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父親の役目
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【 モーリス・アルミュア公爵の視点 】
エリーズが輿入れのために出発したので、第二王子と庶子をゆっくり追い詰めるために、先ず国王と会った。
こわばった顔の陛下に問い詰める。
「縁談を断ったにも関わらず エリーズが可愛いからと王命で第二王子殿下の婚約者になさいましたね」
「…公爵」
「婚約者のエリーズを蔑ろにしながら男爵の庶子に熱を上げている殿下のために 厳しい妃教育を受けていたのに?」
「……」
「男爵の庶子に当たり前のことを注意していただけなのに 虐めだと婚約者エリーズに詰ったのは第二王子殿下だそうで?」
「すまない」
「いつから一介の王子が婚約者でも親戚でもない男爵の庶子に大金をかけていいことになったのでしょうか」
「…回収する」
「ブラージェル子爵を薦めなければ エリーズを変態にあてがおうとしていたのですよ?
そもそも、エリーズの婚姻を一介の王子が決められるとでも?」
「…無効だ」
「いえ。既にブラージェル子爵の後妻になるべく、エリーズはブラージェル領に向けて出発しました」
「迎えを、」
「貴族達の前であのような辱めを受けたのです。
男爵の庶子に負けた王子の婚約者・公女として笑い者ですよ。王都に留めておけません」
「……」
「慰謝料の算出のために エリーズの日記と行動日誌を参照ください。ご自分の娘が同じことをされたらと想像しながら読んでいただきたいですね。
婚約者である第二王子殿下が浮気相手を庇うために、婚約者であるエリーズに暴力をふるい2日間の意識不明にして記憶を少し欠落させたことも書いております」
「申し訳ない」
「エリーズは、第二王子殿下と男爵の庶子との婚姻を望んでいます。自分をここまで追い込んだからには思いを遂げて欲しいとのことです。
未来の王妃になるわけではありません。
男爵の庶子が王子妃など有り得ない話ですが、そのために 王命まで使って婚約した公女を貶めて排除したのですから、常識や慣例など持ち出す意味は無いでしょう」
「いや、流石に…」
「ならば第二王子殿下を廃嫡にし、男爵家へ婿入りさせて愛を成就させて差し上げては?」
「……分かった」
「前者ですね?約束ですよ、陛下」
「約束だ」
「では、約束をしましたので マリア・ブディットを提訴します」
「は?」
「当然でしょう。あの庶子は嘘で公爵の娘にありもしない罪を着せて晒し者にして恥をかかせたのですから」
「だが、今さっき婚約しろって」
「第二王子殿下の婚約者が提訴されたら殿下の立場がないとでも仰るのですか?まだそのような事を仰るのですか?既に共犯なのに?」
「……」
「私も妻も息子も、一緒に過ごしながら愛するエリーズの成長を見届けたかったのですよ?
なのに朝から迎えの馬車が来て夕食前に戻されるという毎日。学園が始まると、放課後と休日に王子妃教育を受け続けたのです。
アルミュア家が 愛娘の貴重な成長期を王家に奪われてどれだけ悔しい思いをしたか」
「……」
「第二王子殿下に暴力を振るわれた後は、第二王子殿下と庶子に常識が通じず正気ではないと判断し、独りになる時間を徹底的に無くして行動日誌を書き始めました。2人からの言い掛かりに対抗するためです」
「では誘拐も…」
「当然、庶子の幼稚な嘘です。その嘘だけを信じて卒業パーティで冤罪をかけ エリーズの名誉を傷付け断罪したのです」
「はぁ…」
「あちらこちらのパーティで庶子が悪霊のように腕に絡み付く中、第二王子殿下は“エリーズは無能だ”と言い触らしていたようですね。
何故、正式に王子妃にもなっていないのに第二王子殿下の仕事を手伝わなければならないのですか?
婚約者ではありましたがエリーズは公爵家の娘。王族が処理する書類に触れたり判断をしたりする義務も権利もございません。だから出来ないと断ったのです。なのに無能?
そもそも庶子と遊び歩いている第二王子殿下の尻拭いを 浮気されたエリーズがしなくてはならないなんて道理に外れます。
違いますか?陛下」
「違わない」
「公爵家の要求をのんでもらっても構いませんね?のめなければ訴訟相手を2人ほど増やすだけですが?」
「分かった。本当にすまなかった」
「では、失礼します」
その足で法務部の責任者に会いに行った。
大臣はいなかったが、副大臣はいた。
「これはアルミュア外務大臣。今日はどのようなご用件でしょう」
「うちの娘と第二王子殿下の婚約破棄が正式に決まりましたので後始末をしようと思います。先程陛下にお会いして第二王子殿下有責の慰謝料算出のお願いをしました。
此処にはこれを提出しに来ました」
国王陛下の署名入りの書類を副大臣に手渡した。
「ブディット男爵家のマリアと男爵への訴状ですか」
「ええ。理由は全て書いてあります。
令嬢は第二王子殿下に婚約者がいると知りながら誘惑しました。何度も注意をしたのに止めませんでした。エリーズに虐められたと嘘を重ねました。そして寝取りました。貢物もさせました。
卒業パーティでは出席者の前でエリーズに誘拐されたと弾糾しました。冤罪をかけられ名誉を汚され婚約破棄に至りました。その上 第二王子殿下に強制婚を強いられたのです。変態に嫁がせようとしていたので、子爵の後妻で手を打って貰いました。
娘の8年間の王子妃教育を無駄にして、未来を奪ったのです。泣き寝入りなんて有り得ません」
「…承りました」
「認めずに裁判に持ち込むなら請求を一桁増やすとお伝えください。私も忙しいのでね」
「お預かりします」
さて、帰ってロクサーヌに説明をしないと。
荒れるだろうなぁ。
エリーズが輿入れのために出発したので、第二王子と庶子をゆっくり追い詰めるために、先ず国王と会った。
こわばった顔の陛下に問い詰める。
「縁談を断ったにも関わらず エリーズが可愛いからと王命で第二王子殿下の婚約者になさいましたね」
「…公爵」
「婚約者のエリーズを蔑ろにしながら男爵の庶子に熱を上げている殿下のために 厳しい妃教育を受けていたのに?」
「……」
「男爵の庶子に当たり前のことを注意していただけなのに 虐めだと婚約者エリーズに詰ったのは第二王子殿下だそうで?」
「すまない」
「いつから一介の王子が婚約者でも親戚でもない男爵の庶子に大金をかけていいことになったのでしょうか」
「…回収する」
「ブラージェル子爵を薦めなければ エリーズを変態にあてがおうとしていたのですよ?
