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ライアン達の子
腫れた顔
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翌朝、腫れた顔を見てメイドが悲鳴を上げた。
メイドに口止めをしたが、
「学園に行かないのであれば奥様にお話にならないとなりません」
と言われ、仕方なくお母様だけ呼んでもらった。
「おはよう、リリ……何があったの」
「……」
「まだ……口にできません」
「襲われたの!?」
首を横に振る
「虐められたの!?」
首を横に振る
「私が勘違いをしました。シャルール伯爵とは…距離を」
「分かったわ。出席日数は足りているし、学年の最終テストは終わったのだから、残りはお休みしちゃいましょう。そして私と旅に出ましょう」
「ううっ……」
「私はいつでもリリアンを思っているわ」
そのまま大泣きして、結局お父様にもバレた。
お母様はお父様を引っ張って部屋の隅で小声で話していた。
「(振られたみたい)」
「(はあ!?)」
「(まだ気持ちの整理がついていなくて、詳細は話したくないみたい)」
「……」
「(今日から終業日までお休みすると連絡を入れるわ)」
「(学園に行きたくないのか?)」
「(今日は無理だし、ここにいたら気分を変えられないわ。旅に出てしまおうかと思って)」
「(何処に)」
「(サルトよ)」
「(一緒に行こう。アンベールは最終学年だから卒業まで通わせたい)」
「(そうね。明後日出発でいいかしら)」
「(明日でもいいぞ)」
二人は戻ってくると
「サルト領に行くわよ」
「人気のリゾート地だけどお部屋は取れるのですか?」
「あそこは陛下にお願いしよう」
【 ゼインの視点 】
リリアンが学園を休んだ。
アンベールは、“ちょっと調子が悪いみたいです” と言ったが、翌日も、そのさらに次の日も来なかった。
「実は、二年生の始業式までリリアンは登校しません」
「は?」
「両親と旅に出ています」
「領地か?」
「サルトという観光地です」
「サルト…」
「多分、私達の卒業までには戻るはずです」
これにはマルセル達は反応が無かったが、カトリーヌ嬢は驚きを見せた。
教室に戻ってからもアンベールは口を割らない。
マルセルも割らなかった。
そういえば、休む前の休日はヴェルモット邸で夜会があった。リリアンも参加していたはずだ。
一年のクラスに行き、カトリーヌ嬢を呼び出した。
「先日のヴェルモット邸の夜会にリリアンは出席したと聞いたが、実際は?」
「来ておりました」
「何かあったか?」
「何も聞いておりません。
足が痛いからと途中で帰ったくらいで」
「リリアンのパートナーは」
「兄のセドリック・シャルールです」
「彼とは何かあったか?」
「いえ。翌日にリリアン様からエスコートのお礼状が届いたと聞きました」
「分かった。ありがとう」
やはりアンベールかマルセルから聞き出すしかなさそうだ。
数日後、ビクトリアとの定期的な交流の時に情報が入った。
「残念でしたわね」
「何がだ」
「バトラーズ公爵令嬢とシャルール伯爵ですわ。
お似合いだと噂になりましたのに」
「それの何が残念なんだ」
「ご令嬢の気持ちは分かりませんが、伯爵は彼女を妹として見ていると仰っていたようですわ」
「妹!?」
「はい。私の親戚の令息が伯爵の友人で、伯爵の口から妹として見ていると仰ったようです。伯爵にとって子供に見えるそうです。
夜会では、昔関係を持った女性が何人か誘いを掛けていたらしいのです」
リリアンは傷付いたのだな。
「殿下?」
「思わせぶりな男だ」
「仕方のないことでは?」
「何度もデートを重ねていなければな」
「まあ」
リリアンに会いたい。
私は一カ月で卒業だ。食堂で君の顔を見て声を聞いて会話ができる愛しい時間を奪われた。
卒業してしまえば、もう滅多に会えない。
会えたとしても会話ができるのか。
食事なんて夢となる。
何故 私はリリアンを抱きしめることができないのであろう。
私はこの国の第一王子で次期国王。見た目も悪くない。そしてリリアンは公爵令嬢で後ろ盾の実家も最高だ。
婚約選定の茶会の辞退など許すのも、その後会いに行かなかったのも、私の婚約者を早く決め過ぎたのも問題だった。
リリアンが婚約者だったら、どれほど幸せな毎日が過ごせたことか。
