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ライアン達の子

完全拒否

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【 リリアンの視点 】


放課後、お母様を乗せた迎えの馬車に乗って王妃殿下に会いに登城した。

王妃殿下のサロンに通されて、沈黙の時間を過ごすこと数分。

「で、ゼインとのティータイムは時間の無駄ということかしら」

「無駄かどうかは分かりかねますが、優先すべきではないと思います」

「王妃殿下。ゼイン殿下と娘のやり取りに、王妃殿下という札を出すのは、納得がいきませんわ。
娘は何の縛りもないはず。寧ろ二度と会わせないようにしても構わない状況ではありませんか?」

「ゼインはリリアン嬢しか嫌だと言うのだから仕方がないのよ」

「王妃殿下。ゾードの王女様と引き合わせようとしておられますね?
それを世間では不誠実と呼ぶのではありませんか?
娘の純潔を無理に奪っておいて、他の女と縁談だなんて、馬鹿にしているにもほどがありますわ。

まともな令嬢なら関わりたくないと思いますし、まともな親なら盾になりますわ」

「確かに、ゾードから王女がいらして滞在しますが、ゼインにその気はありません」

「書簡で断ることも出来るのにお会いになるのですよね?」

「会ってから決めて欲しいと言われたら断れませんわ」

「同じ建物に滞在なさるのに?無関心でいろと?」

「……」

「王妃殿下、私はゼイン王子殿下の婚約者ではございません。生意気かもしれませんが、指図は受けません。責任など取ってもらわなくて結構です。王女と結婚しようがお好きにどうぞ」

「リリアン嬢、ゼインは、」

「では、バトラーズ家は今後、求婚してくる殿方を数日か数週間か1ヶ月か数ヶ月、屋敷に滞在させて相性を探ることにしますわ。
かなりの数ですから絞りませんと。
先ずは他国の王子殿下から招くことにしますわ」

「バトラーズ夫人!極端ではありませんか!」

「あら、王家のなさろうとしていることは、そういうことですわ。
王家とバトラーズ家は何の契約もございません。
どのようにしようと自由ですわ。
滞在中、王子や令息に組み敷かれないよう気を付けなくては。

では、私達は失礼いたします」

「夫人!まだ話が終わっておりません!」

「これは取り調べか何かですか?」

「……」

「幸運を祈っておりますわ。
リリアン、行きましょう」

「はい、お母様」



何度か手紙を届けに来た城からの遣いを、受取拒否で返した。
私に付いている第四の隊員に声をかけて、陛下宛の手紙を届けてもらった。

“私の護衛はもう不用です。

私とゼイン王子殿下は、ただの知人に戻りました。
何かに狙われるようでしたらバトラーズ家で対応いたします。

手紙も面会も拒否いたします。
どうぞ、王女様との縁談に集中なさってくださいとお伝えください”


それからはピタッとゼイン殿下からの手紙は止まった。


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