上 下
5 / 73
エヴァン(巻き戻り)

二度目のままで

しおりを挟む
 1ヶ月間サルトに滞在してミーシェと過ごした。

そして改めて求婚をした。

「ミーシェ。愛してる。私の唯一の妻になって欲しい。もし断るのなら私の息の根を止めて欲しい」

「脅迫じゃない」

「結果的にミーシェが側にいなければ生きる気力を無くして早死にする。

叔父上、叔母上。私ほどミーシェに一途な男は家族を除いてはこの世に存在しません。

ステファニーという何でもミーシェに味方をしてしまう姑がいる環境も他所にはありません。

権力でも守れます。

どうかお願いします」

4人の前に両膝をついて懇願した。

ハ「ミーシェ、どうしたい」

ア「貴女次第よ」

ミ「……浮気したら殺す」

エ「徹底的に拷問してから殺していい!婚前契約に明記する!」

ミ「他の女とキスをしたら唇と舌を切り取る」

エ「ミーシェの望むままに。手が汚れるからライアンに任せていい」

ミ「他の女に見惚れたら、」

エ「眼球を針で刺してくれ!」

ミ「……結婚します」

エ「ミーシェ!!」

ギュウギュウにミーシェを抱きしめながら号泣した。

ミ「ちょっと!鼓膜が破れる!」

ライアンが引き剥がした。

ラ「煩い」

代わりにライアンに抱きついて号泣した。

エ「ありがとう!ありがとう、ライアン!」

ミ「何でライアンなのよ」

ラ「……」

だってライアンが一番大事だと公言する、ライアンの双子の妹を私が娶るからだ。
ライアンがその気になれば、ずっと側に居させることだってできたはずで。だけどライアンはいつだってミーシェの気持ちを優先してきた。

