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ベネット王国

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ベネットの王城に足を踏み入れるのは半年くらいしか経っていないので懐かしくはない。 

だけど人が生み出す空気が違う。

使用人達は丁重だし、出掛けていない妹や弟達が出迎えてくれた。

そのままアーサー兄様と一緒に国王陛下おとうさまのもとへ連れて行かれた。長男ファヴィアンもいた。

父「カレン。許してくれ。
私の子なのに差別を許してしまった」

フ「噂は嘘だと証明された。誤解をしていて悪かった」

私「どうなさったのですか?」

父・フ「……」

ア「陛下。どうぞお話しください」

お父様は意を決したように話し始めた。

父「私が王子だった頃の話から始める。

私は第ニ王子だった。
第一王子とは腹違いで同い歳だった。

国王陛下父上が亡くなったために急いで兄上が新国王となった。 
兄上と第二妃となる婚約者はまだ婚姻していなかったが、式は間近だし、兄は国王。婚姻前でも城に住まわせた。  

ある日 兄である国王が急病で亡くなった。
私は国王になった。既に正妻がいたが、もう一人娶った。

それが亡き兄上と婚姻間近だったアーサーの母だ。

私は昔から彼女が好きでどうしても欲しかった。
だけど兄と彼女は選定された婚約で、交流しているうちに恋人になっていて 彼女を譲ってくれと言えなかった。

だから殺した。病死と発表されたが兄を殺したのは私だ。そして彼女を娶った。  

想い人である彼女を寵妃とした。
だが、兄上の子を孕んでいた。

悩んだが、子を殺したり何処かへ養子にやれば彼女は私を拒絶するだろう。だから私の息子とした。

だけどアーサーは、私と彼女の態度に疑問を抱き、出生の記録を見て自分が先王の子だということを知った。

本来 私より継承順位が高いアーサーと取り引きをした。
アーサーは王位に興味は無いが命を狙われるのは嫌だから、私とファブリアンのために周辺諸国を掌握すると提案を持ちかけた。

私とアーサーの秘密だ。

何故 今明かすかというと、アーサーがカレンを娶ることを希望したからだ。

秘密を明かさないまま妹であるはずのカレンは娶れない。

だから明日、アーサーが先王の忘形見だと公表する。
何故そうなったかは伏せ、王位継承権をファブリアンの後にする代わりに、カレンとの暮らしの保証と安全を約束して欲しいと申し出たからだ」

フ「父上が…信じられない」

父「このことは絶対に誰にも漏らしてはならない。4人の秘密だ。でないと死人が出る」

ア「カレン。俺と結婚して欲しい。
大事にすると誓う」

私「お兄様にはお嫁さんが…」

ア「その事実は変えられない。
瑕疵もないから別れることは簡単ではない。
だが愛しているわけではない」

私「お子もいらっしゃるじゃないですか」

ア「もうカレンを手放すという選択肢は用意していない。
頼む。カレンの口から妻になるという言葉が欲しい欲しい」

つまり受け入れるしかないということだ。
私がノーと言えば無理矢理娶るだけ。
お兄様は優しいけど、ベネット人なのだと痛感した。

私「アーサーお兄様の妻になります」

この言葉しか許されないのだ。

ア「ありがとう!カレン!」

アーサーお兄様は好みのタイプだし、望まれた婚姻だ。
だけど妻と子がいる人だ。
本気で好きになったら辛いのは私だけ。

第一王子のファヴィアンは複雑だろう。
父親が兄王を殺し、女を横取りし、王位も奪った。
その上、本来なら王となっていたアーサーをずっと戦わせ続けてきたのだから。

王「アーサーには敷地内の南東にあるサジテール宮を与える。そこでカレンと第一夫人のソレンヌと子のロドリグと暮らすといい。使用人も配置したから直ぐに使えるぞ」

ア「ありがとうございます」

一緒か…大丈夫かな。
アーサーお兄様が不在がちなんだから別居がいいんだけどな。

エリザベスと暮らしていた方が楽しかったかもしれない。

ア「カレン」

私「はい」

ア「サジテール宮を見に行こう」


手を繋がれて本宮を抜け、サジテール宮に到着した。
使用人達は主人を迎え入れるように私達を通した。

「2階、3階、4階にそれぞれ王子妃殿下のお部屋がございます。その隣に夫婦の時を過ごす寝室が別にございます」

連れてこられたのは4階の王子妃の部屋だった。
妻を3人は迎え入れられるということね。

「カレン。気に入らないか?好きに改装していいぞ」

「2階にします」

「見にいこう」


2階の王子妃の部屋に行くとバルコニーに出た。
手摺に手を掛けて下を覗く。

何とかいけそう。
この高さでも足を痛めることがあるからジャンプは止めた方がいいわね。そうだ。縄梯子ってあるよね。それとも3階のバルコニーの手摺りにロープを結んで下まで垂らすとか。

そんなことを考えながら身を乗り出して下を覗いたり 上階を見たりしていた。

彼は私の後ろから包み込むようにくっついて、手摺りに乗せていた私の手の上に 手を乗せた。

「俺から逃げる方法を探っているのか?」

ビクッ!

耳元で低い声で囁かれた。

「き、緊急時の避難経路の確認をね」

「余計なことは考えるなよ。どこまででも追いかけるからな。お前の逃亡を見過ごした者や手伝った者を片っ端から切り捨てて行くぞ。年寄りでも赤子でも、カレンに辿り着くまで止めない。

浮気も許さない。カレンの足の腱を切り、相手の男の性器を切り取って顔を潰してやる」

「っ!」

「分かったか? 返事は」

「お兄様こそ、新たに他の女を連れて来たらお兄様が知らない方法で苦しめてやる。遠征先で他の女に手を付けたと聞いたら、私も旅に出て他の男に手を付けてやる!

分かった? 返事は?」

「生意気に育ったな」

「ちょっと!」

私を抱き上げると隣の夫婦の間のベッドへ降ろした。

「俺が愛しているのはカレンだけだ。
再会してからどんどん惹かれていく。
遠征は激減させるから覚悟しろよ」

「あっ! 兄様っ」

お兄様がドレスの裾に手を入れて下から上へ脚をなぞった。

「アーサーと呼べ」

「イヤっ」

「拒絶するくらいなら噛みつけ」

だってこんな急に!

「怖いっ」

お兄様はピタッと止まった!

「……すまん。初めてだったな」

「こんな急に」

「急ではない。俺は…」


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