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ライアン達の子

制裁を受ける三人 3

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【 マキシア伯爵令嬢 セロンの視点 】


一日だけ掃除、後の4日は晒し者にされた。
食堂でも酷い目に遭った。

こんなこと、お父様達に言えない。
だけど、報告しなかったことが裏目に出てしまう。



土曜日。

「父上、何故かピアソン家から、夜会の招待の取り消しの手紙が届きました。こんなことあるのですか!?」

お兄様の持つ手紙をお父様が手に取ると、

「“異物”? 何のことだ」

「分かりません」

「旦那様、一ヶ月後のお茶会の欠席のお手紙が続々と届いておりますわ」

お母様の顔色が悪い。

「何かあったのだろう。ピアソン家は祖父の代から懇意にしていた家門だ。面会依頼を出そう」

「……」



日曜日、

昨夜に会いたいと手紙を貰い、ビクトリア様がうちにいらした。

「ビクトリア様!」

「セロン様」

「お話ししたいことが沢山ありますの!」

「先にいいかしら」

「は、はい」

「座っても?」

「失礼しました。どうぞ」

「ありがとう。

セロン様。何故あの様なことをなさったの?」

「え?」

「バトラーズ公爵令嬢を呼び出したり、付け回したり、待ち伏せしたり。

私や殿下の名前を出すなんて」

「ビクトリア様も嫌がっておられたではありませんか」

「確かにいなくなってくれたらいいと思っていたわ。だけど貴女方のしたことは問題行動だわ。大問題よ。

昨日、王妃殿下から呼び出しがあって、お叱りを受けたの。

奉仕活動を済ませてしまえば、ここまでにならなかったのに、奉仕活動じゃなくて罰だと知られて。しかも下級生一人に上級生三人がしつこく虐めてたとなれば異物は貴女達になるわ」

「異物…」

「しかも食堂の一件で流れが大きく変わってしまった。もうゼイン殿下の寵愛を受けるリリアン・バトラーズという公認を与えてしまったじゃない!」

「っ!」

「今までありがとう。
貴女達三人とは距離を置くわ。
 
食堂の件をゼイン殿下が陛下に報告して王妃殿下の耳に入ってしまったもの」

「そんなっ」

「他の貴族達も動いてしまったから、私などにかまっている暇はないわよ」

「え?」

「シドニー様もペリーヌ様も当主に報告して大慌てだったわ。昨日ペリーヌ様、さっきシドニー様のお屋敷に行って、お邪魔だったから要件を伝えて帰りましたの。

はぁ。困ったものね」

「ビクトリア様!私達を捨てるのですか!」

「第一王子の妃を何だと思っているの?
まだ婚約の段階でこの様な醜聞に引き摺り込まれたら再考されてしまうわ」

「っ!」

「それにしても、リリアン・バトラーズは何なのかしら。刺繍より剣や弓が好きとは聞いたことがあるけど、殿下の言う才ってソレなのかしら。
令嬢のお遊び程度だろうに…困るわ」

“セロン!!”

廊下でお父様の怒鳴り声が聞こえた。
ビクトリア様がいらしてるのを知っているはずなのに。

「忙しくなったようね。さようなら」

「ビクトリア様!」

ビクトリア様は振り返りもせず帰ってしまった。

馬車が門を越えると後ろから髪を掴まれた。

「キャア!」

掴む手を掴むが、そのまま引き摺られて居間に連れてこられた。 
お母様は泣いてるし、お兄様は背もたれに身を預けて顔を手で覆っていた。


「何故報告しなかった!!」

「別に、」

バチーン!

「痛い!」

「せっかく奉仕活動という誤魔化せる処分になったのに!簡単な掃除一つできないのか!ゴミを掃いたり拾うだけだろう!

何をしたのか書かれた板を持って馬車乗り場で4日間も晒し者になっていたんだって?

その後、食堂で貴族達と揉めて、被害者の兄君から抗議を受け、殿下からも叱られたと聞いた!

