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披露パーティー

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婚姻から半年以上経ち、兄様は領地に向かった。
かなり寂しい。

「シア、俺がいるだろう」

「兄様がいないの」

「ほら、おいで」

隣に座ったディオンに抱き付いた。
ディオンは私の肩に腕をまわし抱き寄せた。

「兄様の匂いじゃない」

「俺が臭いって?傷付くなぁ」

「そんなこと言ってないわ。ただ兄様の匂いに包まれて育ったんだもの仕方ないでしょう」

「義兄上とシアが兄妹で良かったよ」

「私もそう思うけど、兄妹だから結婚できないの」

「……」

「妹だと嫁いで離れ離れになっちゃうけど、お嫁さんになれたらずっと一緒だもの」

「いや、妹でもべったり一緒だったろう」

「領地に行こうかな、 ひゃあっ」

「俺が膝の上に乗せて可愛がるからここに居ろ」

「なんかしっくりこない」

「もっと長い目で見てくれよ」

「兄様に寂しいってお手紙書こうかな」

「止めろ。あの人は直ぐに戻ってくるぞ。それじゃマノン様が可哀想だろう。何ヶ月も夫だけ王都にいたんだから」

「やっぱり兄妹じゃない方が良かったじゃない」

「そろそろ支度をしてこい。午後はガーデンパーティーだぞ」

「は~い」


今日はウィルソン家のガーデンパーティーだ。
王都にいる親類や領地から参加できる親類を呼び、急遽結婚した私達のお披露目をすることになっている。

「本日はこちらを身に着けてください」

メイドがアクセサリーケースを開けた。

「こんな高そうなものは怖いわ」

「こちらはディオン様がレティシア様のために作らせた物です。着けて頂かないとディオン様が落ち込まれます」

「分かったわ」

ディオンの瞳はオレンジに近い黄色だからそっくりな色を探すのが難しい。なのにこんな大きな石を使ってしまうなんて。

そしてこのカチューシャにもディオンの瞳の色の宝石が散らばめられている。頭に装着するとティアラに見えそうで怖い。幅の細いもので良かった。

支度の整った私を見てディオンが嬉しそうに微笑む。本当はミリアナ様に自分の色の宝石を身に纏って欲しかったのだろう。

「よく似合っている。我が妻レティシア」

「あ、ありがとう」

改めてハンドキスをされるとなんだか照れる。


庭に出ると結構な人数が出席していた。
侯爵夫妻が私達の婚姻を報告して紹介し、一組ずつ顔合わせをしていく。
私にハンドキスをしようと手を取ろうとする令息がいるとサッとディオンが前に出て遮る。
“義兄上に報告しなくてはならないので”
ディオンがそう言うと顔を青くして引き下がる。

そして何人かの令嬢の内、2人はディオン狙いみたい。

「うちの娘はもうすぐ学園を卒業しますのよ」

「アドリーヌ嬢、おめでとうございます。最後まで気を抜かないようにして卒業を迎えてください」

「ディオン様、卒業パーティーでエスコートしてくださいませんか。憧れのディオン様とご一緒できれば一生の思い出となりますわ」

「妻を蔑ろにしろと?」

「いえ、」

「そうではありませんわ。心の広い奥様ならご理解いただけるかと」

娘の代わりに母親が私に振ってきた。

「え?断れは私は心が狭いのですか?夫人」

「そ、そういうわけでは」

「そう仰いましたけど、聞き間違いでしょうか。
残念ですけど、私 心が極狭で、蟻も通れませんのもしかしたら紙一枚も通さないかもしれません」

「シアっ」

「うちの可愛いお嫁さんはね、ディオンの過去の女の影を知ったとき、屋敷中の手頃な物を投げ付けましたのよ。投げ足りないと分かると追加で投げる物を用意させましたの。とても可愛かったわぁ」

「お、お義母様っ」

「ディオンは次の影は作れませんわ。今度は100本くらいナイフを用意しなくてはならなそうですから。その時はアドリーヌ嬢が的になるかもしれませんわよ?ディオンは一つも避けませんでしたから、アドリーヌ嬢も避けることは許されないかもしれませんわね」

