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キャロン領

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キャロン領の親類達は礼儀正しい。
誰も私に言い寄らない。それは私に魅力が無かったからかもしれない。そして兄様にもディオンにも色目を使う人はいなかった。


お披露目が終わった日の夜、談話室で話をしていた。

デ「うちの集まりとは全然違いますね」

兄「が行き届いているからね。じゃないと世界一大事なシアを守れないからね」

デ「すみません」

兄「ディオン。シアを守るには自分で指揮を取らないと。
彼らがどんな環境で生きていて、何に弱くて何に強いか。何を求めていてどんな誘惑があるか。我が子のように把握しないと。
そしてそれらは変わるものだ。だから不定期に調査を入れて把握しないとならない」

デ「〈まさか全部の屋敷に密偵を!?〉」

兄「〈買収されないよう不定期で入れ替えている〉」

なんか聞こえなくなったわ。

兄「その情報を上手く使ってこそ掌握できるんだ。服従して利口にしていれば良し。そうでなければ罰を与える。しっかりと躾けることができた。
キャロン領で守るべき最重要事項は私に言い寄らない、シアに言い寄らない。そして傷付けない。簡単なことだ」

デ「その把握が難しいですね」

兄「側近達とは別に優れた諜報員を育てることだよ」

デ「育てるって…」

兄「うちの場合は、王家の諜報員を1人スカウトして、彼に孤児を含む領民から素質のある者を選ばせ育てさせた。私の見る目に狂いがなくて良かったよ」

デ「それ、俺には出来ませんよ。ところで、〈だったら何故あれと婚約させたのですか〉」

兄「隙を突かれたんだよ。私がエリオットと外泊しているときに父上と交渉してしまったんだ。帰ったら契約を結んだ後だった。
散々エリオットを詰って、諜報員を譲ってもらったんだ。勿論本人の同意も得たよ。
彼の家族の移住も許可して屋敷も使用人も与えて豊かな暮らしをさせているから楽しそうだ。もう既に4人王家の諜報員として試験に受かり領地を出て活躍しているよ」

デ「凄いですね」

兄「まあ、キャロンの金にはならないが 太い繋がりができて利にはなる」

デ「うちとは雲泥の差ですね」

兄「キャロンが特殊なだけだから そう落ち込むな」

デ「はい」

兄「つまらない話をしているから、私の天使シアが転寝し始めた。部屋まで運ぶからディオンも客室で休め」

デ「はい」

兄「シア、抱っこするよ」

私「ディオン」

兄「……“にいに”だろう?レティシア」

デ「義兄上、怒らないでください。シアはずっと義兄上が領地に帰って寂しいと言っていたのですから」

兄「よしよし。可愛いシア」

私「いい匂い…にいに…」

兄「シア。愛してるよ」



翌朝 目が覚めると広いベッドに寝ていた。
自分のベッドだけどディオンがいないベッドに違和感を感じるし、なんだか肌寒い。

ガウンを羽織り、ディオンの部屋に行きベッドに潜り込んだ。

「あったかい」

「俺、殺されそう」




【 クリスチャンの視点 】


アレクサンドルの遣いが連れてきたのは、私にそっくりの女児だった。

父「まさか、この子は」

遣「はい。ミリアナが産んだ赤ちゃんです」

母「そっくりだわ。どうしましょう」

子「あ~」

私「……」

不思議だ。ローテーブルの中央に置かれた籠の中の赤子に初めて会うというのに愛おしさを感じる。

遣「主人の命で、出産時に赤ちゃんを取り替えました。ミリアナと両親にはミリアナにも公子にも似つかぬ赤ちゃんにすり替え渡しました。
ボロン家に悟られないために、ボイズ公爵家にも似つかぬ子が産まれたと一報を出しましたが、実際はこの通りです。

すり替えた子は孤児院へ送られました。ミリアナは更生施設で労働を強いられることになりました。

そしてボロン男爵の運営する逢瀬の宿は偶然にも高貴な夫人と若い平民の逢瀬が事細かに公表されたため、利用する者がいなくなりました。
ミリアナが次期ボイズ公爵夫人になると仄めかして事業を拡大していた最中でしたので、ウィルソン家への婚約破棄による違約金支払いと重なり大きく傾いております。
夫人も社交には出ることは叶いません。

ミリアナの弟君が主人に誠心誠意詫びを入れましたので、制裁は終了させました。
ボロン男爵は爵位を息子に渡して隠居し、領地の外れで夫婦は暮らし始めました。

この子をどうなさるかはご自由にどうぞ。
ただし、ミリアナの産んだ子だということは伏せてください。知られれば公子の妻の座を求めるでしょう」

父「分かりました。
主君に心より感謝をしておりますとお伝えください」


遣いが帰り、3人で籠の中を覗き込んだ。

母「本当にそっくりね」

父「さて、ここまでそっくりだと選択肢は限られるな」

私「父上、母上。この子を育てたいです」

母「クリスチャン!?」

父「公表出来ない以上、婚外子で平民との子だろうと騒がれるぞ」

私「この子と離れたくありません。
可能なら、この子を産んだことにしてくれる令嬢を嫁に迎えてはどうでしょう。幸い私にそっくりですから、母親がどんな顔をしていても疑われません」

父「分かった。だが、公爵夫人にするに相応しい令嬢がいなければ、お前は跡継ぎから外れる。それでもいいか?」

私「はい。その時は弟を支えます」

父「先ずは乳母を雇おう」




【 アレクサンドルの視点 】


クリスチャンはミリアナの産んだ子を実子として認知して手元で育てることにしたか。

“産みの母だと口裏を合わせてくれて 次期公爵夫人として相応しい令嬢が見つからなければ 跡継ぎから降ります”

意外だな。己に似た子を一目見て決心するとは。

「ふむ」

ボイズ公爵家からの報告の手紙を読み、マノンの研究部屋へ向かった。
ノックをして応答の声を聞いて入室するとマノンが振り返った。

「アレクサンドル様、どうなさいましたか?まだお夕食には早い気が、えっ?」

マノンの手に持っている物を取り上げて、手を取って立たせた。

「マノン。子を作るぞ」

「はい……えっ!?」

マノンを担いで夫婦の寝室へ入りベッドの上に降ろした。

「ま、まさか今からですか!?」

「そうだ。今すぐだ」

「お、お夕食をいただいて、湯浴みをしてから、」

「早く服を脱げ」

マノンは平民のようにブラウスとスカートという服装だから簡単に自分で脱ぐことができる。
私も上着を脱ぎタイを外しベルトを外しシャツのボタンを外していく。

マノンは仕方ないといった顔をして服を脱ぎ始めた。



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