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エヴァン(巻き戻り)
巻き戻り
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見限られ、振られた私は政略結婚をするしかなかった。
どうでも良かった。
ロランはサルトでシーナから離れないし、私が血を繋がなくてはならない。
お祖父様の統治が長いから、父上に変わってもそこからまた長くなるだろう。
つまり私が王にならずとも、私を飛び越えて私の子が即位してくれたらいいだけだ。
選んでもらった令嬢と結婚して子を作った。
男児が産まれてホッとした。
ケインとジスランには、側近は無かったことにしていいと言った。私は国王にならないだろうと言ったが、そんなことは気にしませんと言ってくれた。
爵位を継ぐまで一緒に仕事をしてくれた。
妻もいい人だった。愛してはいないが尊敬はしている。彼女ほど妃に相応しい女はいないと思う。
ミーシェとのことも承知で、私に寵愛など求めたりしなかった。
私は未練がましく毎日窓を見つめている。ミーシェが忍び込んでくれるかもしれないと窓を少し開けていた。
ミーシェがレオン帝王と結婚したと聞いて、閉めてはいるが鍵はかけなかった。
それは私が死ぬまで。
息子が父上から王冠を受け継ぎ、新国王となった。
私の役目は終わった。
日に日に死が近付いているのを感じる。
だが怖くない。
もう最後だろうと大広間に連れてきてもらった。
「ミーシェ……」
長く付き添ってくれた侍従が泣いている。
侍従に向かって礼を伝えた。
「最後まで側にいてくれてありがとう。感謝している」
「私の方こそ、…お側に居れて光栄です」
「涙も鼻水も涎も透明だけど、メイドに叱られるぞ」
「っ!!……っ!!」
出会った時からのことが次々と浮かんでいく。
「……シェ」
母上の手の温もりが分からなくなってきた。
「エヴァン……抵抗せず眠りなさい。いい夢が見られるわ」
「……シェ」
暗転したと思ったら人混みだった。
私は死んだはずでは!?
「殿下、ミーシェ様をダンスに誘わないのですか?」
「え?」
「卒業パーティは一生に一度ですよ」
「卒業パーティ?」
「エヴァン殿下?」
「今、私は学園の卒業パーティにいるのか?」
「はい。…ご気分が優れないのですか?」
「何でもない」
急いでミーシェを追いかけると、あのシーンだった。
「ミーシェ」
目の前にミーシェがいる。最愛の女が目の前に。
「ううっ、サックス侯爵令嬢にジュースをかけてしまって。態とじゃないのです。押されて脚がもつれてグラスが傾いて……。
ですが……信じてもらえず……ううっ」
私はミーシェの手を握った。
「ミーシェ・サックス。
私は4歳の時から一途に愛してきた。
ただの一瞬も他の女に気を逸らしたことも裏切ったこともない。
彼女については、養女になる前はケイトという名だと言われて、可哀想だと思って実の家族に付けてもらった名を呼んでやった。
同情だった。
だが、養女になる前もなった後も彼女の名はケイトリンだった。
王子を騙すとはな。
もう一点。私は、一生懸命に卒業パーティの実行委員をやる彼女を指導しているだけだったが、それは周囲の誤解をうみ、彼女がこんなことをするほど調子に乗らせてしまった。
ケイトリン・フェゼノア。
ドレスのシミは間違いなく態とだ。
押されてかけたのならもっと広範囲だし液体は跳ねて其方にもシミが出来るはずだ。
なのにそっと気付かれないように垂らしたシミしかないし、其方のドレスはシミ一つない。
いいか。
私の最愛のミーシェを傷付ける者は誰であっても許さない。
二度と顔を見たくない。今すぐ城を去れ。二度と王城に足を踏み入れるな」
「殿下!誤解です!」
私はワインを手に取り、ゆっくり彼女に溢した。
「ほら。ミーシェと同じシミだ。
私には跳ねていない」
別のグラスを取って、少し勢いをつけて彼女にかけた。
「きゃっ」
「ほら、シミは広範囲だし、私にもかかった。
名前の件も嘘なのは書類でわかるぞ」
「っ!」
「そもそも、其方とミーシェでは違いすぎるだろう。ミーシェは頭もいいし、無害な者を貶めるようなことはしない。嘘で気を引いたりもしない。
よく見ろ。この可愛さを。見た目も世界一可愛いが、中身も可愛いんだ。
何故私とミーシェの間に割って入れると思ったんだ?」
「エヴァン、恥ずかしいからもういいわ」
「いや、ミーシェへの愛を語り足りない。
私はミーシェにメロメロだ。ミーシェになら刺されても文句言わない。
ミーシェが望むなら、どんな恥ずかしいことでもしてみせる!
全裸で王都内を歩き回ってもいい!女装をしてもいい!赤ちゃん言葉も使う!
