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立直り

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過剰摂取から1週間後。

「脱力感も無さそうですし大丈夫でしょう。
もう勝手に薬品棚に触らず、使用人に準備してもらってください。誤飲を避けられますから」

「はい。仰る通りにします。ありがとうございました」

誤飲したということにして主治医に診てもらっていた。本当に信じてくれたのかは分からないけど口外はしないと思う。

ワンピースに着替えて机に向かい、帳簿を見ていた。

「結構 使ったな」

あの暗闇から生還した私は 全くウィリアムに未練が無かった。だから帳簿を見て貢いだ品を返して欲しいとさえ思ってしまう。

お父様とお母様から忠告を受け続けてきた。

“贈り物を返してもらったことがないのに何故贈り続けるんだ”
“サラの気持ちを利用しているだけよ”
“金がもったいないから止めなさい”
“貴女に貢がせておいて、他の令嬢達に愛想を振り撒いてるような男はクズだわ”

1割強のお金が消えてしまった。

貴族に嫁ぐのも無理だと言われるほど、馬鹿で取り柄のない私には貴重なお金だ。


そういえば嫁ぎ先を探すって言っていたなぁ。
そうだ!


夕食のときにお父様にお願いをした。

「お父様。私の嫁ぎ先は、跡継ぎが既にいて隠居なさっている方がいいです。穏やかな方なら正妻がいてもかまいません。不自由なく暮らせれば十分です。寧ろこれから当主になろうとする方の妻は務まりません」

「サラ、まだ具合が悪いんだな?」

「そうだぞ。悲観しなくても兄様がついてるからな」

「そうよ。こんなに若くて可愛いのに」

「身内贔屓ですわ」

「自暴自棄は止めなさい」

「私は役立たずですから、その方が楽だと気が付きました。これは前向きな検討です」

「一応探してはみるが、何歳まで許容範囲なんだ?」

「嫁いで直ぐ亡くなられては困りますので、元気ならば拘りません」

「分かった」

田舎でのんびり暮らすのも楽しいかもしれない。
仲良くお散歩に出掛けたり出来るといいな。



社交に出ると碌な事がないと思い、得意の編み物を始めた。

イリザス家の娘は、一つ秀でた特技を持つ事が求められる。その達成度によって分配金も異なる。
一流職人レベル、一般職人レベル、父が認めるレベルの3つ。私は編み物で一流職人レベルと認められたので分配金が多かった。

分配金とは娘が成人した日に生前贈与されるお金のことだ。
妻3人には男児を産んだか否かで優劣をつける事なく、父の死後に遺産の一部を与えられる。
唯一の男児フィリップが継ぐものに比べたら些細なものだ。

今回も教会のバザーに出してもらうつもりで、帽子やマフラー、羽織物やセーターを編もうと始めた。

そんなことをしている間に幾つかの釣書が届いた。
令息が3件、第二夫人が1件、隠居された方の後妻が2件。令息からの申し込みはもっとあったらしいが、既に書類選考で落ちたらしい。

令息は見るまでもなく拒否。第二夫人の縁談は、まだ男児が産まれていない当主らしいので拒否。
後妻は、公爵を引退した51歳と、伯爵を引退した47歳。

51歳の方は妻と離縁、子は男児3人。
47歳の方は妻は他界、子は男児と女児1人ずつ。
これは会ってみないと分からない…。その前に調査を入れてもらおう。


そして調査結果は、前伯爵の方は35歳の恋人がいた。まさか若い私に乗り換えようと!?
前公爵の方は女性の存在は無し。こっちに先に会うことにした。




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