【完結】出て行ってください! 午前0時 なぜか王太子に起こされる

ユユ

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側妃になる日

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アイザックとローズ様の婚姻から1年後



「ううっ…シーちゃん。いつでも戻って来ていいからね。婚姻の儀のこの後 直ぐでもいいよ。一緒に帰ろう?」

「そうだぞ シル。戻ってくれば部屋はそのままだし、望むなら側に屋敷を建ててやるからな」

「殿下が不貞を犯したら切り落としてやるからな」

「パパ、お兄様。家出するときはお願いします」

パパと二人の兄様は相変わらずの溺愛っぷり。
ママは諦めてる。

「誓い合ったらばかりなのに止めてくれ」

そう言いながら嬉しそうなアイザック。

ローズ様もローズ様のお父様達も参列してくださった。
コーデュロウ家の次期当主も来てくださった。

ヘンリー様は傷心で寝込んでいると言われた。




そして夜はついに…。


手慣れた愛撫にモヤモヤしていたけど、直ぐに考える余裕を奪われた。

「愛して抱くのはシルビアだけだ」

「いやだ、あっ」

「機嫌を良くしてあげたいけど」


そう、ものすごく痛かった。
痛がって抵抗する私を嬉しそうに組み敷き 一つになった。
ナカは押し広げられ、熱くジンジンと痛む。転んで擦りむいたときのように。

「そろそろ動いていい?」

「駄目」

「ちょっとずつ」

「痛いからイヤ」

「嬉しい」

「痛い」

「ごめんね」

「うん」


粘ったけど、“このままじゃ終われないよ” と言われて仕方なく承諾した。

痛みを我慢しているのに…

「今日は避妊薬も飲ませないからね」

え?直ぐできちゃうかもしれないじゃない。

「まだ…」

「今日だけは全て自然にしたいんだ。
破瓜の痛みも 未貫通のナカを押し広げる痛みも 違和感も感じ取って欲しいし、命が芽生えるかどうかも自然に任せたい」



やっぱり俺様だ。
避妊薬を飲ませてくれなかった。

その代わり、事が済んでも朝を迎えても、昼を迎えてさらに夜になっても側から離れなかった。

「蜜月だから当面こんな感じだ。
1週間後から再開するから。その時は避妊薬をあげるよ」



1週間後から一日中抱き潰されて、やっと解放されたのは妊娠が判明したから。

初夜の一回で見事に受精したことになる。

アイザックはニコニコし過ぎて目が垂れそうだし、ローズ様とローズ様の恋人も満面の笑み。


そして産まれたのは男の子エトワールだった。
ミニチュア アイザックの誕生だ。
私に似なくて良かった。




その後ローズ様が恋人の子を産み、表向きは死産とされたけど、乳母をつけて恋人と暮らしている。
厳重に隔離された小さな離宮で育てられることになった。



エトワール7歳。

「ママ。あの子誰?」

「血の繋がりはないけど家族よ」

「……あの子が欲しい」

「え?」

「あの子をお嫁さんにする」

エトワールがお気に召した女の子は、ローズ様と騎士様の子ルナだった。

「え…どうしよう」

「可愛い」


家族会議を開いた結果、我が子エトワールの気が変わるかもしれないと学園卒業まで保留にした。
なんて言ってもアイザックの子だからね。

そしてルナには可哀想だけど、小さな頃から英才教育が始まった。流石ローズ様の子。飲み込みが早くて凄いらしい。




結局、エトワールが卒業しても気持ちが変わらず、婚約するにあたりローズ様のお父様である前公爵に相談した。

唖然とした元公爵おじ様は溜息を吐いた。

「養女にすればいいのだろう」

「お父様!」

「おじ様!」

「シルビアには恩があるからな。これで帳消しだ」

「追加のネタが有りますが」

「よし、聞こう」

何度もローズ様と里帰りをして、すっかり第四の父となった元公爵おじ様。

(第一は憑依前の父。第二は伯爵パパ。第三は国王陛下)



後は次男と長女を嫁がせればと思ったけど、娘が私とアイザックの掛け合わせの子だった。

学園に入る前から令息を侍らせて逆ハーを築いていた。

「ヴァイオレット。そんなんじゃ悪女として断罪されちゃうのよ」

「何ですかそれ」

「複数や婚約者のいる子は駄目です。あと貞操は守りなさい」

「向こうから寄ってくるんだもの。
お父様も昔凄かったって聞きましたよ」

「アイザックも制裁されてるのよ」

「えっ」

呪いが発動するっていう制裁だけどね。



そして次男シリウスは堅物過ぎて融通が効かない。
ヴァイオレットと足して2で割るとマシになる気がするのに。

「父上。国賓だからといって あれだけの美女に愛想よくすると母上がキレますよ。
母上の夫ということを しっかりと…………」

私の代わりにアイザックにお小言を言ってくれるから助かるけど。
シリウスの妻は大変だわ。

「シルビア、やましいことは無いからな」

「どうだか」

「お誘いなんだな?」

「ちょっと!」

「父上。イチャイチャは2人きりのときにお願いします」

「そうだな。シルビア、部屋を移ろう」

「シリウス、助けて」

「お大事に」



アイザックは浮気はしなかった。
私が知らないだけかと思ったけど、それはないとみんなが保証してくれた。


こっちの世界に来て良かった。

「シーちゃん。遊びに来たよ」

「パパ!」


パパの溺愛も健在だ。



時々昔の夢を見る。

離島で生まれ育ち、小中同じ校舎で勉強をした。
ネットが繋がっていても、配達は週に一度の定期船頼り。天候が悪いと遅延、酷いと運行は一週間延びる。

学校の授業でハンドクリームを作った。
そこからシャンプーなども自作した。

高校は一人暮らしをした。
島に高校は無かったから。
何が起きたのか分からないけど、二年生の春にこの世界に来てしまった。

残された家族の悲しみが癒えてくれたらと、ローズ様の実家の海で手紙を入れた瓶を流した。
世界が違うのだから届くはずがないのに。

だけど 幸せに生きていると知らせたかった。


「眠れないのか」

「寒い」

「もっとこっちにおいで」















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