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ライアン(生まれ変わり)
第四、再び
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13歳になった。
10歳の時に付けられた教師が辞退した。
“ご子息はすでに学園卒業レベル以上の学力がございます。私には教えることはございません。
極めたい場合は、それぞれの第一人者の元へ弟子入りするといいでしょう”
あれからは体幹や筋肉などを付けるべく鍛えてきた。
今日は騎士団の入団試験に来ている。
勿論募集年齢に達していない。
入団動機の欄には正直に、入団するつもりはなく、今の実力を判断して欲しく応募したと書いた。
何故か書類選考に通った。
バトラーズ公爵の息子だからか。
チラチラと私を見る騎士達の目で分かった。
恥をかかせる、もしくは弄ぶつもりだろう。
つまり、生意気だということだ。
「ライアン・バトラーズ。歳は13歳で間違いないか」
「はい」
「歳が近い者でも18歳だ。構わないか?」
「はい。お願いします」
模造剣を渡されて位置についた。
枠から出る、剣を落とす、膝をつくのは負け。
体に剣が触れたら有効。ただし本気で当ててはいけない。急所は寸止めにしなくてはならない。
笛の合図と共に相手の騎士が剣を振り被る。
「有効!バトラーズ!」
「え?」
彼とは身長差もある。それを生かした。
瞬殺だったため、相手の騎士は不満気だ。
「これはこれは。逸材だな」
「団長」
「公子殿の書類を持ってきてくれ」
騎士団長は書類を見るとニッコリと笑顔になった。
「誰に習ったのかな?」
「……産まれてから剣術の教師は雇っておりません。勘です」
「言い辛そうだな。バトラーズ公爵家は昔 近衛も務めたと聞いたが…しかし公子殿、残念ながら君の実力を測るには普通の騎士では難しい」
「……」
「剣術の種類が違うのだよ。かなりの精度に仕上がった公子殿の相手をするには、精鋭でないと無理だ。彼らとやってみるかい?」
「いえ。団長から評価をいただきましたので十分です。ありがとうございました」
「スカウトが行くかもしれないけど驚かないように」
「…失礼します」
荷物を持って屋敷に帰った。その夜。
「へえ。すごいね君」
空気が変わったことに気が付いて目を開け枕元の短剣を手にしていた。
「スカウトの方ですか?それとも命を取りに?」
男は椅子を持ってきて座った。
「スカウトだよ。騎士団の精鋭部隊に興味はないか?普通の騎士達のような民に分かりやすい動きはしない。裏方に近いな。
試験を受けて合格したらライアン・バトラーズは抹消することになるがどうだろう」
「跡継ぎですから無理です」
「もしかして我らのことを知っているね?
普通は質問で返すところなのに」
「……」
「どこまで知っているのか聞かなきゃね」
「止めてください。私が本職に敵うはずありません」
「私は何者か説明してくれ」
「…第四のメンバーです」
「第四とは?」
「近衛騎士 第四部隊。いわゆる影です。
諜報、工作、護衛、暗殺を中心とした任務に着きます。
試験に受かれば、事故死、病死、行方不明、駆け落ちなどを偽装して存在を消します」
「先祖からの情報か?」
「バトラーズ家は関係ありません。私は前世の記憶があるのです。アールという男が母の専属として側にいて、私と妹を子供の頃から鍛えてくださいました」
「……第四には入らなかったのか?」
「第四の皆様に可愛がってもらいましたが、スカウトはされませんでした。母から取り上げるのが嫌だったのか、私が跡継ぎだったからなのかは分かりません」
「妹は?」
「探すつもりですが、彼女も生まれ変わっているかどうか分かりません。双子でも私達は似ていませんでしたが強い絆がありました」
「サルト男爵家か」
「はい」
「以前イレギュラーな動きをしていたと聞いたことがある」
「当時、母は騎士団の雑用係のアルバイトをしていたことと、ステファニー王女殿下の親友だったこと、婚約して危険な立場になったことで母に第四がつきました。そこで母とアールが負傷し、母は婚約を辞退しサルト領に移り住みました。後からアールが追いかけてきて使用人兼子守として死ぬまで共に生きました。
実父、養父のサルト男爵、育父のアール。私達は最高の男に育ててもらえました」
