上 下
3 / 23

いつものことです

しおりを挟む
突然現れたのはコーネリア様だった。

「コーネリア様」

「約束も無しにごめんなさいね。レオナード様が貴女に怪我をさせたと言うものだから」

「え?」

コーネリア様の次に入室したのは箱を持った昨夜の男性だった。

「ガデュエット伯爵家といえばコーネリアの友人がいたと思い出して、昨夜のうちにコーネリアに手紙を出したんだ。そうしたら明日見舞いに行くから一緒に行こうと返信があって、お邪魔させてもらったよ。

昨夜は申し訳なかった」

「私がぶつかったのです。気を付けて角を曲がらなかったので自業自得ですわ」

「伯爵は?」

「両親は風邪を引いてしまって、感染するといけませんので呼ぶことはできません」

「いや、いいんだ。勝手に来たのだから。
お詫びを伝えて欲しい」

「はい。ですがお気になさらずに」

「ねえ。ピノール子爵令息が違う女と出席してたの?」

「男爵家のご令嬢です。丁寧にお詫びをしに来てくださいました」

「十分 破棄できるんじゃないの?」

「父達が揺るがないのです。
子爵夫妻は婚姻したら止めさせると言っていて、父は婚姻前のお遊びは大目にみてやりなさいって感じで。

婚姻が避けられないのなら、婚姻してからも他所に目を向けてもらえるとありがたいのですが」

「何でビビアンが犠牲にならなくちゃいけないのよ」

そこにノックの音がした。

「はい」

「お姉様、お客様と聞きました。私もご挨拶を、」

「エリン。勝手なことをしないでといつも言っているでしょう」

「そんな、私は良かれと思って、」

「挨拶なら当主か当主の妻がするものです。
扉が閉まっている応接間に態々やってきて割り込むことは止めなさい。貴女には関係のないお客様でしょう」

「ごめんなさい」

そう言いながらいつものように涙を浮かべた。

彼女はエリン・プリペルン。17歳で男爵籍だ。
彼女は父の弟の娘で、両親が事故死して預かることになった。エリンは20歳になれば亡くなった実父の男爵の爵位を受け継ぎ、婿を取らねばならない。


「自分の部屋に戻りなさい」

「でも、もう顔を合わせていますから」

「寮に住む?」

「酷いですわ、お姉様っ」

「この屋敷でルールを守れないなら仕方がないでしょう。

誰か、エリンを連れて行って」

「かしこまりました」

「イヤっ、放して」

バタン


ソファに座り二人に詫びた。

「お見苦しいところをお見せしました。申し訳ございません」

「聞いていた通りね」

「いつも ああなのか」

「そうみたい。もしレオナード様が一人で来ていたら彼女はレオナード様の隣に座ったでしょうね。
女性のお客様にはしないらしいの」

「伯爵や夫人は注意はしないのか?」

「するのですが、すぐさっきみたいに泣くのです。

父の弟夫婦の子で、事故で他界しましたので20歳になるまでガデュエット家で預かっているのです。

20歳になれば男爵家を継ぐべく婿を迎える予定です」

「何歳なんだ?」

「私やコーネリア様の一つ下で17歳です」

「婿を探しているとか」

「成り得る方だと知っての行動ではないので困っています」

「そうよね。今日なんてレオナード様は婚約者の私とビビアンに会いに来ているのだから、駄目よね」

「あと三年ほどの我慢だと思うしかなさそうです」



だが後日、マイスリー公爵家とダークロック公爵家連名の手紙がお父様に届いたことで、エリンには厳しいと評判の淑女教育の先生が就いた。

手紙にはエリンの無礼さについて触れていたらしい。
そして来客時にはエリンに見張りを付けて近寄らせない対策をとった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。

window
恋愛
イリス公爵令嬢とハリー王子は、お互いに惹かれ合い相思相愛になる。 「私と結婚していただけますか?」とハリーはプロポーズし、イリスはそれを受け入れた。 関係者を招待した結婚披露パーティーが開かれて、会場でエレナというハリーの幼馴染の子爵令嬢と出会う。 「新婚旅行に私も一緒に行きたい」エレナは結婚した二人の間に図々しく踏み込んでくる。エレナの厚かましいお願いに、イリスは怒るより驚き呆れていた。 「僕は構わないよ。エレナも一緒に行こう」ハリーは信じられないことを言い出す。エレナが同行することに乗り気になり、花嫁のイリスの面目をつぶし感情を傷つける。 とんでもない男と結婚したことが分かったイリスは、言葉を失うほかなく立ち尽くしていた。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】貴方と貴方のとなりのあの子を見倣います!

恋愛
え? 何をしているのか?ですか? 貴方があの方をお褒めになるので、私も彼女を見習って改める事にしましたの。 喜んでくれると思っていた婚約者様は何故か不機嫌そうです。 何故なのでしょう_____? ※ゆるふわ設定 ※1話と2話少し内容を修正いたしました ※お待たせしてしまい申し訳ございません。 完結まで毎日予約投稿済みです。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり
恋愛
「アマリア・レガス伯爵令嬢!其方を王族に毒をもったとして処刑とする!」 いきなりの冤罪を突き立てられ、私の愛していた婚約者は、別の女性と一緒に居る。 貴族としての政略結婚だとしても、私は愛していた。 けれど、貴方は……別の女性といつも居た。 処刑されたと思ったら、何故か時間が巻き戻っている。 ならば……諦める。 前とは違う人生を送って、貴方を好きだという気持ちをも……。 ……そう簡単に、消えないけれど。 --------------------- ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

処理中です...