10 / 26
ベネット王国
しおりを挟む
ベネットの王城に足を踏み入れるのは半年くらいしか経っていないので懐かしくはない。
だけど人が生み出す空気が違う。
使用人達は丁重だし、出掛けていない妹や弟達が出迎えてくれた。
そのままアーサー兄様と一緒に国王陛下のもとへ連れて行かれた。長男ファヴィアンもいた。
父「カレン。許してくれ。
私の子なのに差別を許してしまった」
フ「噂は嘘だと証明された。誤解をしていて悪かった」
私「どうなさったのですか?」
父・フ「……」
ア「陛下。どうぞお話しください」
お父様は意を決したように話し始めた。
父「私が王子だった頃の話から始める。
私は第ニ王子だった。
第一王子とは腹違いで同い歳だった。
国王陛下が亡くなったために急いで兄上が新国王となった。
兄上と第二妃となる婚約者はまだ婚姻していなかったが、式は間近だし、兄は国王。婚姻前でも城に住まわせた。
ある日 兄である国王が急病で亡くなった。
私は国王になった。既に正妻がいたが、もう一人娶った。
それが亡き兄上と婚姻間近だったアーサーの母だ。
私は昔から彼女が好きでどうしても欲しかった。
だけど兄と彼女は選定された婚約で、交流しているうちに恋人になっていて 彼女を譲ってくれと言えなかった。
だから殺した。病死と発表されたが兄を殺したのは私だ。そして彼女を娶った。
想い人である彼女を寵妃とした。
だが、兄上の子を孕んでいた。
悩んだが、子を殺したり何処かへ養子にやれば彼女は私を拒絶するだろう。だから私の息子とした。
だけどアーサーは、私と彼女の態度に疑問を抱き、出生の記録を見て自分が先王の子だということを知った。
本来 私より継承順位が高いアーサーと取り引きをした。
アーサーは王位に興味は無いが命を狙われるのは嫌だから、私とファブリアンのために周辺諸国を掌握すると提案を持ちかけた。
私とアーサーの秘密だ。
何故 今明かすかというと、アーサーがカレンを娶ることを希望したからだ。
秘密を明かさないまま妹であるはずのカレンは娶れない。
だから明日、アーサーが先王の忘形見だと公表する。
何故そうなったかは伏せ、王位継承権をファブリアンの後にする代わりに、カレンとの暮らしの保証と安全を約束して欲しいと申し出たからだ」
フ「父上が…信じられない」
父「このことは絶対に誰にも漏らしてはならない。4人の秘密だ。でないと死人が出る」
ア「カレン。俺と結婚して欲しい。
大事にすると誓う」
私「お兄様にはお嫁さんが…」
ア「その事実は変えられない。
瑕疵もないから別れることは簡単ではない。
だが愛しているわけではない」
私「お子もいらっしゃるじゃないですか」
ア「もうカレンを手放すという選択肢は用意していない。
頼む。カレンの口から妻になるという言葉が欲しい欲しい」
つまり受け入れるしかないということだ。
私がノーと言えば無理矢理娶るだけ。
お兄様は優しいけど、ベネット人なのだと痛感した。
私「アーサーお兄様の妻になります」
この言葉しか許されないのだ。
ア「ありがとう!カレン!」
アーサーお兄様は好みのタイプだし、望まれた婚姻だ。
だけど妻と子がいる人だ。
本気で好きになったら辛いのは私だけ。
第一王子のファヴィアンは複雑だろう。
父親が兄王を殺し、女を横取りし、王位も奪った。
その上、本来なら王となっていたアーサーをずっと戦わせ続けてきたのだから。
王「アーサーには敷地内の南東にあるサジテール宮を与える。そこでカレンと第一夫人のソレンヌと子のロドリグと暮らすといい。使用人も配置したから直ぐに使えるぞ」
ア「ありがとうございます」
一緒か…大丈夫かな。
アーサーお兄様が不在がちなんだから別居がいいんだけどな。
エリザベスと暮らしていた方が楽しかったかもしれない。
ア「カレン」
私「はい」
ア「サジテール宮を見に行こう」
手を繋がれて本宮を抜け、サジテール宮に到着した。
使用人達は主人を迎え入れるように私達を通した。
「2階、3階、4階にそれぞれ王子妃殿下のお部屋がございます。その隣に夫婦の時を過ごす寝室が別にございます」
連れてこられたのは4階の王子妃の部屋だった。
妻を3人は迎え入れられるということね。
「カレン。気に入らないか?好きに改装していいぞ」
「2階にします」
「見にいこう」
2階の王子妃の部屋に行くとバルコニーに出た。
手摺に手を掛けて下を覗く。
何とかいけそう。
この高さでも足を痛めることがあるからジャンプは止めた方がいいわね。そうだ。縄梯子ってあるよね。それとも3階のバルコニーの手摺りにロープを結んで下まで垂らすとか。
そんなことを考えながら身を乗り出して下を覗いたり 上階を見たりしていた。
彼は私の後ろから包み込むようにくっついて、手摺りに乗せていた私の手の上に 手を乗せた。
「俺から逃げる方法を探っているのか?」
ビクッ!