「そうか」
「信じてくださるのですか」
「第四が嘘か本当か見抜けなかったら仕事にならん」
「そうでした」
「今度は日中に来よう」
「はい、お待ちしております」
二日後、
日中に来ると言ったのに…。
「よく来たな」
「登城命令が届きましたので」
「そんな顔をするな。よくよく考えてみたらバトラーズ邸でやったら被った猫の皮が剥がれて無くなるぞ。まだ13歳のフリをしたいのだろう?」
「ありがとうございます」
第四が4人集まり、様々な武器で確認が行われた。
実力を知りたかったのだろう。
途中から人が増え、最後には第四が7人、騎士団長も来ていた。
「馬上からもできるか?」
「はい。弓も短剣投げも槍も双剣もやれるはずですが、試したのは弓と短剣投げだけで、槍と双剣は時間をもらえれば馴染むと思います。
屋敷で馬に乗りながら槍や双剣を振り回せませんでしたので。
それにまだ体が成長過程ですから、やっていいものか」
「ん~、止めておこう。怪我をされては困るからな。
諜報はやったか?」
「いえ」
「工作は」
「第四の皆様に可愛がってもらってはおりましたが隊員ではありませんし、そのような機会はありませんでした」
「暗殺は」
「……」
「いつからだ」
「領地に出る賊などの犯罪者を、小さな頃からアールと狩りました。
一撃、嬲り、拷問、様々なやり方で」
「他にもあるんだろう?」
「…妹に害を成した者を埋めました」
「何処に」
「学園の敷地内です」
「おまっ」
「退学になって数ヶ月後に埋めた者や卒業後に埋めた者など4名です」
「バレてないのか」
「私が生きていた頃は」
「確認しておく」
「え?いいですよ。掘り出せたとしても私に辿り着けませんから」
「よし、とりあえず週に1で来い」
「嫌です」
「何で」
「何やらせるつもりですか」
「もう少し鍛えようかなと」
「間に合ってます」
「……」
10歳の時に付けられた教師が辞退した。
“ご子息はすでに学園卒業レベル以上の学力がございます。私には教えることはございません。
極めたい場合は、それぞれの第一人者の元へ弟子入りするといいでしょう”
あれからは体幹や筋肉などを付けるべく鍛えてきた。
今日は騎士団の入団試験に来ている。
勿論募集年齢に達していない。
入団動機の欄には正直に、入団するつもりはなく、今の実力を判断して欲しく応募したと書いた。
何故か書類選考に通った。
バトラーズ公爵の息子だからか。
チラチラと私を見る騎士達の目で分かった。
恥をかかせる、もしくは弄ぶつもりだろう。
つまり、生意気だということだ。
「ライアン・バトラーズ。歳は13歳で間違いないか」
「はい」
「歳が近い者でも18歳だ。構わないか?」
「はい。お願いします」
模造剣を渡されて位置についた。
枠から出る、剣を落とす、膝をつくのは負け。
体に剣が触れたら有効。ただし本気で当ててはいけない。急所は寸止めにしなくてはならない。
笛の合図と共に相手の騎士が剣を振り被る。
「有効!バトラーズ!」
「え?」
彼とは身長差もある。それを生かした。
瞬殺だったため、相手の騎士は不満気だ。
「これはこれは。逸材だな」
「団長」
「公子殿の書類を持ってきてくれ」
騎士団長は書類を見るとニッコリと笑顔になった。
「誰に習ったのかな?」
「……産まれてから剣術の教師は雇っておりません。勘です」
「言い辛そうだな。バトラーズ公爵家は昔 近衛も務めたと聞いたが…しかし公子殿、残念ながら君の実力を測るには普通の騎士では難しい」
「……」
「剣術の種類が違うのだよ。かなりの精度に仕上がった公子殿の相手をするには、精鋭でないと無理だ。彼らとやってみるかい?」
「いえ。団長から評価をいただきましたので十分です。ありがとうございました」
「スカウトが行くかもしれないけど驚かないように」
「…失礼します」
荷物を持って屋敷に帰った。その夜。
「へえ。すごいね君」
空気が変わったことに気が付いて目を開け枕元の短剣を手にしていた。
「スカウトの方ですか?それとも命を取りに?」
男は椅子を持ってきて座った。
「スカウトだよ。騎士団の精鋭部隊に興味はないか?普通の騎士達のような民に分かりやすい動きはしない。裏方に近いな。
試験を受けて合格したらライアン・バトラーズは抹消することになるがどうだろう」
「跡継ぎですから無理です」
「もしかして我らのことを知っているね?
