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制裁
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【 クリスチャン・ボイズの視点 】
ボロン伯爵を追い返した数日後、家令が父上に耳打ちをした。
『は!? 妻を呼んでくれ』
レティシアとの事かと思ったら違った。
父『サーファル辺境伯が逮捕された』
母『逮捕!?』
父『密輸の疑いで捜査が入り現行犯だそうだ』
母『あなた…』
サーファル辺境伯はお祖母様の実家だ。
父『制裁が始まったようだ。早く話をつけないと』
私『制裁?』
父『レティシア嬢の兄アレクサンドル殿を敵に回したということだ』
王太子殿下の親友でも、アレクサンドルは伯爵家の令息にすぎないのに?
私は偶然だと思っていた。
母『でも、浮気がお互い様なら、』
父『これ以上被害が出ないうちに話し合おう。もう一度手紙を出そう』
やっと会えると思ったが、場所は王城の会議室。部屋の中には兵士が立っていた。
レ『クリスチャン・ボイズは不貞をした。契約書がある以上 婚姻前でも効力はあるの』
自分が先にディオンと寝たくせに!
ついカッとなってしまった。
私『レティシアだって私以外の男と寝ているじゃないか!』
レティシアは驚いた顔で否定したが、私には それを私が知っていたことに驚いたのだと思った。
ク『お互い別の相手と関係があったなら水に流すべきだろう!』
レティシアは溜息を吐くと医師を呼べと言った。
私『乙女の証が確認できればクリスチャンの有責で婚約破棄をします』
ボイズ邸に戻り、父が母に結果を報告した。
『婚約は破棄された。多額の違約金も早急に一括で払う』
『何故ですか!』
『レティシア嬢は乙女だった』
『え?』
『宮廷医と助手が検診をして乙女の証を確認した。
クリスチャンの一方的な契約違反だった。
それに現場を目撃されたことが問題だ。彼女は思い出すと吐き気が止まず、伏せっていたのはそのためらしい。彼女は箱入りの令嬢だったんだ』
『クリスチャン!』
『ミリアナが、レティシアはディオンと寝てると…』
『伯爵令嬢の言葉だけで…』
『私はレティシアを愛していたんです。いつも側にいるディオン・ウィルソンが気に入らなかった』
眠れぬ夜を過ごした翌朝、一階では慌しかった。
「どうしたのですか」
「今度はパトリックが逮捕された」
「叔父上が!?」
パトリックとは父上の弟の伯爵だった。
「容疑は何ですか」
「パトリックは違法売買、メアリーは違法賭場だ」
叔父上の妻まで!?
そこに母上が手紙を握りしめて父上に駆け寄った。
「あなたっ、お父様が、ハロッド侯爵家に投資していた投資家が撤退して開発が頓挫して、このままではこれまでに投資したお金が泡になって、契約した職人や建設業者達に払うお金が底を尽きます!」
「……」
「母上、事業の中止はできないのですか」
「建設業者などの人件費や物資に関する契約は事業完了迄の長期契約で、事業が無くなっても契約の何割か違約金として支払わなくてはならないのよ。
それが5割だとしても長期契約だから大金なの。確か7割だったはず。その代わり、他の仕事を受けず専念させて人手不足や物資不足による延期が無いようにしたのよ」
「資料を持って訪ねるよう手紙を出せ」
「分かったわ」
また父上の元に手紙が届いた。
「クリスチャン」
「はい」
「ボロン親子を呼ぶぞ」
「はい」
自室に戻り血の気の引いた体のために足を高くして横になった。
ブレーズも言っていた。アレクサンドルを絶対に怒らすなと。だが母上の実家だって偶然じゃないかと思った。
「レティシア…」
あの時…宮廷医がレティシアの純潔を口にした時、心の底から嬉しかった。
やり直したい。
詰られても引っ叩かれてもいいからやり直したい。
もっと大事にするし、二度とレティシア以外の女に触れない。愛して甘やかして溶かして償いたい。
数日後、その夢は潰えた。
ミ「クリス様の子を妊娠しました」
私「は!?」
父「……」
伯「3ヶ月くらいだと医師に告げられました」
