【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました

ユユ

文字の大きさ
上 下
16 / 17

告白

しおりを挟む
二週間ほど城で治療を受けた後、ガルザック邸に移った。

まだベッドに留まるよう言われているが、1日に一度散歩を許されている。


ユベール様にはたくさん謝罪をしてもらった。
ユベール様が私を好きなのだと言うことも分かった。

だからこそ、欲が出てしまう。
ビビオナード嬢と何度も身体を合わせて子を作るべく子種を授けていたことに嫉妬してしまう。嫉妬などする余裕は無かったのに。

する権利もないと思っていたのに、愛されているならと気を緩めてしまったようだ。

だからギクシャクしている。
療養が盾になっているけど、この気持ちをどうおさめたらいいのか。


素っ気なくするつもりはないのに、そうなってしまう。ユベール様は悲しそうな顔をした。

その夜、ラザール様が夢に出てきた。

《何をやっているの?せっかく初恋の人の妻になったんでしょ?》

《ラザール様…》

《彼は私が君にしてあげたかったことをしてくれるよ》

《……》

《君だって、私を愛してくれたじゃないか。純潔を捧げようとしてくれた。
私が発作を起こさなければ、リゼットはどうなっていた?避妊薬なんか与えないから孕んでいただろう。

私は君の心を奪ったんだ。ユベール殿からしたら君以上に嫉妬しているはずだ。

心はいつでも飛んで行って浮気をするからね。
今、君が私と夢で密会しているように。

紫色の花を見ては、私に想いを寄せていただろう?
ユベール殿がクッキーを食べさせられた時に、私がクッキーを食べさせたことを思い出しただろう?

とんでもない浮気者だ。
そしてこれからも その浮気者は治らない》

《だって》

《ほら、早く起きてユベール殿にご飯を食べさせろと我儘を言って、昼には散歩に連れて行けと我儘を言って、夜は添い寝をしろと我儘を言うんだ》

《ラザール様》

《私がしたかったことを彼にさせてよ》

《また会いに出てきてくださる?》

《ほらね。リゼットの方が重傷の浮気者だ》

ラザール様が私の額に口付けた。


目を開けると、私の顔を覗き込みながら髪に触れるユベール様がいた。

「ごめん、起こしたな」

そう言って立ち去ろうとするユベール様に我儘を言った。

「朝食を、食べさせて」

「リゼット?」

「まだ痛いからユベール様が食べさせて」

「分かった!」


ユベール様は私を観察しながらひと口ひと口食べさせてくれた。

「お昼前にお散歩に連れて行って」

「わ、分かった!」


昼食後は、

「ティータイムはここでクッキーを食べさせて」

「分かった!」


夕食後は、

「私が眠るまで本を読み聞かせて」

「分かった!」

「寒い気がするから一緒に寝て」

「っ!!」

ユベール様がボロボロと涙を溢した。

「嫌われたかと…」

「私以外の女性を抱いて子作りしていたと聞いてムカムカしました」

「ごめん」

「私は子供の頃からユベール様をお慕いしていたのです」

「え!?」

「でも次期侯爵のユベール様に私は相応しくないと思っていました」

「求婚を躊躇ってごめん」

「もう他の女性に手を付けないでください」

「約束する。破ったら鞭打ち刑を受ける」

「じゃあ練習しないと」

「早く元気になって練習してくれ」

「まさか、浮気するつもりですか」

「違うよ」


それから順調に回復して、普通の動きなら痛くなくなった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者

月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで…… 誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

塩対応彼氏

詩織
恋愛
私から告白して付き合って1年。 彼はいつも寡黙、デートはいつも後ろからついていく。本当に恋人なんだろうか?

私がもらっても構わないのだろう?

Ruhuna
恋愛
捨てたのなら、私がもらっても構わないのだろう? 6話完結予定

処理中です...