「だ、大丈夫です。卒業パーティーは弟と行きます」

「それは良かったですわ。ねえ、ディオン、レティシア」

「はい、母上」

「そちらにいらっしゃるのは弟さん?確かカミーユ様でしたね。学園は慣れましたか?」

「は、はいっ」

「私もカミーユ様のような弟が欲しかったのです。兄に甘やかされてばかりで、私も誰かを甘やかしたいと願っていたのですけど、弟も妹もできなかったのです」

「レ、レティシア様のような姉様がいてくださったら、僕は全力で甘えますっ」

「ふふっ。またお会いしましょうね」

「はいっ!直ぐ参りますっ!」

ディオンがまた間に入った。


そしてまた何組目かの後に。

夫人「まあまあ、お美しいお嬢様で」

デ「レティシア。こちらは領地の一部を管理しているベスコ男爵家の方々です」

夫人「ディオン様もすっかり逞しくおなりになって。ねえダイアナ」

ダ「相変わらず素敵ですわ」

夫人「正妻は迎えたことですし、次は男爵家うちでもよろしいですわよね。ディオン様を満足させられるよう躾けましたので、どうかお召しください」

え?夫人が私の胸を見て言ったわよね。
令嬢も豊満な胸を突き出しているわ。

デ「私はレティシアを妻にできて満足しております」

夫人「最初はね。その内物足りなくなりますわ。レティシア様も何処かの女狐より、ダイアナが第二夫人になった方が安心ですわよね」

私「質問をしてもいいですか」

夫人「どうぞレティシア様」

私「ダイアナ様の売りって何ですか?」

「「え?」」

私「妾の斡旋なら、わざわざディオンより歳上を選ぶ必要なんて無いですし、夜伽がお役目なら必要なときに高級娼館を使った方がお得ですわ。ダイアナ様を養うにはお金がかなり掛かりそうですもの。それなのにあえて第二夫人にですか… 子を産むことと夜伽以外に何かウィルソン家に役立つダイアナ様の売りってありますか?」

夫人「なっ!」

デ「確かに引き取ったらそれなりの費用が掛かりますね。ウィルソン家にどう有益か教えていただきたい」

ダ「と、殿方は貧相な体より私みたいな体を好むのです!」

デ「俺が妻を体で選ぶとでも?」

ダ「え…そうじゃなくて、」

私「でも、そのご自慢の胸はいずれ垂れて萎んでいきますよ?今23歳ですよね。そろそろ十代よりも下がってきたなと思っていませんか?10年後にはどうなっているのでしょう。旬は過ぎつつあるということです。
だったら娼館でフレッシュな巨乳を指名すればいいだけです」

デ「レティシア、私は別に巨乳好きじゃない」

私「……」

デ「本当だ!」

私「まあ、もしダイアナ様を迎えるという話になったらアレを切り落とす予定です。つまり白い結婚になりますけどよろしくて?」

「「え?」」

デ「は?」

私「だって兄様がそうしなさいって。その後のことは兄様が後片付けするから気にせず切り落とせって」

ディオンは股間を隠した。

私「ディオン。それって私に対する宣戦布告なの?」

デ「ち、違う」

私「隠したということは…まさかもう!?」

デ「違う!私はレティシア以外に触れない!」

私「兄様と相談しようかな」

デ「夫人、ダイアナ嬢。私とレティシアは幼少からの付き合いで今も仲の良い夫婦だ。第二夫人も妾も愛人も要らないし娼館にも通わない。
本家の妻を侮辱するような発言は止めてもらいたい」

ダ「でも、ディオン様っ。私はずっとお慕いしていて」

デ「ベスコ男爵には管理者として大きな価値があるが、ダイアナ嬢個人としては魅力を感じない。一刻も早く縁談の募集をしている家門へ申し込んで嫁いだ方がいい」

男爵「大変失礼いたしました。直ぐに嫁がせます」

夫人「あなた」

ダ「お父様っ」

私「ディオン。疲れちゃったわ。休憩しましょう」

デ「すまないな シア。お詫びに向こうの席に運んであげよう」

ディオンは抱き上げて席に移動すると椅子に座り、その上に私を降ろした。そして飲み物を飲ませてくれた。

「シア。俺はシアのものだ」

「ふん。浮気者っ」



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