メイドに口止めをしたが、
「学園に行かないのであれば奥様にお話にならないとなりません」
と言われ、仕方なくお母様だけ呼んでもらった。
「おはよう、リリ……何があったの」
「……」
「まだ……口にできません」
「襲われたの!?」
首を横に振る
「虐められたの!?」
首を横に振る
「私が勘違いをしました。シャルール伯爵とは…距離を」
「分かったわ。出席日数は足りているし、学年の最終テストは終わったのだから、残りはお休みしちゃいましょう。そして私と旅に出ましょう」
「ううっ……」
「私はいつでもリリアンを思っているわ」
そのまま大泣きして、結局お父様にもバレた。
お母様はお父様を引っ張って部屋の隅で小声で話していた。
「(振られたみたい)」
「(はあ!?)」
「(まだ気持ちの整理がついていなくて、詳細は話したくないみたい)」
「……」
「(今日から終業日までお休みすると連絡を入れるわ)」
「(学園に行きたくないのか?)」
「(今日は無理だし、ここにいたら気分を変えられないわ。旅に出てしまおうかと思って)」
「(何処に)」
「(サルトよ)」
「(一緒に行こう。アンベールは最終学年だから卒業まで通わせたい)」
「(そうね。明後日出発でいいかしら)」
「(明日でもいいぞ)」
二人は戻ってくると
「サルト領に行くわよ」
「人気のリゾート地だけどお部屋は取れるのですか?」
「あそこは陛下にお願いしよう」
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アンベールは、“ちょっと調子が悪いみたいです” と言ったが、翌日も、そのさらに次の日も来なかった。
「実は、二年生の始業式までリリアンは登校しません」
「は?」
「両親と旅に出ています」
「領地か?」
「サルトという観光地です」
「サルト…」
「多分、私達の卒業までには戻るはずです」
これにはマルセル達は反応が無かったが、カトリーヌ嬢は驚きを見せた。
教室に戻ってからもアンベールは口を割らない。
マルセルも割らなかった。
そういえば、休む前の休日はヴェルモット邸で夜会があった。リリアンも参加していたはずだ。
一年のクラスに行き、カトリーヌ嬢を呼び出した。
「先日のヴェルモット邸の夜会にリリアンは出席したと聞いたが、実際は?」
「来ておりました」
「何かあったか?」
「何も聞いておりません。
足が痛いからと途中で帰ったくらいで」
「リリアンのパートナーは」
「兄のセドリック・シャルールです」
「彼とは何かあったか?」
「いえ。翌日にリリアン様からエスコートのお礼状が届いたと聞きました」
「分かった。ありがとう」
やはりアンベールかマルセルから聞き出すしかなさそうだ。
数日後、ビクトリアとの定期的な交流の時に情報が入った。
「残念でしたわね」
「何がだ」
「バトラーズ公爵令嬢とシャルール伯爵ですわ。
お似合いだと噂になりましたのに」
「それの何が残念なんだ」
「ご令嬢の気持ちは分かりませんが、伯爵は彼女を妹として見ていると仰っていたようですわ」
「妹!?」
「はい。私の親戚の令息が伯爵の友人で、伯爵の口から妹として見ていると仰ったようです。伯爵にとって子供に見えるそうです。
夜会では、昔関係を持った女性が何人か誘いを掛けていたらしいのです」
リリアンは傷付いたのだな。
「殿下?」
「思わせぶりな男だ」
「仕方のないことでは?」
「何度もデートを重ねていなければな」
「まあ」
リリアンに会いたい。
私は一カ月で卒業だ。食堂で君の顔を見て声を聞いて会話ができる愛しい時間を奪われた。
卒業してしまえば、もう滅多に会えない。
会えたとしても会話ができるのか。
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何故 私はリリアンを抱きしめることができないのであろう。
私はこの国の第一王子で次期国王。見た目も悪くない。そしてリリアンは公爵令嬢で後ろ盾の実家も最高だ。
婚約選定の茶会の辞退など許すのも、その後会いに行かなかったのも、私の婚約者を早く決め過ぎたのも問題だった。
リリアンが婚約者だったら、どれほど幸せな毎日が過ごせたことか。
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