【完結】貴方が出来ることは子作りだけですよ?

ユユ

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それぞれの閑話

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【ソフィアとセバスチャン】


蜜月中は避妊薬をセバスチャンが服用していたが、結婚から一年が過ぎた頃、服用を止めた。

「ソフィア。もう飲んでないんだ。
ソフィアが上に乗って搾り取って欲しい。
子種が欲しいと思いながら奥まで挿れて」


ソフィア主体で挿入を繰り返し、セバスチャンは下から胸や愛芽を刺激した。

る!」

「男の子をちょうだい」

「奥に押し付けて!」

「沢山、出してっ!」

「クッ……」


吐精が終わるとそっと降りて横になった。

「できるかな」

「今君の膣内ナカで探索に出てるよ」

「セバスに似てたらいいな」

「ソフィアに似て欲しいな」



そして産まれたのはセバスにそっくりな男の子だった。

その次も男の子でジェラルドに似ていた。

ジェラルドとは異母兄妹だが、ジェラルドは父似でソフィアは母似だった。

下の子が一歳になる頃、ジェラルドが会いに来た。下の子を見て大喜びだった。

三人目は女の子だった。セバスチャン似でソフィアにべったり過ぎてソフィアを困らせた。






【 アクセルとジャクリーン 】



王都の外れの平民が集う町に家を借りた。

狭い家だが一軒家だ。

当然メイドを雇う金も無く、自分達でやらなくてはならない。

アクセルは野営もしている騎士なので、洗濯も食事も簡単になら出来る。
しかしジャクリーンはできなかった。

洗濯から教えたが、初めての妊娠や、除籍され住まいが変わりストレスが強かった。更に目眩や怠さ悪阻もあるため、ベッドにいることが多かった。

アクセルは貴族の私兵を目指したが、主人の娘の純潔を奪い、結婚後も関係を続けたことから近衛出身でも採用されず、一般王宮騎士になった。

給料は少なく、子供が生まれたらかなり厳しい生活になるのは間違いなかった。
だからジャクリーンにも働いて欲しいと思っていた。

ジャクリーンが閨の相手ができない間、町で相手を探し欲を発散させていた。

城ではもう誰も相手にしてくれないし、夜会というチャンスも無くなったからだ。

金がないので娼館も無理だし、酒場にも行けない。

その内、産気付き、医者を呼んだ。大事な懐中時計を手放して、医者代と子供の必需品を買い揃えた。

産まれたのはアクセルに全く似ていない女児だった。

覚えがあるくせに、自分の子ではないかもと考えてしまったため、全く可愛いと思えなかった。

生後三ヶ月になると、ジャクリーンに内職なり、何かしら働いてくれと頼んだが拒否された。

その次の日に仕事に行ったきり、アクセルは家に帰らなかった。寄宿舎から必要最低限の金を送るだけ。

つまり、生きたければ食事を作れ、洗濯して掃除もしろ。買い出しにも行け。
足りなければ働け、という意味だ。

ジャクリーンは城まで行ったが入れてもらえるわけもなく伝言を書いて渡してもらうしか出来なかった。


出産から五ヶ月後、ある伝言を受け取り家に帰った。
アクセルがドアを開けると異臭が鼻をついた。
部屋中荒れ果て、汚れ、虫やネズミが行き交っていた。

「貴方のせいよ。私達を捨てたから」

「君は妻の務めも人としての務めも放棄した。私がいたら自立できない。
だが、君は改めなかった。だから娘は死んだ」

「貴方のせいよ!」

「私は働いて金を入れた。慎ましく暮らせば生きていけた」

「私は王女なのよ!」

「過去にしがみつくな。
寧ろそれが足枷じゃないか。
お前は何と言われているか知らないのか?
“泥棒老婆ババア”だ。

妻から夫を奪った泥棒。
女を放棄した身なり。

肌はボロボロ、髪さえとかさず、洗濯もしない汚れた服、近寄るだけで臭い。

お前は顔だけが取り柄だった。
尻は貧弱、胸は洗濯板、コルクのような乳首が付いた、男を萎えさせる体をしている。

見た目が浮浪者のようではいくら穴があいていても浮浪者お仲間でも突っ込まないだろう。