ミーシェが我慢しろと言うなら、何時間でも我慢して悦ばせてみせる!」
「ちょっと!バカっ!」
チュッ
「エヴァン!」
チュッ
「エヴァン!」
チュ~ッ
「もう!」
「私はミーシェしか娶らない!何があっても、どんな女が来ても、ミーシェしか抱かない!」
ミーシェが居る。
息をし、瞬きをし、瞳を輝かせ、可愛い唇が王子にバカと言う。頬を染め、腰に回した私の腕を外そうとしている。
やっと……やっと会えた。
「……っ」
「何で泣くの!?泣きたいのはこっちよ!
バカ!!」
「ミーシェ…愛してる。もっと罵ってくれ…」
「エヴァン!」
「ミーシェ、次に私をフッたら、ミーシェの名を額に刻んで、弄ばれて立ち直れないと遺書を残して死んでやる」
「変な脅し方しないで」
「ミーシェ。私は本気だ。ミーシェが側にいない人生など歩めない。心がスカスカでカラカラで、空は変色し水は鉛のように重く何を食べても味が霞む。
花の香りも陽射しの暖かみも絵本を読んでいるかのようにしか感じない。
唯一、冬の冷たさだけ感じる。冷たい空気に身をさらし、全てが凍るのを待つ。だけど夜明けに悟る。この国の冬では凍らないと」
「エヴァン?」
「ミーシェ。脅しじゃない。君のいない人生などもう耐えられない。私の側に居たくないと言うなら、私の息の根を止めてから去ってくれ。
止めないで去るなら自分で止める」
ミーシェが心配そうに私を見つめている。
「ミーシェ無しでは生きていけないほど愛しているんだ。私の唯一の妃」
「…チェリーを持って木の前に立ってくれる?」
「ブルーベリーを口に咥えて木の前に立つよ。
例え外してナイフが私に刺さっても、愛を囁くよ」
「浮気したらどうなるか分かってる?」
「死よりも辛い目に遭わせるのは身をもって知っている。死ぬまで拷問し続けるんだろう?
絶対浮気しない。ミーシェを永遠に悦ばせたいけど心配なら、切り落としてもいい」
「っ! バカ」
少し私の言葉がおかしかったのは周囲の一部が気付いている。私は巻き戻り前のミーシェを知っているから経験が口に出てしまう。
巻き戻り前のミーシェは許さなかった。私を死よりも辛い目に遭わせた。それは死ぬまでの拷問だった。
周囲は様々な表情をしていたが、ケインが声を張った。
「殿下、ミーシェ様、おめでとうございます!」
「殿下、ミーシェ様、おめでとうございます!」
続いてジスランも声をかけてくれた。
巻き戻り前に私とミーシェを引き裂いた女は兵士に引き摺られていった。
「エヴァン。ミーシェと踊ってきたらどうだ」
「ミーシェ、行こう」
ライアンに促されてミーシェをダンスに誘った。
その後はミーシェと踊り、最後まで楽しく過ごせた。
どうでも良かった。
ロランはサルトでシーナから離れないし、私が血を繋がなくてはならない。
お祖父様の統治が長いから、父上に変わってもそこからまた長くなるだろう。
つまり私が王にならずとも、私を飛び越えて私の子が即位してくれたらいいだけだ。
選んでもらった令嬢と結婚して子を作った。
男児が産まれてホッとした。
ケインとジスランには、側近は無かったことにしていいと言った。私は国王にならないだろうと言ったが、そんなことは気にしませんと言ってくれた。
爵位を継ぐまで一緒に仕事をしてくれた。
妻もいい人だった。愛してはいないが尊敬はしている。彼女ほど妃に相応しい女はいないと思う。
ミーシェとのことも承知で、私に寵愛など求めたりしなかった。
私は未練がましく毎日窓を見つめている。ミーシェが忍び込んでくれるかもしれないと窓を少し開けていた。
ミーシェがレオン帝王と結婚したと聞いて、閉めてはいるが鍵はかけなかった。
それは私が死ぬまで。
息子が父上から王冠を受け継ぎ、新国王となった。
私の役目は終わった。
日に日に死が近付いているのを感じる。
だが怖くない。
もう最後だろうと大広間に連れてきてもらった。
「ミーシェ……」
長く付き添ってくれた侍従が泣いている。
侍従に向かって礼を伝えた。
「最後まで側にいてくれてありがとう。感謝している」
「私の方こそ、…お側に居れて光栄です」
「涙も鼻水も涎も透明だけど、メイドに叱られるぞ」
「っ!!……っ!!」
出会った時からのことが次々と浮かんでいく。
「……シェ」
母上の手の温もりが分からなくなってきた。
「エヴァン……抵抗せず眠りなさい。いい夢が見られるわ」
「……シェ」
暗転したと思ったら人混みだった。
私は死んだはずでは!?