そもそも、エリーズの婚姻を一介の王子が決められるとでも?」
「…無効だ」
「いえ。既にブラージェル子爵の後妻になるべく、エリーズはブラージェル領に向けて出発しました」
「迎えを、」
「貴族達の前であのような辱めを受けたのです。
男爵の庶子に負けた王子の婚約者・公女として笑い者ですよ。王都に留めておけません」
「……」
「慰謝料の算出のために エリーズの日記と行動日誌を参照ください。ご自分の娘が同じことをされたらと想像しながら読んでいただきたいですね。
婚約者である第二王子殿下が浮気相手を庇うために、婚約者であるエリーズに暴力をふるい2日間の意識不明にして記憶を少し欠落させたことも書いております」
「申し訳ない」
「エリーズは、第二王子殿下と男爵の庶子との婚姻を望んでいます。自分をここまで追い込んだからには思いを遂げて欲しいとのことです。
未来の王妃になるわけではありません。
男爵の庶子が王子妃など有り得ない話ですが、そのために 王命まで使って婚約した公女を貶めて排除したのですから、常識や慣例など持ち出す意味は無いでしょう」
「いや、流石に…」
「ならば第二王子殿下を廃嫡にし、男爵家へ婿入りさせて愛を成就させて差し上げては?」
「……分かった」
「前者ですね?約束ですよ、陛下」
「約束だ」
「では、約束をしましたので マリア・ブディットを提訴します」
「は?」
「当然でしょう。あの庶子は嘘で公爵の娘にありもしない罪を着せて晒し者にして恥をかかせたのですから」
「だが、今さっき婚約しろって」
「第二王子殿下の婚約者が提訴されたら殿下の立場がないとでも仰るのですか?まだそのような事を仰るのですか?既に共犯なのに?」
「……」
「私も妻も息子も、一緒に過ごしながら愛するエリーズの成長を見届けたかったのですよ?
なのに朝から迎えの馬車が来て夕食前に戻されるという毎日。学園が始まると、放課後と休日に王子妃教育を受け続けたのです。
アルミュア家が 愛娘の貴重な成長期を王家に奪われてどれだけ悔しい思いをしたか」
「……」
「第二王子殿下に暴力を振るわれた後は、第二王子殿下と庶子に常識が通じず正気ではないと判断し、独りになる時間を徹底的に無くして行動日誌を書き始めました。2人からの言い掛かりに対抗するためです」
「では誘拐も…」
「当然、庶子の幼稚な嘘です。その嘘だけを信じて卒業パーティで冤罪をかけ エリーズの名誉を傷付け断罪したのです」
「はぁ…」
「あちらこちらのパーティで庶子が悪霊のように腕に絡み付く中、第二王子殿下は“エリーズは無能だ”と言い触らしていたようですね。
何故、正式に王子妃にもなっていないのに第二王子殿下の仕事を手伝わなければならないのですか?
婚約者ではありましたがエリーズは公爵家の娘。王族が処理する書類に触れたり判断をしたりする義務も権利もございません。だから出来ないと断ったのです。なのに無能?
そもそも庶子と遊び歩いている第二王子殿下の尻拭いを 浮気されたエリーズがしなくてはならないなんて道理に外れます。
違いますか?陛下」
「違わない」
「公爵家の要求をのんでもらっても構いませんね?のめなければ訴訟相手を2人ほど増やすだけですが?」
「分かった。本当にすまなかった」
「では、失礼します」
その足で法務部の責任者に会いに行った。
大臣はいなかったが、副大臣はいた。
「これはアルミュア外務大臣。今日はどのようなご用件でしょう」
「うちの娘と第二王子殿下の婚約破棄が正式に決まりましたので後始末をしようと思います。先程陛下にお会いして第二王子殿下有責の慰謝料算出のお願いをしました。
此処にはこれを提出しに来ました」
国王陛下の署名入りの書類を副大臣に手渡した。
「ブディット男爵家のマリアと男爵への訴状ですか」
「ええ。理由は全て書いてあります。
令嬢は第二王子殿下に婚約者がいると知りながら誘惑しました。何度も注意をしたのに止めませんでした。エリーズに虐められたと嘘を重ねました。そして寝取りました。貢物もさせました。
卒業パーティでは出席者の前でエリーズに誘拐されたと弾糾しました。冤罪をかけられ名誉を汚され婚約破棄に至りました。その上 第二王子殿下に強制婚を強いられたのです。変態に嫁がせようとしていたので、子爵の後妻で手を打って貰いました。
娘の8年間の王子妃教育を無駄にして、未来を奪ったのです。泣き寝入りなんて有り得ません」
「…承りました」
「認めずに裁判に持ち込むなら請求を一桁増やすとお伝えください。私も忙しいのでね」
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さて、帰ってロクサーヌに説明をしないと。
荒れるだろうなぁ。
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