父「避妊は」
ミ「しませんでした」
私「避妊していると言ったじゃないか!」
ミ「聞かれた時はそうでした」
父「なるほど。産まれたらまた来てくれ。子供の顔を見て決めましょう」
伯「そんな!それではミリアナも子も立場が、」
父「立場なんてないでしょう。嘘を吐いて寝取ったのですから。
それにクリスチャンの子だという保証が無い以上、今は何もできません。答えを出せと言うなら手切れ金を渡すくらいでしょうか」
伯「っ!」
父「お引き取りを」
ボロン親子が帰った後、家族会議を開いた。
「クリスチャン。お前は最初から狙われていたんだ。
狡猾なボロン親子の策略に乗って関係を持ってしまった。目的はボイズ公爵夫人の座だろう。
わざとお前に声を掛け、嘘のレティシアの浮気話を耳に入れ、体の関係に進み、2人に目撃させ、自身はウィルソン侯爵家と破婚し、クリスチャンとレティシアを破婚させ、妊娠を勝ち得た。
お前に似た子が産まれたら降参だ」
「公爵家を何だと思っているのかしら!」
「だが、ボロン伯爵は馬鹿だ。きっとアレクサンドル殿はボロン伯爵家に大きな制裁を用意しているだろう」
その後 父上はアレクサンドルに面会を申し入れ、洗いざらい話し、そして改めて謝罪をしてきたらしい。
「彼は何て言っていましたか」
「アレクサンドル殿は、もうボイズ公爵家は建て直しに専念していいと言っていた。うちへの制裁はストップさせてくれるという意味だろう」
「そうですか」
「それと、ミリアナの胎の子が実子だとしても産んで欲しいか聞かれた」
「つまり?」
「本当にお前の子なら大変なことになる。
だから要らないと答えた。
どうなるかは分からないな」
その後、レティシアとディオンが婚姻した事を知らされた。現場を見られてから2ヶ月さえ経っていなかった。
ボロン伯爵を追い返した数日後、家令が父上に耳打ちをした。
『は!? 妻を呼んでくれ』
レティシアとの事かと思ったら違った。
父『サーファル辺境伯が逮捕された』
母『逮捕!?』
父『密輸の疑いで捜査が入り現行犯だそうだ』
母『あなた…』
サーファル辺境伯はお祖母様の実家だ。
父『制裁が始まったようだ。早く話をつけないと』
私『制裁?』
父『レティシア嬢の兄アレクサンドル殿を敵に回したということだ』
王太子殿下の親友でも、アレクサンドルは伯爵家の令息にすぎないのに?
私は偶然だと思っていた。
母『でも、浮気がお互い様なら、』
父『これ以上被害が出ないうちに話し合おう。もう一度手紙を出そう』
やっと会えると思ったが、場所は王城の会議室。部屋の中には兵士が立っていた。
レ『クリスチャン・ボイズは不貞をした。契約書がある以上 婚姻前でも効力はあるの』
自分が先にディオンと寝たくせに!
ついカッとなってしまった。
私『レティシアだって私以外の男と寝ているじゃないか!』
レティシアは驚いた顔で否定したが、私には それを私が知っていたことに驚いたのだと思った。
ク『お互い別の相手と関係があったなら水に流すべきだろう!』
レティシアは溜息を吐くと医師を呼べと言った。
私『乙女の証が確認できればクリスチャンの有責で婚約破棄をします』
ボイズ邸に戻り、父が母に結果を報告した。
『婚約は破棄された。多額の違約金も早急に一括で払う』
『何故ですか!』
『レティシア嬢は乙女だった』
『え?』
『宮廷医と助手が検診をして乙女の証を確認した。
クリスチャンの一方的な契約違反だった。
それに現場を目撃されたことが問題だ。彼女は思い出すと吐き気が止まず、伏せっていたのはそのためらしい。彼女は箱入りの令嬢だったんだ』
『クリスチャン!』
『ミリアナが、レティシアはディオンと寝てると…』
『伯爵令嬢の言葉だけで…』
『私はレティシアを愛していたんです。いつも側にいるディオン・ウィルソンが気に入らなかった』
眠れぬ夜を過ごした翌朝、一階では慌しかった。
「どうしたのですか」
「今度はパトリックが逮捕された」
「叔父上が!?」
パトリックとは父上の弟の伯爵だった。
「容疑は何ですか」
「パトリックは違法売買、メアリーは違法賭場だ」
叔父上の妻まで!?