普通は質問で返すところなのに」
「……」
「どこまで知っているのか聞かなきゃね」
「止めてください。私が本職に敵うはずありません」
「私は何者か説明してくれ」
「…第四のメンバーです」
「第四とは?」
「近衛騎士 第四部隊。いわゆる影です。
諜報、工作、護衛、暗殺を中心とした任務に着きます。
試験に受かれば、事故死、病死、行方不明、駆け落ちなどを偽装して存在を消します」
「先祖からの情報か?」
「バトラーズ家は関係ありません。私は前世の記憶があるのです。アールという男が母の専属として側にいて、私と妹を子供の頃から鍛えてくださいました」
「……第四には入らなかったのか?」
「第四の皆様に可愛がってもらいましたが、スカウトはされませんでした。母から取り上げるのが嫌だったのか、私が跡継ぎだったからなのかは分かりません」
「妹は?」
「探すつもりですが、彼女も生まれ変わっているかどうか分かりません。双子でも私達は似ていませんでしたが強い絆がありました」
「サルト男爵家か」
「はい」
「以前イレギュラーな動きをしていたと聞いたことがある」
「当時、母は騎士団の雑用係のアルバイトをしていたことと、ステファニー王女殿下の親友だったこと、婚約して危険な立場になったことで母に第四がつきました。そこで母とアールが負傷し、母は婚約を辞退しサルト領に移り住みました。後からアールが追いかけてきて使用人兼子守として死ぬまで共に生きました。
実父、養父のサルト男爵、育父のアール。私達は最高の男に育ててもらえました」
「そうか」
「信じてくださるのですか」
「第四が嘘か本当か見抜けなかったら仕事にならん」
「そうでした」
「今度は日中に来よう」
「はい、お待ちしております」
二日後、
日中に来ると言ったのに…。
「よく来たな」
「登城命令が届きましたので」
「そんな顔をするな。よくよく考えてみたらバトラーズ邸でやったら被った猫の皮が剥がれて無くなるぞ。まだ13歳のフリをしたいのだろう?」
「ありがとうございます」
第四が4人集まり、様々な武器で確認が行われた。
実力を知りたかったのだろう。
途中から人が増え、最後には第四が7人、騎士団長も来ていた。
「馬上からもできるか?」
「はい。弓も短剣投げも槍も双剣もやれるはずですが、試したのは弓と短剣投げだけで、槍と双剣は時間をもらえれば馴染むと思います。
屋敷で馬に乗りながら槍や双剣を振り回せませんでしたので。
それにまだ体が成長過程ですから、やっていいものか」
「ん~、止めておこう。怪我をされては困るからな。
諜報はやったか?」
「いえ」
「工作は」
「第四の皆様に可愛がってもらってはおりましたが隊員ではありませんし、そのような機会はありませんでした」
「暗殺は」
「……」
「いつからだ」
「領地に出る賊などの犯罪者を、小さな頃からアールと狩りました。
一撃、嬲り、拷問、様々なやり方で」
「他にもあるんだろう?」
「…妹に害を成した者を埋めました」
「何処に」
「学園の敷地内です」
「おまっ」
「退学になって数ヶ月後に埋めた者や卒業後に埋めた者など4名です」
「バレてないのか」
「私が生きていた頃は」
「確認しておく」
「え?いいですよ。掘り出せたとしても私に辿り着けませんから」
「よし、とりあえず週に1で来い」
「嫌です」
「何で」
「何やらせるつもりですか」
「もう少し鍛えようかなと」
「間に合ってます」
「……」
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