ピアソン伯爵が“父が異物で申し訳ない”と仰った。
何のことか聞いたら、お前は才ある者が異物だと言ったとか」

「あの悪女のことを言ったのです!」

「多くの拒絶の手紙は、抗議と火の粉が飛んでくるのを懸念した貴族達だ。
お前が他の貴族は違うと言ってももう手遅れだ。

そもそも何故公女を悪女などと言い続けるんだ!」

「現に悪女の影響が出ているではありませんか!
殿下や令息達をたらし込んで天使などと呼ばせて!

だいたい、あの女の剣術如き“才”などではないわ!」

「女が剣術か。セロン。決闘を申し込んだらどうだ」

「お兄様!私は剣など握れませんわ!」

「代理でうちの護衛を出せばいい」

「それは卑怯なのでは?」

「別に傷付けるわけじゃない。剣を合わせて、無能だと示せればいい。直ぐに剣を落とすさ。

勝ったら、才ある者と偽るのは、才ある者に失礼だから止めなさいと諭せばいい。
被害者と言われている令嬢の仮面が剥がれたら、同情してもらえるさ」

「でも、断ってきたら?私が相手じゃないと分かれば断るかも」

「セロンが出ると思わせればいい。皆の前で言えばどの道断らないだろう。
“異物ではなく、才ある者だと知らなくて悪かった”と言え」

「本当に大丈夫かしら」

「母上、これ以上悪くはなりませんよ」




週明け。

食堂で、私は悪女の前に立った。

「異物ではなく、才ある者だと知らなくて悪いことをしました。どうかその才を見せてくださいませんか」

そう言って、彼女に白い手袋を投げ付けた。

「いい加減にしてくれ!」

「気でもふれたのか!死ぬぞ」

「お兄様、殿下、大丈夫ですわ。
どうせマキシア伯爵令嬢は代理に騎士を立てますわ。卑怯な星の元に生まれた方ですから。

これは伯爵家の意向ですわね?伯爵家の騎士を使うのですから。

条件があります。

伯爵家の騎士との勝負で私が勝ったら、貴女とも勝負がしたいですわ。真剣で。どうですか?

意味が分かるかしら。
殺されても顔に傷を負っても文句なし。

貴女の投げ方は真剣の勝負ですから、異論はありませんよね?」

え? 何それ

「相手の騎士様にも同意を取った方がいいすわ。
勝っても負けても白い目で見られますから。
騎士様が負けたときは責任を持って治療費と慰謝料を騎士様に支払うのは伯爵家ですからね?

私は伯爵家の騎士様を殺そうと、令嬢を殺そうと、貴女の申し入れなので責任はありませんから、罪にも問われませんし、支払いもいたしません。
よろしいですか?」

「……」

「今、撤回してもかまいませんが、平伏して謝ってくださいね」

この悪女!!

「分かりました。真剣を使った勝負です。
うちの騎士が負ければ私がお相手しましょう」

「では、今週の土曜日に」

「え?」

「まさか半年後とか言いませんよね?
決闘など直ぐにやるに決まっていますわ。
学園がありますので、最短の休日にしましたが、明日がいいですか?」

「ど、土曜日でいいですわ。伯爵家にいらしてください」

「駄目だ。公平性が保てないし怪我の治療のことも考えると伯爵家はあり得ない。
王城でやるように。そうだな。審判は騎士団長に任せよう。非番だったら副団長を呼んでおく。
午後一に行うから、伯爵家の家族全員連れて来い」

「しかし、殿下、」

「来なかったらリリアンの不戦勝にするだけだ」

「わ、分かりましたわ」

「ビクトリア嬢、其方の友人だろう。其方も土曜日の試合を見届けるように」

「私は、」

「尻尾切りでもしたのか? それでも見届けるんだ」

「かしこまりました」



屋敷に帰ってお父様達に報告した。

「全員来いと?」

「はい」

「一番の剣士を連れて行こう」







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