そこに母上が手紙を握りしめて父上に駆け寄った。
「あなたっ、お父様が、ハロッド侯爵家に投資していた投資家が撤退して開発が頓挫して、このままではこれまでに投資したお金が泡になって、契約した職人や建設業者達に払うお金が底を尽きます!」
「……」
「母上、事業の中止はできないのですか」
「建設業者などの人件費や物資に関する契約は事業完了迄の長期契約で、事業が無くなっても契約の何割か違約金として支払わなくてはならないのよ。
それが5割だとしても長期契約だから大金なの。確か7割だったはず。その代わり、他の仕事を受けず専念させて人手不足や物資不足による延期が無いようにしたのよ」
「資料を持って訪ねるよう手紙を出せ」
「分かったわ」
また父上の元に手紙が届いた。
「クリスチャン」
「はい」
「ボロン親子を呼ぶぞ」
「はい」
自室に戻り血の気の引いた体のために足を高くして横になった。
ブレーズも言っていた。アレクサンドルを絶対に怒らすなと。だが母上の実家だって偶然じゃないかと思った。
「レティシア…」
あの時…宮廷医がレティシアの純潔を口にした時、心の底から嬉しかった。
やり直したい。
詰られても引っ叩かれてもいいからやり直したい。
もっと大事にするし、二度とレティシア以外の女に触れない。愛して甘やかして溶かして償いたい。
数日後、その夢は潰えた。
ミ「クリス様の子を妊娠しました」
私「は!?」
父「……」
伯「3ヶ月くらいだと医師に告げられました」
父「避妊は」
ミ「しませんでした」
私「避妊していると言ったじゃないか!」
ミ「聞かれた時はそうでした」
父「なるほど。産まれたらまた来てくれ。子供の顔を見て決めましょう」
伯「そんな!それではミリアナも子も立場が、」
父「立場なんてないでしょう。嘘を吐いて寝取ったのですから。
それにクリスチャンの子だという保証が無い以上、今は何もできません。答えを出せと言うなら手切れ金を渡すくらいでしょうか」
伯「っ!」
父「お引き取りを」
ボロン親子が帰った後、家族会議を開いた。
「クリスチャン。お前は最初から狙われていたんだ。
狡猾なボロン親子の策略に乗って関係を持ってしまった。目的はボイズ公爵夫人の座だろう。
わざとお前に声を掛け、嘘のレティシアの浮気話を耳に入れ、体の関係に進み、2人に目撃させ、自身はウィルソン侯爵家と破婚し、クリスチャンとレティシアを破婚させ、妊娠を勝ち得た。
お前に似た子が産まれたら降参だ」
「公爵家を何だと思っているのかしら!」
「だが、ボロン伯爵は馬鹿だ。きっとアレクサンドル殿はボロン伯爵家に大きな制裁を用意しているだろう」
その後 父上はアレクサンドルに面会を申し入れ、洗いざらい話し、そして改めて謝罪をしてきたらしい。
「彼は何て言っていましたか」
「アレクサンドル殿は、もうボイズ公爵家は建て直しに専念していいと言っていた。うちへの制裁はストップさせてくれるという意味だろう」
「そうですか」
「それと、ミリアナの胎の子が実子だとしても産んで欲しいか聞かれた」
「つまり?」
「本当にお前の子なら大変なことになる。
だから要らないと答えた。
どうなるかは分からないな」
その後、レティシアとディオンが婚姻した事を知らされた。現場を見られてから2ヶ月さえ経っていなかった。
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