金を入れてもらっておいてよくもそんな姿になれるものだな。門番がどんな顔をしていたか見なかったのか?
家にある鏡を見ろよ。

体を清潔にする、髪をとかす、洗濯するなんて子供でも出来る事を何故やらない」

「私は…」

「もう子がいないなら金を入れる必要は無くなった」

アクセルはゴミを片付けながら話し続ける。

「再来月末までの家賃は払おう。それ以降は契約しない。住み込みで働くか、自分で家賃を払え。

その体では娼婦も難しいかもな。
せめて綺麗にすれば顔で引っ掛けて、脱がずに口か股で奉仕すれば良い。
つまり外で立って客を取る女のことだ。
部屋で相手をすれば服を脱ぐことになって金を返せと言われるだろう。

もう一つ言っておく。お前の膣は緩い。
緩過ぎて高めることが出来なくなっていたから、敏感になる媚薬を飲んでヤっていた。

締める技を覚えないと苛立った客に殴られるぞ。その辺の棒を突っ込んで力を入れて引いても抜けないように鍛えろ。

何の仕事に就くのか知らないが、とにかく綺麗にしないと面接もしてもらえないぞ。

書類上は離縁できないが、実質の離縁だ。
二度と会いに来ない」

硬貨の入った袋を置こうとしたがジャクリーンはフラフラと外に出て行き戻らなかった。




そして宣言通り、家賃の支払いを止めると大家から連絡が来た。誰も住んでいないらしい。
家に入るとあの時のまま。
ゴミを片付け掃除して引き渡した。



ジャクリーンはあの日、歩いて森に入り、腰紐を使って首を吊っていた。

何と言われているか、アクセルが体についてどう思っていたのか知ったから。


何故綺麗にしなかったのか。

今までは思った事を顔に出さないメイドが洗ってくれていた。
今は自分で洗わなくてはならない。
共同浴場に行ったらバカにされたのだ。

「見て見てお母さん、あの人の胸、変だよ?
子供じゃないのに胸がなくて何か付けてるよ」

「止めなさい。あれは乳首よ。大きさは人それぞれなの」

「本当は男じゃない?」

「付いてないでしょ!人の体をどうこう言うのは止めなさい!」

ジャクリーンは声を殺して泣いて帰宅した。それ以降風呂に入れなくなった。

赤ちゃんは産まれて嬉しかった。だけど乳首が大き過ぎて口に含めなかったのだ。
最初は絞って与えていたが上手に飲んでもらえずほとんど溢してしまう。
腹が空くから泣き止まない。

様々なストレスで母乳も止まってしまい餓死したのだ。

そこにアクセルが言葉で追い討ちをかけた。

彼女は心を病んでいたのだ。



ソフィアとの婚姻が取り消された後、アクセルは城の行事でソフィアを見掛けることが稀にあった。

あの凛とした美しさ、美しい曲線美。
自分のものだったのに。
エスコートする男をみて驚いた。
ブルノワ家を継ぐはずのセバスチャンだったからだ。

あの大富豪の実家を捨ててカロンヌ家とソフィアを選んだ。それだけ魅力的な家門だったのだ。

外国で拾った馬の骨と見下していたのに、ソフィアは大国の王族だった。

セバスチャンの顔を見て悟った。
ソフィアが好きなのだと。

何年もすると茶会にセバスチャンにそっくりの子供の手を引いて参加していた。

とても賢く礼儀正しい。
ソフィアは幸せそうだし、子供もソフィアを心から慕っていた。

あれも私が手放したものだ。

ソフィアの価値に気付いていたら、今頃私にあの体を捧げて、私にそっくりな男児を産んだだろう。


あの悪夢のパーティのあと、兄が手続きのために最後の面会にやってきた。

「ソフィアは別人じゃないか!私は騙されたんだ!飾り気のない髪に野暮ったいドレス。
女として見れないに決まってる!
あんなに綺麗にできるなら、最初からするのが妻の…女の役目だろう!」

「はぁ。

なあ、私も父上も肌を磨き上げていつも夜会にでも行くように整髪して鮮やかな色の飾り気たっぷりの服を着て屋敷で仕事をしているか?」

「は? 気持ち悪いこと言わないでくださいよ」

「ソフィア嬢は公爵になんるだ。浮かれた夜会の華とは違う。家族を、領民を守り繁栄させる仕事をしているんだ。父上や私と同じなんだよ。

日々そんな重積に追われているのに着飾るバカが何処にいる。

女だからと言いたいのか?
お前は求められた事のうち、たった一つ、子作りしか出来ないのに?

女に着飾って欲しければ、ソフィア嬢の抱えている全てのものを今すぐ代わってやれよ。
失敗も分かりませんという泣き言も通用しないからな?

出来ないだろう?

お前こそ、花嫁に、妻に求められることが出来るようになるのが最低ラインだろうが。

親族は全て覚えたか?カロンヌ家の交友関係は?使用人は把握できたか?慈善活動はやったのか?茶会に出て他家の妻達と交流してきたか?

お前はカロンヌ家のために何ができた。
裏切りだけじゃないか。

お前に家族は贅沢だし、貴族を名乗る資格もなかった。

今のお前にできる事は、剣で稼いで誰にも迷惑をかけずに一人で生きていくことだけだろうな」



様々な事を思い出しながら寄宿舎に戻り、仕事をして欲を満たした。

だが、貴族の手入れとは違うし外の勤務も多い。美形は霞んでいった。

何年とその生活を続けると、町で相手をしてくれる女は居なくなった。

平民も旨味がなければ今のアクセルに体を解放しない。
婚姻して養ってくれるか、余程女を悦ばせることが出来るかだ。

独り身の寮住まいで平民騎士としては少しゆとりがあるが、老後の蓄えも必要だ。
下級娼婦を月に一度か二度買うだけだ。

昔はほぼ毎日。時には1日に三人と交わっていた強い性欲の持ち主だ。

給料日後の夜勤明けに平民向けの娼館に行き、半日部屋と女を買う。
そして例の媚薬を使い、気を失うまで腰を振り続け時間まで深い眠りにつく。

半月後にもう一度。
他は自慰。

そんな生活を続けて二十年余り。胸の苦しさに騎士団お抱えの医師に診てもらった。

「薬の副作用で心臓が悲鳴を上げているのでしょう。激しい訓練は無理ですね。
配置換えが必要です。
そして薬を止めて性交渉は卒業してください」

備品係に回された。クビにならず寄宿舎に置いてもらえるだけ幸運だ。
一般騎士になってから、仕事だけは真面目にやっていた。そのお陰で、王宮騎士団長が追い出さないでくれた。

「仕事絡みの傷病ではないから普通はクビだ。勿論、剣を握らないなら寮にもいられない。

だがお前は一般騎士になってから真面目に働いてきた。新兵にこっそり剣術を指南していたことも知っている。急に上手くなる者はお前の剣筋に似ているからな。

配属は備品係で、備品庫での管理だが、時間のある時に今まで通り体に支障のない範囲で指南を続けろ。

それを条件に、給料は維持し、寮に住まわせ、騎士団の医師に診てもらい治療を受ける事を許可しよう」

「感謝します」

私は薬を断ち、心臓のための薬湯を与えてもらいながら役目を果たした。食事も生活も健康そのもの。

体が大分良くなったら団長に相談して去勢してもらった。
一ヶ月寝込んだが生き延びた。

定年になっても主のように住み続け備品庫の仕事と剣の指南を続けた。
団長が変わっても新しい団長から信頼されたので延長の契約を結んでもらえたのだ。

爺さんになると成人したての平民の雑用係を備品庫に回してもらえた。
その子にも剣の指南をしていたら、騎士団の試験に通ってしまった。

団長は呆れて、

「アクセル先生、せっかく助手を付けたのに羽を与えてどうするんですか」

「あの子は元々羽を持っていて飛び方を知らなかっただけです。性格もいいし、立派な大人になれるでしょう」

「また採用しますから、程々にお願いしますね」

結局、何人か騎士に育てると、騎士に憧れる使用人が訪ねてくるようになった。勿論向いている者は少ない。

素質ありと見込んだ子には無償で教えた。
騎士団に合格したが伸び悩む新人も噂を聞きつけてやってくる。

一人で死ぬと思っていたが、死ぬまで賑やかだった。





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