エ「ライアン、生まれてきてくれてありがとう」

ミ「だから何でライアンなの!」

そこにロランが通りかかった。

ロ「まさかと思いますが……兄上、求婚相手を間違えていますよ?
もう少し左に愛しの女性がいますよ?」

エ「ライアン!大好きだ!」

ロ「兄上…バカを通り越して壊れちゃったんですね。

まさかミーシェ義姉様にフラれて乗り換えた!?」

さらにシーナもやってきた。

シ「ちょっと。お兄様が嫌そうな顔をしてるから離してあげてください」

エ「ライアン!いや、兄上!!」

シ「何言ってんの!お兄様は私のお兄様なの!
ただでさえロランがお兄様に付き纏ってるのに王子兄弟で止めてちょうだい!」

ロ「シーちゃん。僕はライアン義兄上を崇拝はしてるけど愛はシーちゃんにあるからね」

ロランがシーナを抱きしめた。

シ「ちょっと!何で抱きつくのよ!」

もうシーナはロランの力には敵わないからシーナはロランに噛みついた。

ロ「シーちゃん、いっぱい噛み付いていいからね」

シ「変態」

ラ「ロラン、離れろ」

ライアンの声に肩を振るわせてロランはサッと離れた。

ラ「湯浴みをしてくる」

エヴァンに透明な涙、鼻水、涎をつけられたライアンは早歩きで浴室へ向かった。




半年後、私はミーシェと結婚した。
幸せ過ぎてミーシェに殴ってもらった。
的確過ぎて意識を飛ばした。


ミーシェ妃
それはミーシェが常に王城に住むことを指していた。

騎士団は大喜びだし、第四は頻繁にミーシェを可愛がりに来る。

母上はミーシェと毎日のように食事を共にできて嬉しそうだ。


そして父上と母上に相談した。

「私は王の器ではありません。誇れるところはミーシェに一途ということだけ。

父上と母上は長生きなさることは知っています。
ミーシェも子が産める体だということも知っています。  

ミーシェの産んだ子が私に似なかったら、私を飛ばして、私の子を次期国王にしてください」

「巻き戻る前はミーシェが産むそっくりの男児は筋金入りのマザコンじゃなかった?」

「母上だってアネットコンじゃないですか。それでも立派に父上と一緒に国を治めておられます」

「あまり遅くにはしないでくれよ」

「2年後に仕込みます」





婚姻から3年近く経ってミーシェが私の子を産んでくれた。

ミーシェにそっくりの傾国の美男子だった。

その次は私に似た男児だった。


長男はマザコンだ。ミーシェから離れない。

意外にも、私に似た次男が才能を持っていた。
第四にも直ぐに受け入れられて英才教育が始まった。


長男ヘンリーは危険なくらい美少年だけど中身はエヴァン似ね。
次男レイはエヴァン似だけど、中身は双子ミーシェ達に似ているわ」

と母上が笑う。


レイは何も言わずとも積極的に王子教育を学んでいく。

ヘンリー兄上には無理でしょう」

レイに早くも悟られる困ったヘンリーだが、私には可愛くて仕方がない。

「レイ。苦労をかけるな。
入学前にサルト留学に出そうと思うが行くか?」

「絶対に行きます」



母上の時代は学園に通う年齢が早かった。
それだけ婚姻が早かった。

だが私達の代では、早過ぎる結婚や出産は女性の体に良くないということで、入学年齢が遅くなった。
それは今も続いている。

学園に入る前の大事な時期だ。
ミーシェを里帰りさせつつレイをサルトに連れて行った。
ヘンリーはミーシェと離れたくなくて行きたがったが、そのままサルトに置いて帰る予定だけどいいのか?と聞くと大人しくなった。


ライアンにギュウギュウに抱きつくミーシェを見て改めてヘンリーを置いてきて良かったと思った。

「で? ウチを何だと思っているんだ?」

「ライアン、頼むよ。レイは鍛え甲斐があるはずだからロランのように面倒を見てくれないか」

「何で?」

「父上の次は私を飛ばしてレイが国王になるはずだからだ」

「第四は何て?」

「見た目が似過ぎてて話は流れた」

「影がエヴァンにそっくりだと身元がすぐにバレるからな……」

「ライアン。お願い」

「分かった」

ミーシェがちょっと頼めば受けるんだな。

「いい?レイ。ライアンの言うことは絶対よ」

「はい、母上」


1日だけ海に近い別荘に宿泊した。
まさかそれで授かるとは思ってもみなかった。




ミ「私そっくりの女の子だわ」

エ「アネット叔母上にもそっくりだ」

ス「可愛い!」

シ「ステファニー、落ち着いて」

ス「ベビー用品を買い漁らなくちゃ!」

ミ「お下がりで十分です」

ス「ダメよ!」

エ「ヘンリーにはしばらく黙っていよう」

シ「落ち着くまで近寄らせないように見張らせよう」



12歳差の妹を盲目に溺愛するヘンリーと、まるで権力を持ったライアンのようなレイが、妹エステルを甘やかす。

“エステルは天使だから何もしなくていいからね”

“エステルに害をなす者は埋める”


そして私も

「エステルは嫁にやらない」


ミーシェを抱きしめながらエステルの寝顔を見つめた。




二度目の未来は毎日が楽園だった。ミーシェが元気でいる限り。


私達は長く生きることができた。

レイは王冠を引き継いだ。
賢く強い統治者として君臨した。

ヘンリーは聖職者になった。あの顔の効果で敬虔深い信者が増え、寄付もかなり増えた。ヘンリーの微笑みは夫人や令嬢を虜にした。

エステルは表向きは独身だ。第四の一人と恋に落ちて城で愛を育んでいる。
昔のSとミーシェのようにならないか心配だったが、惹かれてしまったものはどうしようもない。   

ミーシェは私を残して71歳で天に召された。
病死だった。

悲しくて寂しくて辛いが、多分そう待つことなくミーシェが迎えに来てくれると信じている。

それまで、ミーシェと一緒に愛した子供達を見守るつもりだ。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

恋人に捨てられた私のそれから

能登原あめ
恋愛
* R15、シリアスです。センシティブな内容を含みますのでタグにご注意下さい。  伯爵令嬢のカトリオーナは、恋人ジョン・ジョーに子どもを授かったことを伝えた。  婚約はしていなかったけど、もうすぐ女学校も卒業。  恋人は年上で貿易会社の社長をしていて、このまま結婚するものだと思っていたから。 「俺の子のはずはない」  恋人はとても冷たい眼差しを向けてくる。 「ジョン・ジョー、信じて。あなたの子なの」  だけどカトリオーナは捨てられた――。 * およそ8話程度 * Canva様で作成した表紙を使用しております。 * コメント欄のネタバレ配慮してませんので、お気をつけください。 * 別名義で投稿したお話の加筆修正版です。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

処理中です...