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父親の困惑

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【 ペッシュナー伯爵の視点 】




「は!?」

早馬で執事から手紙が届いた。

“王太子殿下が瞬間移動してお嬢様のお部屋へいらっしゃいます”

意味がわからない。

“お嬢様が屋敷内の改革をなさっております。
我々は感謝しかございません”

一体何をしているんだ!?


まず、王太子殿下の元を訪れた。


「午前0時になるとシルビアの側に瞬間移動して、夜明けとともに私室に戻される。

天気の悪い日は起こらない。
天気の基準は私のいる場所の天気だ。

度々邪魔をしている」

そういうことではありません。
ちょっと理解できないところは置いて、殿下が娘の寝室に!?夜中に共に過ごす!?

「付き添いは…」

「いたり いなかったり。
言っておくが、シルビアとの間には何も無い。
伯爵の娘は凶暴過ぎる。
俺を脅すし、花瓶を投げようとするし、正座させるんだぞ?
大人しくソファで夜明けを待っているよ」

「瞬間移動ですか?」

「今日は晴天だ。一泊していくといい。
俺の寝室で見張れ。本を読むなり仕事をするなり好きにしていい」

「では、今夜 お伺いいたします」


殿下の私室へ案内されて、寝室のソファに座った。
仕事をしながら待った。

「そろそろ0時だ。見ていてくれ」

「それは?」

「屋敷の使用人達の分を含めた菓子だ。手ぶらで来るなと叱られた。其方の娘は、」

「っ!!」

話の途中で消えてしまった。

念の為にと、ドアをキャビネットで塞ぎ 近衛兵を立たせていた。

部屋中探してもいなかった。テラスの窓のノブもロープで固定済みだし、ベッドの下に隠れるスペースは無い。

そして長い時間を待つと夜明けと共に殿下が現れた。

「伯爵。シルビアからの手紙と執事からの手紙だ」

本当だった。


その後、教会に聞いても分からなかったと聞かされた。



解決策が見つからないうちに困ったことになった。

どうやら王太子殿下がシルビアを妃には望んでいる。

確かに天気が悪くなければ 毎夜シルビアの元に飛ばされるなら、妃にした方がいい。

だが、昔のシルビアなら喜んだだろうが、今のシルビアには難しいことだった。
考え方が“貴族”ではないからだ。
それに彼女の笑顔を消したくない。

娘の魂が消えてしまったの寂しいが、今のシルビアも好きだ。

使用人達を同じ人として扱い思いやる。
使用人達の立場になってものを見る。
シルビアが男だったら城務めをさせたい程だ。



騎士団に見学に来ていたウォリックが職場に訪ねてきた。

「ちょっといいですか 父上」

奥の打ち合わせ室に連れてきた。

「王太子殿下とシルビアが近過ぎます」

庭園散歩の様子を見たらしい。

「王太子殿下がシルビアを望んでいるからな」

「でもシルビアには王太子殿下の妃は酷です」

「分かってるが単純にはいかない。此処では話せない。今度な。みんなと来ているのだろう?早く寮に戻れ」

ウォリックを学園に帰した。



王都の屋敷でシルビアと過ごすこと1週間、シルビアと私は陛下に呼び出しを受けた。






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