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遠慮なくどうぞ
しおりを挟むガデュエット伯爵家には3人の子供が生まれた。
長男 ショーンは跡継ぎになることを辞退して婿入りした。恋愛結婚だ。
侯爵家の一人娘が口説いて成された。
次男 カジミールは次期ガデュエット伯爵。
婚約者もいて 跡継ぎ教育の真っ最中。
長女 ビビアンは18歳。王立学園の三年生。
彼女には生まれながらに婚約者がいた。
父とピノール子爵が大親友で、自分の子達を婚姻させて縁を繋げようと約束したからだ。
本来 我が国では 貴族の婚約は学園を卒業してから話し合って条件を明確にして婚約し、成婚は20歳から。
だけど実際には家門間で仮婚約をしてしまっている。
もちろん卒業後に国に届け出る。
貴族間では 暗黙の了解で婚約者持ちとして扱われるが法的な効力は無い。
だが家門同士の約束を破る事は 貴族としての信用を失墜させることになるので 普通は守る。
予期せぬ妊娠により婚姻を早めなければならない場合はペナルティを課せられるが認められる。
婚約者以外を妊娠させて娶らなかった場合は当主にはなれない決まりがあった。“資格無し”という扱いなのだ。
その代わり正妻にする必要はない。
それにより婚約が破棄される場合がある。
その時は 婚約時に決められた額を慰謝料として支払わねばならない。
卒業前の話なら仮契約書に従うのが通例。
「ごきげんよう ガデュエット様」
「ごきげんよう」
「昨夜は素敵な夜を過ごせましたの」
「それは良かったですね」
「ロバート様は情熱的で、」
「その話は必要ですか?」
「は?」
「私には関係ありませんのでお好きにどうぞ」
「え?」
「彼の妻になりたければ どうぞ妊娠でもなさってください。もういいですか?お花を摘みたいのですが」
「あ……はい」
こんなことはよくある。
単に優越感に浸りたいのか、子爵夫人の座を狙っているのか、それとも第二夫人になりたい?
だけど彼を選ぶなら妾になるけどね。
妊娠させて二人目の妻を娶ることになった場合、第二夫人か妾かは資産に左右される。
規定以上の資産があれば第二夫人として迎えることができる。
第二夫人は正妻の次に権利を持つ。
資産が規定を下回れば妾として迎えられる。
妾は子と母親の生活を保証はするが権利は持たない。
このようなことは、誰もが分かるほど裕福か衰退していないと分からないものだ。特に後者は隠すからだ。
だから妊娠して喜んでも、いざ婚姻の話になると妾でがっかりする者も珍しくはない。
「いくらどうでもいいからって第二夫人を娶られるのは嫌じゃないの?」
学友のコーネリア様が いつも代わりに腹を立ててくれる。
「可能なら白い結婚がいいから好都合なのです。
代わりに男児を産んで欲しいですわ」
「私が男ならビビアンを大事にするのに」
「女でも十分大事にしてくださっておりますわ」
コーネリア様はマイスリー公爵の長女で、レオナード・ダークロック公爵令息の仮婚約者だ。
コーネリア様とは一年生の時から親しくさせていただいていた。
「いつでもレオナード様に頼んでロバート・ピノールを懲らしめるわよ」
「そんな価値もないですわ」
ロバートは23歳で騎士団にいる。
騎士職は、騎士目当ての令嬢や平民のお嬢さんから声をかけられることは多いと聞く。王都から離れると豹変して女遊びを始める者は珍しくない。
騎士道云々語るなら そっちも律して欲しいものだ。
ロバートがモテたいから騎士になったのか、騎士に憧れたのか、それとも給金を得るためなのかは分からない。
理由は一つじゃないかもしれない。
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