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エヴァン(巻き戻り)
エヴァンと双子(過去)
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国王陛下の一人娘ステファニーと、他国から婿入りした王族のシオンの間に生まれたのが私だ。
急いでいないからと、ゆっくり教育されてきた。
4歳の時、母上がソワソワしていた。
母上の部屋の側の貴賓室を整えるためにメイドにアレコレ指示を出していた。
「母上。この部屋は入っちゃダメじゃないの?」
「そうよ。私の愛する親友専用のお部屋なの。
領地から出てくることになったから整えているのよ。
エヴァンより一歳上の双子の兄妹が一緒よ。楽しみね」
いつも掃除をしているのを見ているけど、大掃除に変わっていた。
そのうち、いつ到着してもいいように毎日花を飾っていた。
そして運命の日はやってきた。
「夫のハヴィエル・サルト男爵、息子のライアン、娘のミーシェ。双子で5歳になります」
アネットという母親にそっくりな女の子のミーシェは信じられないくらいに可愛かった。
まるでお人形さん?妖精さん?お姫様?
そうだ!絵本では王子と結ばれるんだ!などと幼い私は思って言った。
「ミーシェは僕のお嫁さん?」
「違うわエヴァン」
どう考えたって王子の自分と結ばれるべきだと思った。
「違わないようにして」
「駄目よ」
直接聞こう。きっと頬を染めて喜んでくれるはずだと思った。絵本もそうだったから。
「ミーシェ、僕のお嫁さんになって」
「イヤ」
「なんで?」
「私はパパと結婚するの」
「僕の方がいいよ」
「良くない。パパと結婚するの!」
「僕は王子だぞ!」
「オウジ?」
「偉いんだ!」
「エヴァン!」
「パパの方が魅力的だからパパがいい」
そこで双子の兄ライアンがミーシェを背に隠してしまった。
「しつこい男は嫌われるぞ」
どうしてミーシェが嫌がるのか、ライアンが邪魔するのか理解できなかった。
「母上!」
「エヴァン、嫌がっているのに押し付けるのは良くないわ。
それにライアンは妹を守っているだけよ。
ちゃんとできないならお部屋に戻りなさい」
「っ!」
翌日、ごめんなさいをして双子と遊んでいた。
仲良くなれたらと思っていたのに敵が現れた。
騎士の男がミーシェの心を惹きつけてしまった。
後から、普通の騎士じゃないということと、ミーシェはまだ子供だし歳の差がありすぎるから気持ちが変わるだろうと、父上がこっそり話してくれた。
確かに。後に気が変わるだろうと思った。
すぐに領地に帰ってしまったミーシェの事ばかり考えていた。徐々に習うことが増えてきたけど集中できなかった。
10歳になると陛下から茶会を開くと言われた。
「ある程度選別して招待している。
令息は側近候補。令嬢は王子妃候補だ」
「ミーシェがいるから必要ないです」
「ミーシェは男爵家だから今のままでは王子妃になれない。それにミーシェが望まない限り無理だ。
とにかく、茶会には双子も来るから、成長した姿を見せてやりなさい」
「はい!陛下」
11歳になったミーシェはとても綺麗だった。
妹のシーナも可愛いが、ミーシェが好きだ。
令息達がミーシェに釘付けで気に入らない。
だけど相手にしないミーシェを見て安心した。
やっぱりミーシェには王子でないと。
そんなことを考えていたら事件が起きた。
シーナが殴られてミーシェが怒っている。
ライアンは加害者と対峙していた。
弟のロランがシーナを抱き抱えて狼狽していた。
明らかにまずい状況なのに侯爵夫人という地位が男爵家を侮辱する。
「僕が押した。押した奴は殴るんだろう?
やってみなよ」
ロランの言葉で侯爵夫人は更に動揺していた。
男爵家の子か、王子かで、こんなに態度を変えるのか。
やはり、ミーシェを守れるのは王子の自分しかいないと感じた。
シーナが治るまで、双子と過ごせることになった。
一緒に授業を受けたが、私と双子ではかなりの実力差があるのが分かった。
一歳上だからではない。
それに普通は王族の方がいい教育環境のはずだから、双子が一歳上でも彼らと同等かそれ以上できていて当然なのだ。
教師達は特にライアンに脱帽だった。
騎士達もライアンを賞賛する。
最近知った“第四”も、私は相手にしないのに双子のことは可愛がる。
「ライアン。何でそんなに何でもできるんだ?」
「ミーシェを守るためだよ」
「守るため?」
「普通の男爵家ではないけど、やはり私もミーシェも男爵籍だ。資産はかなりあるし、陛下やステファニー王女殿下が後ろ盾になってくださるし、祖父はゲラン伯爵だから普通の男爵家よりはいいけど、側にいてミーシェを守るには人任せでは駄目だ。
勉強でも剣術でも弓術でも馬術でも体術でも優れていないと。
ミーシェは未成年の令嬢の中で一番可愛くて美しい女の子だと思う。全員に会ったことはないけどね。
私はミーシェが一番大事だ。唯一無二の私の双子の妹だ」
ライアンは教師は付いてはいるが、ほぼ独学らしい。自分で勉強して分からないところを教わったり掘り下げたりして身に付けているようだ。
敵わないのは当然だと納得した。
急いでいないからと、ゆっくり教育されてきた。
4歳の時、母上がソワソワしていた。
母上の部屋の側の貴賓室を整えるためにメイドにアレコレ指示を出していた。
「母上。この部屋は入っちゃダメじゃないの?」
「そうよ。私の愛する親友専用のお部屋なの。
領地から出てくることになったから整えているのよ。
エヴァンより一歳上の双子の兄妹が一緒よ。楽しみね」
いつも掃除をしているのを見ているけど、大掃除に変わっていた。
そのうち、いつ到着してもいいように毎日花を飾っていた。
そして運命の日はやってきた。
「夫のハヴィエル・サルト男爵、息子のライアン、娘のミーシェ。双子で5歳になります」
アネットという母親にそっくりな女の子のミーシェは信じられないくらいに可愛かった。
まるでお人形さん?妖精さん?お姫様?