「殿下、ミーシェ様をダンスに誘わないのですか?」
「え?」
「卒業パーティは一生に一度ですよ」
「卒業パーティ?」
「エヴァン殿下?」
「今、私は学園の卒業パーティにいるのか?」
「はい。…ご気分が優れないのですか?」
「何でもない」
急いでミーシェを追いかけると、あのシーンだった。
「ミーシェ」
目の前にミーシェがいる。最愛の女が目の前に。
「ううっ、サックス侯爵令嬢にジュースをかけてしまって。態とじゃないのです。押されて脚がもつれてグラスが傾いて……。
ですが……信じてもらえず……ううっ」
私はミーシェの手を握った。
「ミーシェ・サックス。
私は4歳の時から一途に愛してきた。
ただの一瞬も他の女に気を逸らしたことも裏切ったこともない。
彼女については、養女になる前はケイトという名だと言われて、可哀想だと思って実の家族に付けてもらった名を呼んでやった。
同情だった。
だが、養女になる前もなった後も彼女の名はケイトリンだった。
王子を騙すとはな。
もう一点。私は、一生懸命に卒業パーティの実行委員をやる彼女を指導しているだけだったが、それは周囲の誤解をうみ、彼女がこんなことをするほど調子に乗らせてしまった。
ケイトリン・フェゼノア。
ドレスのシミは間違いなく態とだ。
押されてかけたのならもっと広範囲だし液体は跳ねて其方にもシミが出来るはずだ。
なのにそっと気付かれないように垂らしたシミしかないし、其方のドレスはシミ一つない。
いいか。
私の最愛のミーシェを傷付ける者は誰であっても許さない。
二度と顔を見たくない。今すぐ城を去れ。二度と王城に足を踏み入れるな」
「殿下!誤解です!」
私はワインを手に取り、ゆっくり彼女に溢した。
「ほら。ミーシェと同じシミだ。
私には跳ねていない」
別のグラスを取って、少し勢いをつけて彼女にかけた。
「きゃっ」
「ほら、シミは広範囲だし、私にもかかった。
名前の件も嘘なのは書類でわかるぞ」
「っ!」
「そもそも、其方とミーシェでは違いすぎるだろう。ミーシェは頭もいいし、無害な者を貶めるようなことはしない。嘘で気を引いたりもしない。
よく見ろ。この可愛さを。見た目も世界一可愛いが、中身も可愛いんだ。
何故私とミーシェの間に割って入れると思ったんだ?」
「エヴァン、恥ずかしいからもういいわ」
「いや、ミーシェへの愛を語り足りない。
私はミーシェにメロメロだ。ミーシェになら刺されても文句言わない。
ミーシェが望むなら、どんな恥ずかしいことでもしてみせる!
全裸で王都内を歩き回ってもいい!女装をしてもいい!赤ちゃん言葉も使う!
ミーシェが我慢しろと言うなら、何時間でも我慢して悦ばせてみせる!」
「ちょっと!バカっ!」
チュッ
「エヴァン!」
チュッ
「エヴァン!」
チュ~ッ
「もう!」
「私はミーシェしか娶らない!何があっても、どんな女が来ても、ミーシェしか抱かない!」
ミーシェが居る。
息をし、瞬きをし、瞳を輝かせ、可愛い唇が王子にバカと言う。頬を染め、腰に回した私の腕を外そうとしている。
やっと……やっと会えた。
「……っ」
「何で泣くの!?泣きたいのはこっちよ!
バカ!!」
「ミーシェ…愛してる。もっと罵ってくれ…」
「エヴァン!」
「ミーシェ、次に私をフッたら、ミーシェの名を額に刻んで、弄ばれて立ち直れないと遺書を残して死んでやる」
「変な脅し方しないで」
「ミーシェ。私は本気だ。ミーシェが側にいない人生など歩めない。心がスカスカでカラカラで、空は変色し水は鉛のように重く何を食べても味が霞む。
花の香りも陽射しの暖かみも絵本を読んでいるかのようにしか感じない。
唯一、冬の冷たさだけ感じる。冷たい空気に身をさらし、全てが凍るのを待つ。だけど夜明けに悟る。この国の冬では凍らないと」
「エヴァン?」
「ミーシェ。脅しじゃない。君のいない人生などもう耐えられない。私の側に居たくないと言うなら、私の息の根を止めてから去ってくれ。
止めないで去るなら自分で止める」
ミーシェが心配そうに私を見つめている。
「ミーシェ無しでは生きていけないほど愛しているんだ。私の唯一の妃」
「…チェリーを持って木の前に立ってくれる?」
「ブルーベリーを口に咥えて木の前に立つよ。
例え外してナイフが私に刺さっても、愛を囁くよ」
「浮気したらどうなるか分かってる?」
「死よりも辛い目に遭わせるのは身をもって知っている。死ぬまで拷問し続けるんだろう?
絶対浮気しない。ミーシェを永遠に悦ばせたいけど心配なら、切り落としてもいい」
「っ! バカ」
少し私の言葉がおかしかったのは周囲の一部が気付いている。私は巻き戻り前のミーシェを知っているから経験が口に出てしまう。
巻き戻り前のミーシェは許さなかった。私を死よりも辛い目に遭わせた。それは死ぬまでの拷問だった。
周囲は様々な表情をしていたが、ケインが声を張った。
「殿下、ミーシェ様、おめでとうございます!」
「殿下、ミーシェ様、おめでとうございます!」
続いてジスランも声をかけてくれた。
巻き戻り前に私とミーシェを引き裂いた女は兵士に引き摺られていった。
「エヴァン。ミーシェと踊ってきたらどうだ」
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