
私は海に近い場所に屋敷を確保しております。そちらで暮らしますわ。
3日後に教会でサッと署名だけしましょう。これ以上のご迷惑はかけませんわ。
子爵様、ソニア様、ジスラン様、失礼しますわね。ご用があればお手紙でも送ってください。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
それだけ言ってカーテシーをして外に出た。
御者や騎士達に合図を送り、私の屋敷に向けて出発した。
2時間ほど走らせると白い屋敷が見えてきた。
ごちゃごちゃした作りではなさそうだ。
門番がサッと開き、使用人達がゾロゾロと出迎えてくれた。
「エリーズよ。お出迎えありがとう。今日からよろしくね。みんなで楽しく暮らしましょう。
辞めたくなったら遠慮なく言ってね」
「執事のサリオンと申します」
「メイド長のミランダと申します」
「エリーズ様、中へどうぞ。騎士様達もどうぞ中へ。お部屋の準備も整っております。
荷物は私どもでお運びいたします」
「ありがとう」
「我々は厩舎で馬に水をやってから参ります」
「そうね。ご苦労様」
屋敷の中に入るとシンプルな内装で、さすが公爵様だと思った。私の好みを把握しているわ。お母様のほとんどのことを決めているだけあるわね。
今頃、お父様と揉めてないといいけど。
居間に通されると使用人達が次々と自己紹介に来てくれた。終わってサリオンとミランダの3人だけになった。
「お嬢様、お久しぶりでございます。私はお嬢様が4歳の時まで乳母としておそばにおりました」
「そうなの!?
ごめんなさい、覚えていなくて」
「4歳まででしたら覚えていなくても不思議はありませんわ」
「一度辞めたのよね?」
「はい。母の介護が必要で、お暇をいただきました。5年間看病して無事に看取ることができました。公爵様がお薬代を負担してくださったおかげです。感謝しております」
「でも、大丈夫なの?こんな遠くまで来て。近場で再就職すれば良かったのに」
「父は既に他界しておりましたし、夫は5ヶ月前に女を作って家を出て行きました。
それで図々しくも何か職はないかと公爵様にお伺いを立てましたら、お嬢様がこちらで暮らすと教えていただきましたのでお願いしました」
「そうなのね。有難いわ」
「誠心誠意、お嬢様をお支えいたします」
「よろしくね。
サリオン、明日にでも建築業者を呼んで欲しいの。外の改装をしたいのよ」
「かしこまりました。
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「ええ。歓迎されなかったわ。気にしなくていいの。教会で誓いを立てて署名だけすれば自由だから。
ここは私のお城よ。私もみんなも過ごしやすくしたいわ。お金はあるから安心してね」
「それは頼もしいことです」
「出来るなら、今夜はみんなで食事をしたいわ。
全員が食堂に入れるかしら」
「広間がありますので、そこで宜しければ」
「そうしてちょうだい。食事は作っても港町で料理を買ってきても構わないわ。みんなで気楽につまめて美味しいものがいいわね」
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