耳元で低い声で囁かれた。
「き、緊急時の避難経路の確認をね」
「余計なことは考えるなよ。どこまででも追いかけるからな。お前の逃亡を見過ごした者や手伝った者を片っ端から切り捨てて行くぞ。年寄りでも赤子でも、カレンに辿り着くまで止めない。
浮気も許さない。カレンの足の腱を切り、相手の男の性器を切り取って顔を潰してやる」
「っ!」
「分かったか? 返事は」
「お兄様こそ、新たに他の女を連れて来たらお兄様が知らない方法で苦しめてやる。遠征先で他の女に手を付けたと聞いたら、私も旅に出て他の男に手を付けてやる!
分かった? 返事は?」
「生意気に育ったな」
「ちょっと!」
私を抱き上げると隣の夫婦の間のベッドへ降ろした。
「俺が愛しているのはカレンだけだ。
再会してからどんどん惹かれていく。
遠征は激減させるから覚悟しろよ」
「あっ! 兄様っ」
お兄様がドレスの裾に手を入れて下から上へ脚をなぞった。
「アーサーと呼べ」
「イヤっ」
「拒絶するくらいなら噛みつけ」
だってこんな急に!
「怖いっ」
お兄様はピタッと止まった!
「……すまん。初めてだったな」
「こんな急に」
「急ではない。俺は…」
だけど人が生み出す空気が違う。
使用人達は丁重だし、出掛けていない妹や弟達が出迎えてくれた。
そのままアーサー兄様と一緒に国王陛下のもとへ連れて行かれた。長男ファヴィアンもいた。
父「カレン。許してくれ。
私の子なのに差別を許してしまった」
フ「噂は嘘だと証明された。誤解をしていて悪かった」
私「どうなさったのですか?」
父・フ「……」
ア「陛下。どうぞお話しください」
お父様は意を決したように話し始めた。
父「私が王子だった頃の話から始める。
私は第ニ王子だった。
第一王子とは腹違いで同い歳だった。
国王陛下が亡くなったために急いで兄上が新国王となった。
兄上と第二妃となる婚約者はまだ婚姻していなかったが、式は間近だし、兄は国王。婚姻前でも城に住まわせた。
ある日 兄である国王が急病で亡くなった。
私は国王になった。既に正妻がいたが、もう一人娶った。
それが亡き兄上と婚姻間近だったアーサーの母だ。
私は昔から彼女が好きでどうしても欲しかった。
だけど兄と彼女は選定された婚約で、交流しているうちに恋人になっていて 彼女を譲ってくれと言えなかった。
だから殺した。病死と発表されたが兄を殺したのは私だ。そして彼女を娶った。
想い人である彼女を寵妃とした。
だが、兄上の子を孕んでいた。
悩んだが、子を殺したり何処かへ養子にやれば彼女は私を拒絶するだろう。だから私の息子とした。
だけどアーサーは、私と彼女の態度に疑問を抱き、出生の記録を見て自分が先王の子だということを知った。
本来 私より継承順位が高いアーサーと取り引きをした。
アーサーは王位に興味は無いが命を狙われるのは嫌だから、私とファブリアンのために周辺諸国を掌握すると提案を持ちかけた。
私とアーサーの秘密だ。
何故 今明かすかというと、アーサーがカレンを娶ることを希望したからだ。
秘密を明かさないまま妹であるはずのカレンは娶れない。
だから明日、アーサーが先王の忘形見だと公表する。
何故そうなったかは伏せ、王位継承権をファブリアンの後にする代わりに、カレンとの暮らしの保証と安全を約束して欲しいと申し出たからだ」
フ「父上が…信じられない」
父「このことは絶対に誰にも漏らしてはならない。4人の秘密だ。でないと死人が出る」
ア「カレン。俺と結婚して欲しい。
大事にすると誓う」
私「お兄様にはお嫁さんが…」
ア「その事実は変えられない。
瑕疵もないから別れることは簡単ではない。
だが愛しているわけではない」
私「お子もいらっしゃるじゃないですか」
ア「もうカレンを手放すという選択肢は用意していない。
頼む。カレンの口から妻になるという言葉が欲しい欲しい」
つまり受け入れるしかないということだ。
私がノーと言えば無理矢理娶るだけ。
お兄様は優しいけど、ベネット人なのだと痛感した。
私「アーサーお兄様の妻になります」
この言葉しか許されないのだ。
ア「ありがとう!カレン!」
アーサーお兄様は好みのタイプだし、望まれた婚姻だ。
だけど妻と子がいる人だ。
本気で好きになったら辛いのは私だけ。
第一王子のファヴィアンは複雑だろう。
父親が兄王を殺し、女を横取りし、王位も奪った。
その上、本来なら王となっていたアーサーをずっと戦わせ続けてきたのだから。
王「アーサーには敷地内の南東にあるサジテール宮を与える。そこでカレンと第一夫人のソレンヌと子のロドリグと暮らすといい。使用人も配置したから直ぐに使えるぞ」
ア「ありがとうございます」
一緒か…大丈夫かな。
アーサーお兄様が不在がちなんだから別居がいいんだけどな。
エリザベスと暮らしていた方が楽しかったかもしれない。
ア「カレン」
私「はい」
ア「サジテール宮を見に行こう」
手を繋がれて本宮を抜け、サジテール宮に到着した。
使用人達は主人を迎え入れるように私達を通した。
「2階、3階、4階にそれぞれ王子妃殿下のお部屋がございます。その隣に夫婦の時を過ごす寝室が別にございます」
連れてこられたのは4階の王子妃の部屋だった。
妻を3人は迎え入れられるということね。
「カレン。気に入らないか?好きに改装していいぞ」
「2階にします」
「見にいこう」
2階の王子妃の部屋に行くとバルコニーに出た。
手摺に手を掛けて下を覗く。
何とかいけそう。
この高さでも足を痛めることがあるからジャンプは止めた方がいいわね。そうだ。縄梯子ってあるよね。それとも3階のバルコニーの手摺りにロープを結んで下まで垂らすとか。
そんなことを考えながら身を乗り出して下を覗いたり 上階を見たりしていた。
彼は私の後ろから包み込むようにくっついて、手摺りに乗せていた私の手の上に 手を乗せた。