そうだ!絵本では王子と結ばれるんだ!などと幼い私は思って言った。
「ミーシェは僕のお嫁さん?」
「違うわエヴァン」
どう考えたって王子の自分と結ばれるべきだと思った。
「違わないようにして」
「駄目よ」
直接聞こう。きっと頬を染めて喜んでくれるはずだと思った。絵本もそうだったから。
「ミーシェ、僕のお嫁さんになって」
「イヤ」
「なんで?」
「私はパパと結婚するの」
「僕の方がいいよ」
「良くない。パパと結婚するの!」
「僕は王子だぞ!」
「オウジ?」
「偉いんだ!」
「エヴァン!」
「パパの方が魅力的だからパパがいい」
そこで双子の兄ライアンがミーシェを背に隠してしまった。
「しつこい男は嫌われるぞ」
どうしてミーシェが嫌がるのか、ライアンが邪魔するのか理解できなかった。
「母上!」
「エヴァン、嫌がっているのに押し付けるのは良くないわ。
それにライアンは妹を守っているだけよ。
ちゃんとできないならお部屋に戻りなさい」
「っ!」
翌日、ごめんなさいをして双子と遊んでいた。
仲良くなれたらと思っていたのに敵が現れた。
騎士の男がミーシェの心を惹きつけてしまった。
後から、普通の騎士じゃないということと、ミーシェはまだ子供だし歳の差がありすぎるから気持ちが変わるだろうと、父上がこっそり話してくれた。
確かに。後に気が変わるだろうと思った。
すぐに領地に帰ってしまったミーシェの事ばかり考えていた。徐々に習うことが増えてきたけど集中できなかった。
10歳になると陛下から茶会を開くと言われた。
「ある程度選別して招待している。
令息は側近候補。令嬢は王子妃候補だ」
「ミーシェがいるから必要ないです」
「ミーシェは男爵家だから今のままでは王子妃になれない。それにミーシェが望まない限り無理だ。
とにかく、茶会には双子も来るから、成長した姿を見せてやりなさい」
「はい!陛下」
11歳になったミーシェはとても綺麗だった。
妹のシーナも可愛いが、ミーシェが好きだ。
令息達がミーシェに釘付けで気に入らない。
だけど相手にしないミーシェを見て安心した。
やっぱりミーシェには王子でないと。
そんなことを考えていたら事件が起きた。
シーナが殴られてミーシェが怒っている。
ライアンは加害者と対峙していた。
弟のロランがシーナを抱き抱えて狼狽していた。
明らかにまずい状況なのに侯爵夫人という地位が男爵家を侮辱する。
「僕が押した。押した奴は殴るんだろう?
やってみなよ」
ロランの言葉で侯爵夫人は更に動揺していた。
男爵家の子か、王子かで、こんなに態度を変えるのか。
やはり、ミーシェを守れるのは王子の自分しかいないと感じた。
シーナが治るまで、双子と過ごせることになった。
一緒に授業を受けたが、私と双子ではかなりの実力差があるのが分かった。
一歳上だからではない。
それに普通は王族の方がいい教育環境のはずだから、双子が一歳上でも彼らと同等かそれ以上できていて当然なのだ。
教師達は特にライアンに脱帽だった。
騎士達もライアンを賞賛する。
最近知った“第四”も、私は相手にしないのに双子のことは可愛がる。
「ライアン。何でそんなに何でもできるんだ?」
「ミーシェを守るためだよ」
「守るため?」
「普通の男爵家ではないけど、やはり私もミーシェも男爵籍だ。資産はかなりあるし、陛下やステファニー王女殿下が後ろ盾になってくださるし、祖父はゲラン伯爵だから普通の男爵家よりはいいけど、側にいてミーシェを守るには人任せでは駄目だ。
勉強でも剣術でも弓術でも馬術でも体術でも優れていないと。
ミーシェは未成年の令嬢の中で一番可愛くて美しい女の子だと思う。全員に会ったことはないけどね。
私はミーシェが一番大事だ。唯一無二の私の双子の妹だ」
ライアンは教師は付いてはいるが、ほぼ独学らしい。自分で勉強して分からないところを教わったり掘り下げたりして身に付けているようだ。
敵わないのは当然だと納得した。
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