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見合い
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サルファール公爵家は長男がタウンハウスで暮らし、次男は婿入り、三男は王城の文官。
見合い相手のアシル・サルファールは隠居したことになっているが、領地運営をしている方らしい。
奥様とは隠居を機に離縁したと書いてあった。理由は政略結婚完了に伴う円満離縁らしい。
サルファール領は王都から馬車で2日半の北部にありながら、街も栄え、酪農畜産 農業も行っている豊かな領地だ。
到着すると、外壁と鉄柵の向こうはかなり広い敷地になっていて、壁沿いに一周するだけでかなりの運動になるはずだ。というか、一周し切れるだろうか。
大きな屋敷の正面に到着する頃に絵姿と同じ男性が現れた。馬車のドアが開くと手を差し伸べてくれた。厚みのある大きな手だった。
「……」
「お初にお目にかかります。イリザス伯爵家の8女サラと申します。不束者ですかよろしくお願いいたします」
「アシル・サルファールだ。まだ見合いの段階だからな」
「は、はい」
屋敷の中に入り歩いているが、何故かすれ違う使用人の皆が一瞬驚きの顔を見せる。
そういえば この方も挨拶が終わった後、私のことをじっと見ていた。
応接間に案内され、ソファに促されたところで初めて気が付いた。
「し、失礼しました!」
「……」
馬車を降りるときに差し出された手をそのまま握って応接間まで来てしまっていた。
恥ずかしくて顔が熱い。
「それで、どうして私の後妻になりたいと?」
いきなり核心へ迫られて、用意していた言葉を忘れた私は、ウィリアム様との出会いから見合いを決意するところまで包み隠さず話した。
「……という経緯となります」
「隠居していると言っても、私は領地の仕事をしているし、社交が全く無いわけではない。
君の夢見る暮らしには及ばない気がするし、私は50歳過ぎだ。もっと若い方がいいだろう」
「若いとどうしていいのですか?」
「…いや、歳が近い方が話も合うだろう」
「合いませんでした」
「……」
「無理にしがみ付くつもりはございません。お気に召さなければそう仰ってください」
「そういうつもりではない。
長旅だったろう。少し部屋で休むといい」
「はい。ありがとうございます」
客間に案内され、荷解きをするメイドを手伝い、バルコニーで編み物を始めた。
お茶を持ってきたメイドが声をかけてきた。
「私、お嬢様の担当になりました、コニーと申します。よろしくお願いいたします。
とても素敵です。私も編むことはありますが、比べものになりません」
「ありがとう。コニーと呼んでいいのね?私のことはサラと呼んで」
「はい、サラ様」
「これはバザー用なのよ」
「あの、もしよろしければ滞在中に大旦那様のマフラーを編んでみませんか」
「私などの編んだマフラーを差し上げても喜んでくださいませんわ。寧ろ困らせてしまいます」
「そんなことはございません。素敵な毛糸がありますのでお持ちいたします」
そしてコニーの持ってきた毛糸を手に持った。
「すごい滑らかな手触りだわ」
「考えもつかないほど遠くの国から仕入れた毛糸らしいです」
「そんな貴重なものを私が使ってしまうわけには」
「サラ様の腕前でこちらの毛糸をお使いになれば、王族へ献上する様な最高級の品が仕上がるはずです」
「でも、」
「せっかくの縁談ですから、サラ様の魅力をお見せしませんか」
「魅力だなんて。私はそんなものはないのよ」
「お願いします!」
「分かったわ」
時間潰しにも丁度いいからと引き受けることにした。
夕食の時間になり、食堂へ向かった。
「お待たせ致しました」
「大丈夫だ。掛けてくれ」
「はい。あの、滞在中は何とお呼びすればよろしいのでしょうか」
「アシルと名前でいい。私も滞在中はサラと呼ぼう」
「はい、アシル様」
運ばれてくる料理はとても美味しい。美味し過ぎて、帰ったらいつもの食事が楽しめなくなりそうな気がしてしまった。
「どうした」
「美味し過ぎてびっくりしました。
我が家の料理人も素晴らしいと思ってはいるのですが及びません」
「素材のせいだろう。サルファール産のものばかりで新鮮だからな。それに質もいい。同じ採れたてでも旨味が違うんだ」
「これでは体型を維持するのが困難ですね」
「酒は飲めるのか?」
「飲めなくはないのですが飲みません」
「どうして」
「赤くなるからです。みっともないですから」
「気にせず飲みなさい」
「ありがとうございます、ですか控えさせていただきます」
そう言ったはずなのに、食後の飲み物を飲むとカーッと体が熱くなった。
「これ…お酒?」
「食前に飲むときに用いられる程度の酒だが、大丈夫か?」
「ちょっと熱くなってきました」
少し渋味のあるオレンジベースのお酒は美味しかった。この感じだと もう赤くなってしまっただろう。明日は引きこもり、マフラーを仕上げて明後日には去ろうと思っていた。
