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国王からの手紙(エストール)

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聞き覚えのある声に戦慄するエストールは、振り向くことなく立ち去ろうとしたが、

「エストールぅ? 
この手にある物を無視していいの~?
この国の王様からの直々の手紙だよぉ~?」

誰だよ、門を開けたのは!

「お久しぶりでございます。第三王子殿下」

「イヤだなぁ、私とエストールの仲じゃないか! あの時みたいにシリウスって呼び捨てでいいんだよ。
恥ずかしがり屋なんだからっ!」

やばい薬でも飲んできたか?

「それに、王子じゃなくなったよ。
伯爵位をもらって王族籍は抜けたんだ。
頻繁に遊びに帰るけどね」

何が違うんだよ。放浪癖の王子になっただけだろう!

「左様でございましたか。領地は賜ったのですか?」

「うん。隣にちっちゃな領地あったでしょ? 名前なんだっけ」

おまえ…

「ご自分の名前になったのでしょう?」

「・・・ルボア・・・ルボア?」

「そうです。ルボアです。うちが代理で管理しています」

「そう!そこ! ルボア伯爵になったんだよ。だから特別にシリウスって呼ばせてあげる!」

いらねぇ。

「では、自領へお帰りください。ルボアから退けという手紙ですか?」

「えっ?退かないよ。そのままでよろしく!」

「は?ルボア領の伯爵になったんですよね?」

「そうだよ。そこでコレだ!!」

もう・・・なんなの

『エストール・フォルナード殿

達者にしておるか?
あの時は大変世話になった。

すくすくと元気になっていくシリウスに、空いている領地が分かる地図を渡したのだ。
食い入るように見たかと思えば、すぐにルボア領を指差して、ココがいいと満面の笑みで言うものだからな。

ルボアは小さくてフォルナード領に隣接するただの森だと知った。
なぜ吸収しなかったのか謎だな。
屋敷もないし、領地経営と言っても森だけだからな。
虫や動物は領民とは言えない。
だから管理はそのままでいいだろう?

住処はどうするのか聞いたら、同じ領地みたいなものだから、フォルナード家の屋敷に住むから、わざわざ建てなくていいとシリウスが申してな。

フォルナード家の一室が執務室だ。
フォルナード城は広い。問題あるまい。
何より安全だ!

確かに、元王子を預けるには、無敵の騎士団がいるフォルナード城が最適だろう。
シリウスは昔から頭の良い子だった。

部屋の貸切代(一生)とリフォームの費用を先月末に届けさせて、受け取ってもらったことで、了承を得たと判断した。

ルボアに新たに屋敷を建設しようとしたら相当な額になる。
そう、その額を渡した。
別途、ルボアの管理代として払っている額に、シリウスの生活費を多めに足して渡すから、安心してほしい。
というか、もう渡している。

まさか、これほどシリウスがエストール殿に懐くとは思わなかった。
エストール殿の心の広さを分かっているのだな。

兄君のヴェルト殿には先に手紙で許可をとってある。
次期辺境伯だからな。礼を欠かしてはならない。
ヴェルト殿が食べたがっていた王都で流行りの菓子を手紙に添えたら喜んでもらえたぞ!

辺境伯殿には夫人の経由で許可をとった。
母君は最新のヘアケア製品をそえた。
喜んでもらえたので、追加を今来ている辺境伯殿に持たせるからと、母君に伝えておいてくれ。

辺境伯殿には、東国から取り寄せた〝夫婦の絆の再来”を渡した。
父君が帰られたら、夜はしばらく夫婦の寝室付近に近寄らないように忠告しておくぞ。
午前中は母君を労ってあげるように。

まぁ、そんな訳だからシリウスを宜しく頼む。

2ヶ月に一度は一緒に里帰りしてくれ。
戻る時に皆の欲しい土産を持たすからな!馬車がいいぞ!

国王 ジェルマン・ヴィジュエル』


誰か助けてくれ・・・


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