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エヴァン(巻き戻り)

エヴァンとミーシェ(過去)

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入学する歳になっても双子がどうするのか分からなかった。

結局、Sが死んだことでミーシェは辞退した。


時々手紙を送ったがあまり返って来なかった。

ミーシェは傷心で一年遅れで入学し、ライアンは私の教育係として一年遅れで一緒に入学した。
私なりに頑張ったが、最高クラスに入れる学力は無かった。


学園でのミーシェは魂を凍らせた人形のようだった。美貌が令息達を惹きつけるために、令嬢達からの嫌がらせが絶えなかった。

何とかしたいが、王子の私が直接ミーシェに関わると、その分ミーシェが攻撃されると言われて我慢した。

好きな女が傷付けられているのに何もできないなんて。
昔は絵本の王子を信じていたが、今は無力さを感じてしまう。

私が介入できるのは、ライアンの親友という位置からしかない。親友の妹だから。それを徹底させた。


嫌がらせの日々に眉ひとつ動かさないミーシェの心をとかしたのは、Sの遺体を引き上げた時だった。

泣き崩れるミーシェを見守った。


その後、ミーシェは昔のミーシェに戻った。
だが、それは同時に令息達を惹きつける要素でもあった。

だけどミーシェが楽しそうに嫌がらせに反撃する姿が見れて嬉しかった。
教師は大変だったろうがな。

側近候補のジスランは何事もなかったかのようにミーシェに馴染み、ケインは戸惑いながらミーシェに慣れていった。



卒業パーティを控えて、後輩の指導をしていた。
その中でもケイトリン・フェゼノアは一生懸命で、現在は侯爵家の養女になったが中身が追いついておらず分からないことが多かった。

彼女は王城で会っても軽く挨拶をするだけで、付き纏ったりしないまともな娘だ。

大変だろうと声をかけた。分からない事があれば聞きに来ていいと。


彼女は積極的に役割を全うしようとする努力家だった。だから教えられることは教えた。
不出来さが自分のことのように思えたことも理由だ。

時々悩みも聞くようになった。

養女になる前はケイトだったらしく、思い入れがあるようだった。可哀想になって、私が学園にいる間はケイトと呼ぶと言ってしまった。

私と彼女の間にやましいことはない。だからケイン達の言葉も気に留めていなかった。


問題のセーレンからの王女サンドラは娼婦のように夜になると透けたナイトドレスで夜這いに来る。
騎士を多めに配置させ、誤解されぬよう廊下で毎回拒絶してきた。

来国目的が別の問題だったので、そちらを片付けないことには追い返せない。
縁談話も出たが、ハッキリと断った。

大詰めのところにミーシェがやってきて、卒業パーティのパートナーの辞退と別れを言い出した。

この二つが私とミーシェの関係を大きく変えるきっかけになった。


やっとミーシェを手に入れた。本人は覚えていないという有り得ない状態ではあるが既成事実は変わらない。

セーレンでの任務の最中も王女や王子対策だと言いつつもミーシェと濃密な夜を過ごした。


せっかく問題を排除してセーレンから帰国したのに、余計なことを言ってミーシェを怒らせてしまった。帝国の王子達が来ているというのに。

特にレオン王太子殿下は魅力的だった。
自信に満ち、余裕があり、大人の男といった感じだ。
ミーシェを口説いているようには見えないが、嫌な予感がする。

焦れば焦るほど、事態は悪化した。
ミーシェとの婚約内定は取り消された。
必死に懇願し、有限のチャンスをもらえた。

レオン王太子達を連れてサルトへ向かったミーシェを待つしかなかった。


その後、王都に戻ったのは知っていた。
押し掛けたい気持ちを堪えた夜に、最愛のミーシェが窓から忍び込んできた。そのままミーシェを抱いた。

不思議な関係だ。
このままミーシェに認めてもらえるようになりたい。


だけど直ぐに帝国の王が娶りたいと言ってきた。
断れば攻め込むと脅迫された。
勿論答えはノーに決まっている。

使者のレオン王太子殿下は、了承したと見せかけて罠にかけて帝王を始末する作戦を提案してきた。
またミーシェと離れなければいけない。
ライアンが付いているなら大丈夫だとは思うが心配だった。


二人が不在の間も学園に通い、学び、下級生を指導した。

長かった。
終に帝王を始末して、友好国に昇格させて戻ってきた。

長く離れていた分 側にいたいのにミーシェは会いには来てくれなかった。
寮にも居らず、サックス邸だと分かり、手紙を出しても面会を断られた。

卒業試験に向けて集中したいということだった。
学園に来ても昼食も別になった。
だが試験が終わるまでの我慢。そう思っていた。


卒業パーティで、ミーシェはサックス侯爵にエスコートされダンスを踊り、サルト男爵とも踊っていた。ダンスを申し込もうと思ったが、ミーシェは飲み物を取りに向かっていた。

私は待った。

だが騒ぎが起きた。

ケイトが平伏して謝っている。
ミーシェのドレスに飲み物をかけてしまったらしい。

ミーシェの目は冷たい。
このままでは印象が悪い。

ケイトを庇ったというつもりはない。穏便に解決させた方がいいと思ってミーシェに着替えを促した。
だが、ミーシェは既視感のある堅苦しい挨拶をした。

ケイトを立ち上がらせている間に人混みに消えてしまった。


その後は監禁されて、母上達の前に連れて来られた。ケイトの名前のことも、ドレスにかけた飲み物のことも、ケイトが私のいないところでどんな態度をとっていたかも教えられて血の気が引いた。


そうだ。あの堅苦しい挨拶は、卒業パーティのエスコートを断りに執務室にやってきた、あの時のミーシェと同じだ。
別れの挨拶だったんだ。










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