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妊娠騒動
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一階の応接間でローランドとその恋人ヴァイオレット、私と執事ウィリアムが集まり説明を聞いた。
ヴ「私 ローランド様の子を妊娠したのです」
私「おめでとう?なのかな」
ロ「そんなはずはない。二重の避妊をしていたろう」
ヴ「ですが、愛し合ったのはローランド様だけですから間違いありません」
私「二重の避妊って何?」
ロ「……」
私「何!」
ロ「…ナ、ナカで出してないし、避妊薬を飲ませていた。だから孕むなんておかしいんだ」
私「前者は避妊法としては不確実過ぎますし、後者は100%と言えますか?効能としては?使い方としては?
タイミングが悪いとか 飲み合わせが悪いとか、薬を吐き戻したとか」
ヴ「そんなことはしていません!」
私「では、どうやって妊娠したのか教えて」
ヴ「それは…分かりません」
私「ローランドは効果はどうあれ貴女と子を作るのは望んでいなかったから二重に予防をしたの」
ヴ「分かりません!」
私「ウィル、医者を2人呼んでもらえる?今すぐ」
執「かしこまりました」
ヴ「な、何を、」
私「先ずは妊娠の有無を確かめないと」
ヴ「ほ、本当です!」
私「分かるのなら妊娠時期を絞り込みたいし」
ヴ「どうしてそんなことを」
私「本人が分からないと言うのだから仕方ないじゃない。時期を絞れば少しは思い出すかもしれないでしょう?」
ヴ「何月の時の子だと分かっても…」
私「私とローランドは王命婚。ローランドは王命婚に背いたことになるの。だから国王陛下に報告するために必要なのよ」
ヴ「っ!!」
ロ「堕ろせばいいことだ。報告の必要は無いだろう」
ヴ「酷いわ!ローランド様っ、私は貴方を愛しているのに!」
私「そういうのは2人でやって。
ローランド。罪を犯しても証拠を消せば無かったことになるとでも?」
ロ「そんなつもりでは」
私「医師が来たら呼んで。診察させるまでヴァイオレットをこの屋敷から出しては駄目よ。分かった?ローランド」
ロ「分かったよ」
そして1時間半後
「妊娠なさっていないか、2ヶ月未満かのどちらかです」
「私も同診断です」
2人の医者はそう答えた。
私「で、ヴァイオレット。貴女は何を根拠に妊娠したと言って押しかけて来たの?医者に診せてから来たのよね?」
ヴ「医者には…」
私「じゃあ何」
ヴ「月のモノが来なくて」
私「ウィル。バリヤス邸に行って、ヴァイオレットの最後の生理がいつか聞いてきて。メイド長を同行させればいいわ。
ついでに バリヤス伯爵夫妻を連れて来て」
執「かしこまりました」
ヴ「な、何で!」
私「どっちみち、ご両親とも相談しなくてはならないでしょう?産まれる子をどちらが引き取るのか、ヴァイオレットをどうするのか。長い間、ローランドが迎えに行って泊まったりしているのだから、不倫はご両親公認のはず。つまり共謀ともいえるのよ」
ヴ「帰る!帰ります!」
私「ローランド。ヴァイオレットを屋敷から出さないで。出したら私は2度と帰らないから」
ロ「分かった」
ヴ「ローランド様!」
ロ「私の子だと言いに来たのだから、妻であるアンジェリーナは然るべき対応をしているだけだ」
私「じゃあ、ウィルが戻るまで庭でお茶でも飲んでいるから、2人はここにいてね」
1時間後。
夫人「ヴァイオレット!」
伯「お前は何をしているのだ!」
ヴ「お父様…お母様…」
バリヤス伯爵夫妻は大体のことは聞いたのだろう。ミュローノ邸の応接間に現れるなりヴァイオレットを叱りつけた。
私「お初にお目にかかります。お嬢さんと交際している男の妻のアンジェリーナ・ミュローノと申します」
伯「初対面ではないが」
私「記憶の大半を失ってしまいまして、自分を含めて全ての人が初対面となってしまうのです。お許しください」
夫人「まあ、それは大変でしたわね」
私「そうですね。目覚めたら見知らぬ男と王命婚をしていて、その男は不倫旅行に行っていると聞かされて驚きました」
全員「……」
私「ウィル。結果は?」
執「2週間前にあったそうです」
私「ふーん」
ロ「ヴァイオレット!!」
ヴ「っ!!」
私「バリヤス伯爵、伯爵夫人。ご令嬢は妊娠したとミュローノ邸に押しかけてきたのです。ローランドは避妊薬を飲ませたと言っていますし、2人の医者も判明できる妊娠は無いと言っていました。
そこで本人に、何を根拠に妊娠したと言ったのか聞いたら“月のモノが無い”と言ったのです。ですので確かめさせに行きました。
うちは王命婚。これが本当なら、王命を軽視して他の女性と子作りしたと報告しなくてはなりませんから。
2週間前ということは、終わったのは1週間前ですね?ローランド。1週間以内にヴァイオレットと寝たの?」
ロ「会ってもいない」
私「つまり、ご令嬢は偽りの妊娠を告げに来たのです。ローランドとご令嬢の不倫関係はバリヤス伯爵家公認なのですよね?」
伯「それは…」
夫人「確かに今は不倫と呼ばれるかもしれませんが、娘はミュローノ侯爵令息と婚約していますのよ」
ヴ「お母様っ」
ロ「何を?」
益々ヴァイオレットの顔色が悪くなったなぁ…
ヴ「私 ローランド様の子を妊娠したのです」
私「おめでとう?なのかな」
ロ「そんなはずはない。二重の避妊をしていたろう」
ヴ「ですが、愛し合ったのはローランド様だけですから間違いありません」
私「二重の避妊って何?」
ロ「……」
私「何!」
ロ「…ナ、ナカで出してないし、避妊薬を飲ませていた。だから孕むなんておかしいんだ」
私「前者は避妊法としては不確実過ぎますし、後者は100%と言えますか?効能としては?使い方としては?
