上 下
48 / 73
ライアン達の子

腫れた顔

しおりを挟む
翌朝、腫れた顔を見てメイドが悲鳴を上げた。

メイドに口止めをしたが、

「学園に行かないのであれば奥様にお話にならないとなりません」

と言われ、仕方なくお母様だけ呼んでもらった。


「おはよう、リリ……何があったの」

「……」

「まだ……口にできません」

「襲われたの!?」

首を横に振る

「虐められたの!?」

首を横に振る

「私が勘違いをしました。とは…距離を」

「分かったわ。出席日数は足りているし、学年の最終テストは終わったのだから、残りはお休みしちゃいましょう。そして私と旅に出ましょう」

「ううっ……」

「私はいつでもリリアンを思っているわ」

そのまま大泣きして、結局お父様にもバレた。

お母様はお父様を引っ張って部屋の隅で小声で話していた。

「(振られたみたい)」

「(はあ!?)」

「(まだ気持ちの整理がついていなくて、詳細は話したくないみたい)」

「……」

「(今日から終業日までお休みすると連絡を入れるわ)」

「(学園に行きたくないのか?)」

「(今日は無理だし、ここにいたら気分を変えられないわ。旅に出てしまおうかと思って)」

「(何処に)」

「(サルトよ)」

「(一緒に行こう。アンベールは最終学年だから卒業まで通わせたい)」

「(そうね。明後日出発でいいかしら)」

「(明日でもいいぞ)」

二人は戻ってくると

「サルト領に行くわよ」

「人気のリゾート地だけどお部屋は取れるのですか?」

「あそこは陛下にお願いしよう」





【 ゼインの視点 】


リリアンが学園を休んだ。

アンベールは、“ちょっと調子が悪いみたいです” と言ったが、翌日も、そのさらに次の日も来なかった。

「実は、二年生の始業式までリリアンは登校しません」

「は?」

「両親と旅に出ています」

「領地か?」

「サルトという観光地です」

「サルト…」

「多分、私達の卒業までには戻るはずです」


これにはマルセル達は反応が無かったが、カトリーヌ嬢は驚きを見せた。

教室に戻ってからもアンベールは口を割らない。

マルセルも割らなかった。

そういえば、休む前の休日はヴェルモット邸で夜会があった。リリアンも参加していたはずだ。

一年のクラスに行き、カトリーヌ嬢を呼び出した。

「先日のヴェルモット邸の夜会にリリアンは出席したと聞いたが、実際は?」

「来ておりました」

「何かあったか?」

「何も聞いておりません。
足が痛いからと途中で帰ったくらいで」

「リリアンのパートナーは」

「兄のセドリック・シャルールです」

「彼とは何かあったか?」

「いえ。翌日にリリアン様からエスコートのお礼状が届いたと聞きました」

「分かった。ありがとう」

やはりアンベールかマルセルから聞き出すしかなさそうだ。


数日後、ビクトリアとの定期的な交流の時に情報が入った。

「残念でしたわね」

「何がだ」

「バトラーズ公爵令嬢とシャルール伯爵ですわ。
お似合いだと噂になりましたのに」

「それの何が残念なんだ」

「ご令嬢の気持ちは分かりませんが、伯爵は彼女を妹として見ていると仰っていたようですわ」

「妹!?」

「はい。私の親戚の令息が伯爵の友人で、伯爵の口から妹として見ていると仰ったようです。伯爵にとって子供に見えるそうです。

夜会では、昔関係を持った女性が何人か誘いを掛けていたらしいのです」

リリアンは傷付いたのだな。

「殿下?」

「思わせぶりな男だ」

「仕方のないことでは?」

「何度もデートを重ねていなければな」

「まあ」


リリアンに会いたい。
私は一カ月で卒業だ。食堂で君の顔を見て声を聞いて会話ができる愛しい時間を奪われた。
卒業してしまえば、もう滅多に会えない。
会えたとしても会話ができるのか。
食事なんて夢となる。

何故 私はリリアンを抱きしめることができないのであろう。

私はこの国の第一王子で次期国王。見た目も悪くない。そしてリリアンは公爵令嬢で後ろ盾の実家も最高だ。

婚約選定の茶会の辞退など許すのも、その後会いに行かなかったのも、私の婚約者を早く決め過ぎたのも問題だった。

リリアンが婚約者だったら、どれほど幸せな毎日が過ごせたことか。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」 「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」  公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。  理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。  王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!  頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。 ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2021/08/16  「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過 ※2021/01/30  完結 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

平凡な伯爵令嬢は平凡な結婚がしたいだけ……それすら贅沢なのですか!?

Hibah
恋愛
姉のソフィアは幼い頃から優秀で、両親から溺愛されていた。 一方で私エミリーは健康が取り柄なくらいで、伯爵令嬢なのに贅沢知らず……。 優秀な姉みたいになりたいと思ったこともあったけど、ならなくて正解だった。 姉の本性を知っているのは私だけ……。ある日、姉は王子様に婚約破棄された。 平凡な私は平凡な結婚をしてつつましく暮らしますよ……それすら贅沢なのですか!?

処理中です...