ウィリアム様との恥ずかしい過去を知り、貴族として欠陥がある上に美人でもない私のみっともない姿を見たアシル様は縁談を断るだろうから。
見合い相手のアシル・サルファールは隠居したことになっているが、領地運営をしている方らしい。
奥様とは隠居を機に離縁したと書いてあった。理由は政略結婚完了に伴う円満離縁らしい。
サルファール領は王都から馬車で2日半の北部にありながら、街も栄え、酪農畜産 農業も行っている豊かな領地だ。
到着すると、外壁と鉄柵の向こうはかなり広い敷地になっていて、壁沿いに一周するだけでかなりの運動になるはずだ。というか、一周し切れるだろうか。
大きな屋敷の正面に到着する頃に絵姿と同じ男性が現れた。馬車のドアが開くと手を差し伸べてくれた。厚みのある大きな手だった。
「……」
「お初にお目にかかります。イリザス伯爵家の8女サラと申します。不束者ですかよろしくお願いいたします」
「アシル・サルファールだ。まだ見合いの段階だからな」
「は、はい」
屋敷の中に入り歩いているが、何故かすれ違う使用人の皆が一瞬驚きの顔を見せる。
そういえば この方も挨拶が終わった後、私のことをじっと見ていた。
応接間に案内され、ソファに促されたところで初めて気が付いた。
「し、失礼しました!」
「……」
馬車を降りるときに差し出された手をそのまま握って応接間まで来てしまっていた。
恥ずかしくて顔が熱い。
「それで、どうして私の後妻になりたいと?」
いきなり核心へ迫られて、用意していた言葉を忘れた私は、ウィリアム様との出会いから見合いを決意するところまで包み隠さず話した。
「……という経緯となります」
「隠居していると言っても、私は領地の仕事をしているし、社交が全く無いわけではない。
君の夢見る暮らしには及ばない気がするし、私は50歳過ぎだ。もっと若い方がいいだろう」
「若いとどうしていいのですか?」
「…いや、歳が近い方が話も合うだろう」
「合いませんでした」
「……」
「無理にしがみ付くつもりはございません。お気に召さなければそう仰ってください」
「そういうつもりではない。
長旅だったろう。少し部屋で休むといい」
「はい。ありがとうございます」
客間に案内され、荷解きをするメイドを手伝い、バルコニーで編み物を始めた。
お茶を持ってきたメイドが声をかけてきた。
「私、お嬢様の担当になりました、コニーと申します。よろしくお願いいたします。
とても素敵です。私も編むことはありますが、比べものになりません」
「ありがとう。コニーと呼んでいいのね?私のことはサラと呼んで」
「はい、サラ様」
「これはバザー用なのよ」
「あの、もしよろしければ滞在中に大旦那様のマフラーを編んでみませんか」
「私などの編んだマフラーを差し上げても喜んでくださいませんわ。寧ろ困らせてしまいます」
「そんなことはございません。素敵な毛糸がありますのでお持ちいたします」
そしてコニーの持ってきた毛糸を手に持った。
「すごい滑らかな手触りだわ」
「考えもつかないほど遠くの国から仕入れた毛糸らしいです」
「そんな貴重なものを私が使ってしまうわけには」
「サラ様の腕前でこちらの毛糸をお使いになれば、王族へ献上する様な最高級の品が仕上がるはずです」
「でも、」
「せっかくの縁談ですから、サラ様の魅力をお見せしませんか」
「魅力だなんて。私はそんなものはないのよ」
「お願いします!」
「分かったわ」
時間潰しにも丁度いいからと引き受けることにした。
夕食の時間になり、食堂へ向かった。
「お待たせ致しました」
「大丈夫だ。掛けてくれ」
「はい。あの、滞在中は何とお呼びすればよろしいのでしょうか」
「アシルと名前でいい。私も滞在中はサラと呼ぼう」
「はい、アシル様」
運ばれてくる料理はとても美味しい。美味し過ぎて、帰ったらいつもの食事が楽しめなくなりそうな気がしてしまった。
「どうした」
「美味し過ぎてびっくりしました。
我が家の料理人も素晴らしいと思ってはいるのですが及びません」
「素材のせいだろう。サルファール産のものばかりで新鮮だからな。それに質もいい。同じ採れたてでも旨味が違うんだ」
「これでは体型を維持するのが困難ですね」
「酒は飲めるのか?」
「飲めなくはないのですが飲みません」
「どうして」
「赤くなるからです。みっともないですから」
「気にせず飲みなさい」
「ありがとうございます、ですか控えさせていただきます」
そう言ったはずなのに、食後の飲み物を飲むとカーッと体が熱くなった。
「これ…お酒?」
「食前に飲むときに用いられる程度の酒だが、大丈夫か?」
「ちょっと熱くなってきました」
少し渋味のあるオレンジベースのお酒は美味しかった。この感じだと もう赤くなってしまっただろう。明日は引きこもり、マフラーを仕上げて明後日には去ろうと思っていた。
ウィリアム様との恥ずかしい過去を知り、貴族として欠陥がある上に美人でもない私のみっともない姿を見たアシル様は縁談を断るだろうから。
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