タイミングが悪いとか 飲み合わせが悪いとか、薬を吐き戻したとか」
ヴ「そんなことはしていません!」
私「では、どうやって妊娠したのか教えて」
ヴ「それは…分かりません」
私「ローランドは効果はどうあれ貴女と子を作るのは望んでいなかったから二重に予防をしたの」
ヴ「分かりません!」
私「ウィル、医者を2人呼んでもらえる?今すぐ」
執「かしこまりました」
ヴ「な、何を、」
私「先ずは妊娠の有無を確かめないと」
ヴ「ほ、本当です!」
私「分かるのなら妊娠時期を絞り込みたいし」
ヴ「どうしてそんなことを」
私「本人が分からないと言うのだから仕方ないじゃない。時期を絞れば少しは思い出すかもしれないでしょう?」
ヴ「何月の時の子だと分かっても…」
私「私とローランドは王命婚。ローランドは王命婚に背いたことになるの。だから国王陛下に報告するために必要なのよ」
ヴ「っ!!」
ロ「堕ろせばいいことだ。報告の必要は無いだろう」
ヴ「酷いわ!ローランド様っ、私は貴方を愛しているのに!」
私「そういうのは2人でやって。
ローランド。罪を犯しても証拠を消せば無かったことになるとでも?」
ロ「そんなつもりでは」
私「医師が来たら呼んで。診察させるまでヴァイオレットをこの屋敷から出しては駄目よ。分かった?ローランド」
ロ「分かったよ」
そして1時間半後
「妊娠なさっていないか、2ヶ月未満かのどちらかです」
「私も同診断です」
2人の医者はそう答えた。
私「で、ヴァイオレット。貴女は何を根拠に妊娠したと言って押しかけて来たの?医者に診せてから来たのよね?」
ヴ「医者には…」
私「じゃあ何」
ヴ「月のモノが来なくて」
私「ウィル。バリヤス邸に行って、ヴァイオレットの最後の生理がいつか聞いてきて。メイド長を同行させればいいわ。
ついでに バリヤス伯爵夫妻を連れて来て」
執「かしこまりました」
ヴ「な、何で!」
私「どっちみち、ご両親とも相談しなくてはならないでしょう?産まれる子をどちらが引き取るのか、ヴァイオレットをどうするのか。長い間、ローランドが迎えに行って泊まったりしているのだから、不倫はご両親公認のはず。つまり共謀ともいえるのよ」
ヴ「帰る!帰ります!」
私「ローランド。ヴァイオレットを屋敷から出さないで。出したら私は2度と帰らないから」
ロ「分かった」
ヴ「ローランド様!」
ロ「私の子だと言いに来たのだから、妻であるアンジェリーナは然るべき対応をしているだけだ」
私「じゃあ、ウィルが戻るまで庭でお茶でも飲んでいるから、2人はここにいてね」
1時間後。
夫人「ヴァイオレット!」
伯「お前は何をしているのだ!」
ヴ「お父様…お母様…」
バリヤス伯爵夫妻は大体のことは聞いたのだろう。ミュローノ邸の応接間に現れるなりヴァイオレットを叱りつけた。
私「お初にお目にかかります。お嬢さんと交際している男の妻のアンジェリーナ・ミュローノと申します」
伯「初対面ではないが」
私「記憶の大半を失ってしまいまして、自分を含めて全ての人が初対面となってしまうのです。お許しください」
夫人「まあ、それは大変でしたわね」
私「そうですね。目覚めたら見知らぬ男と王命婚をしていて、その男は不倫旅行に行っていると聞かされて驚きました」
全員「……」
私「ウィル。結果は?」
執「2週間前にあったそうです」
私「ふーん」
ロ「ヴァイオレット!!」
ヴ「っ!!」
私「バリヤス伯爵、伯爵夫人。ご令嬢は妊娠したとミュローノ邸に押しかけてきたのです。ローランドは避妊薬を飲ませたと言っていますし、2人の医者も判明できる妊娠は無いと言っていました。
そこで本人に、何を根拠に妊娠したと言ったのか聞いたら“月のモノが無い”と言ったのです。ですので確かめさせに行きました。
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2週間前ということは、終わったのは1週間前ですね?ローランド。1週間以内にヴァイオレットと寝たの?」
ロ「会ってもいない」
私「つまり、ご令嬢は偽りの妊娠を告げに来たのです。ローランドとご令嬢の不倫関係はバリヤス伯爵家公認なのですよね?」
伯「それは…」
夫人「確かに今は不倫と呼ばれるかもしれませんが、娘はミュローノ侯爵令息と婚約していますのよ」
ヴ「お母様っ」
ロ「何を?」
益々ヴァイオレットの顔色が悪くなったなぁ…
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