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いつものことです
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突然現れたのはコーネリア様だった。
「コーネリア様」
「約束も無しにごめんなさいね。レオナード様が貴女に怪我をさせたと言うものだから」
「え?」
コーネリア様の次に入室したのは箱を持った昨夜の男性だった。
「ガデュエット伯爵家といえばコーネリアの友人がいたと思い出して、昨夜のうちにコーネリアに手紙を出したんだ。そうしたら明日見舞いに行くから一緒に行こうと返信があって、お邪魔させてもらったよ。
昨夜は申し訳なかった」
「私がぶつかったのです。気を付けて角を曲がらなかったので自業自得ですわ」
「伯爵は?」
「両親は風邪を引いてしまって、感染するといけませんので呼ぶことはできません」
「いや、いいんだ。勝手に来たのだから。
お詫びを伝えて欲しい」
「はい。ですがお気になさらずに」
「ねえ。ピノール子爵令息が違う女と出席してたの?」
「男爵家のご令嬢です。丁寧にお詫びをしに来てくださいました」
「十分 破棄できるんじゃないの?」
「父達が揺るがないのです。
子爵夫妻は婚姻したら止めさせると言っていて、父は婚姻前のお遊びは大目にみてやりなさいって感じで。
婚姻が避けられないのなら、婚姻してからも他所に目を向けてもらえるとありがたいのですが」
「何でビビアンが犠牲にならなくちゃいけないのよ」
そこにノックの音がした。
「はい」
「お姉様、お客様と聞きました。私もご挨拶を、」
「エリン。勝手なことをしないでといつも言っているでしょう」
「そんな、私は良かれと思って、」
「挨拶なら当主か当主の妻がするものです。
扉が閉まっている応接間に態々やってきて割り込むことは止めなさい。貴女には関係のないお客様でしょう」
「ごめんなさい」
そう言いながらいつものように涙を浮かべた。
彼女はエリン・プリペルン。17歳で男爵籍だ。
彼女は父の弟の娘で、両親が事故死して預かることになった。エリンは20歳になれば亡くなった実父の男爵の爵位を受け継ぎ、婿を取らねばならない。
「自分の部屋に戻りなさい」
「でも、もう顔を合わせていますから」
「寮に住む?」
「酷いですわ、お姉様っ」
「この屋敷でルールを守れないなら仕方がないでしょう。
誰か、エリンを連れて行って」
「かしこまりました」
「イヤっ、放して」
バタン
ソファに座り二人に詫びた。
「お見苦しいところをお見せしました。申し訳ございません」
「聞いていた通りね」
「いつも ああなのか」
「そうみたい。もしレオナード様が一人で来ていたら彼女はレオナード様の隣に座ったでしょうね。
女性のお客様にはしないらしいの」
「伯爵や夫人は注意はしないのか?」
「するのですが、すぐさっきみたいに泣くのです。
父の弟夫婦の子で、事故で他界しましたので20歳になるまでガデュエット家で預かっているのです。
20歳になれば男爵家を継ぐべく婿を迎える予定です」
「何歳なんだ?」
「私やコーネリア様の一つ下で17歳です」
「婿を探しているとか」
「成り得る方だと知っての行動ではないので困っています」
「そうよね。今日なんてレオナード様は婚約者の私とビビアンに会いに来ているのだから、駄目よね」
「あと三年ほどの我慢だと思うしかなさそうです」
だが後日、マイスリー公爵家とダークロック公爵家連名の手紙がお父様に届いたことで、エリンには厳しいと評判の淑女教育の先生が就いた。
手紙にはエリンの無礼さについて触れていたらしい。
そして来客時にはエリンに見張りを付けて近寄らせない対策をとった。
「コーネリア様」
「約束も無しにごめんなさいね。レオナード様が貴女に怪我をさせたと言うものだから」
「え?」
コーネリア様の次に入室したのは箱を持った昨夜の男性だった。
「ガデュエット伯爵家といえばコーネリアの友人がいたと思い出して、昨夜のうちにコーネリアに手紙を出したんだ。そうしたら明日見舞いに行くから一緒に行こうと返信があって、お邪魔させてもらったよ。
昨夜は申し訳なかった」
「私がぶつかったのです。気を付けて角を曲がらなかったので自業自得ですわ」
「伯爵は?」
「両親は風邪を引いてしまって、感染するといけませんので呼ぶことはできません」
「いや、いいんだ。勝手に来たのだから。
お詫びを伝えて欲しい」
「はい。ですがお気になさらずに」
「ねえ。ピノール子爵令息が違う女と出席してたの?」
「男爵家のご令嬢です。丁寧にお詫びをしに来てくださいました」
「十分 破棄できるんじゃないの?」
「父達が揺るがないのです。
子爵夫妻は婚姻したら止めさせると言っていて、父は婚姻前のお遊びは大目にみてやりなさいって感じで。
婚姻が避けられないのなら、婚姻してからも他所に目を向けてもらえるとありがたいのですが」
「何でビビアンが犠牲にならなくちゃいけないのよ」
そこにノックの音がした。
「はい」
「お姉様、お客様と聞きました。私もご挨拶を、」
「エリン。勝手なことをしないでといつも言っているでしょう」
「そんな、私は良かれと思って、」
「挨拶なら当主か当主の妻がするものです。
扉が閉まっている応接間に態々やってきて割り込むことは止めなさい。貴女には関係のないお客様でしょう」
「ごめんなさい」
そう言いながらいつものように涙を浮かべた。
彼女はエリン・プリペルン。17歳で男爵籍だ。
彼女は父の弟の娘で、両親が事故死して預かることになった。エリンは20歳になれば亡くなった実父の男爵の爵位を受け継ぎ、婿を取らねばならない。
「自分の部屋に戻りなさい」
「でも、もう顔を合わせていますから」
「寮に住む?」
「酷いですわ、お姉様っ」
「この屋敷でルールを守れないなら仕方がないでしょう。
誰か、エリンを連れて行って」
「かしこまりました」
「イヤっ、放して」
バタン
ソファに座り二人に詫びた。
「お見苦しいところをお見せしました。申し訳ございません」
「聞いていた通りね」
「いつも ああなのか」
「そうみたい。もしレオナード様が一人で来ていたら彼女はレオナード様の隣に座ったでしょうね。
女性のお客様にはしないらしいの」
「伯爵や夫人は注意はしないのか?」
「するのですが、すぐさっきみたいに泣くのです。
父の弟夫婦の子で、事故で他界しましたので20歳になるまでガデュエット家で預かっているのです。
20歳になれば男爵家を継ぐべく婿を迎える予定です」
「何歳なんだ?」
「私やコーネリア様の一つ下で17歳です」
「婿を探しているとか」
「成り得る方だと知っての行動ではないので困っています」
「そうよね。今日なんてレオナード様は婚約者の私とビビアンに会いに来ているのだから、駄目よね」
「あと三年ほどの我慢だと思うしかなさそうです」
だが後日、マイスリー公爵家とダークロック公爵家連名の手紙がお父様に届いたことで、エリンには厳しいと評判の淑女教育の先生が就いた。
手紙にはエリンの無礼さについて触れていたらしい。
そして来客時にはエリンに見張りを付けて近寄らせない対策をとった。
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