「俺から逃げる方法を探っているのか?」
ビクッ!
耳元で低い声で囁かれた。
「き、緊急時の避難経路の確認をね」
「余計なことは考えるなよ。どこまででも追いかけるからな。お前の逃亡を見過ごした者や手伝った者を片っ端から切り捨てて行くぞ。年寄りでも赤子でも、カレンに辿り着くまで止めない。
浮気も許さない。カレンの足の腱を切り、相手の男の性器を切り取って顔を潰してやる」
「っ!」
「分かったか? 返事は」
「お兄様こそ、新たに他の女を連れて来たらお兄様が知らない方法で苦しめてやる。遠征先で他の女に手を付けたと聞いたら、私も旅に出て他の男に手を付けてやる!
分かった? 返事は?」
「生意気に育ったな」
「ちょっと!」
私を抱き上げると隣の夫婦の間のベッドへ降ろした。
「俺が愛しているのはカレンだけだ。
再会してからどんどん惹かれていく。
遠征は激減させるから覚悟しろよ」
「あっ! 兄様っ」
お兄様がドレスの裾に手を入れて下から上へ脚をなぞった。
「アーサーと呼べ」
「イヤっ」
「拒絶するくらいなら噛みつけ」
だってこんな急に!
「怖いっ」
お兄様はピタッと止まった!
「……すまん。初めてだったな」
「こんな急に」
「急ではない。俺は…」
368
お気に入りに追加
3,094
あなたにおすすめの小説
誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。
しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。
幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。
その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。
実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。
やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。
妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。
絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。
なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。
待ち遠しかった卒業パーティー
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。
しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。
それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。
正当な権利ですので。
しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。
18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。
2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。
遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。
再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。
突然の契約結婚は……楽、でした。
しゃーりん
恋愛
幼い頃は病弱で、今は元気だと言うのに過保護な両親のせいで婚約者がいないまま18歳になり学園を卒業したサラーナは、両親から突然嫁ぐように言われた。
両親からは名前だけの妻だから心配ないと言われ、サラーナを嫌っていた弟からは穴埋めの金のための結婚だと笑われた。訳も分からず訪れた嫁ぎ先で、この結婚が契約結婚であることを知る。
夫となるゲオルドには恋人がいたからだ。
そして契約内容を知り、『いいんじゃない?』と思うお話です。
振られたから諦めるつもりだったのに…
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。
自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。
その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。
一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…
婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。
王家の面子のために私を振り回さないで下さい。
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。
愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。
自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。
国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。
実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。
ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる