【完結】貴方が出来ることは子作りだけですよ?

ユユ

文字の大きさ
上 下
9 / 11

アクセルとジャクリーンの処遇

しおりを挟む
【 アクセルの視点 】


悪夢のパーティの翌日。

会場入りが遅くなって、聞き逃してしまった数十分を団長が教えてくれた。 

あの時点ではジャクリーンは自白していなかった。私がバラしたことになる。

「お前の部屋から見つかった物だ。説明してくれ」

「これは避妊薬、これは男用の媚薬、これは堕胎薬です」

金が足りなかったこと、平民御用達の粗悪品を買っていたこと、緩くて射精が困難になり媚薬を使っていたこと、避妊薬が無くて、女性用避妊薬を飲むよう言いそびれたこと、店で説明された堕胎薬のこと、月のモノが来たと言っていたことを話した。

「何やってるんだよ、お前は…」

「申し訳ございません」

「しかもあちこちで摘み食いをしたり、王女殿下と二股をかけていたようだな」

「はい」

「近衛騎士団はクビだ。王女に手を出したのだから服務規定違反だ」

「……」

「私がクビにしなくとも資格が無い」

「え?」

「婚姻無効。そしてバックス侯爵家は本日付けでお前の兄君が継がれたので、お前は独立することになった。つまり現在は平民だ」

「……はい」

「報告書をカミュ王太子殿下に提出する」

「お世話になりました」



パーティで会ったソフィアは私の知らない女だった。

髪は巻かれて美しく波打ち、化粧で血色も良く、美しい緑色の瞳が際立っていた。

ドレスは薄い紫と銀色で、美しいシルエットだった。

胸はやや豊かで柔らかそうだし、ウエストは引き締まっていて、尻は丸く形が整っていた。私好みの体だった。

顔はジャクリーンの方が好みではあるが、ソフィアも華やかさは無くとも凛とした美しさを持っていた。

誰だか分からなかった。


ジャクリーンとの関係を清算して、ソフィアを敬って、大事にしていたら……。

あの眩しいソフィアが脳裏から離れない。





【 ジャクリーンの視点 】


目が覚めると大分体調は良くなっていた。

呼び鈴を鳴らすと専属メイドではなく、メイド長がやってきた。

「マリア達は?」

「ジャクリーン様、専属侍女、専属メイド、専従騎士は解任されました」

「どうして?」

「昨夜のパーティは何処まで覚えていますか?」

「とても具合が悪くて、覚えていないの」

「ジャクリーン様はアクセル様と不倫をしていたことが明るみになりました」

「不倫だなんて」

「他人の夫と寝る事を不倫と言うのです」

「私達は、愛し合って、」

「アクセル様が言い出せなくても、ジャクリーン様がお父上に、そう申し上げればこんなことにはなりませんでした」

「それは……」

「専属メイドは階級を落として下女からやり直しです。専属侍女もメイドからやり直しです。専従近衛騎士はアクセル様以外は専従では無くなりましたが騎士団所属です。

ジャクリーン様が彼女達の人生を傷付けてしまいました。今までの努力が水の泡。お給料も大幅に下がります。

報告を欠いた彼女達にも責任はありますが、ジャクリーン様の責任です。
彼女達の主人は貴女なのですから」

「メイド長だからって、さっきから不敬よ!」

「先に言っておきます。
おめでとうございます」

「何がよ」

「ジャクリーン様は現在妊婦です」

「え!?」

「まだ初期ですが。体調不良はそのせいです」

「月のモノは来たわ」

「メイドから聞きました。あれは月のモノではありません。単なる出血です。直ぐ止まるのは月のモノではありません」

「そんな」

「ソフィア殿下とアクセル様は婚姻無効となりました。同時にアクセル様とジャクリーン様は夫婦になりました」

「え!本当!?」

「はい。カミュ国王陛下が許可を出されましたので」

「さっきからおかしいわ。あの女が何故殿下と呼ばれるの?お兄様はまだ王太子よ?」

「ジャクリーン様、本当に覚えていらっしゃらないのですね。

昨日、スフェール王国の国王陛下を歓迎するパーティが開かれたのは覚えていますか?」

「ジェラルド国王陛下でしょう?」

「そうです。ソフィア殿下はジェラルド国王陛下の妹です」

「は!?」

「あの女などと言えば処刑されますので気を付けてください」

さっきから何なのよ!

「私だって王女よ!」

「違います。
そうだとしてもあちらの国の方が格上ですから同等ではありません」

まず、ソフィア殿下とアクセル様は婚姻無効になりました。アクセル様はバックス侯爵家の籍に戻ったと思われましたか?

バックス侯爵はアクセル様の兄君が継がれた後ですので、戻ることは出来ずに独立ということになります。

つまり平民です。
平民になったので近衛騎士もクビです」

「そんな!」

「アクセル様は服務規定を無視して王女殿下と関係を持ち、その間も他の令嬢や使用人達と関係を持ち、婚姻後も不貞を繰り返しました。

国王陛下は素行調査もせずに大国スフェールの王族に王命を出して婚姻を無理強いしました。

そして判断を間違い続けた結果、強制退位されました」

「パパが!?」

「カミュ国王陛下が取り仕切り、徹底して調査をして処分を下しました。侍女達もその一環です。

因みに私も減俸です。

婚姻後、アクセル様は騎士の給料だけでジャクリーン様の贈り物や生活費、買い物を賄っていました。

足りなくて、避妊薬を平民が使う粗悪品にかえました。最近のジャクリーン様との閨は男性用の媚薬を使っていたようです。

最終的に避妊薬さえ買えなくなって、外に出すと言う危険な避妊法で最初は事を終えたようですが、直ぐにジャクリーン様が跨って、高めてしまって、退いてと言ったそうですが、ジャクリーン様がそのまま……。

アクセル様は事後避妊薬を飲むようジャクリーン様に言うつもりだったそうですが、疲れ果て眠ってしまい、朝にメイドに追い出され、伝えようにも王妃様達と別荘へ行ってしまわれて伝えられなかったそうです。

その後、月のモノが来たと聞いて安堵していたそうです」

「………」

「王命で無理強いした婚姻でしたのに、大国の王族の夫を寝取ったので、ジャクリーン様は除籍されました」

「は?」

「爵位もありませんし平民です。
アクセル様も平民です。つまり平民同士の婚姻が完了しております。数日中に城から出て暮らしていくことになります」

「そんなの無理よ!」

「本来なら多額の慰謝料を二人で支払わなくてはならないのに、ソフィア殿下は不要だと仰ってくださいました。

ブルノワ侯爵令息ともジャクリーン様の有責で婚約破棄になりましたので多額の慰謝料が発生しましたが、不要だと仰ってくださいました。

ソフィア殿下もブルノワ侯爵令息も王命による縁談だったのです。王命を王女自ら壊したのに、こんなに優しい対応で済んで感謝すべきです。

これからはアクセル様のお給料の中で慎ましく家族三人暮らしてください。

足りなければご自身も働いてください」

「兄様に会わせて!」

「貴女は平民。カミュ国王陛下には簡単にお会い出来ません。

平民の貴女にはメイドを一人付けますが、あくまでも補助です。できる限りご自身のことはご自身でなさってください。
服も平民の服を用意してあります。これなら自分で着られます。

下着はご自身で洗うようにしてください。
食事もメイド達と同じものです。倒れたばかりなので、水や食事は運びます。

ですが、平民は妊娠中でも病気をしても全て自分でやるのが基本ですからね?

因みに、私は男爵夫人です。
敬意を払ってください」


その日の夕方に兄様が部屋に来てくれたけど

「お前のせいで大変なんだ。用はない。
部屋が決まったら直ぐに出て行ってくれ。
私は国王、お前は平民。もう会うことはない」

言い捨てて去っていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初恋の人も婚約者も妹に奪われました

紫崎 藍華
恋愛
ジュリアナは婚約者のマーキースから妹のマリアンことが好きだと打ち明けられた。 幼い頃、初恋の相手を妹に奪われ、そして今、婚約者まで奪われたのだ。 ジュリアナはマーキースからの婚約破棄を受け入れた。 奪うほうも奪われるほうも幸せになれるはずがないと考えれば未練なんてあるはずもなかった。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから

甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。 であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。 だが、 「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」  婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。  そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。    気がつけば、セリアは全てを失っていた。  今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。  さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。  失意のどん底に陥ることになる。  ただ、そんな時だった。  セリアの目の前に、かつての親友が現れた。    大国シュリナの雄。  ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。  彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」 「はあ……なるほどね」 伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。 彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。 アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。 ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。 ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

あらまあ夫人の優しい復讐

藍田ひびき
恋愛
温厚で心優しい女性と評判のカタリナ・ハイムゼート男爵令嬢。彼女はいつもにこやかに微笑み、口癖は「あらまあ」である。 そんなカタリナは結婚したその夜に、夫マリウスから「君を愛する事は無い。俺にはアメリアという愛する女性がいるんだ」と告げられる。 一方的に結ばされた契約結婚は二年間。いつも通り「あらまあ」と口にしながらも、カタリナには思惑があるようで――? ※ なろうにも投稿しています。

処理中です...